175.しがない
「「「お父さん・・・」」」
「お父さんは、しがないサラリーマンだったからさ」
イツが言い訳をしているが、ミハ、アキ、ヨツからの残念な視線が注がれ続けている。
「そうだよー。お父さんのお陰で不自由なく生活できていたんだから、今度はお父さんを手助けしてあげるべきでしょう」
「ニカ・・・」
イツの悲し気な反応に、小声でヒイがニカに告げる。
「ニイちゃん、肯定しちゃってるよ」
「あ。お父さん、ごめん」
「・・・うん」
「お父さんに向いていることって何だろうねー」
ニカが軽く謝り、ミハがイツの落ち込みを気にせず考えている。
「お父さん、疲れてる?」
「え? アキちゃん、そりゃー、元気いっぱいとは言い難いけど・・・」
じっとイツを見ていたアキが唐突に聞き、困惑気な答えが返される。
「こっち」
「ああ、お父さんを被験者に!」
「ミハちゃん?」
イツの悲鳴のような声が遠のいていく。誰もが慌てず、マッサージ樹の部屋に向かう。
「あ~~~」
ミハがアキを賞賛している。
「アキちゃん。凄いよ。これでお父さんが元気になって、若返った感じになれば、効果は抜群だよね」
「アキ、凄い?」
「うん。いい考え!」
「やったー。ヨッちゃんもマッサージ樹やる?」
「あれ、なに?」
ヨツが怪しいものを見るように、イツを見てアキに聞き返す。
「あ~ってやるやつ。アキもやったよ。気持ちいいよ」
「ほんと?」
「うん。ヤッくんもやる?」
「僕?」
流石に及び腰になるのが感じられたのか、アキが実践した。
「こうやるんだよ。あ~」
「お姉ちゃん。アキちゃん、大丈夫なの?」
ここで頼る相手がヒイな所は、末っ子はしっかり分かっていることを感じさせる。
「大丈夫だよ。息は出来るし、ちょっとふるふるして気持ち良いよ」
「うーん。やってみる。あ~」
「・・・僕も」
恐る恐るヤグロも参加した。これで、四人は暫く帰ってこないだろう。