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火星物語   作者: いずたく
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ブラックドラゴン

寒い北の地に一つのドームがあった。

そのドームは火星の北極点付近の自転近くにある、ほとんど動かないドームで民間人の居ない軍事施設であった。

 そのドームの中に居る兵士たちは、凍りに覆われた大地を双眼鏡で見渡しながら暖かい部屋で話し込んでいた。

 「こんな、寒い極寒の地のドームに侵入者なんて現れるのかね。俺は早くメイウェザー軍の正規軍に入りたいよ。」と兵士Aは疲れた声で話した。

 「あんなに繁栄していた火星王国も、もう終わりだな。」と兵士Bは椅子に座りながら言った。

 「これからは、メイウェザー様の時代だよ。」と、兵士Aが双眼鏡を持ちながら言った。

 「もう、王国は終わりかも知れないが、最近ある噂を耳にしていないか。ドラゴン族のレイ姫の娘が、新たな勢力となりメイウェザー様に対抗していると。」と別の兵士Cがトランプの準備をしながら言った。

 「カレン、とか言ったかな。綺麗な娘らしい。」と、また別の兵士Dがトランプの輪に入りながら言った。

 「レイ姫と言ったらドラゴン族の美人剣士で国王の愛人だった女だろう。」と双眼鏡を持った兵士Aは言い、双眼鏡を机の上に置きトランプの仲間の輪に入って行った。

 そのドームの監視塔の様子を吹雪の中、身を潜めヘルメットのバイザーを双眼鏡モードにし見ている人物が居た。

 「監視が薄くなった。今なら潜入できる。」と言いうと、雪の中から真っ白なモコモコの毛をまとった大きな鳥が現れ上に乗り込んだ。

 その鳥の足は大きく平べったく雪の中を歩くのに適した足をしていて、人が乗る場所にはモコモコの柔らかい毛が人を包み込んだ。

 吹雪は酷くなり外の様子は真っ白で何も見えなくなったが、人を乗せた大きな白い鳥は難無くドームの下まで辿り着いた。

 そして、下から進入できる非常口を発見すると背中からロープを結んであるボーガンを取り出し、吸盤の付いた矢を放ち非常口横に取り付け上がって行った。

 監視たちは、トランプに熱中しており進入に気が付かなかった。

 そして、いつの間にか部屋の気温が下がっているのに兵士Bが気が付いた。

 「この部屋、寒く無いか。暖房が壊れたのかな。」と兵士Bの一人が言い、暖房機に手を当て暖かい空気が出ているか確認した。

 「駄目だ、壊れている。冷たい空気しか出てこない。」と兵士Bが言った。

 「部屋の温度もどんどん下がっているぞ。」と兵士Cは震えながら言った。

 兵士Dがドアを開け廊下に出た。

 そして、辺りを見て驚いた。

 「廊下が氷ついている。どういう事だ。」と兵士Dが言った。

 「電気品が寒さで使えなくなっている。」と兵士Aが驚きながら言った。

 「まさか、ここに彼女が、冬のカレンが来ているのでわ。」と、兵士Bは慌てた。

 「当たり。」と、綺麗な女性が兵士たちの後ろで言った。

 カレン、15歳。

火星物語=第9章 冬のカレン

 寒い北の地に一つのドームがあった。

そのドームは火星の北極点付近の自転近くにある、ほとんど動かないドームで民間人の居ない軍事施設であった。

 そのドームの中に居る兵士たちは、凍りに覆われた大地を双眼鏡で見渡しながら暖かい部屋で話し込んでいた。

 「こんな、寒い極寒の地のドームに侵入者なんて現れるのかね。俺は早くメイウェザー軍の正規軍に入りたいよ。」と兵士Aは疲れた声で話した。

 「あんなに繁栄していた火星王国も、もう終わりだな。」と兵士Bは椅子に座りながら言った。

 「これからは、メイウェザー様の時代だよ。」と、兵士Aが双眼鏡を持ちながら言った。

 「もう、王国は終わりかも知れないが、最近ある噂を耳にしていないか。ドラゴン族のレイ姫の娘が、新たな勢力となりメイウェザー様に対抗していると。」と別の兵士Cがトランプの準備をしながら言った。

 「カレン、とか言ったかな。綺麗な娘らしい。」と、また別の兵士Dがトランプの輪に入りながら言った。

 「レイ姫と言ったらドラゴン族の美人剣士で国王の愛人だった女だろう。」と双眼鏡を持った兵士Aは言い、双眼鏡を机の上に置きトランプの仲間の輪に入って行った。

 そのドームの監視塔の様子を吹雪の中、身を潜めヘルメットのバイザーを双眼鏡モードにし見ている人物が居た。

 「監視が薄くなった。今なら潜入できる。」と言いうと、雪の中から真っ白なモコモコの毛をまとった大きな鳥が現れ上に乗り込んだ。

 その鳥の足は大きく平べったく雪の中を歩くのに適した足をしていて、人が乗る場所にはモコモコの柔らかい毛が人を包み込んだ。

 吹雪は酷くなり外の様子は真っ白で何も見えなくなったが、人を乗せた大きな白い鳥は難無くドームの下まで辿り着いた。

 そして、下から進入できる非常口を発見すると背中からロープを結んであるボーガンを取り出し、吸盤の付いた矢を放ち非常口横に取り付け上がって行った。

 監視たちは、トランプに熱中しており進入に気が付かなかった。

 そして、いつの間にか部屋の気温が下がっているのに兵士Bが気が付いた。

 「この部屋、寒く無いか。暖房が壊れたのかな。」と兵士Bの一人が言い、暖房機に手を当て暖かい空気が出ているか確認した。

 「駄目だ、壊れている。冷たい空気しか出てこない。」と兵士Bが言った。

 「部屋の温度もどんどん下がっているぞ。」と兵士Cは震えながら言った。

 兵士Dがドアを開け廊下に出た。

 そして、辺りを見て驚いた。

 「廊下が氷ついている。どういう事だ。」と兵士Dが言った。

 「電気品が寒さで使えなくなっている。」と兵士Aが驚きながら言った。

 「まさか、ここに彼女が、冬のカレンが来ているのでわ。」と、兵士Bは慌てた。

 「当たり。」と、綺麗な女性が兵士たちの後ろで言った。

 カレン、15歳。

 銀色の長い髪の毛と、この頃は白い肌で左腕もあった。

 カレンは兵士たちに一息掛けると兵士たちは凍りつき動けなくなった。

 「ご免なさい。少しの間、寝てもらうわ。」と、カレンは言い監視室のモニターをチェックした。

 「このドームの中心部が怪しそうね。」と言い、廊下を出てドームの中心に走って行った。

 途中、監視システムの警報により機械兵器や警備隊が出てきたがカレンは簡単に彼らを凍らせ動けないさせて、すんなりとドームの中心まで遣って来た。

 そこには厳重な設備で覆われたドーム状の部屋があった。

 「この中にあいつが隠して居そうね。それにしても厳重な扉ね。ちょっとやそっとでは開きそうに無いわね。」とカレンは言い、扉の電子ロックに手を触れた。

 「電気品は寒さに弱いのよね。」と、言うと神経を集中させた。

 電気の流れる半導体、一つ一つの流れを頭で感じながら冷気と静電気を流し回路をショートさせた。

 ロックは解除し、カレンは大きく重い扉をゆっくりと開けた。

 そして、冷凍保存庫のような部屋の中に入り中心に置いてあるカプセルに近づいた。

 カプセルの中には青い生命体が居るのをカレンは確認すると、腕時計型の携帯電話で連絡した。

 「見つけたわ。持って帰るから脱出の準備お願い。」

 すると、直ぐに返答が帰ってきた。

 「了解致しました。カレン様、直ぐにドームの下まで参ります。メイウェザー軍が近づいて来ているみたいです。」

 「分かった。感ずかれた見たいね。直ぐにドームを出るわ。」と言い、カレンはカプセルを取り出しリュックに入れようとした時、カレンの背中の衣服を引っ張る者が居た。

 カレンは慌てて振り返った。

 そこには一人の子供が立っていた。

 「お姉ちゃん。助けて、僕の妹と友達が捕らえられているの。」と、その子供が言った。

 カレンは、驚いた。

 その子は完全に気配を殺しており、この寒い部屋の中に震える事なく平気で立っていたからだ。

 「君は、何処から来たの。まだ他に子供たちが捕らえられているの。」とカレンは驚いた顔をして言った。

 「そうだよ、お姉ちゃん。だから早く助けて欲しいのお願い。」

 「分かった。案内して。」と、カレンは言い、その子供の後を追った。

 その子は、意外と足が速くカレンも少々疲れていた。

 「ねえ、君の名前は。」とカレンは走りながら言った。

 「トーイ。」と、その子は答えた。

 「君は、男の子、女の子。」

 「どちらでもない。妹のマリも女の子みたいだが、どちらでもない。僕たちは大人のおもちゃなんだよ。」と、トーイは答えた。

 「噂は本当だったのね。メイウェザーも以前の火星王国と同じく人体実験もしていたのね。」と、カレンは思い悲しい顔をした。

 二人は、トーイの妹と友達が捕らえられている部屋へと遣って来た。

 セキュリティーはカレンが全て凍りつかせ使えなくしているので簡単に扉が開いた。

 「トーイ。早く妹たちを連れてきて、そろそろ氷が解けてセキュリティーシステムが動き出すわよ。」と、カレンは扉の前に立ち辺りを見渡しながら言った。

 徐々に氷が溶け出し機械が動き出し始めた。

 「不味いわね。メインシステムの温度が上がってきて機械が正常に動き出してきたわ。今更、また、メインシステムに戻って凍りつかす時間もないし、子供たちを連れて逃げるは至難の業ね。」と、カレンが考えこんでいる時、トーイが仲間を4人連れて戻って来た。

 小さな子達がカレンの周りを取り囲んだ。

 その中で一番体の大きい子は、泣きそうな顔をしてぐっと堪えていた。

 「意気地無しだな。タイガは。」と、赤い髪の毛の男の子は言い、タイガの頭を叩いた。

 「タイヨウ、タイガをいじめないの。」と、小さな女の子が言った。

 「この子が妹のマリだよ。女の子じゃあ無いけどね。」とトーイが言った時、警備用兵器が追いかけて来た。

 警備用兵器は円盤のような形に磁力のあるタイヤが8個装着されており自由に動き、頭の上に機関銃が装備されていた。

 「貴様ら、そこで何をやっている。逃亡者か。」と警備兵が5人、警備用兵器の後ろから遣って来た。

 カレンは、すばやく動き警備兵器のタイヤ数本を凍りつかせ動けなくし警備兵を3人倒したが、残り2人の警備兵を取り逃がしてしまった。

 その警備兵は子供たちの所にまで遣って来て、子供たちを捕らえようとした。が、トーイが一人を飛び蹴りで倒した。

 しかし、もう一人がマリを捕らえ銃を突きつけ脅して来た。

 「お前ら、こいつの命を助けたければ大人しくしろ。」と警備兵が言った時、後ろで泣いていたタイガが怒り警備兵を後ろから両手で突き飛ばした。

 「ダメ マリ いじめたら。」とタイガが怒りながら言った。

 「君たち強いのね。」と、カレンは驚きながら言った。

 「僕たちは、戦闘兵器として創られた人間さ。僕はリョウ、僕は戦いより頭で勝負だよ。IQが高いのさ。」とリョウが自慢げな顔で言った。

 「しっ、リョウ。敵が近づいてきている。」とタイヨウが言い、タイヨウの赤い左目はサーモセンサーにもなっており壁の向こうの熱源体も察知できた。

 「こっちに行こう。」と、タイヨウは左側を指差し皆走り出した。

 「君たち、便利ね。」とカレンが言った。

 「お姉ちゃん程じゃあないよ。お姉ちゃん、噂の冬のカレンだね。レジスタンスのリーダーだよね。」と、トーイが言った。

 「レジスタンス?ちょっと違う気がするけど。」と、カレンが言った。

 カレンたちは非常口に辿り着いたが、扉は硬くロックされており、先程のように簡単に開ける事が出来なかった。

 「どうしよう、逃げられないよ。」と、マリが言った。

 「大丈夫よ。マリちゃん。」とカレンは言い、廊下に氷の壁を作り警備兵が暫く進入できないようにした。

 「皆、ちょっと下がって。」とカレンは言い非常口の扉を触りながら腕時計型携帯電話で誰かと話した。

 「今から脱出するから、この扉を壊して、それと子供たち5人も保護したから受け止めてね。」と、カレンが言うと非常口にも氷の壁を造り外からの攻撃を防ぐようにした。

 そして、直ぐに非常口の扉に大きな爆発が起きたが、氷の壁で守られていて皆無事であった。

 カレンが作った別の氷の壁が警備兵たちにより壊されて警備用兵器が近づいて来た。

 子供たちは、そわそわしていた。

 「君たち外に出るわよ。」と、カレンは言い、非常口を開け子供たちを外に投げ飛ばした。そして、最後にカレンも飛んだ。

 ドームの外は吹雪になっており視界が悪かったが、子供たちは雪の上に次々と落ちて行った。

 雪のクッションのおかげで子供たちは怪我一つ無かった。

 落ちた先には白い鳥達が次々と現れ雪の中に埋まっている子供たちを次々と助けてドームがか離れて行った。


 レイ王国は愛らしい鯨の形をしたドームで背中に東京ドーム程度の大きなのドームが3個あり、その中の小さな居住ドームにカレンたちは住んでいた。

 レイ王国は火星王国の姉妹国で母レイが国王から授かったドームでもあった。

 3千人が暮らす小さなドームで古風的な純和風的な只住まいのある村であった。

 小さいドームなので機動力があり、敵に見つかる事が無い良い隠れ家でもあった。

 カレンは保護した子供たちを医療チームに預け体に異常が無いか検査するように頼んだ後、サラの居る部屋へ遣って来た。

 「サラ、お利口にしていた。サラと同じ年の子達を保護したわよ。お友達になれるといいわね。」とカレンはサラの頭を撫でながら言った。

 サラも嬉しそうに頷いて居た時、部屋に一人の老人が入って来た。

 「カレン様、いつもいつも無茶ばかりして、大怪我でもしたらどうするつもりですか、一国の王女が何という事を。」と、その老人は怒りながらカレンに近づいてきた。

 カレンは、サラの部屋を出て自分の部屋に向かって行ったが、老人はカレンの後を追って小言を言い続けていた。

 カレンは自分の部屋に入り、洋服ダンスから服を出した。

 「マッサ爺や、これから着替えるんだけど。」と、カレンは言い服を脱ぎ始めた。

 「なんと、はしたない王女様だ。」と、マッサ爺やは言いカレンの部屋を出た。

 カレンは着替えながら部屋の扉の前で待つマッサ爺やに言った。

 「お母様の体の状態はどうでした。元気でしたか。」

 「カレン様、お母様にお会いになるのでしたら、お気を付けて下さい。かなり左腕のドラゴンに心を奪われ支配されてきております。」と、マッサ爺やは悲しそうな声で言った。

 「その為にブルードラゴンをあのドームから奪ってきたのよ。お母様の体を直す研究になると思い。」と、カレンは言った。

 「カレン様の気持ちは分かります。あんなに美しかったレイ様が、悲しい姿に。あんなに華やかだった火星王国も、メイウェザーによって.....。私は悔しいです。しかし、カレン様、無茶はいけません。もし、カレン様の身に何かあたらと考えると、このマッサ、心配で心配で、以後、気を付けて下さい。カレン様。」と、マッサ爺やは目に涙を浮かべながら言いカレンの部屋を去って行った。

