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111.まだ早い

 見られている。

 凄く、見られている。

 あからさまに見られている。


「フラン、何だろうか?」

「ううん。見てるだけ」

「そうか」


 見ないでくれとは言えない。何せ、婚約者となったリガルがフランを蕩けそうな視線で見ながらも、こちらを伺っているからだ。下手なことは言えない。二人で見つめ合っていてくれないだろうか。それならば、どんなにいいか。

 無言が続く。

 どうしてこんなことになってしまったのか。マロウは吐きたくなる溜息を飲み込んだ。フランとの留守番を頼まれて受けた、それだけだったはずだ。安請け合いしたつもりはない。大体が全員一人で行動しないのだ。仕事の関係で何名かが組み合わさって、その組み合わせを変える。

 リガルの仕事が休みということで、フランも休んで一緒に過ごすので、昼の間だけお目付け役を仰せつかったのだ。二人で過ごすのまだ早いとのことだ。「何故か?」その疑問をヒイに聞けなかったことが敗因だろう。何に負けているのかも分からないが、お弁当を売りに行っているミハ、エルディランドゥ、ケイ、アキ、トオには早く帰ってきてもらいたい。

 時間は遅々として進まないと思い、気付く。この家に驚くことは数あれど、普通のことのように時計もあるのだ。だから鐘の音が聞こえない街の外でも時間も分かる。昼時だ。置いてある三つのお弁当を手に取る。


「昼食にしようか?」

「うん。リガルもはい」

「ありがとうございます。これが、いつも売ったり食べたりしているお弁当ですか。美味しそうですね」

「そう、マルク以外も料理上手なの」


 何とか和やかに昼食に入れた。二人がいちゃつくがそれは慣れている。弁当に集中するのみだ。今日も美味しい。マロウは箸を使う。同様にフランも器用に使える。それを驚いたように見るリガル。


「それは?」

「お箸? リガルは使わないの?」

「私は使えないな」


 少ししょんぼりした様子のリガルにフランが助力を申し出る。


「私も教わったから、教えてあげる! 便利だよ。枝とかあればすぐに作れるし」

「そうですね。凄いなーフランは、箸を使えるし、作れるし」


 呼吸するかのように自然にフランを褒め続けるリガル。息を吸っては褒め、吐いては褒める。フランは嬉しそうな照れ顔だ。そこでふと気が付いたようにマロウへ視線を戻す。


「マロウはケイのこと褒めないの?」

「機会があれば・・・」

「いつ? すぐに褒める? 私がいる時に褒めてくれる?」

「善処しよう」

「うん。それはいつ?」


 フランの追及の手は緩まない。何故そこを疑問に思ってしまったのか・・・。マロウは嫌な予感がした。早く帰って来てくれと願ったが、今、帰宅されると困る。


「「ただいまー」」


 ミハとアキの元気な声が聞こえる。マロウの絶体絶命は続く。

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