180.玄関
フランの神妙なヒイへのお願いから、リガルの部屋が急遽作られていく。
「ヒイさん。新しく、くっつけて作れる?」
ヒイは少し考えて、前回と同じように模型を作り出す。そこで一回の廊下に扉を作り、また別に両側に扉がそれぞれ付いた小部屋を作成しくっ付ける。
「こういうこと?」
「そう!」
フランは考えたことが直ぐに形になり大喜びだ。見ていたケイが、何故か二つ付いている扉について聞いてくる。
「これ、別に玄関が付いているのか?」
「リガルさんもお仕事があるから、自室から直接出入りできた方が良いかなと思って。そこはリガルさんに聞いてみて」
「分かったー」
「そういうことか」
「お部屋の好みもね。お風呂とか小さい台所も別に作れるよ」
「・・・それ、何時でも一人暮らしが出来るし切り離せるだろ」
ヒイの言葉を正しく理解したケイが、楽しそうに家具について悩んでいるフランに聞こえないように呟いた。それにヒイはにっこり笑って答える。
「鍵と扉の細工も、ちょっと考えているから心配しないで」
「心配は無い」
きっぱりしたケイにヒイが今度は微笑むだけで返し、とんでもない家具を考え出しているフランを止めるように促した。
「フラン。お前、それどこに置くんだよー!」
その声を背後に聞きながら、今度は自分たちの家の番だと待ち構えている両親を見る。
「ヒイちゃん。模型、とっても上手いのね」
「ああ。でも、本当に家を作れるのか?」
「お父さん、お母さん大丈夫だよ。ここにある家、全部、お姉ちゃんが作ってくれているんだから」
「どーんだよ!」
何故か誇らしそうにするミハとアキに、取り敢えず希望を出していくヨツとムウ。それに遅れつつ自分の希望も出すイツ。
「滑り台、欲しい。ブランコも!」
「ヨッちゃん、家の中に欲しいの?」
「うん。外にも」
「分かったよ」
「食洗機は欲しいわね。あと、家庭菜園もやってみたいの。コンポストとかは作れるの?」
「大丈夫」
「あ、お父さんも自分の部屋というか書斎が欲しい。重厚な洋風で」
子供達が納得顔をする。イツは昔ながらの洋風な書斎や応接間に憧れている事を、何度も聞かされていたので。
「お父さんの部屋というか希望は、洋風の別棟を建てようか? それとも自分でやってみる? お父さんだったら多分、出来るんじゃないかな?」
「本当か? 出来るならやってみたい」
「じゃあ、お母さんの希望からね。私達と同じ外観で良い?」
「ログハウス? いいわよ」
「ルグヤさんとヤグロ君の家はどうする?」
ルグヤとヤグロは、今日は二人で魔女の店に出掛けていた。二人もここに住んでくれることは決まっているので、家は後日希望を聞くことになった。