 カレンは軽装に着替えレイが閉じ込められている警備厳重な場所に向かった。

 カレンたちの住んでいるドームは日本庭園風のただ住まいでドームの中心には池があり、池の真ん中に小さな島があった。

 その島には大きな鳥居があり神社らしき建物の奥底にレイが閉じ込められていた。

 カレンが島に舟で渡り鳥居を抜け神社の前に来た時、扉が開き二人の男が出てきた。

 「カレン様、レイ様にお会いになりますか。」と右側の男が言い、カレンが神社の中に進むと二人はカレンの後ろに着いて歩いていた。

 「お母様の具合はどう?」とカレンは後ろの二人に言った。

 「レイ様は、日に日に苦しみが増しているようです。カレン様、お気をつけて下さい。かなり危険な状態です。我々は怖くて近づけません。」と、男は下を向きながら答えた。

 地下道の突き当たりに頑丈そうな扉があり、扉からでさえ異様な不陰気が感じられた。

 「二人は、下がっていなさい。」とカレンが言ったので、後ろから着いてきていた二人は一歩二歩と下がった。

 カレンは、扉をゆっくりと開けた。

 扉の中から異様な妖気が流れ出した。

 カレンは暗く湿った牢屋のような部屋の中に入って行った。

 明かりが付き、女性の声がした。

 「カレンかい。」

 扉の奥に大きな椅子があり女性が一人座っていた。

 その座っている女性の手足や頭に鉄のリングが、嵌められていた。

 「磁力を小さくして。」とカレンが監視カメラに向かって言った。

 座っている女性は、うつむいていたが、徐々に顔を上げてきた。

 美しい女性の顔が現れた。

 髪は銀色の髪と緑の髪の毛が混ざっていた。

 「カレンなの。大きくなったわね。近づいて顔を見せて頂戴。」と、レイは優しい声で答えた。

 カレンは、ゆっくりと近づいて行った。

 「カレン様、そんなに近づいてはなりません。」と、扉の隅に隠れている男が言った。

 「カレン、この鉄のリングを取って、重くて重くて。」と、レイは涙目で言った。

 カレンが目の前まで近づくと、突然緑色の髪の毛が蛇のように動き出し、カレンに襲い掛かってきた。

 「もう、何日も食べていないんだ。お前を食わせろ。」と蛇がしゃべった。

 レイの顔は、先程の美しく優しい顔とは違い、恐ろしい顔となり緑色の髪の毛が蛇のように蠢き、まさにメデューサのようであった。

 レイがカレンに襲い掛かろうとした時、椅子の磁力が上がりレイは椅子に吸い寄せられるように座り込んだ。

 扉に隠れていた二人の男が慌てて出て来て口々に言った。

 「カレン様。お怪我はありませんか。」

 「大丈夫よ。」とカレンは言い足早にその神社を後にした。

 カレンが屋敷に帰るとサラとトーイが迎えに遣って来た。

 「お帰りカレン、お母様、元気だった。」と、サラが言った。

 「元気だったわよ。病気も良くなっているみたい。もう直ぐで治るみたいだから、そしたら会えるわよサラ。トーイともう仲良くなったの。」と、カレンが言った。

 「そう、トーイとは女友達で男友達なの。」とサラは嬉しそうに言った。

 そして、トーイと二人楽しそうに屋敷の中を走り去って行った。

 白衣で眼鏡を掛けた女性がカレンの隣に遣って耳元でささやいた。

 「先程、マリちゃんをトイレに行かせたのですが、あの、その、何にも無いんです。チ○コとかXXXが。タイヨウ君は左目と耳と脚力が異常に発達しているし、タイガ君は優しく泣き虫だけど物凄い力があるし、リョウ君は知能が異常に高いわ。だけど、トーイ君は他の誰よりも優れているわ。男でも女でも無く、男にも女にもなれる。究極の生命体よ。あんな子供たちになんて事をメイウェザーはやっているの。」

 「サチ。検査、ありがとう。後でカルテを見せてもらうわ。」とカレンは言い、そのサチ医師の肩を優しく叩いた。

 その夜、カレンは一人露天風呂に入り夜空を眺めていた。

 1時間前、火星王国の総大将バーンから共同作戦の話があり、カレンに火星王国に出頭要請があった。

 その見返りとしてサトミ婆さんの居所の連絡と1年分の食料を補給するものであった。

 火星王国の総大将バーンはドラゴン族1番隊長のアーサーの息子であり、父親はメイウェザーに殺害された。

 火星王国は衰退を極め、最盛期には108個あったドームを統治していたが、今や38個のドームだけが残っていた。

 ほとんどのドームはメイウェザーに攻撃されなくなったか寝返った。

 カレンの住むレイ国は独立し、火星王国から脱退したが、呼び出しが掛るほど火星王国は衰退していた。

 カレンはお風呂に浸かりながら、サトミ婆さんに育てられていた幼少時期を思い出していた。

 サトミ婆さんは優しく、火星王国で人質になっていたカレンを娘のように育ててくれた。

 次の日、カレンは火星王国第二の都市ドーム「ガイア」へと遣って来た。

 そして、そこで総大将バーンと数名の側近から作戦を聞いた。

 それは、火星の女王ミチヨ様の奪還後、ミチヨ様から火星の衛星上にあるソーラーシステムの操作を聞き出し最大熱源でメイウェザー軍を空から攻撃する作戦でもあった。

 総大将バーンはメイウェザー軍を食い止めている間に、カレンにミチヨ様を救出するよう命じた。

 どう考えてもカレンが一番危険な任務であった、

 力、数から言っても圧倒的に不利な状況をこれにより打開しようとする最後の作戦でもあった。

 作戦は3日後に行われる予定であった。

 総大将バーンは要塞ドーム「マーズ」に30万の兵力を集め、メイウェザーが住むドーム、黒い要塞都市「タイタン」の動きを監視していた。

 そして、3日後の戦いが始まった。

 メイウェザー軍は黒い要塞ドーム「タイタン」を含む5個のドームで100万の軍勢で対抗した。

 総大将バーンを筆頭とする火星王国軍はダチョウのような足と大きな羽を持ち顔はトカゲのような生物「リトワニ」に乗り戦闘スーツとリトワニにはミサイルを装備させ銃や盾と剣を詰め込み30万の兵士が一気に飛び立って行った。

 メイウェザーは要塞都市ドーム「タイタン」の中の王宮に居た。

 王宮は炎に包まれていた。

 メイウェザーもまた、左腕に宿した赤い炎のドラゴンに体を支配されつつあった。

 そして、我を忘れ王宮にいた人々を焼き尽くした。

 その中には息子、パッキャオもいた。

 赤ん坊のリカルド(出拓)は、乳母が危険を察知し王宮から逃げ出していた。

 戦いは大変な状態となった。

 火星王国軍と応戦するメイウェザー軍、そしてメイウェザーは城の中で大暴れを起こし見境無く人々を殺していた。

 カレンは、その様子を遠くから見ていた。

 「どう言う事、メイウェザー軍の指揮が乱れている。これなら、ミチヨ様とサトミ婆さんを見つけられそうね。」とカレンは言い数名の兵士を引き連れて戦闘バイクを走らせた。

 劣勢だったはずの火星王国がメイウェザー軍を押しはじめた。

 メイウェザー軍は逃げ惑った。

 前からは、火星王国が攻めてきており後ろからは我を忘れたメイウェザーが押し迫ってきた。

 カレンは、この様子を見て思った。

 何故、メイウェザー軍が一気に火星王国を攻めなかったのが、何故、ミチヨ様とサトミ婆さんを捕らえたのか、それは、メイウェザーもレイと同じく左手のドラゴンに心を奪われ肉体を支配されつつあったからだ。

 「皆聞いて、メイウェザーが自分の城の中で暴れ回っているわ。そのうちドームから出て、敵味方区別無く殺略すると思うわ。我々は要塞都市ドーム タイタンの後ろに回り機会を見計らって一気に城内侵入しミチヨ様とサトミ婆さんを救出するわ。」と、カレンは無線で仲間に伝えた。

 そして、10分後ドームタイタンから大きな火柱が上がり、中から炎に包まれ大きな翼を持った人間らしき人が飛び出てきた。

 「まさに悪魔ね。」とカレンは思った。

 カレンたちは、この間にタイタンに進入した。


 その頃、レイ王国ではサラとトーイがレイ王女が捕らわれている小島へ渡ろうとしていた。

 「トーイ、あの小島の中にお母様が居るのよ。お母様は病気でなかなか会う事が出来ないの。で、城の警備が手薄な今がお母様に会うチャンスなの、カレン姉さまだけが会ってばかりいてずるいから、私も会いに行くの。」と、サラは言い小舟に乗り小島を目指した。


 カレンと数名の兵士は、やすやすと城内に忍び込めた。城内は炎が燃え盛っており大勢の死体が転がっていた。

 城内の一番高い場所にミチヨ様とサトミ婆さんが捕らえられて居た。

 兵士たちが二人を発見しカレンに連絡した。

 二人共ほとんど機械の体の為、下半身が無く足が無いので動けず、普通の部屋にぽつんと座っていた。

 カレンはサトミ婆さんの下に遣って来た。

 「カレン、元気そうだね。助けてくれてありがとう。でも外では大変な事になっているようだね。」とサトミ婆さんが言った。

 兵士たちは二人を抱き上げて燃え盛る城から脱出する準備をしていた。

 ミチヨ様が兵士の背中におぶさった状態からカレンに話しかけてきた。

 「メイウェザーは完全にレッドドラゴンに支配されたよ。火星は、もう彼を止める者は居ない。あの巨大な力に立ち向かう者などいない。ソーラーシステムは強力だけど、あの動きを捕らえられる事は出来ない。」

 カレンは、考えていた。

 城に戻るとカレンはサトミ婆さんに別れを告げ、ブルードラゴンのカプセルがある研究所に遣って来た。

 そして、カプセルを取り出し蓋を開けカプセルの中に左腕を入れた。

 ブルードラゴンは目覚め、カレンの左腕に宿った。

 カレンから力が漲り溢れた。

 カレンはヘルメットもスーツも着ないままの軽装でドームの外に出た。

 火星は空気も少なく通常の生身の体では絶えられない環境であった。

 カレンは、ゆっくりと歩きながらメイウェザーの元に遣って来た。

 メイウェザーもカレンに気が付き炎の羽を羽ばたかせながら近づいて行った。

 二人は睨みあった。

 メイウェザーの炎、カレンの冷気がぶつかり合い地面が大きく揺れた。戦いは激しさを増した。

 

 その頃、サラとトーイがレイが閉じ込められている扉の前にまで遣って来た。

 「ここにサラのお母さんが閉じ込められているの。」とトーイは大きく重そうな扉を見て言った。 

 扉には電子ロックが掛けられていた。

 「こんなの、私なら大丈夫。簡単に開けられる。」とサラは言い電子ロックに手を触れた。

 「トーイ、危ないから離れていて。」と、サラが言うとトーイは一歩二歩と後ろに下がった。

 「行くわよ。」と、サラが言うとサラの髪の毛は逆立ち、高圧電流が流れた。

 そして電子ロックは解除した。

 サラとトーイは重い扉を開けた。

 中は暗く、ひんやりと冷たかった。

 サラとトーイは部屋の奥に座っている人影に気が付き、恐る恐る近づいて行った。

 「お母様、ですか。」とサラが言った。

 大きな椅子に座っていた女性は、うつむいたままであったが、サラの声に反応し顔をゆっくりと上げた。

 長く緑色と銀色の前髪が顔を隠していた。

 「サラなの、大きくなったね。会いたかったわ。サラお願い腕と足と首についている鉄のリングを解いて、カレンが危ないの。早くしないとお母さんの意識があいつに支配されてしまう。お願い。」

 サラとトーイはレイの腕と足と首に装着いている鉄のリングを取ろうとしたが鍵が掛っており外せなかった。

 「誰が、お母様に、こんな事を許せない。」とサラは言い辺りを見渡した。

 その時、ドームが激しく揺れた。

 外では、カレンとメイウェザーが激しく戦っていた。

 「サラ、お母さんの座っている椅子から凄い磁力を感じるんだ。磁力で引っ張られているから、お母さんが動け無いと思うんだ。磁力さえ無くなればお母さん動けるようになると思うよ。」と、トーイは言い椅子に取り付いてある太い電線を指差した。

