163.同じ
「こんにちは」
「お待ちしていました」
顔を合わせると商談ばかりしている二人の為、会うと稲妻が走るかのようだ。ケイがその様子にふるっと震え、それをマロウが心配そうに見つめる。
「なんだ?」
「いや」
「別にビビった訳じゃない」
「ああ。そうかもしれぬな」
「信じてないだろっ」
ケイがマロウを見咎めて突っかかるが、遠くでヒイに呼ばれ中断する。
「行くよー」
「仲良くなった?」
サラナサが久しぶりのケイとマロウに問い掛ける。
「はあ?」
「今までと変わらぬと思うが」
「ふーん」
少し離れていただけだが、違いを感じることができるようになった自分に、サラナサは満足し、それ以上は何も言わなかった。
「こちらにお願いします」
ヒイ達が案内されてきたのは見たことがあるような作りの部屋だった。
「同じじゃねぇ?」
ボソリとケイが言うくらい、モックの村にあったマッサージ樹の部屋と同じだった。しっかりした丸太づくりの小屋に腰掛けが付いていたり、寝転がったりできるような台が置かれている所までそっくりだった。
聞こえていたかのようにルドッセが部屋の説明を始める。
「こちらはどんな季節でも快適に過ごせるように、こちらから魔道具で室温を調整しています」
胸を張るルドッセだが、暖炉が無いだけの違いしかない部屋に、何を言えば良いのか顔を合わせる。
ヒイ達の薄い反応を物ともせず、モックに近付くことに変更したルドッセはまた答え難い話題を持ってくる。
「モックさん。お仕事はどうですか? この部屋どうでしょう? 住みたくなったりしませんか? 一緒に何て、きゃー!!」
「・・・」
モックは黙ってマッサージ樹を椅子に出した。それに、クロ以外の袋を持っていた皆が倣う。クロはいつもの子狼姿で、袋を持っているため腕に抱いて貰うことができないヒイの肩に捕まっていた。