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15.仕事をしましょう

 冒険者ギルドまで、年少組三人を保育園で使われるようなカートに乗せて押してきた。一人ずつ背負っても良かったのだが、ニカとミハが帰りに疲れ切っていると大変だろうということで、急遽ヒイが作ったのだ。門でも全員が金色のカードを出し、かなりの衆目を集め、現在進行形で非常に目立っている。


「こんなことなら、看板を付けて歩けば良かったね」

「それもまた目立つね」

「宣伝効果抜群だよ」


 三人はカートを押しつつ暢気に歩いて進んでいく。今日のスキル構成はヒイが鑑定、完全防御、家内安全、書道とした。ニカとミハ、アキは変わらずで、クロとトオも付け替えができたので、クロは敏捷、察知、咆哮、隠匿、トオは飛行、感知、治癒、透明を付けた。

 ミハは途中までヒイの説明を聞いていたが、とても詳細に語ってくれたので、何かちょっとずつ違うんだなということで理解した、ことにした。ニカは早々に逃げている。自分でスキルを付け替えて、鑑定してみればいいだけだとは言わなかった。

 冒険者ギルドにつくと、ヒイの準備を手伝っていたミハが文字表を見て言った。ニカも続く。


「五十音?じゃないんだろうけど、文字が違うのに気が付かなかったー」

「言葉も分かるしね」

「ステータスを見たら、色々な項目があったよ。特殊とか職業とかね。その特殊に日本語化が付いてたよ」

「それでか!」


 ニカがポンと手を叩く。それに、ヒイが答える。


「そうみたい。気が付いてよかったー」

「でも、これもひらがなの五十音にしか見えないよ。ちょっとずれているような気がするだけ」

「鑑定で見なかったら、私もミハちゃんと一緒だよ。さて、ニイちゃん、ミハちゃん、お手伝いありがと。もう、仕事を受けに行って大丈夫だよ」

「うん、お姉ちゃんも気を付けてね」

「何かあったら、受付の裏に逃げるよ」


 そう答えたヒイに、仕事の一覧を遠目で見ていたニカが安全、安心な方法を取る。


「そうして。あ、仕事に入る前に、私たちに良さそうな仕事を見つけていってくれると助かる」

「ニイちゃん、いい考え!」

「はいはい。教室の設営も手伝ってもらったし、スキルを付け替えてると目立つしね」


 後半は二人にだけ伝えるように言うと、二つの仕事を指さした。


「「行ってきます」」


 仕事に行った二人を見送って、午前中は様子見として個人の教室開催のため、冒険者ギルドの空いた一角を使わせてもらっていた。大半の人がちらりと見るが、また視線を戻す。


「うーん。集団の予約受付もしているって書いておこうかな。あとは・・・」

「なあ、本当に金色なんてなるのか?」

「え?」


 ヒイが一人作戦を練っていると、訝し気な冒険者見習いの子がいた。全体的に薄汚れているが、目は爛々と輝いている。


「なりますよ。ほら」

「!!本物!初めて見た。法螺だと思ってた!!」


 ヒイが出した冒険者身分証明書、金色になった冒険者カードを持っている手元を覗き込む。ヒイは大事なものは年少組三人の間に預けているので、何か摺られても大丈夫だ。冒険者カードだけはしっかりと持つ。自分は小さい子に弱いと思われているんだろうかと、内心思う。


「それ、おやつ。一つ食べる?」

「!」


 案の定、鑑定で摺りと出ていたが、宣伝してくれたのでまあいいかと思って、紙に包まれている摺られたマフィンを指さし、提案してみた


「私が作ったの。宣伝を手伝ってくれたお礼。折角だし、無料お試で集団指導を受けていかない?」

「な、なんだよ!」

「いや、別に脅迫してる訳じゃないから、どうかなーと思っただけ」

「・・・文字」

「え?」

「文字、書けるようになるか?」

「名前だけじゃなく、読み書きもやりたいの?」

「でも、金は無い」

「ふむ。知り合いの方とかで色を変えたそうな人とか知っている?」

「俺は信用されてないから、無理だぞ」

「ああ、勧誘じゃなくて情報だけでいいの。声は私から掛けるよ。何人の情報をくれる?他言はしないよ。それによって、文字の練習時間が増減します」

「・・・20」

「この2、3日に来そう?」

「それは分かんねぇ」

「よし、とりあえず、あっちに座って。説明するから。2日は練習していって。トオさん、お願い。冒険者カードは明日、書こう」

「! いいのか」

「うん。練習している人がいるのも宣伝になるからね」


 摺りの子は無表情ながら頬を真っ赤にして喜んでいた。感謝は言葉にならないようだったので、ヒイは別のことを聞いた。


「お名前は?」

「ねえよ」

「無いってこと?」


 無言の頷きが返ってくる。


「もう一日追加ね。今日は練習の前に自分の名前を考えること。そして、教えて。私たちに呼ばせて?」

「そんなに、なにも、返せねーよ」

「そんなことないよ。教室の実績となります」

「はぁ?そんなもんが何になんの?」

「ゆくゆくはお客さんの増加に繋がります。そして、お金が増えます」

「へー」


 胡散臭そうに見つめてくる子に、問い掛ける。


「あなたは名前に何を込めますか?」

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