138.大丈夫
「それで、何があるの?」
ミハはクロを甘やかすヒイを気にせず、切り込む。
「行ってみようか」
「危険はないのだろうか?」
エルディランドゥはしっかり心配する。顔を見合わせたヒイとトオは、揃って頷く。
「大丈夫だと思う」
「だいじょうぶでしょう」
アキが不思議そうに二人を見る。ミハがすかさず突っ込む。
「なんか、逆に大丈夫じゃなさそうだよ」
「見れば分かるよ。大丈夫。行ってみよう。この先、あっ」
ミハの姿が一気に小さくなる。慌てて全員で追う。
「ミハちゃん、ずるいー」
「アキ」
トオがミハの後を追って走る、アキの腕を掴んで止める。
「ミハっ」
エルディランドゥも同様にミハの前に立ち塞がった。
「エル?」
「行き止まりだ」
「え? 危なっ」
ミハがヒイの言葉を信じて突っ走った結果、ダンジョンの壁に激突する所だった。
「あれ?」
アキも不思議そうに壁を触る。
「行けそうだったよね? アキちゃん」
「うん。真っ直ぐだった」
追いついたヒイが、二人が直進できると思っていた道の種明かしをする。
「幻術だよ」
「わー。でも、この先なんだよね? 音が聞こえるの」
「そうだよ。さて、問題です。仕掛けはどこにあるでしょうか?」
「ヒントは?」
「ヒントは音」
「音―?」
ヒイをミハとアキが質問攻めにする。
「音は何で出来ていますか?」
「確か、振動」
ミハが記憶を振り絞る。
「正解です」
「揺らす!」
「惜しい、アキちゃん。他に振動を伝える行為は?」
「・・・」
考え込むアキに更に助け舟を出す。
「トイレは?」
「入ってまーす」
「ミハちゃん・・・」
巫山戯ているようだが、至極真面目な様子のミハに惑わされずに、アキが答える。
「ノック!」
「当たり」