150.怖い
「面白い!」
「お姉ちゃん。私のお肌プルツヤじゃない?」
「なってるね。その方向で良いけど、呼吸の仕方は要検討だね」
揃って顔を上げた二人の充分に楽しんだ顔に、ヒイも笑って答える。マッサージ樹の大体の使い方を検証したので、サラナサが代表して、モックのいる村に持って行く。
「これは、植物。これは植物」
サラナサが唱えるように、水分を含ませていないマッサージ樹のふわふわを毟っている。
「サラナサ、そっちの方が怖くないか?」
同様に梳る様にふわふわを採取しているケイ。
「あ! なに! そんな方法あるの?」
毟るよりも気持ちの抵抗が少ない方法を取っているケイに、詰め寄るサラナサ。
「・・・ああ。ヒイさんが、穏便な方法って。痛覚がある訳でも無いし、すぐ戻るから大丈夫だって言ってたけどよ」
サラナサの鬼気迫る毟り具合と、穏便な方法を見て詰め寄ってくる様に、引きながら答えるケイ。
「ううう。そうだけど、毟るのはなんか・・・」
「ほれ、櫛。モックの所でこれも、作っているんだろ?」
「そう。これはマッサージ樹用?」
「いや、髪の毛用を専用にしたってさ」
「そうだよね。頼む暇は無かったもんね」
サラナサが返事をし、二人は暫し無言で櫛を動かし、マッサージ樹のふわふわを集める。
「和紙って丈夫だな」
「そうなの。色々使える紙を作れるなんて思ってもみなかったから、嬉しい」
「白い顔型はビビるけど」
「息をしようと思ったら、仕方が無いよ」
二人は白いお面のような形の和紙に、マッサージ樹のふわふわを並べ、同じ和紙で挟んで水を掛ける。
「効果はあるよな」
「ビックリした。あの冒険者ギルドの人達の効果」
「おっさんたちがテカテカじゃなくて、プルツヤだもんな」
「周りの女性陣の反応が凄まじかったね」
「ああ。あれで、売れたな。ポンドの笑いが止まらなかったぜ」
「店でも売っているんでしょう?」
「そっちも、飛ぶように売れているってよ」
二人は手を動かしつつ、美容と商売の怖さを語る。
「でもよ、ヒイさんが言ってた商売人はポンドじゃないよな?」
「多分ね。勿論、ポンドにも売って貰うつもりはあったと思うよ」
「それよりヤバい商売人か」
「私達は作るのみよ」
「だな」
二人は静かに頷きあって、更に作業の手を速めた。