(1321秋~1322)平安、楽しむ間もなく
ここから先は戦、戦、戦です。文才なくて本当に申し訳ないです。
一応この話で、ヒロインを出し尽くした形にします。
もともと北朝の火薬文明VS南朝の電気文明…みたいな戦の方向性にしたかったのに、うまくいかない…
(「ところでさ、二人ともすごい付き合ってるなぁって感じがして、幸せそうでなによりなんだけど、喧嘩することってあるの?」)
(「うーん、あるよ。」)
(「あるの?」)
(「それはさ、基本的に橋本くんってまず、疑うことから始めるから。デカルトの『我思う、故に我在り』みたいな。」)
(「そうか?自分の思考の存在だって本当に信じちゃいないぞ。俺が信じれるのは時乃のすべてだけで。」)
(「その無条件の信頼、いったいどっから来てんの?」)
(「説明欲しいか?」)
(「いらない、といいたいけど、大事な幼なじみに変な奴がつくと困るからなぁ。」)
(「…まあ、生まれて初めて、そういう一切を説明、証明しなくてもいいと思えたからなんだけどな。」)
(「うん、わからん。
で、どんな喧嘩したんだ?」)
(「あの兄妹に聞かれてな。『人類史上もっとも偉大な発明となるものは何だと思うか?』って。」)
(「…もう結果が読めたんだけど。お互い、なんて答えたんだ?」)
(「私は、製鉄と火薬って答えた。」)
(「俺は、飛行機と核技術って答えたな。」)
(きれいに分かれたなぁ、純粋に歴史的な観点のトキと、科学的で未来志向の橋本か。」)
-だけどまさか、橋本くんとの喧嘩の、決着がつこうとは、思わなかった。
ー*ー
1321年8月2日、鎌倉、若宮大路御所
「では次、大仏殿。」
「は。我が領内での火薬及び鉄鋼生産高については、お配り申し上げた通り...」
直義とカムイシラー改め知子(ちし、あるいはともこ)は、呆然と大広間を眺めていた。
書状が配布され、回覧されていく。直義がいない間に、政治を支配していた口約束は駆逐され、書類があふれるようになってしまったらしい。
「そうだ、知子殿、アイヌ側では硝石は入手できないのですかな?」
「…私?ええと」
「武田殿、それは無理ですよ。北海道だって雨は多いから、あっても溶けて残らないし。それに硝石を使うこと自体、元はほかに輸出されないように規制しているし、この日の本で使いだしたのは私と高時からです。交易で入手もしていないしできないかと。」
登子がそう答え、居並ぶ諸将は次の議題に移ってゆく。
「さて、高時が提案した、『種痘』だが...新田じゃやっぱり嫌がるやつも出てる。腫れるしな。いくら天然痘が予防できるって言われても信じねえ。まじないとかあるしな。他もそうだろう?」
広間中から手が上がる。
「執権の婚約者も腫れたって言ったら何とかならないの?」
「ならないと… って登子、痛そうにしてたの、それ?」
「うん、言っても治るものじゃないし...って、会議中だよ!ほら、知子ちゃん目を白黒させてる!」
突然に名前を出され、知子がびっくりする。
「いえ、未だ知子という呼び名に慣れぬだけです。」
「ごめんね。すっごい失礼なことだってわかってるんだけど、でも、文書にするときにカタカナだと送り仮名とかと混ざっちゃうし、漢字を当ててもよかったんだけど、『神を知る』って言う、安東氏相手に使ってた当て字は神って字が嫌いだってというから、仕方なく...ホントにごめんね?」
-この人、権勢を誇る執権の正室になる方なんですよね?どうして私に、両手合わせて頭下げてるんですか?
