122.説明無理
静かになったマルクの部屋が更なる沈黙を生み出した。マルクは言葉に窮し、コーリアはなにから聞けばいいのか分からずにいた。一つずつ疑問を解消しようとコーリアがおずおずと口火を切った。
「なにが起こってたの?」
「・・・ヒイさんの魔道具。色々不思議なことが多いんだ。気にすんな」
「『気にすんな』って言われても・・・」
困りきったマルクは説明をしたくない訳では無い理由を告げる。
「俺も説明できないからさー」
「それは・・・。それなら仕方が無いのかな?」
コーリアもそれは納得できた。
「ああ。煩くして悪かったな」
「それはいいんだけど・・・。その、後ろに隠しているのはなに?」
「く、靴。手入れ中だったんだ」
「そ、そう?」
怪しいがまた説明しにくいことだろうかと考えるコーリア。マルクは流石に言えないだろうと口を噤む。なにせ、板から靴が出てきたのだ。言えばそれだけだが、どうしてそんなことになったのかは全く説明できない。
一方のコーリアは別の方向、話していた相手を気にしていた。
「ねえ、話してたよね?」
「あ、ああ。誰と?」
「いや、ヒイさんとケイさん?とフランさんと」
マルクはしらばっくれてみた。
「気のせいじゃね?」
失敗した。珍しくコーリアがしっかり主張した。
「そんな訳は無いよね? はっきり見たし、聞いたよ」
「そういう魔道具なんだろうなー。俺も知らなかったけど・・・」
「そうだったんだ。・・・良かった」
「ん?」
マルクが聞き返すと、コーリアが言い辛そうに口を開く。
「帰りたくなっちゃのかと思ったの・・・」
「それは無い。ここで料理するの楽しいぞ」
満面の笑みで答えるマルクに、その言葉を聞いたコーリアは嬉しそうでほっとしたように笑った。
「そっか。それなら、いいの。それにしても魔道具、凄いね。驚いちゃった」
「俺も。シシリアさんとアークも驚かせちゃったかな?」
「大丈夫だと思う。母さんはまだ下だし、アークは虫の所に入り浸っているから」
「驚かせちゃったのはコーリアだけだったのか、ごめんな。それと駆け付けてくれて、ありがとう」
コーリアは頬を染めて力説した。
「ううん。驚いたけど、凄い物も見れたし、こんなことができるなんて秘密でしょう? ドキドキするね」
「確かに。もう少し説明してもらえると助かるけど、聞いても分かるかどうかが問題なんだよな」
「難しそう。でも、色々知れて良かった。お邪魔しました。もうそろそろ、寝るね。お休み」
「お休み」