177.めでたい
ニカは今日も具合が悪そうなテレーズを心配していた。
「テレーズ、大丈夫?」
「・・・ええ」
言葉は少なく、顔色も悪い。
「トオさんに見て貰おうか。随分、長く続いているし」
「そう、ですね」
二人揃って具合が悪い心当たりが無く、とうとうトオに見て貰う事にした。
「じゅんちょうですよ」
「はい?」
「テレーズさん、つわりがまだ続いているようですね。食べられそうなものはありますか?」
「え?」
トオの言葉が難しかった場合のために一緒にいて貰ったヒイが、決定的な言葉を告げる。ニカとテレーズが固まった。思ってもみない事柄だったのだ。
その二人の反応にヒイが訝しがる。
「ニイちゃん、もしかして・・・?」
「考えていなかった・・・。全然気が付かなくて、ごめんね。テレーズ」
ニカがテレーズと向かい合い、手を取り合う。病気かもしれないと思っていたのが一転して、幸せに包まれる二人の世界を作り上げた。
「いえ。私も気が付かなくて。赤ちゃん。とっても、嬉しいです」
「私も嬉しいです。身体、これまで以上に大事にしていこうね」
「「「なにー?」」」
ミハ、アキ、ヨツがやって来て、二人の世界に飛び込んだ。ヒイがニカとテレーズに視線で確認する。二人が頷いたので、三人に告げる。
「テレーズさんの体調不良は妊娠でした。私達の甥っ子か姪っ子が産まれるよ」
「やったー!」
「「わーい」」
「ニイちゃん、お父さんとお母さんに言ってきていい?」
「ああ。私も行くよ。テレーズはゆっくりしてて」
「はい」
「ニイちゃん、お父さんとお母さんに言ったら、フレーズさんの所へも連絡して。もう少し気分が落ち着いたら、テレーズさんとも一緒に行って来ると良いよ」
「そうだね。ポンドもいるからテレビ電話を持って行っても良い?」
「テレーズさんもフレーズさんから話を聞けた方が良いだろうしね。ちょっと、工夫しておくよ」
「お願い」
「ニイちゃん、行こう」
声掛けと同時にミハが駆け出している。