114.魔法使いと
「そろそろ卒業かも」
「何が?」
ヒイの言葉にミハが聞き返す。
「書き方教室」
「かなり行き渡ったもんね」
「そうだね。私、次の職業何にしようかな」
「お姉ちゃん、余裕―!!」
ミハが嬉しそうに茶化す。余裕のある生活が出来ているってことで、無敵状態だ。後ろからやって来たエルディランドゥも微笑んでいる。
「ミハちゃんは今、何級?」
「ふっふっふ。良くぞ、聞いてくれました! 6級で中級に入ったよ」
「凄いね。魔法の弱点は何とかなったの?」
「うん。フランに聞いた。フランは魔法でぶつかるっていってたから、真似してみた」
「ミハそれは、程々に・・・」
中々にエルディランドゥを心配させるような技だったらしい。止めようと説得しているようだ。ヒイが少し考える。
「ミハちゃん。職業」
ヒイが口を開いた瞬間、ミハが凄い勢いで食い付いた。
「何!? 変わった? 凄いのになった?」
「凄いかどうかは分からないけど、変わったよ」
「何! 何!! 教えて!!!」
「はいはい。落ち着いて。『前衛魔法使い』だって」
「・・・ええー」
ヒイはミハの反応も分かるので苦笑しつつも説明する。
「新しい職業の発見、おめでとう」
「ありがとう・・・。でも、」
「うん。これなら、中衛と後衛も揃えられるんじゃない?」
「お。そっか」
ミハが持ち直してきた。新しい物の発見と、揃える喜びだ。
「それと攻撃の仕方で形容が変わるみたいだから、魔法の属性の使い方でもいけるかも。ミハちゃんの最終目標は更なる発展でしょう? 魔法使いの枠に捉われるだけじゃあ、勿体無いよ」
「そうだよね!! 色々やってみる。ありがとう、お姉ちゃん」
ミハはそう言うなり、家から飛び出して魔法の練習に行ってしまった。残ったエルディランドゥがお礼を言う。
「ヒイさん。助かった。ありがとうございます」
「こちらこそ、ミハちゃんがいつもお世話を掛けてます」
「そんなことは。とても楽しい毎日です」
「それなら、良かった。エルディランドゥさんが見守ってくれるお陰です」
ヒイは神のような身体能力を持つフランがやるようなことを真似するミハに感心した。それにしても通常の魔法職で前衛のように突撃するという危険な方法から方向転換できたことに、エルディランドゥと二人でほっとしていた。