130.模索
ヒイにおねだりに行って戻ってきたミハに、ニカが尋ねる。
「ヒイちゃん、良いって?」
「うん。職業模索の一環だから許可出たよ」
「ああ。そういうことか」
「でも、ケイの承諾は貰って無い・・・。出来てから言う」
「まあ、物が分からないと何とも言えないからそうなるね」
様々な準備が出来上がると、職業の検証に入った。
「この格好をすることに意味が?」
「ある。・・・多分、あるよ!」
ミハに押し負け着替えることになったマロウが、首を傾げつつ口を開く。ミハも半信半疑な様子だが、マロウの陰陽師そのものの格好を見て大はしゃぎだ。
「始めるよー」
ヒイが声を掛け、今日実験する人を呼び集め、そのまま説明を続ける。
「今日は衣装を着て、札を使う人はマロウさんとケイさん。サラナサさんとミハちゃんはそのまま札を使う人ね。それぞれ、四種類の同じ言葉が書かれた札を使ってみるのが一つ。出来れば職業が付けば良いなと思っています」
「はーい」
「・・・何で俺が着るんだよ! 着るなら、ミハかサラナサだろう!!」
良い子のお返事のミハに、物申したいケイが突っかかる。サラナサはなるべく気配を消して、胸を撫で下ろしていた。
「えー。お揃い着るんだったら、そうなるでしょ」
「何でだよ! お前も、黙ってないで何か言ったらどうなんだよ!!」
「まあまあ。内輪だし。着る者だけだから。さっと、お札を四種類使えば終わりだから」
ヒイに宥められ、渋々ながらケイは矢継ぎ早に札を使う。
「あー。ケイ、格好良く、飛ばそうよ!」
「俺はさっさと終わらす!」
ケイに絡まれながら、鼻息荒く四種類を消化する。全員が、ケイが書いた札から始める。ケイ、サラナサ、マロウ、ヒイの順番で見た目が分かり易く、影響が少ない『小岩』だ。
「結構、違うね」
全員が使い終わった所を見届けたニカが言った。
「使った感触も違う」
サラナサが驚いたように告げる。
「悔しいけど、ヒイさんのが一番使いやすい。読めないけど・・・」
「だが、我々が書いた物も発動したな」
「どんな言語で書いても良いんだね」
ケイが感想を漏らし、マロウがホッとしたような感心した言葉を発する。ミハが最後に締めた。その言葉だと認識して魔力を籠めて書けば札としては成立するようだ。他の細かい検証は追々という事になった。