12.書いてみた
「アキちゃんは一緒に書こうね。ミハちゃんの見本書いちゃうから待っててね」
「あい」
「その手も、あったか!!」
ミハの一緒に書いて欲しそうな気配を、さらっと流し、わくわくした顔で待つアキと、墨をふんふんと嗅いでいるクロウ、不思議そうに首を傾げているトオが見守る中、達筆で「ミハ」と書かれる。ヒイは書道の師範もできる腕前だ。
「本当に、本物に私が最初に書いて良かったの?」
「うん。やったー!!これで銀は確定。」
名前が書かれた証明書がほわっと光ると、銀色に変わる。
「流石だね。私は銅色だー。ヒイちゃんに書いて貰おうかなー」
書き終わったニカがすかさず強請る。
「ニイちゃん、こういう事だけ、雑だよね」
「ミハに言われるとは!」
全然堪えていないニカとミハがじゃれあっている間に、ヒイがどんどん進めていく。アキの背後に回り、一緒に筆を握る。
「よいしょっと、『アキ』っと」
「できたー!ピカピカ」
「わー。アキちゃん金色だ。じゃあ、次はクロウ君ね。一緒に書こう。トオさんもね」
クロウとトオのカードを金色にし、勿論自身も金色のカードにすると、ニカのカードに手を伸ばす。
「ニイちゃん。書き直すの?」
「うん。消したいって持ち主が思えば、本当に消えた!」
「凄いね。え?」
ニカが後ろに回ってきたヒイの手首を捕まえて、自分の手の上にヒイの手を持ってくる。
「・・・アキちゃん方式がいいの?もう」
「ずるい!私も!!」
「ミハちゃんもね。分かったよ」
みんな仲良く金色になりました。
年少組の三人を寝かしつけに行ったニカを見送った後、食器を片付けつつ、ミハがヒイへ問い掛ける。いつもなんでも色々やってもらっている自覚はあるのだ。
「お姉ちゃん。ミハのこと邪魔だなとか思ったりしない?」
即座に同じ質問が返ってくる。
「え?ミハちゃんはお姉ちゃん邪魔だなーとか思ったことあるの!?」
「無いよ!!」
「そういうことじゃない? ミハ」
いつの間にか寝かしつけが終わって、二階から降りてきたニカが言う。
「そっか」
お姉ちゃんがいて当たり前で、邪魔だなんて考えたことない。いなかったらなんて、もっとそうだ。そっか。お姉ちゃんもそうなんだ。私が妹なのは当然で、それ以外にはないんだ。腑に落ちたようなミハにニカが微笑むが、それに気が付かず、一人焦るヒイ。ヒイは遠回しというか逆説的に聞かれたと思っているため、神妙だ。
「ミハちゃん?お姉ちゃん何かやっちゃった?」
「え?なにもー。お姉ちゃんは、お姉ちゃんだなと思っただけ。お姉ちゃん大好き」
「そう?本当に?良かった。私もだよ。勿論、ニカちゃんもだよ」
「うん。知ってるー。ミハの疑問は直球だから、お互い、考え過ぎは良くないよー」
「正直って、言ってよー」
ミハが二人を抱きしめるように、抱きついた。きょうだい仲は今日もばっちりです。