 「トーイ、電線の表面ゴム切れないかな。」とサラは言った。

 「出来ると。」とトーイは言い、右手の人差し指に力を込めた。

 トーイの爪は伸び刃物のように硬くなった。

 「僕は、男でも女でもない中性人間、体を自由に変化させる事が出来るのさ。」とトーイは言い電線の外装に傷を付け中の電線が見えた。

 その傷口にサラは高圧電流を流し込んだ事によりブレーカーが落ちで椅子の磁力が消えた。

 レイは、立ち上がり手足を繋いでいる鎖を引きちぎった。

 「二人とも下がりなさい。そして、逃げなさい。私が私で無くなる前に、サラ、最後にあなたに会えて良かったわ。」とレイが言った。

 レイの髪の毛は緑色になり動き出していた。

 トーイは、その様子を見て危険を察知し、嫌がるサラの手を引いて洞窟を出た時、物凄い地響きと共にレイが飛び出してきた。

 トーイはサラを抱きかかえて池に身を投げた。

 レイは、ドームの天井を破り外に出た。

 ドーム内の空気が一気に外に出た。ドーム内に居た軍隊がドームの穴を塞ぐ白い液体を砲弾し塞いだ。

 レイは、カレンとメイウェザーの元に猛スピードで近づいて行った。

 カレンとメイウェザーの戦いは熾烈を極めた。

 カレンの冷気とメイウェザーの炎、徐々に非力に勝るメイウェザーが押してきた。

 緑色の閃光がカレンの横を横切った。

 その時、カレンの左腕は切り落とされていた。

 カレンは、その場に膝まついた。

 その緑色の閃光はレイであった。

 レイの緑色の髪の毛は蛇のように動き、まるでメデューサのようであった。

 「お母様、何故。」とカレンは苦痛で顔をしかめて冷気で左腕を凍らせ出血した。

 「貴女は私のように成ってはいけない。」とレイは言いレイの長い髪がメイウェザーの体に絡み付いて行った。

 「お母様。」とカレンは叫んだ。

 レイはメイウェザーの炎に焼かれながらも抱きかかえ話さなかった。

 「カレン。早く逃げなさい。」

 カレンは、左腕を抑えたまま動く事が出来なかった。

 その時、上空から総大将バーンが現れカレンをリトワニに乗せ、レイ王国の鯨ドームに逃げ込んだ。

 総大将バーンは早く逃げるよう指示したが、レイ王国のドームはレイが飛び出した際に機械の故障が発生しエネルギー切れで動く事が出来なかった。

 その時、カレンが左腕の応急処置をして現れた。

 「サラ ちょっと来て」と、カレンは言いサラをエンジンルームに連れて行き、電線を二つを両手に持たせた。

 「これ、どうするの」と、サラが言うとカレンは右手で強くサラの頭を叩いた。

 「カレン。うぁーっ。」とサラが泣き出した。

 サラから激しい電流が流れドームのエネルギーが充電されエンジンが高回転で回り始めた。

 「早くこの場から離れるわよ。」

 バーンとトーイは、その様子を一部始終見ており、カレンを悪女だと思った。

 その時、レイはメイウェザーと共に自爆した。

 レイは、カレンたちが乗っている鯨ドームが退避して行くのを確認して,一言言って目を閉じ自爆した。

 カレンは、レイの言葉を感じ取ってレイが自爆した方を見ていた。

 物凄いエネルギーの爆発でレイ王国の鯨ドームは間一髪逃げる事が出来た。


火星物語=第10章 ナオコ

 「これが、カレンの若き日の物語だよ。その頃のカレンは純粋で私の若い頃にそっくりで綺麗だったよ。」と、ミチヨ様は嬉しそうに語った。

 出拓とミカは、どう答えて良いのか分からなかった。

 「ミチヨ様、サトミ婆さんとカズエさん以外にもミチヨ様に似た人は居るの。」と出拓は聞いてきた。

 ミカは、出拓の右肩の上に乗り興味津々に聞いていた。

 「私のクローンは100体いたよ。しかし、今は、もうサトミとカズエともう一人ナオコの三人だけとなってしまったよ。」とミチヨ様は答えた。

 「何で、そんなにクローンが必要だったの。」と、ミカは出拓の周りを飛びながら聞いてきた。

 サトミ様は一瞬、ミカを睨んだのでミカは慌てて出拓の後ろに隠れた。

 「お前は何者だい。ふん。まあ、そう言う事かい。」と、ミチヨ様は笑いながら言った。

 ミカは気まずそうになり、その場を離れた。

 「最初は影武者のつもりだったんだよ。クローンを作り背中や手に番号を入れて管理してね。ミチヨやカズエはクローンとして出来が良く、赤ん坊から私が育てたので長生きもしたし私に忠誠を尽くした。が、私も永遠の命と美しさが欲しくなり大量に自分のクローンを生産し人体実験として使い研究したよ。若く美しい体の頃の私を作り魂ごと入れ変わらないか、とも考えた。例えばクローンAとクローンBの魂が入れ替われないかの実験もっした。今、考えれば恐ろしい事をしたと思うよ。私は我を忘れ誰かに支配されていたようだった。」と、ミチヨ様は言った。

 「で、どうなったんですか。実験は成功したのですか。」と出拓は聞いた。

 「私やサトミの体を見れば分かるだろう。失敗さ。100体のクローンは私の分身であり別の人間でもあった。しかも、皆同じ私なのでお互いに心は読めた。今もミチヨやカズエとは離れ離れになっているが話し合えるよ。良く、双子の兄弟がお互い心が通じ合えるのと同じだよ。テレパシーと言う物があるのなら存在したのだよ。100体の私が太陽系の至る所に居てもお互い感じあえた。だから、リカルドお前が生きているのも分かり、サトミとカズエに知らせた。それでカレンが地球に向かったんじゃあ。」とミチヨ様は答えた。

 「僕のお母さん。ナオコもミチヨ様のクローンですか。」と、出拓は聞いてきた。

 「そうだよ。リカルド。私の99体目のクローンがナオコじゃあよ。彼女は当時は二十歳前の女性で、あの燃え盛る炎の中、お前を助け地球に連れて行った。多分、カズエが予言しナオコにお前を託したんだろう。しかも、今までナオコの存在を感じることは無かった。地球の重力に魂を引かれ火星まで届かなかったんだろう。が、最近になって感じる事が出来たんじゃあ。理由は分からないが。」とミチヨ様が言いた。

 「母さんは火星の人。じゃあ、姉さんと父さんは。」と出拓は思った。

 「ナオコには子供はおらんよ。地球で子供の居る男と再婚じゃあないのか。」とミチヨ様が笑いながら言った。

 出拓は、母、ナオコの事を思い出していた。

 優しく笑顔の絶やさない母親であった。

 「クローンは私であって私じゃあ無い。魂は一つだよ。ナオコも私じゃあなく別の人間だ。性格はそれぞれ違う。私は生きて死の世界を感じる事ができたよ。」と、ミチヨ様が話の続きを話し始めた。

 「死の世界いって。」と、出拓が恐ろしそうな顔をしてつぶやいた。

 タイヨウとマリとミカはドア越しに隠れながら聞いていた。

 「リカルド、君は今、この世界に存在している。これは太古の世界から偶然今の世界に生まれたと思うかい。」とミチヨ様は出拓に聞いてきた。

 出拓は首をかしげた。

 「そんなのは、ありえない。宝くじに当たるより確立が低い。天道輪廻だよ。人は、また生まれ変わる。地球が出来てアメーバーからここまで幾多の進化をして遣って来た。全ての生物は原子と遺伝子DNAにより成り立っている。ドラゴン族は本来の人間の力を最大限にまで覚醒できる種族だよ。リカルド、お前は魔法を使えるだろう。あれは何故使える。」とミチヨ様は出拓に聞いてきた。

 「魔法て、炎を出すあれ、え~と、それは?」と出拓は考え込んでしまった。

 「お前は、原子を感じた事がないのか、炎は原子をぶつけ合い熱を発生させる原子力と同じ発想だよ。お前の親、メイウェザーが得意な技だ。電気系は原子を擦り静電気を発生させる。これは、サラが得意としている。もっとも難しいのが冷気。冷気は原子を凝縮させ一気に放出させる。液体を気体に放出させる、スプレー缶などを使用すると冷たくなるのがそれだよ。さらに人が霊などを見るのは、そこにDNAがあるからだよ。人が死んで憎しみのだけが残ると憎しみのDNAが存在する。それを感じれる人間が霊を見たりできるんだよ。」と、ミチヨ様は言った。

 出拓は、その話を聞いても何がなんだか分からなかった。

 「お前は、もっと勉強しなければいけないな、そうだろう。カレン。」とミチヨ様が言った。

 カレンは置くの方から出てきた。

 「ばれて居ましたか、ミチヨ様。」とカレンが出てきた。

 「いつから居た。」とミチヨ様が言った。

 「「カレンは純粋で私の若い頃にそっくりで綺麗だったよ。」と、言った頃からかな。返す言葉が見つからず出ずらくなってしまって。で、私から出拓を離して合った感想はどうでした。」とカレンは言った。

 「既に、サトミやカズエから感じとっていたが、お前は母親に似ているようだな。それにナオコがしっかりと愛情を持って育てたようだ。危険な存在ではないらしい。それでだリカルド、これからだけどまず父親に合いなさい。」と、ミチヨ様が言った。

 カレンとマリ、タイヨウは驚いた。

 「メイウェザーが生きているの。」とカレンの顔は強張り言った。

 「生きているよ。私が閉じ込めたのさ。」

 「何処に。」とカレンが聞いた。

 ミチヨ様は右手で上をさし言った。

 「ソーラーパネルの中に閉じ込めてたのさ。」


火星物語=第11章 アスカ

 カレンは直ぐにサラと連絡をとりソーラーパネルの中に入れるように手配を整えてもらった。

 その頃サラは、一つの問題を抱えており木星へと飛び立つ準備を行っていた。

 月のタンク大領領からの木星に同行するよう呼び出しがあったからである。

 木星は太陽系最大の資源国であり脅威的な軍事国家でもある事から月でも問題視しており、見過ごす事ができなくなっていた。

 木星のパッキャオの存在が脅威となっている為、月のタンク大統領自ら大型宇宙戦艦を20隻も引き連れて火星に遣って来た。

 火星で燃料補給と休息をとった後、木星に行く事になる。

 一方でパッキャオの使者からもサラの元に訪れ同盟の要求があった。

 若き火星の女王サラとしては非常に難しい選択をしなければいけない状態となっていた。

 サラは戦争だけは避けたいと思っており、頭を悩ませていた時、カレンから連絡があったので相談をした。

 カレンもその話の回答は非常に難しく、とにかくサラと一緒に木星に向かう事を決めた。

 その前にソーラーパネルに居るメイウェザーに会い、パッキャオの事を確認する必要があった。

 火星の上空、衛星上にはソーラーパネルが3基あり、その内の1基は内戦後に新しく追加した物であった。

 その新しいソーラーパネルの中にメイウェザーを閉じ込めたらしい。

 カレンと出拓、91号も一緒にソーラーパネルの中に入って行った。

 それはミチヨ様が何かの役に立つはずだと91号も入れて行く事を命じたからである。

 そして、小さい体を利用してミカも見つからずに着いてきていた。

 マリとタイヨウにリョウとタイガーの四人は、ソーラーパネルまで遣って来たシャトルの中に残りソーラーパネルの近くで待機していた。

 カレンと出拓は宇宙用スーツとヘルメットをしてソーラーパネルの中に入っていたが91号はロボットの為、特別な格好をしていなかったが、ミカも特別な格好をしないままソーラーパネルの中に入っていた。

 「ミカ。君は空気の無い中でも大丈夫なの。」と、出拓は聞いてきた。

 「空気あるわよ。この中。気温も気圧も良好よ。」とミカは飛びながら答えた。

 カレンはヘルメットのバイザーにデータを映し出し、ソーラーパネルの中の空気状況を調べていた。

 調べ終わるとヘルメットを脱いだ。

 「本当、この中はコロニーみたいね。こんなスーツ動きづらいから脱ぐわ。」と、カレンは言いスーツを脱ぎ軽装となった。

 出拓も脱ぎ始めた時、出拓は何か巨大な気配と威圧力を感じた。

 それは、火星に着いた時に感じた感覚と似ていた。

 「この威圧感、この奥にメイウェザーが居るようだね。」とカレンは言った。

 メイウェザーは、カレンの母レイの自爆と一緒に爆破されていたが左腕のレッドドラゴンが辛うじて残り蘇生をはじめていた。

 サトミ様は、力が弱まって体が完全に出来上がっていないメイウェザーを回収後、ソーラーパネルの中に閉じ込めた。

 91号は、その時数名のスタッフと一緒にその作業を手伝っており、このソーラーパネルのシステムの鍵としての役割があった。

 出拓とカレンたちは、メイウェザーの閉じ込められている扉の前まで遣って来た。

 異様な圧迫感と妖気を感じた。

 カレンは以前にも同じ威圧感を感じた事があった。

 それは、母、レイが閉じ込められていた独房から感じていたものと同じであった。が、この扉からはレイ以上の圧迫感を感じていた。

 91号が扉の前に立ち、右腕の指先を扉の鍵穴に入れ回しロックを解除した。

 「ロック ヲ 解除 シマシタ。扉 ヲ 開ケル 事ガ出来マス。」と、91号が言った。

 出拓とカレンは顔を見合わせて頷き、出拓は重い扉のレバーをゆっくりと開けた。

 扉が開くと暗い部屋の一室の一点にライトが灯った。

 ライトの照らされた場所に椅子があり、その上にやせ細った一人の男が座っていた。

 レイの時と同じく鉄のリングを体中に取り付けられ強い磁力により押さえつけられていた。

 更にメイウェザーの体には数多くの管が取り付けられており少量の水と栄養を与え、得たエネルギーをソーラーパネルの動力源として吸収されていた。

 「リカルドか、来る頃だと思ったよ。火星からお前の気を感じていたからな。」と、やせ細った体と長い銀色の毛のメイウェザーがうつむいた状態から話した。

 そして、左腕に宿しているレッドドラゴンが出拓の元にゆっくりと伸びてきた。

 まるで蛇のようであった。

 ミカは出拓の後ろに隠れた。

 「面白い者を連れて来ているな。」とレッドドラゴンがしゃべった。

 「俺に何が聞きたい事があるのか、リカルド。」と、メイウェザーが顔を上げながら言った。

 磁力が一時的に弱まった。

 メイウェザーの顔は痩せ細っていたが両目の眼光は鋭かった。

 「母と兄パッキャオについて知りたい。」と出拓は言った。

 メイウェザーは薄笑いを浮かべれ、話始めた。

 「お前の母、アスカは、ムサシと言う名の小さなドームの巫女であった。そして、俺のレッドドラゴンを押さえつけられる唯一の女性でもあった。俺は元々その村で生まれた。父親は化け物に成り果て火星王国に捕まったが、赤子の俺を巫女たちが匿ってくれた。アスカは、幼馴染で生まれながらにして強い霊力を持っていた。しかし、妖怪婆、ミチヨによってアスカは捕らえられた。レッドドラゴンを制御できる者を失った俺は、城の奥でもがき苦しみ徐々に心を奪われていき、恐怖だけが支配して行った。」

