1.四人でドライブ
「お父さんと、お母さん、楽しんでいるかな?」
高校生の三番目、三春が車の後部座席で伸びやかに言う。次子の二夏は運転席にいるので、言葉少なだ。
「うん」
「久しぶりだもんね、お父さんとお母さんが二人でゆっくりするの。ねえ、あきちゃん」
「いせ、かい」
助手席から振り返りつつ、第一子の一冬が、末っ子のまだ三歳の秋四に同意を求めて、不思議な返しを受けていた。
「え?あきちゃん。伊勢?海老?海?海には行かないよ」
一冬はお祝いの食事が海老フライだったからかなと、暢気に考えている。
今日は、両親の結婚記念日のために二人の時間を作るべく、子供達四人は二夏の運転でちょっとしたドライブに出掛けていた。
一瞬の暗転。
「四人で!」
誰から誰への言葉だったのか。
続く暗闇。
「みは!」
「にいちゃん!何?何が起こったの?え?私、目、開けてる?」
二夏と三春の二人は真っ暗な空間にいた。自分の手も見えない真っ暗な空間なのに、何故かお互いの顔は見える。
「開いてる、開いてる。そんなことより、ひいちゃんとあきちゃんがいないんだ。一応、聞くけど、みはは無事?」
「うん。大丈夫、多分。でも、私に対して適当過ぎるよ。でも、にいちゃんも大丈夫そう?」
「ごめん。ごめん。平気みたい。ここは・・・」
「変なとこだよね。なんにも見えないけど、にいちゃんは見えるし、ひいちゃんとあきちゃんはいないし」
「探そう」
「そうだね。きっと近くにいるよね」
(いない)
「「え?」」
(二人は損傷が激しく、ここに存在できぬ)
「ちょっと、誰で、どういうことなの!!」
三春が突然響いてきた声に、喧嘩腰で返す。
「みは。落ち着いて、この変な声の持ち主は」
(我は神。其方達を我の世界に招待す。四に言われた故)
「?あきちゃんに?」
三春が首を傾げる。
「招待なんて、されたくないんだけど、四人で移動しなくちゃいけないの?」
(招待を受けねば消滅す)
「ちょっと!」
二夏のもっともな疑問に、承服できない答えが返ってきて、三春が文句をつける。
「みは。きっと、あきちゃんが四人で生きていいけるように、異世界に行くように交渉してくれたんじゃないかな」
「流行りの、異世界転移ってこと?四人で?戻れないやつ?」
「多分ね。どうする?定番なら力とか特殊能力だよ」
「よしっ!考えよう」
「勿論、くれるんでしょう?異世界で生きていく力?」
(・・・)
「あきちゃんに頼まれたんでしょう?このままじゃぁ私たち、すぐ死ぬよ」
「うん。保証する」
二人が駄目な方に胸を張る。秋四が頼んで、受け入れられたのであれば、自分たちが行きました、駄目でしたではすまないと思ったのだ。
(・・・了解した。何を望む)
「出せるもの全て」
(・・・世界の理に抵触しない物を)
二夏の強気発言に三春も重ねる。
「四人に全部」
(ああ)
「・・・」