149.水中
一方のエルディランドゥはプルプルしたマッサージ樹を繁々と眺めている。クロはちょんと触っては震える様子に、飛び退いて、また触ってを繰り返す。マロウはつんつんしていた。
思い思いにプルプルマッサージ樹を楽しんでいると、大胆な者が出てくる。
「ミハ」
エルディランドゥがミハの両肩を掴んでいる。ミハがプルプルマッサージ樹に顔を埋めたのだ。どうやら最初はアキがやろうとし、それを代わりにミハが行い、驚いたエルディランドゥがミハを引き上げた流れで思わず出た声だった。エルディランドゥの慌て様には気付かず、ミハがアキに感想を言う。
「アキちゃん、これ良いよ」
「息できる?」
「ぷはってなるから、できてないね。水中みたい」
ヒイも近寄って来た。
「ミハちゃん、アキちゃんの前に試してくれたの?」
「お姉ちゃん、そうだよ。どう? お肌プルプルじゃない?」
「うーん。一瞬だったからね。エルディランドゥさんをまず、安心させてあげて」
心配気におろおろしているエルディランドゥにミハを託し、呼吸をどうしようか悩む。
「お姉ちゃん、アキもっ」
「アキちゃん、まだ泳げないでしょう? 呼吸の仕方を・・・。ああ。精霊さんに水中でも息が出来るようにお願いしてみたらどうかな? 必ず、両方で呼吸できるようにお願いするんだよ。トオさんも確認お願いします」
「それで、だいじょうぶだとおもいます」
「水中でも息ができますように!」
そう言うなり、ぷりゅっと顔をマッサージ樹に埋める。ヒイとトオがハラハラしながら見守る中で、アキがマッサージ樹を手で支えて顔を上げる。水中のようなマッサージ樹の中でも目をぱっちり開けて、口を開く。
「もももがもも。も?」
「息は出来ているみたいだね。水中にいるような感じだから、話すのも聞くのも難しそうだよ。聞こえる? アキちゃん」
「もも?」
「アキ、いちどはずしましょう」
トオが身振り手振りでマッサージ樹を外すような仕草をする。
「あれ? 聞こえた?」
アキが耳まで覆っているマッサージ樹から、ようやく顔を離す。
「おおっ。アキちゃん、ツヤピカだー! まあ元々、若いからな。うーむ」
ミハがエルディランドゥを落ち着け、早速、アキの様子に歓声を上げる。
「ミハちゃんもやる? アキが精霊にお願いしてあげるよ」
「本当? お願い」
「はーい」
二人は揃って顔を埋めた。埋めた二つを近づけて、一つにするように動く、アキとミハ。
「くっつくかな?」
外から見るヒイが疑問に思う中、プルンと一つになった。
「なりましたね」
トオが感心する。二人はマッサージ樹の中で話が通じるのか、そのまま笑っているかのように震えている。待つ事、暫し。
「「ぷはっ」」