 出拓とカレンは、一歩二歩とメイウェザーに近づいて行った。

 「ソレ以上ハ危険、離レテ下サイ。」と91号が言った。

 「それで、私との戦い前、城の中で何が起きていたの。」と、カレンは聞いた。

 レッドドラゴンは、メイウェザーの体を周りながらカレンの方を見ていた。

 レッドドラゴンも蛇のよう細く、ほとんどのエネルギーをソーラーパネルの動力源に吸われていた。

 そして、小さな声でレッドドラゴンが答えた。

 「あの時は、俺の意思が支配していたのさ。メイウェザーはアスカを失った事による心の同様があった。俺は全てを破壊した。パッキャオは赤子のリカルドを助けた為、俺に戦いを挑み焼き尽くされた。手足は焼かれ今なお体は炎に包まれ燃え盛っている。燃える炎は止める事は出来ず鎧により押さえつけ細胞の活性を今も繰る返しているはずだ。冬のカレン、お前に一言、言おう。」

 「何を。」と、カレンは言った。

 「お前の左手に宿した青きドラゴンは今も生きている。」とレッドドラゴンは答えた。

 「嘘、何処にいるの。」とカレンは言った。

 「パッキャオが持っている。」と、メイウェザーが答えた。

 「パッキャオが。」と、カレンが驚いたように言った。

 「ミチヨのババは、とんでもない妖怪だよ。あいつはアスカを利用し俺をこの中に閉じ込めた。パッキャオについては焼きつかれ体を失っていることからお前のブルードラゴンを体に埋めつけ体の再生機能を上げ、鎧で封印し、寂しい木星の地へと島流しにしたのさ。」と、メイウェザーが言った。

 「まあ、色々な偏見はあるわね。で、パッキャオは何故、あんなに巨大な国を作ることが出来たの。」と、カレンは聞いてきた。

 「それは、知らん。俺は、ずっとここに閉じ込められているからな。自分の目で確認する事だ。」とメイウェザーは言った。

 「それは、これから木星に行き調べるわよ。」と、カレンが言った。

 「くれぐれも焼けどしないように気を付けるんだな。それと、リカルドに取り付いている人形、本体は何処にいる。」とメイウェザーは言った。

 出拓はミカの方を見たのでミカは出拓の後ろに隠れた。

 「ミカ サン ハ ニンギョウ デス。イキモノ デハ アリマセン。」と91号が言った。

 ミカは困った顔をした。

 「黒きドラゴン。ナイトドラゴンを何処に隠している。」とレッドドラゴンがミカに興奮し迫ってきた。

 「そんなの知らないわよ。」と、ミカは飛びながら怒って言った。

 その時、レッドドラゴンはミカに飛び掛って来た。

 出拓は、ミカの前に立ちレッドドラゴンを払いよけた。

 

 「何をするんだ。」と、出拓は言った。

 「キケン!キケン。」と、91号が言った。

 すると、メイウェザーが座っている磁力が強化されメイウェザーとレッドドラゴンは押さえつけられた。

 「リカルド。お前。女の夢を見ないか。そいつが、こいつの本体だ。お前にとって災いとなるのか助けになるのかは俺には分からない。アスカもそいつと一緒に居るはずだ。まず、兄に会え。」と、メイウェザーが苦しみながら言った。

 時間切れであり、部屋は暗くなり緊急警報が鳴り響き出拓とカレンたちは部屋から出た。

 カレンはリョウに連絡しシャトルで迎えに来るよう依頼した。

 カレンはシャトルに戻ると皆を呼び指令を出した。

 「これから、私はサラたちと一緒に木星に行くわ。付いてくる人は居る。」と、カレンが言った。

 全員、頷き手を上げた。

 解散後、出拓はミカを探したがミカは何処かに隠れて見つけることが出来なかった。

 その時、カレンは出拓の首を押さえつけて耳元でささやいた。

 「女の子の夢、毎晩見ているのね。その後、一人で何しているのかな。」

 「いえ。何にもしてないですよ。誤解です。誤解ですよ。」と出拓が慌てた。

 「女の子の夢て何。」とマリが出拓に近づいてきた。

 「何でも無いです。」と出拓は慌ててマリから離れ逃げたのでマリが出拓を追いかけて行った。

 カレンは91号に近づき横に立ち言った。

 「もう出てきなさい。ミカ。」

 ミカは、91号のお腹のポケットから顔だけ出した。


火星物語=第12章 トーイ

 サラは月のタンク大統領と共にレッドマーズ号と他5隻の宇宙戦艦を引き連れて木星へと向かった。

 出拓とカレンたちはレッドマーズ号とは別の宇宙戦艦に乗っていた。

 宇宙戦艦は全てプラズマを燃料とし動かされる。

 プラズマは、固体、液体、気体、原子、そして原子の周りを電子を分裂させる。

 宇宙空間では摩擦抵抗及び重力が無いため重さによる抵抗が関係なくプラズマ加速を利用し大きな宇宙戦艦を動かす。

 原理は簡単で核となる物質をプラズマ加速にて飛ばす、宇宙戦艦はその核に引っ張られるように進む、摩擦力の無い宇宙空間では一瞬でも引っ張られれば高速で進む事が出来る。

 方向を変える時は別の核となるプラズマを飛ばせばいい。

 これにより画期的な速さで宇宙空間を飛ぶことが出来る。

 宇宙戦艦は高速で木星を目指した。

 サラはレッドマーズ号の個室から外の様子を見ながら、現状の火星の立場が非常に厳しいもので有るのを理解し考え込んでいた。

 軍事力、資源等では月を中心とする地球防衛軍と木星の帝国軍にも勝てない。

 その中でも月は巨大な力を要しているが、木星の帝国軍と火星王国が手を組めば地球の軍をも凌ぐ力を持つ事になる。

 火星王国としてはどちらと手を組んで良いのか、悩むところであった。

 月と共同して木星の帝国軍を叩けば、月は更に巨大な力を持ち貧富の差が拡大してしまう。

 タンク大統領の噂は悪く独裁政治的であり、女癖も悪く、太陽系に存在するコロニーなど多くの住民に憎まれている。

 タンク大統領は、以前は月の軍事施設で働く軍人であったが、ひそかに月の軍事力を強化しカリスマ的なやり方で部下を集めていった。

地球に政治家や幹部たちが集まった時を狙いクーデターを起こし月近辺にある太陽光源エネルギー施設を暴走させ地球の大陸を空から焼き尽くし海に沈めた。

それにより多くの人々が犠牲になったが、彼は地球に居るおろかな者に天罰が合ったのだと言い地球に変わり月が政権を握る事となった。

 一説には、タンク大統領を動かした影の女性が居るとも噂された。

 火星もその頃は混乱しており、その地球の混乱に乗じてナオコは出拓を連れ地球に辿り着いた。

 しかし、サラは木星の帝国軍に力を貸した場合も考えてた。が。パッキャオは更に得体の知れない人物であり、火星にとってプラスとなるのか疑問であった。

 それを確かめなくてはいけなくタンク大統領に同行する事とした。

 サラは19歳にして火星の運命を大きく担う事となった。

 木星は太陽系で一番大きく重力も大きい、ほとんどがガスで覆われており、パッキャオ率いる帝国軍は、木星にある衛星の中に都市国家を創り生活している。

 以前の木星は資源を求める出稼ぎ業者だけであったが、パッキャオは、ここに強大な都市国家を建設した。

 この木星帝国は謎だらけであり、今回サラたちは、この謎も解明しようとしていた。

 レッドマーズ号は木星帝国衛星都市ジュピターに遣って来た。

 「これが、パッキャオの居る衛星都市ジュピター。」とサラは言い驚いた。

 出拓とカレンたちを乗せた宇宙戦艦からもその姿が見えた。

 衛星都市ジュピターは硬い鉱石からなる衛星で地盤の柔らかい部分に洞窟のような穴を造り、それを利用し住居区を建設して行った。

 その居住区の穴の中にブラックジュピター号も見えた。

 月の地球防衛軍の宇宙戦艦が衛星都市ジュピターを取り囲んだ。

 すると、ブラックジュピター号が動き出しゆっくりとタンク大統領がいる地球防衛軍最強戦艦アキュムレータに近づいて行った。

 宇宙戦艦アキュムレータは、戦艦と言うよりは要塞である。

 巨大な円形状の鉄板の上下に主砲や居住区に宇宙戦闘機が大量に搭載されていた。

 宇宙空間なので重力の影響を受けないので強固な骨組みは必要なく、要塞を動かす動力源は四方八方にプラズマ加速を飛ばし動かしている。

 ブラックジュピター号は周りを地球防衛軍の宇宙戦艦に囲まれた間をする抜け要塞型宇宙戦艦アキュムレータに到着した。

 火星のレッドマーズ号も宇宙戦艦アキュムレータに到着した。

 出拓とカレンたちを乗せた宇宙戦艦はゆっくりと衛星都市ジュピターに近づき、皆の視線が要塞型宇宙戦艦アキュムレータに行ってる隙に、目立たないように宇宙艇を発進させゆっくりと衛星都市ジュピターを目指した。

 サラはトーイを同伴しタンク大統領の待つ会議室に案内された。

 トーイはサラと同じような女性の格好をしていた。

 ミニスカートは嫌で薄青いパンツを履いていた。

 サラは19歳と若く薄青いミニスカートをはいていた。

 地球の兵士の案内の元、指示のあった席に着席した。

 5分後、パッキャオも兵士5人を引き連れて遣って来た。

 いつもどおり5人の兵士は全身黒タイツの上に防弾チョッキとおかしなお面をつけていた。

 その中に女性らしき体つきの兵士が一人居た。

 彼らも、地球の兵士の指示した席に着席した。

 サラはパッキャオの黒い鉄火面と鎧の中から燃え盛る炎を感じ取れたので、彼が本物のパッキャオであると断定できた。

 タンク大統領は白髪で太った体を揺らしながら席に着席した。

 「火星の王女及び木星の皇帝よ。わざわざお招き上がり、ご苦労様です。」とタンク大統領が言った。

 「わざわざって、自分が命令したんじゃあないの。」とトーイが小声でサラに言った。

 タンク大統領は、直ぐに本題に入りサラとパッキャオに言った。

 それはとても受け入れがたい内容であった。

 木星については、レアアースなどの鉱石を今の半分以下で売れという内容で更に地球より調達している食料品価格を2倍にするものと軍事調達の支援であった。

 名目上は地球の限られた資源を守るものであったが、それは月を中心として全ての資源や食料の在庫を一斉に管理するものであった。

 月が有利な意図が完全に分かる内容であった。

 資源を管理することにより木星、火星の軍事力を弱め太陽系全てを支配するものであった。

 火星にはソーラーパネルの修理と新しいソーラーパネルの支給を行う事を公約に上げてきた。

 木星については、1年分の食料の支給と老朽化したコロニーの住人を木星に移住させる要求もあた。

 パッキャオの隣にいた女性兵士が口を開いた。

 「我が国は食料の乏しい国家で国民は貧困にあえいでいますので、とてもこの内容は受け入れられる内容ではありません。木星はガスに覆われた惑星でレアアースなどの特殊鉱石採取は非常に危険な作業です。コロニーの住民は言い辛いのですが宇宙病が多く重力の重い木星では生活や労働には適した人間ではありません。それに地球や火星と比べ太陽から遠く作物は育ちづらい環境にあり生活は非常に厳しいです。よって、こちらとしては木星の資源は今までの3割高と地球からの食品の価格の30%減を望みます。これが各鋼材の価格選定です。」と女性兵士は言い各鋼材の値段をパネルに表示した。

