102.分裂
ミハは家に帰って来るなり、ヒイの家に突撃して訴えた。マルクに魔女の店の話をすると張り切っていたフランだけは、付いて来ていない。ミハ、エルディランドゥ、ケイが付いて行ったので、魔女の店でズウゾとリガルとは別れて帰ってきてそのままヒイに説明を聞きに来ていた。
「お姉ちゃん、分裂だって! 分裂ってなに? どういうこと?」
「え? 分裂は分裂じゃないの?」
ヒイの返しに、側にいたニカも頷いている。ミハの勢いに驚いているエルディランドゥとケイに、簡単な分裂の説明を求められる。
「その、分裂ってなんなんだよ? やたら、ミハが騒ぐんだけどよ」
「ああ。エルディランドゥさんとケイさんには馴染みがないよね」
そう言って、ヒイが手にしたぷにぷにの透明な物体を二つに分ける。二つに分けたので、半分の大きさになるかと思いきや、最初にヒイが出した大きさに二つともどんというよりも、とんと一瞬で増えた。
「え?」
「は?」
「これが、分裂だよ」
「ええ!! お姉ちゃん、これ、どうなっているの!?」
「凄いね、ヒイちゃん。手品?」
エルディランドゥは驚きで固まり、ケイも同様。冷静な説明のヒイにミハがまたもや騒ぎ出し、ニカが感心したように感想を漏らす。
「面白いでしょう? 錬金術の応用だよ」
「ああ、そうなの」
「へー」
「そうなのか」
「そういうもんか」
その場にいるヒイ以外が、ヒイのやることだからそんなものだと納得した。分裂の説明は曖昧になりながらも、大体どういうものなのか理解したエルディランドゥとケイだが、ミハはそれで収まらなかった。
「いやいや、ユガリさんが分裂してリガルさんができた? 生まれたって?」
「それは、凄い秘密に迫っちゃったね」
「そういう方法で増える人もいるんだね」
ミハの訴えが全然響いていないことに、焦り、更に言い募る。
「ねえ、フラン大丈夫なの?」
「最初に言っていたように、私達が知っている結婚という制度をとらない訳じゃないんでしょう?」
「ああ。そういうこと」
ニカがやっとミハの質問の意図を読み取れて、納得している。色々な種族がいると学んでいるからこその心配だったのだ。だがフランを大切にしているリガルならば、違いがあれば最初から説明する人物ではあると認識はされている。一目惚れで根回しはすっ飛ばして、結婚と言ったリガルだが、細やかな気遣いが出来る人だ。
「うん、多分。そういうことは言ってなかった」
ミハが落ち着いた。そこへ虚空を見つめて確認したヒイの安心材料が重なる。
「子供も欲しいと思えば、人に合わせることも出来るみたいだよ」
「それなら、特に大丈夫そうだね」
「良かったー・・・」
家に帰ってくるまでずっと気にしていたことが解決して、ミハがほっとして座り込む。
「フランの気持ちはそこまで追いついたの?」
「分かんない」
「お互い意識はしているみたいだよ」
全員がほんわかした気持ちになり、夕食の時間が迫っていた事に気付いて慌てて準備に走った。