140.隠す
隠し部屋を見つけて入ったというか、腕だけ差し込んだことで冒険欲が満たされたのか、アキ達は帰ることにした。ふわふわ植物を詰められるだけ詰めて、パンパンになった袋をエルディランドゥが担ぐ。この荷物で更に冒険とは誰も言わなかった。
「エル、軽い?」
「軽いような・・・」
エルディランドゥが不思議な答えを返す。見るからに軽そうだが、嵩張る袋をミハも下から支えてみる。
「ん? 確かに、重いような、軽いような? 変動してる?」
「アキも」
アキも手を伸ばす。そのアキの触れる位置に降ろしてやるエルディランドゥ。その優しさを微笑みながら見守る、ミハ。
「かる? おも?」
「膨らんだり、縮んだりしている訳じゃなさそうだよね?」
大きさが変わらない袋を見守るミハに、ヒイが言う。
「不思議植物らしいよ」
「確かにね。そもそもなんで、ノックで開くようになっているの?」
「人の側にいることが多かったからなのと、安全に持ち出してもらうには人が良いと思ったかららしいよ」
「へー。でも、最初の音が聞こえなかったら駄目だよね?」
「そこが、ここまで増えてしまった要因だね」
ミハは残念そうな顔をするだけに留めた。その代わりにクロへ向かう。
「クロくん。圧勝だよ」
「クー」
褒められたのは察知したのかクロが高らかに鳴いてみせた。ミハは言わなかったが若干、残念な植物のようだった。
そこで人が増えてくる気配を感じとったエルディランドゥが、ヒイに確認を取る。
「これはこのまま持って帰っても大丈夫だろうか?」
「そうですね。何かで覆い隠しますか」
全員が辺りを見回している所で、ふわふわ植物から少し離れたヒイにミハがこっそり聞く。
「お姉ちゃん、このふわふわは高く売れたりする?」
「どうだろう? 使い道が難しいよね」
「そっか。布団とかにどうかなと思ったんだけど・・・。重くなったら苦しいよね」
「一定じゃないのが辛いね」
二人はこそこそしながら、適当なものが無かったので、ヒイが錬金術で出した蔓植物で隠した。