 タンク大統領はニヤニヤと笑いながら言った。

 「サラ王女はどうだい。ソーラーパネルの修理と新規1台の支給と5年間の食料救済を今までの3倍としよう。その代わり火星には太陽系の警備の任務を行ってもらいたい。」

 サラは考えていた。

 これを受け入れれば木星に対しての警備も強化しなければならず、税金の徴収なども余儀なくされ木星を敵に回す事になる。

 「それについては即答は出来ません。」とサラは答えた。

 木星の帝王パッキャオが重い口を開いた。

 「ソーラーパネルと軍事支援を火星に行おう。その代わり食料の援助をお願いしたい。」

 「馬鹿な事を言うな。月の承諾もなしに勝手に他国間で話あっては困る。」とタンク大統領が怒鳴った。

 パッキャオの鎧と鉄火面から炎があふれ出た。

 月の軍隊は一斉に銃をパッキャオに向けた。

 「パッキャオ様、お静まり下さい。」と女兵士が言った。

 トーイはタンク大統領の前に立ち壁となった。

 「タンク大統領、大丈夫ですか。」とトーイは言った。

 「これは、いつぞやの火星の女。私は大丈夫だよ。」とタンク大統領は嬉しそうに言った。

 パッキャオの周りには月の兵士が取り囲んでいた。

 サラも立ち上がり右手を後ろに回し、周りに見えないように左手を隠した。

 右手には電気がピリピリと光っていた。

 しかし、パッキャオの体から炎が溢れたし燃え上がり周りにいた月の兵士を次々と焼き尽くしてしまった。

 女兵士はパッキャオの壁となり言った。

 「パッキャオ様、早くお逃げ下さい。」

 サラは電気をパッキャオに向け放ったがパッキャオは、それを炎で返した。

 「逃げたぞ。追え、追え。ひっ捕らえよ。」とタンク大統領は言った。

 「タンク大統領は危険ですので早く、お逃げて下さい。」と、トーイは言いタンク大統領の手を引いて人気の無いところに連れ出した。

 タンクは嬉しそうに引っ張れていたその時、トーイは辺りを見渡して人が居ないのを確認してからタンク大統領の後ろに回り込んだ。

 タンク大統領は後ろを振り返りトーイの姿を見て驚いた。

 「お前は。」とタンク大統領が言った瞬間、トーイは右人差し指の爪を長く鋭く硬く伸び、タンク大統領の後頭部に刺した。

 タンク大統領を刺した爪は左目から後頭部を突き抜けた。

 「母が、もうあなたはいらないって。」と、トーイが小声でタンク大統領に言いた。

 一呼吸置いて他の月の兵士が駆けつけた時、トーイは大声で泣き叫んだ。

 「タンク大統領がパッキャオに殺された。」とトーイは言いながら右手からシムジウが数体出てきた。

 

 パッキャオは間一髪、ブラックジュピター号に戻り船を出航させた。

 月の軍隊は一斉に木星の衛星都市ジュピターに攻撃を仕掛けた。

 出拓とカレンたちは何事が起きたか分からないが、攻撃を回避しながら速度を上げ出拓たちを乗せた宇宙艇は衛星都市ジュピターに辿り着いた。

 サラは、レッドマーズ号に戻ったがトーイが戻らず心配していた。

 月の宇宙戦艦は衛星都市ジュピターの固い表面をなかなか打ち壊す事が出来ないでいた。

 すると、衛星都市ジュピターは内部爆発をし、その硬い鉱石の破片が飛び散り次々に月の宇宙戦艦を撃破していった。

 破片の中には全身タイツの兵士が隠れている破片もあり戦艦に命中すると宇宙戦艦に中に進入していった。

 全身タイツの兵士の腕が伸び四つ栄え(四足歩行)になり、蜘蛛のように動き出しお面の口から無数触覚が伸び、その触覚が人の体を次々と貫いて行った。

 逃げ惑う人々をあざ笑うかの様に触覚は何百メートルも伸び次々と人体に貫通して行き殺して行った。

 レッドマーズ号は要塞型宇宙戦艦アキュムレータに留まっていたお蔭でアキュムレータが盾となり飛び散った鉱石を最小限に留める事が出来た。が。全身タイツが隠れている破片は方向を変える事が出来、レッドマーズ号にも破片が刺さった。

 中から5体の全身タイツ兵士が出てきて、口から長い触角を出し次々と火星の兵士を殺して行った。

 サラは、直ぐにその場所に駆けつけた。

 サラはの体から電気が発生しており、銀色の髪の毛は逆立っていた。

 「皆、早くこの場を退避して、雷を落とすわよ。」とサラは言った。

 火星の兵士たちは応戦するのを止め一目散に逃げて行った。

 サラの体は青白く輝き始めた。

 そして、5体の四足歩行になった全身タイツ兵士の口から無数の触覚がサラに攻撃をした。

 サラは両手を上に挙げ、力を込めて両手を下げた。

 高圧電流が触覚流れ次々と全身タイツが倒れて行った。

 サラは倒れた全身タイツに近づいて行った。

 お面が外れ黒焦げで破れた黒タイツだけとなり中身が無かった。

 「これは、どういう事なの。」と、サラは思った。

 敵の攻撃を想定していない要塞型宇宙戦艦アキュムレータは無残にも崩れていった。

 サラはトーイが戻らないのを心配したが、これ以上は絶えられないと思いレッドマーズ号を出航させ、他の火星の戦艦も退避させるよう命令した。

 崩れ去った衛星都市ジュピターから軍事要塞が姿を現した。

 黒く冷たい鋼鉄の球体で主砲が無数に装備されており四方八方から攻撃できる構造をなっていた。

 サラは、コックピットに戻り衛星都市ジュピターを見た。

 「これが、ジュピターの本当の姿なのね。攻撃してくるわね。一旦後ろに下がり様子を見ましょう。それと何隻、戦艦が残っているのか確認して、彼らにも退避命令をだして。」と、サラは言った。

 「マゼラ大尉とバーン大佐の2隻と残り1隻の計3隻です。」と一人の兵士が答えた。

 「木星の裏に周り戦況を確認しましょう。」とサラが命令を出した。

  一方、司令官のタンク大統領を亡くした月の軍隊は、残った宇宙戦艦を集め戦闘機を出し黒い鉄鋼の球体に攻撃を仕掛けて言ったが返り討ちに会い、ほぼ全滅の状態で退避して行った。

 レッドマーズ号は木星の裏に周り戦況を見つめていた。


火星物語=第13章 ユミコ

 出拓たちは宇宙艇の中で声を殺して戦況を見守っていた。

 衛星都市ジュピターの中は静まりかえっており人の気配がまったくなかった。

 宇宙艇の扉を静かに開け、マリとタイヨウが顔を出した。

 タイヨウは辺りを見渡したが、彼の左目からは生命らしい熱源体を確認する事はできなかった。

 「どういう事なの、皆外の戦場で戦っているて事。」とカレンは小声で言った。

 するとミカが宇宙艇から出て外の様子を伺い大声で出拓の下に戻ってきた。

 「出拓、ここには誰も居ないわよ。」

 「わ、わ。ミカ、静かにしろ。」と出拓は慌てた。

 「あの子て何なの。」とマリは言った。

 そして、リョウと91号を宇宙艇に残し戦闘用宇宙服に身にまとい出拓たちは外に出た。

 戦闘用宇宙服は薄く動きやすいが丈夫に出来ており表面は薄いレーザーコーティングの膜に覆われており、万が一破れても一時的には宇宙空間でも凌げるようになっていた。

 しかも、木星は重力も重く普通に歩いても疲れてしまう為、宇宙服の間にガスを入れ軽くして動きやすくしていた。

ヘルメットのバイザーはタッチパネルになっており指を当てると無線や双眼鏡などの機能も備えていた。

 靴は無重力になった場合でも床につける吸引性と磁力を持ち、レーザーコーティングできる剣と右腕に装備できる大砲を腰ベルトに装備していた。

 当然、宇宙服には酸素ボンベとエナジードリンクにオムツ機能も装備されていた。

更に飲み水などは排水から浄水して供給できる用になっており、背中には宇宙空間に投げ出されても動けるような簡易的ボードを装着されていた。 

 出拓たちは二手に分かれた。

 マリ、タイヨウ、タイガは宇宙艇を守りつつ近辺の調査をし、出拓とカレンは奥へと調査をする事にした。

 ミカは、出拓の後を付いて行った。

ミカは、普通の格好をし出拓の周りを飛んでいた。

 一方、戦況を見守っていたサラは火星の戦艦を集め、月の艦隊の敗戦が決まったのを確認するとクイーンとジャックを出し北、南、東、西の4方向に別れ木星の衛星上をぐるっと半周りし、衛星に隠れながら衛星都市ジュピターに近づいて行った。

 一隻の地球の宇宙戦艦が早々に木星を脱出したをバーン大佐が見ており、サラに報告をした。

 衛星都市ジュピターの中は人の気配がまったく無く、出拓とカレンはすんなりと奥へと進んで行けた。

 「どう言う事、まったく人の気配がしない。全身タイツの中身が、この中を歩いていると思ったんだけど、どんな姿をしているのか確認したかったんだけど。」とカレンは無線越しに出拓に言った。

 「外も静かになり戦況も落ち着いたみたいだ。どうなったんだろう。サラさんは無事かな。」と、出拓は言った。

 「サラは無事よ。彼女の気を感じるわ。それより、ここはどうなっているの。薄気味悪いくらい。まったく人の気配がない。」とカレンは言った。

 出拓とカレン、そしてミカは中心部へと遣って来た。

 そこには、いかにも怪しい部屋があった。

 出拓とカレンは、辺りを確認しながら中心部のある部屋に静かに入って行った。

 部屋の中は薄暗く人が入れる位の大きなのカプセルがいくつもあった。

 「カレン見て、このカプセルの中に全身タイツの服が入っている。」と、出拓は不思議そうに言い辺りを見渡した。

 「それに壁にはお面が一杯飾られている。」と出拓は言いお面の方を指さした。

 その時、一つのカプセルが光だした。

 3人は慌てて他のカプセルの隙間に隠れ光ったカプセルの様子を伺った。

 カプセルに入っていた全身黒タイツは膨れ上がり人の形となった。

 そして、カプセルは静かに開き、中から全身タイツの男が立ち上がった。

 顔の部分は白く薄っすらと人の顔らしき映像が映った。

 そして、その全身タイツの男は壁に飾ってある仮面を被り、何も無かったように部屋を出て行った。

 出拓とカレンは顔を見合わせて今の様子、状況を確認しあった。

 「い、い、今の何、全身タイツて、あんなふうに出来ているの。」とカレンが驚いて言った。

 「ど、どう言う事。どうやって創っているの。」と出拓も言った時、ミカが二人を呼んだ。

 「この奥に扉があるわよ。」

 出拓とカレンはミカが指差した扉に近づきゆっくりと扉を開けた。

 三人は奥の部屋を見て更に驚いた。

 そこは大きなドーム状の部屋となっており、中には沢山のカプセルが有り、その中に人らしき者が入っていた。

 裸で毛が無く、手や足の指は退化して小さくなっていた。

 その中の一体とミカの眼が会い、ミカは慌てて出拓の元に飛んできた。

 「これは、何。これが木星の正体なの。」と、カレンが言った。

 「なんとなく分かってきた。この人たちが全身タイツの人間なんだ。僕が地球で全身タイツに捕まった時、中は空洞だった。だけど人の気配はしていた。あの服の中に魂だけ履いていたんだ。」と出拓は言った。

 「私も分かったわ。なぜ、木星が急に大帝国になったか。このカプセルで人を作り上げ、あの全身タイツに魂だけ入れているのね。火星のクローン技術とミチヨ様が遣っていた魂の入れ替えの技術なのね。」と、カレンが言った時、物凄い殺気が部屋中に伝わってきた。パッキャオが部屋の中に入って来たのだ。

 出拓とカレンは身構えた。

 パッキャオは階段を降り、出拓とカレンに近づいて来たが、階段を下りた所で座り込んだ。

 「カレンとリカルドか。」とパッキャオは言った。

 「これは、何なの。パッキャオ。」とカレンが言った。

 「クローンだよ。未完成のな。火星で行っていた技術の応用だよ。彼らはカプセルの中しか生きられない。魂だけの生き物だよ。その魂をスーツの中に入れ形となす。」とパッキャオは答えた。

 「スーツて、あの全身タイツの事。」とミカが言った。

 「面白い者を連れているなリカルド。もう、俺は疲れたよ。俺のこの体は燃え盛り焼け続けている。鎧で進行を抑え、焼けた部分から細胞の活性化をし生きてきたが、もう駄目らしい。奴が目覚める日が近い、俺には奴と戦う気力がもう無いよ。」とパッキャオは疲れ切った声で話した。

 「奴て、誰。」と、出拓が聞いてきた。

 「黒龍だよ。リカルド。」とパッキャオは答えた。

 「黒龍、ブラックドラゴンの話は聞いた事があるけど、もうドラゴンは居ないのでは。」と、カレンが聞いてきた。

 「そこに居る。人形が知っているはずだ。」とパッキャオはミカを指差した。

 出拓はミカの方を向いた。

 ミカは気まずそうな顔をしていた。

 「ミカ。君は何者なんだ。メイウェザーも何か言っていたようだし。」と出拓はミカに聞いてきた。

 「時が来れば話します。私も分からない事が多くあり、それを知りたいくここに居るのです。」とミカは飛ぶのをやめて出拓の頭の上に座った。

 「リカルド、ナオコは元気だったか。」とパッキャオは言った。

 「母さんは元気だよ。でも、僕は別れも告げづにここに来た。お前に連れ去られてな。」と、出拓は怒った口調で言った。

 「それは誤解だよ。俺はナオコの姉に頼まれてお前を保護しようとしたんだ。しかし、そこに居るカレンもミチヨに頼まれてお前を保護したらしいが。」とパッキャオは答えた。

 「お母さんの姉。」と、出拓が言った。

 「そこの奥のカプセルを見て見ろ。」とパッキャオは遠くのカプセルを指差した。

 出拓は驚いた。

 そこには母に似た裸の女性がカプセルの中に入って寝ていた。

 「この人は誰なんだ。」と、出拓は言った。

 「ナオコの双子の姉、ユミコだよ。ミチヨは全身火傷の俺とユミコをこの木星の地に連れて来てた。そして、俺たち二人は、この暗い地で過ごすしかなかった。俺たちをあいつから守り保護するためにミチヨは俺たちを木星に追いやった。しかし、俺はもう一度戦う事とユミコをカプセルから出したい思いから奴らを創った。火星の技術を貰いうけ木星帝国を創り上げた。」とパッキャオは言った。

