181.誘導
早速、家の中に作られた滑り台とブランコでアキとヨツが楽しそうに遊んでいる。そこへ帰って来たヤグロもこっそり参加した。
「私たちのー家? 魔女の店みたいな感じーかしら」
ルグヤの言葉に、ヤグロは必死で首を横に振り拒否を伝えてくる。
「ナナ。お店は家じゃないから、別の感じの方が良いんじゃない?」
「あらーそう?」
「ええ。折角だから、こことくっ付けましょうよ」
「それはーいいわね」
「じゃあ、同じログハウス風にして、仕事部屋というか作業部屋のようなものを作る?」
ムウが上手い事誘導し、ヤグロはほっとした様子だ。それを聞いていたニカとミハも胸を撫で下ろす。イツとムウはあっという間に希望通りに建った家に驚いて、喜んで今度は自分の希望を更に叶えるために色々と考えたいた。そのためイツはヒイと一緒に自分の洋館のために、更地で悩んでいたので誰も魔女の店を回避する術を持っていなかったからムウに感謝しきりだった。
「本当に魔女っぽいのね」
「そうーよ」
「不思議よね」
「なーにが?」
「だって、こちらの魔女の事を知っていたかのような、あちらの魔女の情報じゃない?」
「もしかしたらー行き来した人がいたのかもしれないわ」
ムウとルグヤは魔女の話題で盛り上がっている。盛り上がりながらも、ルグヤの話をまとめ、希望する物を聞き出している当りが流石だった。
「ただいま」
「あら、あなた。ヒイちゃんは?」
「いるよ」
イツが家に戻って来て、後ろに隠れてしまっているヒイを見やる。
「お母さん、何?」
「ナナとルグヤ君の家の希望を聞いたわ」
「ありがとう」
まとまっている紙を見て、頷き今までと同様に模型を作る。
「まあー」
「凄い」
精巧に出来ている模型の扉を開けたり、屋根を持ち上げ中を覗いている二人が感嘆の声を上げる。
「驚くのはこれからよ」
ミハそっくりに、自分の事のように誇らしげに宣言するムウを先頭に外に出る。一緒にアキとヨツも付いてくる。二人は慣れたもので、ヒイの代わりに効果音付きで表現してくれた。
「「どーん!!」」
実際は音などなく、模型と寸分違わぬログハウスが、たった今出て来た家にくっ付いて建っていた。
「わー」
「えっ」
魔女も心底驚く、ヒイの感嘆に値する能力だった。