168.祝宴
「はい。フランさんは結婚しましたので、軽く、再開と結婚のお祝いで食事会をしましょう。正式なお祝い等はまた日を改めて」
ヒイがにっこり笑い。リガルは硬直したままだが、頷く。
「おい。誰が、聞く?」
「うん。聞かない」
「いいのか?」
「うん。無理」
ケイがミハを突くが、その他の人も皆、沈黙を貫く。誰もが賢くも空気を読み、どんどんお祝いの食事会の準備が整っていく。慌てて、フレーズの所に泊まるはずだったテレーズとマルク、ポンドもリガルを使い呼びに行く。お客様の五樹、六実、ナナ改めルグヤ、泰、運搬係を務めた後のリガルとフランも持て成される側なので、着席している。
こちらとあちら、様々な料理が入り混じり食卓がいっぱいになると、全員が立ちヒイに伝えられた乾杯の姿勢をとる。
「フランさんとリガルさんの結婚祝いと、両親と秋ちゃん、ルグヤさん、泰さんとの出会いを祝して乾杯!」
リガルの部分だけが弱く誤魔化されたような気が全員したが、気にせず杯をぶつけ合う。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「乾杯」」」」」」」」」」」」」」」」」」
全員がとりあえずリガルには触れずに、お祝い気分で盛り上がる。但し、お酒は無しで。
「リガルさんは、今日はこの辺で。お仕事も忙しいでしょうし。フランさんはしっかりこちらで預かりますから。フランさん、送ってあげて」
年少組が眠そうにし始め、会はお開きとなった。それを切っ掛けにヒイはリガルに伝える。リガルはぎこちない動きで頷きなんとかその声に従い、フランに見送られて出ていく。
「やっちまったな」
「浮かれたのであろう」
「でもよ」
フランから一歩遅れて、一緒に見送っていたケイとマロウが話し合う。そこへフランが見送り終わり、振り返って問い掛ける。
「なにー?」
「何でもねぇ。旅行どうだった?」
「あのね、凄いんだよ。びゅっんって」
「あん? それじゃぁ分かんねぇよ。」
「うんとね、あのね。そこからぱって、それで、どーんと」
「はは。相変わらずだな」
擬音だらけで全く分からない説明を笑いながら聞きつつ、マロウとは家の前で分かれ別々に帰る。夜遅くまで久しぶりの二人の話は尽きなかった。