124.とんでもない
ケイと一緒にマルクになって街の外に出てから怒涛のようだ。そんなに経っていないはずなのに、昔のことのようだと思う。だから街にいた頃のことはあまり記憶にない。
始めて家を与えられて、ケイ、フラン、ポンドの四人で二人部屋が落ち着かなくて一緒に寝たり、ポンドが町に行ってから一人部屋のマルクを心配してフランが始終部屋にいたりした。そのお陰で淋しいなんてことは無くて、今だってコーリアが心配して来てくれるのはありがたいことだ。
翌日の昼のことミハ、エルディランドゥ、ケイ、サラナサがやってきた。
「マルク、来たよー」
ミハ以外の元気の無さというか、意気消沈しているよう様子が厨房からちらりと見たマルクの不安を煽る。魔道具に関しては腹をくくって話を聞くことを決めた。エルディランドゥが代表して注文した時に声を掛けてきた。ケイ、サラナサの返事の後にマルクも答えた。
「食べてからにしよう」
「ああ」
「うん」
「分かった」
昼の終わりごろに来て、片付けを途中で抜けさせて貰うことにする。
まずミハが声を抑えて、口火を切った。
「マルク、昨日は驚かせちゃってごめんね」
「「昨日?」」
エルディランドゥとサラナサが疑問を浮かべる。ミハは気が付いて鞄からとある物を出す。
「二人は昨日の夜に見ていないもんね。これ! 説明のために持って来たよ」
「マルク・・・俺には止められなかった」
「仕方が無かったんだろ?」
ケイの懺悔に帰ってきたマルクの温かい言葉に、ミハ以外は沈痛な面持ちだ。
「もう。何で皆そんなに暗くなってるの! 何時でも、顔見て話せるんだよ! それに、道具の受け渡しもできるし。あ、今の所、生き物は無理だから。そこは注意してねって」
ミハが板状の魔道具の機能と使い方の説明を始める。使い方は思ったより簡単そうだが、機能がとんでもない。だが、マルクは了承した。
「・・・分かった」
「靴も凄いんだ・・・」
一度説明したことがあるサラナサが靴の説明を始める。こちらも全くもってとんでもない。今日から早速履いている自分の靴を見下ろした。
「この靴から火や水が・・・」
「試すなよ」
あまりにもじっと靴を見ているマルクを心配してケイが声を掛ける。
「試すなら、外でね」
ミハが軽い調子で締めくくり、四人は帰っていった。食堂の仕事より疲れたマルクだった。とても嬉しいけど、凄すぎて怖いし、やっぱりヒイから貰う魔道具はとんでもない。