158.交渉
「ルドッセさん、そちらの方は?」
「母です」
ヒイが前に出たことにより、来訪した女性二人の視線が注がれる。
「ルドッセと同様に商いをしております。キナッケです。是非、私にもこちらの商品の取り扱い許可を頂きたくお願いしに参いりましたの」
内心、マロウさんのお化粧顔を思い出すなーと暢気な事を考えながら、別方向へ聞き返す。
「ルドッセさんの御意見は?」
「私ですか?」
「ええ。最初に契約したのはルドッセさんですし、他の商品の取引もお願いしている、言わば、この村の専属の商人さんと言っても過言ではない方の御意見を伺いたく」
「っ!」
ルドッセはヒイからの最初の洗礼に慄きつつも答える。
「美容系に関しては私以上の販売範囲を持っております」
「はい」
ヒイの簡素な返事が更なる要求をして来ていることをひしひしと感じる。同時に母親からもだ。ルドッセはヒイと同時に母親をも相手取らなくてはいけなくなっていた。
「私がモックさんの村の商売を一手に引き受けさせて頂けるならば、私から母キナッケへと売るということではどうでしょう?」
「そうして頂けると助かります。それほど交渉できる者がいる訳では無いので、ルドッセさんが取りまとめて下されば、その他の商品へ力を注げます」
ヒイは商売人相手に、商品と引き換えの交渉を行う。買って貰わなくても成り立つからこそできる力技だ。ルドッセが話している間は口を開かなかったキナッケだが、決着が付いたと見るや話しだした。
「素晴らしい手腕ですわね。ルドッセを通して商品に関しては要望を入れさせて頂きますわ」
「はい。こちらこそ。キナッケさんはもうパックは試されましたか?」
「まだですの。娘の顔を触って即座に飛び出しましたから」
「こちら、お近付きの印にお試でどうぞ。良ければ、また別の商品もルドッセさんと見て行かれませんか?」
モックは交渉して貰っているので黙っていたが、この短時間でどうやって行き来したのか非常に気になっていた。だが、ルドッセ達に尋ねるのは怖いので、後でこっそりヒイに聞こうと決める。
ヒイが外で遊んでいた面々をモックの村のマッサージ樹の部屋に集め、寛いでいる様子をルドッセとキナッケに見て貰う。
「あ~~」
「これは!!」
「まあ!!!」
初めて見た二人はとりあえず驚いている。何が起こっているのか分からないので仕方が無いが、驚愕の光景だけは広がっていた。