101.デート?
引率ズウゾで魔女のお店のデートというか訪問が実現した。ユガリへの連絡はリガルがしてくれるという事で、フランはヒイに行き先を告げ、意気揚々と出発しようとして、更にミハとエルディランドゥ、ケイをお供に付けられた。災いを避けるお守りを持たせてはいるが、流石にフランの一人歩きは許容範囲外だった。フランは大所帯になったことを気にすることなく、ミハに話しかけている。
「ミハは魔女のお店に行ったことあるんだよね?」
「冒険者の仕事でね」
「どんなの?」
「水晶玉を磨いたり、黒焼きの分別をしたよ」
「楽しかった?」
「初めての経験ではあったね」
ミハは明言は避けた。面白い経験ではあった。楽しくなくはないが、正直に言えばちょっと怖かった。
そんな魔女の店に到着するなり、フランが尋ねた答えがこれだ。
「私、分裂するのよ」
「ぶんれつ?」
「だから、リガルとは殆ど同じものでできているの」
ズウゾは聞いても良かったのか、聞かなければ良かった、両方の鬩ぎ合いに表情が引き攣る。フランは魔女の店の中をぐるりと見渡すと聞いた。
「リガルも魔女なの?」
「いいえ。殆ど同じだけれど、違う部分もあるんですよ。性格とか、性質とか」
フランはリガルの言葉に頷く。
「でも、色は同じ」
「気になりますか?」
「とっても綺麗で好きだから、気になるよ。同じ色でいいなーって思ったの」
「そうでしたか!」
いじらしい様子のフランにリガルは骨抜きだ。
一方のミハはエルディランドゥとケイに分裂を説明している。
「分かれるの。ぱかっと」
「それは凄いな」
「本当か?」
「本当だって、でも性別違うみたいだしなー。私が知っている分裂とは違うかも。帰ってから、お姉ちゃんに聞いてみよう?」
ミハの言葉に尤もだと二人は頷き、ユガリとズウゾと一緒に見守る方へ回った。見守る四人に対し、ミハはずばっと切り込んだ。
「おおーい。そろそろ、お昼食べよう? ユガリさん、ズウゾさんもご一緒にどうですか?」
「あら。私もいいの?」
「勿論です。その代わりと言っては何ですが、場所をお借りしてもいいですか? ね、フランが作ったフライパンで料理したんだよね」
「そうなの! 食べて、食べて」
「ええ。ここで頂きましょう」
ユガリとリガルは物珍しそうにお弁当を食べつつ、フランの料理や鍛冶の話を嬉しそうに聞いていた。