142.あ~
アキからくぐもった声が聞こえる。
「うん~~。こっち~向き~~。あ~~」
「サラナサを呼んでくるね」
早速、ニカが動く。アキは呼吸が出来ているようなので、気が済むまで好きにさせることにして、この様子を見せるためにサラナサを呼びに行った。
「なに? どうなっているの? なにごとなの?」
サラナサが部屋に入るなり叫んだ。危険性と共倒れ回避のため、ヒイ以外がふわふわ植物に顔面から埋もれて、声を出しているのだ。
「あれ? 皆でやってるの?」
「そうなの。気持ち良いみたいだよ」
「息は苦しくないの?」
「植物だからかなー。酸素でも出てるのかな? うーん。少量?」
サラナサを呼んできたニカとヒイが暢気な会話を繰り広げる中、サラナサは真剣に視だした。
「じゃあ、私も」
まず手から行く、ニカ。ぼふっと音がするかと思ったが、壁にうっすら重ならずにくっ付いているだけなので、埋もれに行くと考えると危険なようだ。
「あ~」
ニカからも思わず声が漏れる。
「分かった!」
サラナサからも喜びの声が上がる。もう、ヒイ以外には聞こえていないだろう。
「どう?」
「声で震える」
「うんうん」
「それ以上は・・・」
「そうみたいなの。思わず声が出る程、気持ち良いらしいし、それが絶妙な振動を生んで更に至福の時だって」
「へー」
「サラナサさんもやってみたら?」
「う、ちょっと勇気いるね」
「見た目はね。ニイちゃんみたいに手から行って、片手を上げて貰えれば、直ぐに引き上げるように待機しているよ」
「それなら・・・。あ~」
サラナサも埋もれたままになる。手は上がらなかった。
「やっぱり、凄く気持ち良いんだね。これで一部屋作ろうかなー。もう少しダンジョンで分けて貰ってこようかな。それとも増やせるかな?」
「あ~」の合唱を聞きつつ、全員の安全管理を怠らずに、ヒイが考え事を独り言として呟いていた。