13.仕事が決まりました
「ねえ。これ、まずかったかな?」
「見てみなかったの?」
「だって、そんなに特別感出して説明されなかったから、手を抜かなければ大抵銀色かと・・・」
「確かにね。だから、鑑定しなかったのか」
「気を付けないと、常に鑑定する習慣をつけるようにする。今回はやってしまったものは仕方がない」
全員が金色のカードを出し、受付の度肝を抜いた6人が、こそこそしあう。
「珍しいの?」
最初に説明してくれた受付の男性の目が零れんばかりに見開かれている。それを若干怖いなと思いつつ、ミハが聞く。ヒイとニカは後ろで何か話し合っている。
「ええ。滅多に金色は出ません。お持ちの方はいらっしゃいますが、ここまで揃うと・・・」
「やったねー!」
「ミハちゃん。喜んでばかりもいられないよ。色々、気を付けなきゃだよ」
すかさず、ヒイの注意が飛ぶ。
「うん。気を付けるけど、やったね。イエーイ!」
ミハがアキにハイタッチをし、トオにも同様にし、クロの前足を持って手のひらを合わせている。クロウは本名を推測しにくい方がよい種族とのことで、通称クロと名乗ることにしたのだ。
決意したような受付の男性はお願いを告げる。最初に説明してくれたのも同じ人だ。
「不躾で、申し訳ないのですが、よろしければ、ここ冒険者ギルドで金色の秘密を教えて頂けないでしょうか?」
「え?」
「もしや何か秘匿するような事柄でしたら、無理にとは言いません」
「いえ、特に秘密にするようなこともないので、逆にどうしようかと思っているのですが?」
ヒイが不思議そうにしつつ、答える。
「すみません、別室でお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?申し遅れました、受付を統括しております、ケインと申します」
実はケイン、意外と冒険者ギルドでは実力者なのだ。冒険者ギルドに益があることに対しては、独自に行っていい権限を持っていた。
「みんなも一緒でいいですか?」
「勿論です」
冒険者ギルドの二階にある個室に案内されると、ヒイが早速説明を始める。ヒイは有言実行だ。しっかり、ケインのことも冒険者カードも鑑定した。特に気になる情報は出てこなかったので、墨と筆を出し説明を始める。
「こちらが、私たちが使った筆記具で、まだうまく使えない子たちとは一緒に書いたんです」
「そうでしたか。だから、自身が書いた証の金色に」
「お姉ちゃん、これ、仕事にできるんじゃない?冒険者はしないんでしょう? ね?これで稼いでもいいですか?稼げますよね!」
ケインが物珍しそうに道具を見つめ、一緒に書いたという所で深く頷いていると、ミハが名案とばかりに提案する。
「ええ。こちらこそ、お願いしたいです!」
「そうだね。とりあえず、やってみようか。4人で仕事をしながら、2人の帰りを待ってればいいもんね。丁度いいね」
ケインがこの好機を逃すまいと畳み掛ける。
「早速、場所を用意します。お金は、」
「場所代を無料にして頂ければ」
「それだけでいいのですか!?」
「ええ。全員がお金を払ってサービスを受けられる訳ではないですし、個人の方からそれぞれ頂きます。それについての相談に乗って頂いて、問題が起こった時もお願いします」
「それで引き受けていただけるんでしたら、大変ありがたいです。値段ですが、最低でもカード1枚で金色が5万。銀色が3万で、銅色が1万、変わらなかった場合は1千でどうでしょう?お好きなだけ上げて頂いて、構いません。問題がありましたら相談は何時でもどうぞ」
値段を聞いて、ニカとミハの瞳が輝く。
「上限なし?」
「儲かりそうー!」
「妥当な所がその辺りですか?」
「はい。カードの特典から考えると、最低でもこのくらいかと。書き換えが無ければ一生物なので、難しいですが・・・。あまり高くすると」
「そうですよね。書き換えは頻繁に?」
「人によりますが、級が上がった時に、時節名前が消えてしまう方がいらっしゃいます。そうなると、カードの色も木製に戻ります」
「・・・ええっと。神様が見ているから?」
ヒイが少し考えるようにして、書き換えを意識して鑑定し、出てきた答えに首を捻りつつ、口に出した。
「そのように言われたりもしますが、詳しいことは、学者の方が調べていたかと。冒険者ギルドでもはっきりと分かっていないのです」
「そうなんですか。じゃあ、その値段でお願いします。色が変わらないってこともあるんですか?」
ヒイの疑問が挟まる。
「ええ。字が書けない方もいらっしゃいますし、周りに認識されていない名前の場合や、他人に成りすまそうと名前を書いても変わりません。仮の登録のままとなっている方もいます。色とは違いますが、複数枚持とうとしても、一枚以外冒険者ギルドへ戻ってしまって駄目だったということもあるようです」
「木製なんですよね?」
「特殊な木らしいです。こちらも、詳しいことは分からないんですが」
冒険者ギルドではカードの豆知識を教えて貰ったりして、思ったより時間がかかったが、皆、無事に登録でき、ヒイの仕事も決まって安心して帰路に着いた。