 「保護、戦うって、誰にだよ。」と出拓は怒りながら言った。

 「黒龍よ。」とミカは言った。

 「黒龍。」と出拓はミカの方を見て言った。

 その時、カプセルの中で寝ていたユミコが目覚めて言った。

 「教えてあげましょう。本当の事をリカルド。これは、ミチヨ様も知らない事です。」

 「ミチヨ様も知らない事。」と、カレンが言った。

 「そうさ、知らないよりは、知りたく無い事かも知れない。何故ミチヨは体が無いのだと思う。」と、パッキャオは薄笑いながら言った。

 「メイウェザーに奪われたから。」と、出拓は答えた。

 「父、メイウェザーは何故、自らレッドドラゴンと融合しミチヨの体を奪ったのだ。」と、パッキャオは言った。

 「ま、まさか。」と、カレンは驚いたように言った。

 そして、ユミコが静かに語り始めた。

 「そうです。ミチヨ様は黒龍に体を奪われてしまったのです。火星のマーズワン計画は失敗に終わり居住区にはシムジウが支配していました。ミチヨ様は科学者として人間の体内に居たシムジウの研究をし人類が火星で安全に生活できる事を夢見ていました。しかし、ソーラーパネルが火星衛星上に設置され火星の表面積を温めた時、偶然にも氷の中からある人間の左腕が出てきました。その左腕は光り輝き、この世の物でないようで細胞すら取り出せませんした。そんなある日、左腕が近くにあるとシムジウたちが騒ぎだしたのにミチヨ様は気がつき、その左腕をシムジウの入っているカプセルに入れました。するとシムジウたちは、その左腕の細胞に食らいつきドラゴンの形へと変化して行ったのです。」と、ユミコは言った。

 「その話は、ここに来る前にミチヨ様からも聞いた。そして、Y氏がイエロードラゴンと融合した。」と、出拓は言った。

 「その話には裏があって、その前にミチヨ様が黒龍と融合していたんです。黒龍は非常に知能が高かった。カプセルの中で愛くるしい仕草をしミチヨ様の心を掴み催眠術のような物で少しづつミチヨ様の心を支配して行った。そして永遠の美しさを条件にミチヨ様は黒龍と融合し、ドラゴンの適正があると思ったY氏を言葉巧みにだまし黄龍と融合させた。黒龍はミチヨ様の体を支配し巧みに力を付けて行った。火星、そして、この太陽系も支配しようとしているのにアスカ様が、その事に気がかれました。そして、メイウェザーは黒龍に対抗すべく赤龍と融合しました。」と、ユミコは静かに話した。

 「じゃあ何故、僕が保護されなければならないんだ。」と出拓は言った。

 「黒龍は自分に対抗できるドラゴンを恐れている。ドラゴンを使いこなせるのは、ドラゴン族だけだからな。そして今、黒龍は新しい体を干している。」とパッキャオは言った。

 「新しい体って、」とカレンは言った。

 「そいつは、黒龍にもっとも適合できる人間として創られた男でも女でもない人間だよ。」とパッキャオは言った。

 「マリ。」と出拓は言った。

 「いや、マリの体は女性へと進化した。するとトーイが適合者となるわ。彼らは黒龍が創りだしたの、だからマリとタイヨウはミチヨ様を凄く怖がるんだわ。」とカレンが言った。

 「じゃあ。黒龍は何処に居るんだ。」と出拓は言った。

 「月よ。」とミカが言った。

 「月。」と、出拓とカレンは口をそろえた。

 「月の裏、太陽の日が当たらない表面に結界を張って動けないでいるわ。」とミカが言った。

 そして、出拓は地球に居た時、月から強い視線を感じていたのを思い出していた。

 「15年前のあの日、城の中がどうなっていたを話そう。」とパッキャオは言った。


火星物語=第14章 黒龍

 火星王国に反旗の旗を上げたメイウェザーの元には、火星王国の遣り方に不満を持つ者や貧しく苦しめられた人々が日々集まり火星王国に匹敵する大きな国となった。

 今や火星王国を脅かす唯一の存在でもあった。

 メイウェザー軍の主要要塞都市ドーム「タイタン」には生まれたばかりのリカルドと16歳になったばかりのパッキャオが居た。

 この日、パッキャオは父メイウェザーに呼び出されていた。

 パッキャオは城の長い廊下を歩きメイウェザーとアスカの居る寝室へと向かった。

 部屋の中に入ると、母アスカが父メイウェザーの左腕に宿したレッドドラゴンに両手を沿え気を送っていた。これは一時的にレッドドラゴンの寝かせメイウェザーの体への侵略を抑えていた。

 「パッキャオよ。お前に頼みがある。先日、ミチヨのクローン姉妹が亡命してきた。そいつらはお前と同じ年ほどだ。それで彼女たちの監視とミチヨについての情報を探って欲しい。ミチヨの中に黒龍が宿している事が、ほとんどの者が知らない極秘情報だから慎重に頼む。」と、父メイウェザーが言った。

 「分かりました。」とパッキャオは言った。

 「お願いね。パッキャオ、貴方にしか頼めないのよ。私は、このレッドドラゴンを制御しなければならないので自由には動けないし、あまり大事にして騒ぎを起こしたくないのよ。」と母アスカが申し訳なさそうに言った。

 「大丈夫ですよ。僕が、がんばりますのでお母さんはお父さんを頼みます。」とパッキャオは言った。

 「生意気を言うな。」と、父メイウェザーが言った。

 パッキャオは笑いながら部屋を出た。

 部屋を出て城の地下の牢屋へと遣って来た。

 そこにはミチヨの最後のクローン人間と言っている姉妹が居た。

 パッキャオは牢屋に捕らわれている姉妹と話をした。

 彼女たちは非常に温厚な性格であり害を及ぼすものでないと話し方や仕草で悟り、ユミコとナオコを牢屋から出し彼女たちの気分転換と自分への信頼感を植えつける為、街に連れて行った。

 要塞都市ドーム「タイタン」の街中はとても平和で活気に溢れていた。

 ユミコとナオコは、その様を喜びながら見ていた。

 パッキャオは二人の気に入る服を買ってあげ、おしゃれな喫茶店に入った。

 そして、少し真剣な顔をし本題に入った。

 「二人の真の目的を知りたい。何故、亡命してきた。」とパッキャオは言った。

 「私たちは自分の意思、いや、本当のミチヨ様の意思により遣ってきました。」とユミコが言った。

 「本当のミチヨ様....。黒龍はやはり存在して居るのか。」とパッキャオは言った。

 「しています。ミチヨ様の体は完全にブラックドラゴンに支配されていますが、時よりブラックドラゴンが眠りに付く事があり、その時、ミチヨ様の意識が戻ります。あなた方に頼みがあります。マーズワンの居住区にブルードラゴンと子供たちが監禁されています。彼らを助けてもらいたいのです。」と、ユミコは言った。

 ナオコは二人の会話を聞きながらおいしそうにケーキを食べていた。

 「子供?」とパッキャオは聞き返した。

 「そう、子供です。厳密に言うとブラックドラゴンの新しい体です。自分の体に適合できる強靭な人間の研究をしています。」とユミコは悲しそうに言った。

 「分かった。マーズワンだな。詳しく監禁されている場所を教えてくれ直ぐに助けに行こう。」とパッキャオは言った。

 「私たちも一緒に連れて行ってください。そこにはブラックドラゴンもいて非常に危険な場所です。私はブラックドラゴンがいつ眠りに付くか分かっており、マーズワンの中にも詳しいです。」とユミコが言った。

 「分かった。後で場所と日にちを設定しよう。ここでこの話は、もうやめて今日は楽しもう。」とパッキャオは言った。

 ユミコは嬉しそうに頷いた。

 数日後、パッキャオは側近を数名連れ極秘の任務を行う事とした。

 マーズワン、火星移住計画。

 その計画が行われた火星基地は、今や生命実験所となっていた。

 パッキャオは戦闘スーツを着てリトワニ(ダチョウのような足と大きな羽を持ち顔はトカゲのような生物であり、火星の重力であればを人を乗せ走ったり、飛んだりできる。)に跨りマーズワンへと遣って来た。

 近くの丘の上で待機し、辺りの様子を見ていた。

 「静かだな。本当にここに青龍がいるのか。」とパッキャオはヘルメットの無線からユミコに聞いてきた。

 ユミコはパッキャオに寄り添うように近づき無線で答えた。

 二人共、ヘルメットをしている為、生の声は聞こえなかった。

 「人影は無く無人のように見えるけど、マーズワンの地下に巨大な実験場が隠されているわ。皆、そこに監禁されているの。」とユミコは言った。

 その時、ナオコは何かに気が付き無線で皆に言った。

 「地面の中に、何か動いている。」

 「ブハの群れです。」と側近の一人が答えた。

 「ブハの群れが、地面の中を逃げるように進んでいる。」と、別の側近兵が言った。

 「コノチツだ。それもかなりでかい。」と、別の側近が叫んだ。

 コノチツとは、ブハと同じく土の中では細くなり移動しているが、ブハと違い体長20メートルあり地上に出ると大きな口で何でも飲み込んでしまう巨大生物である。

 「後ろからコノチツとは....。皆、もう隠れても仕方が無い。どうなるか分からないがマーズワンに突っ込むぞ。コノチツに食われる前に進入する。」と、パッキャオは言い、皆はトリワニに跨りマーズワンに突っ込んで行った。

 ユミコはパッキャオのトリワニに乗り、パッキャオの後ろに座り強くパッキャオにしがみついた。

 ナオコは側近兵の一人のトリワニに乗りユミコの方を見て微笑んだ。

 マーズワンから火星王国の兵士が飛び出してパッキャオたちに攻撃してきたが、パッキャオたちは怯む事無く突き進んだ。

 後ろからは、大きな口を開けたコノチツが近づいてきた。

 火星王国兵士も巨大なコノチツを見て慌ててマーズワンに非難しだした。

 パッキャオたちは火星王国兵士を押しのけて中に入りドアを閉めた時、パッキャオは部屋の奥に何か恐ろしい気配を感じとっていた。

 「ユミコ、コノチツが外で暴れている。この隙に青龍と子供たちを救出するぞ。この部屋の中に得体の知れない凄くやな感じの気を感じる。早く救出しよう。」とパッキャオは言った。

 リトワニには防弾チョッキとミサイルが装備されており、銃や剣に盾も装着されていたので、皆、銃や剣を持ちミサイルをぶちかましながら進んで行った。

 パッキャオはユミコを乗せ先頭をきり、マーズワンの奥の部屋へ進んで行った。

 側近兵たちは隊列を整えパッキャオの後ろに着いて行き、火星王国の兵士を蹴散らして行った。

 地下2階に進んだ時、ユミコが言った。

 「この先に子供たちが捕らわれている部屋があります。そして、更にその奥、地下3階にはブルードラゴンの居る実験部屋が有ります。多分、ブラックドラゴンは更にその奥の地下5階で休んでいると思われます。」

 「地下5階で休んでいる。ミチヨも一緒に。」とパッキャオが言った。

 「私も地下5階には行った事は無いのです。ただ、ミチヨ様は5階に行くと暫くは戻って着ません。」とユミコが答えた。

 パッキャオはリトワニを止めて、皆に言った。

 「皆は、この先の部屋に行き子供たちを救い出してくれ。俺とユミコは更に奥に行き青龍を確保する。そして、皆、俺が戻らなくても救出後は急いでマーズワンから非難しろ。いいな。」と、パッキャオは言いリトワニを走らせ奥へと消えて行った。

 暫くするとユミコにナオコから無線が入った。

 「パッキャオ、子供たちは無事救出したわ。これから脱出するとナオコから連絡が入りました。」とユミコは嬉しそうに言った。

 「俺たちもさっさと青龍を見つけて、ここを去ろう。」とパッキャオは言った。

 

 地下5階、薄暗い部屋で静かにミチヨは目覚めた。

 おぞましい体をしていて肉片が部屋中に散らばっていた。

 それら肉片は少しづつ動いて重なり合い一つの体となった。

 「私の新しい体が近くまで来ている。」と薄ら笑い喜びミチヨは立ち上がった。

 70歳を過ぎた体とは思えない。

 美しく若々しい体と顔に変化していた。

 「サトミが逃がした、ユミコとナオコがここに来るとわ。」と笑いながら裸のまま部屋をでた。

 ミチヨの左腕は黒く背中にまで達しており、それは龍の刺青のようで有ったが、体の中を蠢いていた。


 パッキャオとユミコはブルードラゴンが居る部屋に辿り着いた。

 警備は手薄で簡単に見つける事ができた。

 「随分と簡単にしのびこめたな。」とパッキャオは不思議そうに言った。

 「ここは、ミチヨ様が居るので皆、怖く、一般兵は入って来れないのよ。」とユミコは言い、ブルードラゴンが入っているカプセルを取り出した。

 「これで良し、直ぐにここから脱出しましょう。」とユミコが言った。

 「ちょっと無理みたいだな。」とパッキャオは言い剣を抜いた。

 二人の目の前にミチヨが立っていた。

 ミチヨは裸であり、ブラックドラゴンが体の中を蠢いており、ミチヨの顔まで達した。そして、ユミコを見ると薄ら笑い大きな口を開けブラックドラゴンの顔に変わっていった。

 そして、右腕が伸びユミコを捕らえようとした。

 パッキャオは、その右腕を切り落としユミコを抱えてリトワニに乗り入り口に居るミチヨにミサイルを放った。

 ミチヨの体はバラバラになったが直ぐに肉片が動き形を作り出していった。

 パッキャオは、その隙に強行突破したが、後ろから蛇のようにブラックドラゴンが追いかけて来た。

 ブラックドラゴンは口から黒い光線を出した。

 黒い光線は、リトワニに直撃しリトワニは倒れパッキャオとユミコは振り飛ばされた。

 そして、ブラックドラゴンはユミコに襲いかかってきて、ユミコの体にまとまりついた。

 ユミコは苦しみもがきながらパッキャオに言った。

 「パッキャオ。ブラックドラゴンが私に捕りつく前に私を殺して。」

 「早くお願い。」とユミコが泣き叫びながら言った。

 ブラックドラゴンはユミコの体内に入り蠢きだした。

 パッキャオは涙を抑えながら大声で叫んで、ユミコの首は真っ二つに切った。

 ブラックドラゴンはユミコの体の中で蠢いていたが、パッキャオは泣きながらユミコの体の手足を切り落とした。

 ブラックドラゴンは、ユミコの体の中に封じ込めた。

 パッキャオはユミコの頭を抱え込み泣きじゃくった。

 直ぐにナオコたちから知らせを受けた火星帝国軍が駆けつけ、パッキャオを救出し、ユミコ、ブラックドラゴン、ミチヨの体を緊急カプセルに入れマーズワンを後にした。

 しかし、その様子をマーズワンに一人取り残された少女が見ていた。

  

