155.強
ルドッセは名残惜し気にしながらも、売れると分かっている商品を手に意気揚々と帰っていった。
「お姉ちゃん、眼鏡ってあるの?」
「さっきの人かけてた」
ミハといつの間にか戻って来ていたアキが質問を溢れさせる。
「あるみたいだねー。かなり高級品だし、視力の矯正だけでは無いみたいだよ」
「何が見えてるの?」
「高いんだって」
アキがトオに驚いたように伝えている。
「色々な種類があるみたいだけど・・・。鑑定的な能力が付いた物が多いのかな」
「色々かー」
「へー」
「ダンジョンで出たりするらしいよ」
「お姉ちゃん、またダンジョン行こう!」
「うん。いいよ。ダンジョン凄いね。あれ? じゃあ、あのルドッセさんって強いの?」
「中々ね。そうじゃないと、一人で行商は難しいね」
「うわー。モックさん、大丈夫なの?」
「・・・どういう意味だ?」
モックが挙動不審になる。アキは首を傾げている。
「うーん。色々。でも、さっきまで大丈夫だったし、平気だよね」
「なあ、待ってくれよ。どういうことだ?」
「気にしない、気にしない」
ミハが深刻そうに問い掛けておきながら、あっさり流す。
「大丈夫。お兄ちゃんは私が守るから」
「頼もしいね」
「モーリン。なにからだ? 俺はなんで守られるんだ?」
モックがおろおろする中で、ミハはまた違う所に疑問を持つ。
「ルドッセさんって、どういう風に強いの?」
「上手く逃げられる力を持っているようだよ」
「鬼ごっこ、一緒にやりたい!」
「確かに上手そうだね。今度、一緒にやって貰おう。アキちゃん」
「おにごっこ?」
モーリンが聞き返す。
「モーリンはしたこと無い?」
「はい」
「一緒にやろう?」
アキがモーリンを促す。
「ここで、できるの?」
「ちょっと広い所の方が良いから、外でやろう。説明もするよー。あ、お姉ちゃん、クロくんも参加してもらっていい?」
「クロ君も協力してあげて」
「クー?」
「ニイちゃんと一緒にいるから大丈夫だよ」
「テレーズも一緒に遊んでおいで」
「遊びなのですか?」
「そうそう。テレーズも行こー!」
「トオも!」
モック、ヒイとニカの三人のみが残り、後は鬼ごっこに駆り出されていった。