133.冒険中
「授業参観な気分」
ミハの言う事に首を傾げるエルディランドゥに、二人の冒険についてきたクロを付けたヒイが口を開く。
「エルディランドゥさんは気にしないで。ミハちゃん。そんなに見られて困ることなんて無いでしょう?」
「無いけどさー。緊張するでしょ」
「気が引き締まる思いは多少あるだろうか」
ミハの発言を受けた生真面目なエルディランドゥの答えに、ヒイが微笑む。
「エルディランドゥさんは普段通りかつ、今日はミハちゃんをあまり甘やかさない方向でお願いします」
「ええー! エルは私を甘やかしてなんぼでしょ」
「そんなつもりは・・・」
「二人は本当に仲良しだねー」
お互い談笑しつつ、今日はダンジョンに潜ってみようと計画していた。お弁当事業はマルクに預けたので、ダンジョン前の広場のようになっている空間にいるのは四人だけだ。
お弁当を委託した時のマルクの唖然っぷりを思い出したミハがクスリとしていると、エルディランドゥがヒイに尋ねた。
「ケイ達が目立たないようになっているのは何か工夫が?」
「気が付かれました? ええ。外見の印象をぼやかした感じに見えるようにしています。仲良くなるのと、大人になれば徐々に、容姿の良さがはっきりと見えてくるようにしてあります。独り立ちにはまだ心配で」
「そうなの!?」
知らなかったミハが驚いている。
「確かに、目立ちすぎると危険なことも多い」
「悩んではいるんですよ。外見の良さも自分の力の一つではある訳だから、それを強みにしている人も、利用している人もいます」
「いいんじゃない? 今までだって自分達で隠してたでしょう?」
ミハは今もその名残のケイの口調の荒さを思い出しながら言う。
「そうなんだけどね。こっちも一回聞いてみようかな」
「それがいい」
「うん。でもさ、コーリアさんはどう見えてるんだろ?」
「もう通常のマルクさんが見えている筈だけど・・・。ポンドさんは売りにするかなー」
「意外と上手そうだから大丈夫かもね。フレーズさんもいるし」
三人がもうダンジョン内にいるにも拘らず、こんな会話を繰り広げられているのはクロの活躍があってこそだった。
「楽―。クロくん。ありがと」
「狩りの腕前は流石だ」
「私は鑑定で後追いしている感じにしか見えてないぐらいに凄いよね」
クロは一人、ダンジョンで大活躍だ。真っ直ぐに大絶賛を受けて、胸を張った子狼はとっても可愛かった。クロが欲しかった賞賛は格好良いだったのだろうが・・・。