178.二人で二つ
ヨツは考えていた。結婚式を見ていない。見たい。絶対、綺麗だと。
「結婚式、見たいの」
「アキも見てない」
「アキも?」
「うん。ヨツも見たいよね」
「うん」
二人は揃ってニカに詰め寄っていた。
「「ニイちゃん。やって」」
「そうだねー。テレーズの赤ちゃんが元気に生まれてからね。それまで、どんな衣装が良いか、一緒に考えてくれる?」
ヨツとアキは顔を見合わせて頷いた。
「そうだねー」
ヒイが虚空を見つめている。三人にこちらではどんな結婚式があるのか聞かれたため、色々調べていた。そこへミハも現れる。
「私もやるー。フランも誘おうよ。お姉ちゃんはどうする?」
「私はクロ君がもう少し大きくなってからでいいかな」
「え? クロ君、大きくなっているけど、あれは違うの?」
「まだ成長期らしいよ。身体の大きさは変えられるんだって」
「へー。会った時は子狼だったしね」
ミハが感慨深げに感想を述べていると、アキが尋ねて来た。
「ミハちゃん。ケイも誘う?」
「うーん。難しいお年頃だからね。きっと、お姉ちゃんと一緒の時の方が良いかも」
「分かった」
アキも理解できるのか大人しく納得した。
「ケイも結婚してるの?」
ヨツが聞くと、アキが神妙に答える。
「微妙な関係なの」
「仲良し?」
「そう。仲良しなのに」
二人は心底不思議そうに首を傾げ合い。今度は自分たちの結婚式をどうするかを話し合い始めた。アキが問い掛け、ヨツが答えている。
「ドレス着る?」
「うん」
「着物は?」
「着る」
「お得だね」
「うん」
「え? 何がお得なの?」
二人の会話にミハが突っ込んだ。
「「四種類着れるから!」」
「そうなんだー」
さっぱり訳が分からないが、とりあえず返したミハにヒイが解説に入る。
「アキちゃんとヨッちゃんは二人で二つ?というのかな。それぞれ別だけど、お互いでもあるというか。だからアキちゃんがタキシードを着たら、ヨッちゃんも着た気になるし、逆もそうみたいだよ」
「へー。というか、着物はあるの?」
「マロウさんの周辺の国にあるかなー? 無かったら、作ればいいよ」
簡単に解決したヒイに、ミハはいつもの事ながら呆れた瞳を向けた。