 「そして、ユミコはミチヨのクローンである事から生命力が強く、このカプセルの中で生きる事ができた。俺たち二人はこの木星で国を造り幸せな時を過ごす事ができた。」と、パッキャオは答えた。

 「これからも、ここで幸せに過ごせば良いじゃあない。」とカレンは言った。

 「それはもう無理だ。黒龍はあの後何処かに消えた。ミチヨのクローンがまだおり、そいつが黒龍を体内に宿し月へと逃げた。母アスカは、その事を知り密かに何人かの側近と共に月に行ったらしいと、後でミチヨから聞いたよ。」とパッキャオは言った。

 「月の事は、そこに居る妖精さんが一番知っているのではないでしょうか。」とユミコは言った。

 出拓はミカの方を見て言った。

 「ミカ、君は何者なんだ。」

 ミカは黙っていた。

 「リカルドもう時間がない。黒龍が蘇る日が近づいている。カレン、お前から借りている青龍を換えそう。そしてお願いがある。青龍を返した後、俺をユミコと一緒のカプセルに入れてくれ。」と、パッキャオは言った。

 「私には、もうブルードラゴンは必要ないわ。」とカレンは言った。

 パッキャオは笑いながら答えた。

 「青龍も進化するんだ。俺の体内に閉じ込められてきたので俺の体の一部を取り込み実体化できる様になっており早く外に出たいとせがんでいる。知能も高く、リカルドの良きパートナーになるだろうよ。生まれてくる子供を宿した母親の気分みたいだよ。」

 その時、サラが乗っているレッドマーズ号が衛星都市ジュピターに到着した。

 「私の鎧を外してくれ、急がなくては黒龍が目覚めてしまう。もう俺は何もできない。ユミコと二人ここで静かに暮らす。」とパッキャオが言った。

 暫くして、サラが数人の兵士を連れてカレンと出拓の下に遣って来た。

 その時には、パッキャオはユミコと同じカプセルに入っていた。

 パッキャオは体半分以上無い状態であり、ユミコが優しく抱きしめていた。

 カレン、出拓、ミカ。そしてブルードラゴンはその場を去って行った。

 ブルードラゴンは大鷲くらいの大きさで出拓の肩に乗っていた。

 サラは、ブルードラゴンを見て驚いた。

 「これ何、パッキャオのペット」と、サラはブルードラゴンを指差して言った。

 ブルードラゴンはサラの元に飛ん行き、目の前に立ち言った。

 「俺は、ブルードラゴン。ブルードとでも言ってくれ。」とブルートは言いサラの周りを飛んで言いた。

 「お前いい体しているな。俺と融合しようぜ。」とブルートは言い、サラに飛び掛って行った。が、サラの高圧電流を浴びて失神してしまった。

 皆、ブリートを置いて行こうとしたので慌ててブルートは皆の元に追い駆けて行った。


火星物語=第15章 ブラックドラゴン

 火星の軍力の大半が木星に行っており、火星の上空は静かだった。

 火星の衛星上にある3基のソーラーパネルはいつもと変わらず火星の衛星上を回っていた。

 1隻の地球軍の宇宙戦艦が火星に遣って来て、メイウェザーの居るソーラーパネルに近づいて行った。

 メイウェザーの座っている椅子の磁力が無くなり部屋に明かりが灯った。

 メイウェザーはゆっくりと顔を上げて一点を見つめて言った。

 「ミチヨか。」

 ミチヨは杖を突きながらゆっくりとメイウェザーに近づいてきた。

 「随分と年を取ったな者だな。」とメイウェザーが小笑し言った。

 「メイウェザー、お前も随分と痩せこけているじゃあないかい。立てるかい。」とミチヨが言った。

 「お客さんが、もう来たみたいだぜ。」とメイウェザーが言った。

 「老婆と病人で何処まで戦えるかな。」とミチヨは言い杖の中にしまっていた剣を取り出した。

 「俺は、病人じゃあない。久しぶりに暴れられるぜ。」とメイウェザーの肩の部分からレッドドラゴンが顔を出し言った。

 暗闇の中から足を聞こえ、部屋の中へと一人の男が入って来た。

 部屋の明るさで顔が現れた。

 「僕も老婆と病人をいたぶるのは心苦しいのだが、サラたちが戻ってきたら面倒だからね。」とトーイは言いた。 

 トーイの右腕は刃物ようなとがった剣に変わった。

 ミチヨは、物凄い速さでトーイに近づき剣と突き出し身軽にトーイの攻撃を交わしたとたん、レッドドラゴンはトーイの後ろから炎を吐き出した。

 トーイは、その炎を右手の剣で交わした。

 「少しは楽しめそうだね。」とトーイは言い右手の剣をなめた。

 そして、右手の剣は蛇のように伸びていき、ミチヨの胸を目掛けて行ったが、メイウェザーがその剣を右手で受けとめた。

 剣は、メイウェザーの右手を貫いた。

 メイウェザーは左手のレッドドラゴンで攻撃をした。

 トーイは飛び回転し交わした。

 「なかなかのコンビネイションですね。」とトーイは薄笑いながら言った。

 「笑っていられるのも今だけだぞ。」とメイウェザーが言った。

 「それは、どうかな。」とトーイは言い、トーイの体、背中から小さな物体が飛び出した。

 それは、シムジウで在りミチヨの体、メイウェザーの傷ついた右手に取り付いた。

 「これは、改良版のシムジウで私の居のままに動かす事ができる。」とトーイが言った。

 「貴様は、こんなものまで体に飼っているのか。だけど私は機械の体だ。こんな物は通用しない。」とミチヨが言った。

 すると、シムウジはミチヨの右目に飛びかかってきた。

 ミチヨは、悲鳴を上げ暴れだした。

 「ふざけるな。」とメイウェザーは言い、レッドドラゴンが右手を攻撃した。

 メイウェザーの右手は粉々に吹っ飛んだ。

 「凄いエネルギーですね。時空が乱れている。右手は何処かの時空に飛ばされたみたいですね。」とトーイは言った。

 すると、ミチヨは静かに立ち上がりメイウェザーの方を見た。

 メイウェザーは右手を押さえながら言った。 

 「この、外道が。」


 5時間後、レットマーズ号と数隻の火星の宇宙戦艦が火星の戻って来た。

 サラたちは、火星の様子を見て驚いた。

 ソーラーパネルが2基撃破されており、残り一基も損傷が酷く辛うじて火星の衛星上に留まっていた。

 カレンと出拓は、急いでそのソーラーパネルの中に入ってメイウェザーの居る部屋へ遣って来た。

 部屋の中に入るとメイウェザーが無残な姿になっており、ミチヨ様も虫の息であった。

 カレンはミチヨ様を抱きかえた。

 「カレンかい。遣られたよ。ブラックドラゴンの計画通りに進んでしまったよ。トーイが月に向かったよ。月も火星、木星の軍事力を減らされ、今、月にはほとんど軍力が無いだろう。トーイは残った月の軍力を集め月に向かいブラックドラゴンを目覚めさせ自分の肉体に宿すだろう。食い止めなくては。」とミチヨ様は言い力尽きた。

 「ミチヨ様。」と、カレンは言った。

 その時、弱々しいレッドドラゴンが出拓に近づきながら言った。

 「お前の肩に乗っているのは、ブルードラゴンだな。かなり進化しているな。私の体も取り込め、さすれば更に巨大な力を手に入れる事ができる。」

 ブルードラゴンは羽根を広げ羽ばたき、レッドドラゴンに近づいた。

 ブルードラゴンはレッドドラゴンを融合した。

 するとブルードラゴンは光だし金色のゴールドドラゴンとなり一回り大きくなり出拓に話し始めた。

 「出拓、急ぐぞ。トーイとブラックドラゴンをぶちのめしに行くぞ。」とゴールドドラゴンは言い羽ばたき部屋を出た。

 「何か、性格変わったあいつ。」と出拓はミカに聞いた。

 ミカは困った顔をしてゴールドドラゴンを追った。

 「出拓、行くわよ。トーイはだぶんコロニー18号を経由して月に向かうわ。急ぎましょう。サトミ婆さんと小百合が危ない。」とカレンは言い、出拓とカレンは走って部屋をでた。

 出拓とカレンはトーイたちに追いつくべくバーン大佐と共に火星の宇宙戦艦で追いかけて言った。

 サラは火星に留まった。火星の女王として火星に住む住民の安否と人命救出を優先に考えた。

 火星は今、氷河期を迎えようとしていた。

出拓とカレンたちはバーン大佐専用の青い宇宙戦艦に乗りトーイを追いかけていた。

 「完全に遣られましたね。これでは火星の軍隊のほとんどは火星に残らなくてはならず彼らを追うことができない。サラ様も火星に留まるしかない。」とバーン大佐がカレンに言った。

 「その方が良かったわ。トーイが主犯なんて、サラには悲しすぎるわ。それより、早くコロニー18号に向かって、攻撃されているかも知れない。あそこにはサトミ婆さんとカズエさんが居る。」とカレンは言った。

 コロニー18号のカズエの神社に小百合とサトミがいた。

 カズエは水晶の玉で占っていた。

 水晶の中は黒い煙が漂っていた。

 「まがまがしい奴がここに遣ってくる。サトミ、小百合を連れて、このコロニーを離れなさい。」とカズエが言った。

 「カズエさん。もういいのです。私のこの体では、このコロニー以外の重力には体が持たないのですから、ただも一度、出拓に会いたかったです。」と小百合は言った。

 出拓とカレンたちがコロニー18号に向かった時に既に遅くコロニー18号は破壊されていた。

 「なんて事を、完全に破壊せず嬲り殺し状態で、我々の足止めを考えての行動か。」とバーン大佐は怒りながら言った。

 カレンと出拓がカズエ婆さんの占いの館に遣って来た時、小百合がサトミ婆さんとカズエ婆さんを両手で抱え込み、傷つき気を失っていた。

 小百合は、体が弱いためカプセルに入れ連れ出した。

 その時、小百合は出拓の顔を見て微笑んだ。

 そして瞼を閉じ眠りに付いた。

 サトミ婆さんとカズエ婆さんは気を失っていたが無事であった。

 その他の生存者はカプセルに入れ火星の宇宙戦艦へと運んだ。

 コロニーの人は、年寄りが多くカプセルに保存しないと宇宙戦艦の移動Gには絶えられなかった。


 トーイを乗せた月の宇宙戦艦は地球に向かっていた。

 月の宇宙戦艦に乗っている兵士たちは改良版シムジウによって体を支配されておりトーイに操られていた。

 トーイは宇宙戦艦の中から近づいてくる地球と太陽の光から現れた月を見て笑った。

 「お母様、直ぐに参ります。そして、あなたに私の体をささげ、そこから開放してあげましょう。」

 月の裏に貼り付けてあるブラックドラゴンの目が静かに見開いた。

 ブラックドラゴンの手足には杭が月の表面に打ち込まれており、杭には電磁波が流れており身動きが取れないようになっていた。

 良く見るとブラックドラゴンの中心部に丸い宇宙船らしき物があり、そこから電磁波を出していた。

 結界である。

 

火星物語=第16章 ミカ ヤマグチ

 ブラックドラゴンに結界を張っている丸い宇宙船の中には一人の少女が乗っていた。

 彼女の名前はミカ ヤマグチ。

 彼女の母親は火星の巫女であった。

 火星の人工的に創られた人間ドラゴン族と違い、生まれ持って特殊な能力があり地球で、その能力を強化され火星の厳しい環境に適合できる人間として送られた。

 彼女たちは温厚な性格でひっそりと火星のドームで暮らし地球との連絡を取りながら平和に暮らしていた。

 将来、火星が多くの人々が暮らせる星になる事を願っていた。

 そんなある日、傷を負ったY氏が彼女たちのドームに逃げてきた。

 一人の女性がY氏を懸命に介護した。

 そして二人はいつの間にか恋に落ち子供を生んだ。

 月日が流れ地球のほとんどの大陸は海へと沈んだ。

 彼女たちは、それが何者の仕業か分かっていた。

 月の大統領タンクを影で動かしていた者、それこそがここに眠っているブラックドラゴンであった。

 ブラックドラゴンは自分の意のままに操れるシムジウを開発し、ミチヨの97番目のクローンを使い巧みにタンクに近づきタンクにシムジウを植え付け地球の大陸を沈めさせた。

 火星からの逃げ道を確保した。が。しかし、火星のドラゴン族、メイウェザーやパッキャオ、カレンにより追い詰められミチヨのクローン、まだ5歳の少女に乗り移って月まで逃げていたが、最後はアスカたち巫女に追い詰められ月の表面に閉じ込められた。

 その後、タンク大統領についているシムジウの制御を押さえつけ月の監視を影で支えて来たが、アスカたち巫女も年をとり能力が弱くなると、少しづつタンク大統領の制御も利かなくなり、政権が少しづつ荒れ始めていた。

 アスカは結界をはりブラックドラゴンを閉じ込めていたが力が弱まり、最後の巫女ミカに代を譲った。

 ミカは結界の中で地球にいる出拓に気が付き、彼を月から見ていた。

 そして、出拓が火星に行った事を知ると自分分身を造り火星に送った。

 そう、先代もそうで合ったようにドラゴン族と巫女は惹かれ合った。

 そして今、その結界が破られようとしている。

 トーイを乗せた宇宙戦艦が月に現れた。

 月に残った数隻の宇宙船が応戦してきたが、次々とトーイに寝返って行った。

 トーイの腕からはシムジウが出てきた。

 以前、サラと一緒に月に行った際にシムジウを忍び込ませ月の兵士に植え付けていた。

 トーイを乗せた宇宙戦艦は月に近づきミカの居る丸い宇宙船に主砲を発射させた。が。強い結界により主砲は弾かれ四方八方に飛び散った。

 その一部が月の居住区を直撃した。

 容赦なくトーイは発砲し続けた。

 ミカは宇宙船の中から気を高め結界を強めた。

 「なんて事を、これでは月の住人に被害が出てします。このままでは持たない。出拓、助けに来て早く。」とミカは願った。

 出拓は月に向かう宇宙戦艦の中で妖精のミカが出拓の肩の上に乗った。

 いつもの元気が無くうつむいた状態のままであった。

 ゴールドドラゴンは出拓の周りをゆっくりと飛びながら言った。

 「こいつ、元気がないな。」

 出拓は心配そうにミカに言った。

 「ミカ、どうした。」

 妖精ミカは出拓の肩の上で膝つき座り込み下を見ながら言った。

 「トーイが月に攻めて着ました。私は、もう私の分身に意識を送ることはできなくなりました。」とミカは言い力なく出拓の肩から落ち、意識の無い人形に戻った。

 マリは、その妖精ミカの人形を拾いあげて出拓に渡し言った。

 「兄、トーイがまさかこんな事をするなんてご免なさい。」と出拓の胸で静かに泣いた。

 

