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108.やってきた

「マルク、来たよ! あれ?」


 フランが昼食時で程よく混み合っているシシリアの食堂に飛び込んでくるなり、首を傾げた。マルクが見当たらなかったのだ。きょろきょろ見回しているフランに付き添いできたズウゾが答える。


「いきなり、飛び込むな。マルクは厨房だろ」

「マルクは料理人でしたね。盛況のようで何よりです。あちらに座りましょう」

「そうなの。マルクは料理上手いんだ。じゃっじゃって」


 フランの表現は分からなかったが、ズウゾと二人でフランを落ち着かせて、席に着くリガル。落ち着いたところで、なんと声を掛けていいか分からない風のコーリアから料理の説明を受けて固まるフラン。


「俺は肉にするぞ」

「どうしました、フラン?」


 素早く決めるズウゾに対し、戸惑うフランが助けを求めて視線をリガルへ向ける。


「肉じゃない二つを分けて食べましょう」

「うん」


 注文を受けて、お客の隙間をぬってフランに問い掛けるコーリア。


「あの、マルクくんのお知り合いですか?」

「家族だよ」


 マルクから軽くしか話を聞いていないので、フランが緊張気味に答える。コーリアは、フランの注文への戸惑い加減がミハを彷彿とさせるので、マルクとは顔は似ていないが家族だということはすぐに察せられた。そのため、しっかり頭を下げる。


「マルクくんにはお世話になっています」

「えっと、こちらこそマルクがお世話になっています?」


 たどたどしく答えると、これでいい?大丈夫?とまたリガルへ視線を送る。しっかり出来ているとフランに向けて微笑んで、リガルが口を開く。


「フランの婚約者のリガルです。こちらは、フランの師匠の、」

「鍛冶師のズウゾだ」


 自己紹介しあっているとマルクができあがった料理を持ってやってきた。


「おまちどう! フラン、来たのか」

「マルク、来たよ! 二人も連れてきた!」


 最初にフランに声を掛けておかないと騒ぎ出すのが分かっていたマルクが、遅れてズウゾとリガルに挨拶する。それに、二人は苦笑と会釈を返す。


「ズウゾさん、リガルさんもありがとうございます」

「フランに自慢されていましたから、マルクの料理は美味しいって」

「おいおい。こんなところで、嫉妬は止めろよ」


 リガルの強い視線を感じマルクが一歩下がると、ズウゾが釘を刺す。マルクは挨拶しかしたことが無いフランの婚約者に納まっている領主のリガルは、得体の知れなさがヒイたちに通じていると思う。だからと言って信用できないというよりも、突拍子もないフランを受け止めてくれると安心していた。だから視線の意図を図り損ねたが、家族に嫉妬していると分かり、流石フランと思いあうだけはあると少しだけ残念な気持ちになりつつ厨房へ戻った。

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