137.中へ
ダンジョンに行く前に色々あったが、とりあえず両親のことは時期が来たらという事になった。後回しとも言う。準備が必要で、アキが冒険に行きたい所から始まったので、それを叶えてからという事になった。
ダンジョンの中で、しょんぼりとしているのは、アキとミハだ。入った時はご機嫌だった。
「ミハちゃん。獲物ないねー」
「そうだねー。クロくん張り切っちゃったよね・・・」
活躍しすぎのクロにヒイが声を掛ける。
「クロ君。とっても格好良かったよ。ミハちゃんとアキちゃんにも活躍の場をくれる?」
「クー」
ぎゅっとクロを抱きしめたヒイが二人に目配せする。
「行くよ、アキちゃん!」
「トオも」
「はい」
エルディランドゥが警戒気味に続く。他に冒険者がいない且つ、獲物の危険度が低く、集団で襲い掛かってこない場所の選定に忙しい。ダンジョンは余程の事が無いと崩れることは無いが、出入り口が一つしかないような小さい空間は要注意だ。
「火は禁止!」
ヒイの声が飛ぶ。魔法で出した火だけであれば大丈夫だが、燃焼すると危険だ。酸素が消費され、酸欠になる。そのための注意だった。
「だって。アキちゃん。火、以外の札は持ってる?」
「うん。水と、土と風」
「うーん。風は飛び散るから、水か土にしない?」
「いいよ」
二人は額を突き合わせて相談中だ。どれがお金になる等、真剣だ。エルディランドゥは微笑ましく見ながらも、周囲を確認中している。
「トオ?」
「トオさん?」
アキとヒイが同時に問い掛ける。
「なにかきこえたようなきがして」
「え? 今も、聞こえる?」
トオも含めて耳を澄ます。クロの耳がピクピクしている所を見ると、どうやらクロには聞こえているようだ。
「クロ君」
ヒイの問い掛けに答えるように、久しぶりにクロが人型を取る。
「危険は無い」
「くろ」
「何? 危険は無いけど、何か意見がぶつかっている感じ?」
ミハがクロを諫めるトオを見て即座に言う。
「ほご」
「不要だ」
「お姉ちゃん、音も鑑定できないの?」
ミハが問い、アキはクロとトオの発言に視線を行ったり来たりさせている。
「やってみようか。うーん。クロ君。心配しないで。保護するだけだよ。モーリンの所に行く方が良いみたい」
クロは直ぐに子狼に戻ると、ヒイに甘える。それを眇めた目で見るトオにもお構いなしだ。