 トーイの月の攻撃は激しさを増していた。

 ミカは、テレパシーで月の司令部にいるアスカに連絡をした。

 「アスカ様、結界をこのまま張り続けていいのですか。これでは結界に弾かれた攻撃が月の居住区を直撃してしまいます。」

 「ミカ、結界を止めてはなりません。このまま張り続けなさい。後の事は私たちに任せなさい。」と月の司令塔に居るアスカが言った。

 アスカは白髪の老婆であるが顔は若々しく肌に張りがあり、その姿はドラゴン族の様でもあった。

 「タンクはやはり黒龍の恐怖に勝てず、黒龍のたくらみにまんまに引っ掛ったか、嘆かわしい。」とアスカは言った。

 アスカと数名の巫女は意識を集中した。

 地球の周りにある人工衛星の中には兵器を積んでいる人工衛星も有り、地球の周りを監視しながら回っていた。

 その人工衛星は巫女たちの意識により自由に動き出しトーイの乗っている月の宇宙戦艦を攻撃して行った。

 「こしゃくな事を。」とトーイは言い笑った。

 すると一隻の月の宇宙戦艦がアスカたちの居る司令塔に突っ込んできた。

 司令塔の目の前でその宇宙戦艦は打ち落とされたが、中から兵器を持った軍隊が司令塔に降りて行った。

 彼は、シムジウに支配されている死人であり宇宙空間でも問題なく次々に降りて行った。

 その様子を感知したミカが慌てて叫んだ。

 「アスカ様。」

 その瞬間、結界が弱まった。

 それをトーイは見過ごさ無かった。

 トーイは乗っている宇宙戦艦ごと突っ込んで行った。

 トーイの乗った宇宙戦艦は月の表面にぶつかり爆発した。

 その爆風でミカの乗っている丸い宇宙船は月の重力から離れた。

 そして、ブラックドラゴンが動き出し黒い光線を放った。

 月の都市は破壊されミカの乗っている丸い宇宙船は爆破された。

 ミカは宇宙服に着替えていたが宇宙空間に投げ出されてしまた。

 ミカは地球の重力に引っ張られて行った。

 ミカは両手を合わせ祈った。

 その時、火星の人型戦闘機ジャックが右手を伸ばしミカを包みこんだ。

 「出拓。」とミカは涙を浮かべ言った。

 出拓を乗せたジャックはミカを両手で包み込むと火星の宇宙戦艦へと戻った。

 

 トーイは宇宙戦艦から出ておりブラックドラゴンの元に降り立っていた。

 「お母さん。新しい体ですよ。」とトーイは言った。

 ブラックドラゴンはトーイの体の中に入って行った。

 トーイの体は黒くなり羽が生えて行った。

 その時、カレンたちはジャックに乗り一斉にブラックドラゴンに攻撃をした。

 「私とバーン大佐及びジャック部隊はブラックドラゴンの攻撃を行う。その他の者は月の都市の人命救助に向かえ。」とカレンは指示を出した。

 「完全にトーイの体に乗り移る前にブラックドラゴンを叩く。」とカレンは言いジャック部隊は一斉に集中攻撃を掛けた。

 トーイと一体化したブラックドラゴンは、まだその体に慣れておらず動きが鈍い為、集中攻撃を受け悲鳴を上げながら地球の重力に引っ張られながら炎を上げて降りて行った。


 ミカは火星の宇宙戦艦の中で手当てを受けていた。

 横には出拓とゴールドドラゴンが居た。

 マリやタイヨウにリョウ、タイガは、けが人の救助に当たっていた。

 ミカは目を覚まし、出拓の腕を掴んで言った。

 「ブラックドラゴンは地球に降りてしまいました。大気圏で全て燃えてしまう事は無いでしょう。出拓お願い。地球に降りてブラックドラゴンを倒して、あなたとゴールドドラゴンならブラックドラゴンを倒せるわ。」

 「安心しな、俺が出拓の鎧となりブラックドラゴンを倒してみせる。」とゴールドドラゴンは言った。

 出拓は二人の顔を見て頷いた。

 出拓はジャックに乗り込み宇宙戦艦を飛び立ち、ブラックドラゴンを追った。

 カレンたちは地球の大気圏に落ちていくブラックドラゴンを眺めていた時、出拓の乗せたジャックが猛スピードでブラックドラゴンを追いかけて行くのが見えた。

 「出拓やめて。大気圏に突入してしまったら燃えてしまうわ。」とカレンが叫んだ。

 「出拓、大丈夫だ俺を信じろ大気圏に突入し燃える前に脱出しろ俺がお前を包みこんでやる。」と、ゴールドドラゴンが言った。

 出拓の乗せたジャックは大気圏に突入し消えて行った。


火星物語=最終章 出拓

 地球に真っ赤に燃え盛る2つの隕石が落ちた。

 2つ共、真っ赤に燃え上がり消える事無く勢い良く海の中に落ちた。

 その衝撃は凄まじく大きな津波が起き、海が熱せられ水蒸気が上がり上空には霧状の雨が降り注いだ。

 暫く大気は乱れ海が荒れていた。

 海が穏やかになると黒く羽根の生えた生き物がゆっくりと海上から現れた。

 それは、まるで神話の悪魔のような姿をしていた。

 そいつはゆっくりと羽をバタつかせながら何かを探すように海の中を覗いていた。

 タイチとすずは、その様子をフラノ(人工島)から双眼鏡で覗いていた。

 「何あれ、隕石が2つ落ちて衝撃が起きて、津波が発生して島の中心に逃げて、波がやんできたので海岸に戻って、隕石が落ちた所を見たらあんな化け物が出てくるなんて。」とタイチが双眼鏡を覗きながら言った。

 「どれ、私に貸してよ。」とすずが言い、双眼鏡を取り上げようとした。

 その時、突然、海の中から光輝く光線が、その悪魔目掛けて飛んできた。

 悪魔が光線を避けた瞬間、海の中から大きな水しぶきを上げて黄金の羽を生えた男が飛び出してきた。

 「出拓。」とすずが叫んだ。

 出拓の胴体から頭にかけゴールドドラゴンが防具となり黄金の羽根を広げ飛んでいた。

 左腕にゴールドドラゴンの頭が有り、口を開くと光の光線を出した。

 「出拓どうだい。この体、気に入ったかい。」とゴールドドラゴンが言った。

 その時、悪魔が口から黒い光線を出した。

 出拓の左腕、ゴールドドラゴンの口から光の光線が出て、その攻撃を弾いた。

 弾いた光線はすずの目の前の海に落ちて大きな津波と霧雨が発生した。

 すずたちの居る人工島フラノは大きく揺れ津波により、すずたちは柱にしがみついて流されないようにした。

 「この、下等生物が私の攻撃を受け止めるとは。」と悪魔がささやいた。

 「あれが、ブラックドラゴンか。どう見ても悪魔だな。」と出拓が言った。

 タイチが双眼鏡を覗きながら言った。

 「あれが、出拓。黄金に輝いている。」

 双眼鏡は一つしか無くすずがタイチの双眼鏡を奪おうとした為、二人は喧嘩になっていた時、二人の前にまた大きな津波が現れ二人は慌てて逃げたが、津波の飲み込まれノア(人工の島)フラノの中心まで流されてしまった。

 柱にしがみついたが、波の勢いが凄く海の方へと流され、海の中に沈んでしまった時、すずとタイチを泳いで助ける者が居た。

 すずの父親であった。

 すずの父親は二人を助け小型の船の上に載せた。

 すずは海水を飲んでおり咳が止まらず疲れている時、すすの頭を優しく撫でる者がいて振り返った。

 「お母さん。」とすずが言った。

 その隣には、ミカもいた。

 ナオコは月で出拓が地球に降りて行くのを見ていた。

 アスカの命令の元、ミカを連れ出し脱出用ポットに乗せ地球に降り立った。

 そして、SOS信号を出すと直ぐにナオコの旦那が駆けつけてくれた。

 「すず、タイチ君、出拓の下に向かうわよ。」とナオコが言った。

 「私が結界を張り、出拓を助けます。」とミカが言った。

 二人の戦いは激しさを増し、殴る、蹴る、光線を放つ、その光線が弾かれ海に落ちて海が激しく荒れだしていた。

 徐々に、ブラックドラゴンが押し始めて行った。

 ミカは救命ボートに乗り、ナオコの旦那の操縦の元、二人に近づいて行った。

 ブラックドラゴンの手が伸び5本指が鋭く尖り、出拓を突き刺そうとした時、ミカがその間に結界を張った。

 ブラックドラゴンは直ぐに結界を破り、出拓に近づいて行った。

 出拓の右腕にはゴールドドラゴンの尻尾が巻き付けれており、これが剣のように鋭くなり、出拓はブラックドラゴンを切った。

 ブラックドラゴンは避け掠り傷を追った。

 「忌々しい、巫女め。」とブラックドラゴンは言い、右腕を大きく振り大きな津波を引き起こした。

 津波は、ミカの乗る船を飲み込もうとした時、津波が凍りついた。

 「次から次へと出来損ないが出てくる。」とブラックドラゴンが言った。

 ジェットボートに乗ったカレンが現れた。

 「貴様を先に殺してやる。」とブラックドラゴンが叫んだ次の瞬間、出拓の怒りの右拳がブラックドラゴンの顔面を捉えた。

 ブラックドラゴンは海に叩きつけられ、直ぐに上空に上がり叫んだ。

 「この地球ごと破壊してやる。」

 ブラックドラゴンの上空には大きな黒い光の玉ができていた。

 その時、更に上空から大きな雷がブラックドラゴンに落ちた。

 「ウギャー。」ブラックドラゴンは叫んだ。

 上空には、火星の人型戦闘機クイーンが現れ、その両手にはサラが立っていた。

 そして、ブラックドラゴンの足が凍りつき、更にミカが結界を張り動けなくした。

 「出拓。」とすずとタイチが叫んだ。

 「馬鹿、やめろ。」とブラックドラゴンが叫んだ。

 出拓とゴールドドラゴンは猛スピードでブラックドラゴンに迫り、出拓の右腕ゴールドドラゴンの尻尾が鋭く伸び、ブラックドラゴンの体を貫いた。

 ブラックドラゴンは大爆発を起こし、破片は海に落ちて行った。

 その爆風で出拓とゴールドドラゴンは飛ばされ海に落ちた。

 数分後、出拓はすずの膝の上で目が覚めた。

 皆、出拓を目覚めると嬉しそうに集まってきた。

 数日後、サラとカレンたちは火星へと帰って行った。

 出拓たちは、見送った。

 「出拓、あなたは、これからどうするの私は月に戻りアスカ様に合うわ。あなたも祖母に会いに行かない。」とミカが言った。

 「僕は、暫くは地球に残りすずと母さん、父さんたちとここ地球で暮らすよ。何を仕手良いのか考えがまとまったら月に遊びに行くよ。」と出拓は言った。

 その時、出拓の右腕を掴む者がいた。

 「私も地球で暮らすことにしたは。」とマリが現れた。

 「えっ。マリ、火星に戻ったんじゃないの。」と出拓は驚いて言った。

 ミカは、ムスッとした顔をして出拓の左腕を掴んだ。

 「私も地球に残るわ。」とミカも言った。

 「ちょっと待ってよ。二人共。」とすずが二人の腕を解こうとしていた。

 火星の宇宙戦艦レッドマーズ号では、カレンとサラが笑いながら話していた。

 「今頃、地球は大変だよね。」とサラが言った。

 「まあ、大変になったら、いつでも火星に戻ってくればいいのよ。」とカレンが微笑みながら言った。

 完

地球に真っ赤に燃え盛る2つの隕石が落ちた。

 2つ共、真っ赤に燃え上がり消える事無く勢い良く海の中に落ちた。

 その衝撃は凄まじく大きな津波が起き、海が熱せられ水蒸気が上がり上空には霧状の雨が降り注いだ。

 暫く大気は乱れ海が荒れていた。

 海が穏やかになると黒く羽根の生えた生き物がゆっくりと海上から現れた。

 それは、まるで神話の悪魔のような姿をしていた。

 そいつはゆっくりと羽をバタつかせながら何かを探すように海の中を覗いていた。

 タイチとすずは、その様子をフラノ(人工島)から双眼鏡で覗いていた。

 「何あれ、隕石が2つ落ちて衝撃が起きて、津波が発生して島の中心に逃げて、波がやんできたので海岸に戻って、隕石が落ちた所を見たらあんな化け物が出てくるなんて。」とタイチが双眼鏡を覗きながら言った。

 「どれ、私に貸してよ。」とすずが言い、双眼鏡を取り上げようとした。

 その時、突然、海の中から光輝く光線が、その悪魔目掛けて飛んできた。

 悪魔が光線を避けた瞬間、海の中から大きな水しぶきを上げて黄金の羽を生えた男が飛び出してきた。

 「出拓。」とすずが叫んだ。

 出拓の胴体から頭にかけゴールドドラゴンが防具となり黄金の羽根を広げ飛んでいた。

 左腕にゴールドドラゴンの頭が有り、口を開くと光の光線を出した。

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