143.再び
「ダンジョン~。マッサージ樹を取りに行こう!」
アキが一人で盛り上がっているが、前回と同様に六人でダンジョンに入り、アキ命名の「マッサージの樹」、略して「マッサージ樹」を取りに来ていた。略すというのか、命名がそのままというか、上のきょうだい三人はそれについては一言も触れなかった。
取って来たその日に出来たマッサージ樹部屋で、ケイだけが突っ込んだ。
「おい。まっさーじ樹ってなんだ? 樹の一種か?」
「機械なの!」
「きかい? それ、なんだ?」
「動くの」
「まあ、こいつらも動いているしな」
何故かアキの説明が成り立ってしまい。もう、誰も疑問を挟まなくなったので、定着してしまったのだ。マロウは最後まで首を傾げていたが、賢明にも口を開かなかった。
そして、この植物は草っぽいが樹と命名され、それぞれの家に一部屋ずつ、マッサージ樹の部屋が作られることになった。全員が虜になったのだ。そこでマッサージ樹が足りなくなり、すぐに増やすことも難しく、また最初の狙い通りに、モックの村にも持って行って活用してもらおうと、再びダンジョンに入ることにした。同じ隠し部屋に入るために、前回となるべく変わらない条件で挑んでいる最中だった。
「クロくん、活躍するなー」
「前回と同じ感じでってお願いしたからね」
「トオさん、アキちゃん、何か聞こえてきた?」
「いえ」
「聞こえない・・・。あっ!」
アキが何かを発見したようで、エルディランドゥが警戒する。
「あれ? 何か、漏れて来ちゃってる?」
ミハにも見えたようで、それはたんぽぽの綿毛のような、正しく探しているマッサージ樹だった。
「一つだけだね。はぐれちゃったのかな?」
ヒイが辺りを探すように見るが、ふわふわしているのは一つだけだった。それは天井辺りから降りてきて、クロの鼻先へくっついた。
「くしゅん」
クロの可愛いくしゃみだが、勢いがあったのか、一つだけのマッサージ樹が吹っ飛んでいく。
「飛んだー」
「飛んだ?ね。お姉ちゃん、エル、追い掛けていい?」
「大丈夫。エルディランドゥさんも一緒に行って下さい。私達も追い掛けよう」
「このさきですね」
「はーい」
クロは自分で走った方が早いが、ヒイに抱き上げて貰って、周りの安全を守る役目を負う。くしゃみが出るとどうしても鼻が気になる。ヒイに走るのは任せて、警戒を怠らず、むずむずを擦って誤魔化した。