136.両親
願い事が叶えられていく様は圧巻で、また思いもよらない副産物をもたらした。
「ねえ。向こうの秋ちゃんと目が合ったんだけど・・・」
「いたね!」
「秋ちゃんとアキちゃんで、分裂!?」
「どういうことだろう?」
ニカが慄き、アキが喜び、ミハが驚愕し、ヒイが首を傾げつつ鑑定している。
それは両親に一目でも会いたいという願いを叶えた時だった。何故か、自分たちの前にも映像が浮かんだのだ。しかも、両親と末っ子の秋四がいた。上、三人には思わず、自分の横を確認して、アキがいることに胸を撫で下ろす。
そこまでは順調だった。全てが一晩の夢として見せるという事で、どんどんアキが願っていく。大金持ちになる夢も、最強になる夢も、モテモテになる夢も。一晩だけの夢として見せる願い事が、最も影響が無いだろうと話し合ったのだ。精霊は似たような願いが続くがそんなことには頓着せず、沢山の願いを叶えることと引き換えに、ダンジョンへの冒険中は願いを叶えないという願いを叶えてくれる事になった。精霊の感覚は人とは違うのでとは、トオの発言だ。
願い事を叶える度に喜びなのか、力の発露なのかぽうっと光る幻想的な風景の中での出来事だった。
一晩の夢として見せるはずが、同一両親の四人のため、目の前で白昼夢のように映像が流れた。一緒にいたクロ、トオ、エルディランドゥ、テレーズ、ケイ、マロウ、サラナサには何も見えなかったそうだ。
アキは両親ともう一人の自分を見る事ができたことに、喜びでぴょんぴょん跳ねている。
「鑑定結果はね。アキちゃんは二人いるみたい」
「そうなんだ」
「ふっしぎー」
「会える?」
アキの問いに、またヒイが目を凝らす。
「アキちゃんの力があればできそうかも・・・」
「それは精霊に頼むって事?」
ニカが端的に聞く。
「そうなるね」
「大丈夫なの?」
流石のミハも心配そうだ。
「大丈夫! 秋もいるから」
そんな中、アキが胸を張る。
「ん? それはあちらの秋ちゃんのこと?」
「うん。アキと秋は一つだったから、繋がるよ」
「へー。アキちゃん、秋ちゃんと連絡とれるんだ」
ヒイの問い掛けに答えたアキに、感心するミハ。
「多分、とれそうだけど・・・。準備が必要だね」
ヒイが最終的に締めくくると、四人以外の心配そうにこちらを見ている七人へ向き直る。
「ええっと。私達はこちらの世界で生きていくのは確定なので、これからもお世話になります」
これだけは告げねばと、頭を下げたヒイに続くニカ、慌ててミハ、とりあえず真似たアキがいた。
ケイが口を開く。
「あー・・・。ヒイさん達は両親に会えそうってことでいいのか?」
「それで大丈夫。帰りたくない訳では無いんだけど・・・。私達はもう、あちらにはいないから帰れないんだ。逆に、あっちからは来れちゃうみたい」
「そうなのか・・・」
エルディランドゥは我が事のように辛そうだ。ミハが即座に反応する。
「エル、心配しないで。こっちに来た時、ここで生きて行こうって決めてるから!」
「ミハ・・・」
「エルのこと大好きだから、エルのいない所になんて、行きたくないよ!」
二人の世界を作り出したミハとエルディランドゥを見習って、ニカとテレーズもいちゃいちゃしだす。ヒイはクロをぎゅっと抱きしめ、アキもトオの手をぎゅっと握った。