知子は幕府中枢という場所のわけのわからなさにあきれていたが、それは直義も同じらしかった。
実際、長崎・安達や鎌倉逆包囲戦時に朝廷軍についた武将などが欠けて大規模な人事異動を強いられた鎌倉幕府では、広い人脈を持つ赤橋英時が守邦親王と入れ替わりに十三湊から帰還するや、体制の刷新が図られていた。
市井の民の間でも、話題になったものだ。医者をはじめ、それまで無位無官だった街の鍛冶屋や飛脚の長、果ては銭貸しまでも、「鋳鉄、金属加工に優れている」「街道を整備するのに頼りになる」「銭とコメの流れにさとい」と言って要職に取り立ててしまったものだから、当然といえば当然ではある。
御家人の軍事指揮をつかさどる侍所は解体され、足利家を所司とする陸軍と、新田家を所司とする海兵隊に分割された。それぞれでの階級は全く才に依存し、地位には関係しない(と信じていない者がいまだに多い)。
幕府の民政・財政をつかさどる政所は、侍所と地位を逆転させて幕府最高の政治機関となり、そのメンバーには全御家人が適材適所で配置されることとなった。そのために従来幕府最高機関であった13人からなる評定衆は解体されて、その名残は「13人以上の賛成があれば御家人は誰であっても政所に議題を提出し、執権並びに将軍同席の場で審議されることができる」という布告に残るばかりとなっている。さらに在鎌倉の御家人(女性含む!)は、担当分野の審議時にはすぐに招集されることとなり、「ゆくゆくは内閣と貴族院のようなものを」という高時の構想に近づきつつあった。
裁判を担当としていた問注所も、引付衆と呼ばれる北条の出世コースとなっていた役職による審議形態が消滅し、三審制(!)を持つ刑事・民事司法機関として新たに建て直された。簡易調停、高等、最高の三つの段階を持つ司法システムは、第一審に当たる部分をほとんどの地方で裁判地領主に頼らざるを得ない点を除けば、完全に700年後のそれだった。これに対応し、法も作り直され、甘すぎると異論の渦を巻き起こした(が、それでも高時も登子も遠慮したほうだった)。
こうして、建物も新たに改築した幕府最高機関、政所総会議に、直義と知子は初めて参加していたのである。基本700年後の制度を鎌倉化していたから、隔世の感も無理からぬところがある(実際多くの者が隠居し、守時は「大掃除」と評した)。
「それで直義様、大砲を船に乗せるというのは、いかがなものだったかしら?教えてくださる?」
あや姫が、高時の左で紙束を綴じながら尋ねる。
「迫力はある、が、当たりっこなかったな。予想通り、煙があると誤射が怖くて撃てなかったそうだ。それに揺れているから再照準の意味がないとも。」
「こけおどしにしかならないという意味でよろしくて?」
「いや、もっと安定のある船で、低い位置から軽い大砲が撃てるのならば、充分使える。」
「ならばコレは必要ってことだね。」
登子が、そう言って折りたたんだ設計図を隣へと回していく。
「「「「「これは...」」」」」
図面を開いた御家人たちが、ためすすがめつしたのち、唖然と声を上げる。
代表して一人が、おそるおそる尋ねた。
「登子様、その...鉄で船を作って、浮かぶものでしょうか?」
あー...と高時と登子がお互い顔を見合わせる。
「結論から言えば、浮かぶ。ほら...お椀に水を入れてから水の上に置くと沈むけど、そのまま置けば沈まない、みたいな?」
みたいな?じゃねえよ、と誰もが思ったが、口にはしなかった。
-結局、「なんだかわからないが、高時様や登子様がおっしゃるのなら大丈夫なのだろう」という妙な安心感が、御家人たちに芽生えつつあった。
ここは大変なところだけど、ここに来てよかったです、そう知子はつぶやいた。
そう思ってくれてうれしい、そう直義が応えた。
ー*ー
「それで、もちろんおおやけの状況は読んでるし聞いてるんだけど、もっと個人的な事情とか教えてくれると個人的に面白い。」
御家人たちが去り、内輪のメンバーだけになったため、高時は場所を移し語り合うことにした。
「…それにしても、仲間が増えたよね。最初は私と高時様だけだったのに。」
登子が感慨深そうにつぶやく。
高時が、メンバーを見まわしうなずいた。
全くその通り。
北条からは、高時、登子、守時、英時、松浦あや。
足利からは、高氏、直義、知子。
新田からは、義貞、安達勾子。
「そういえば、勾子さんと知子ちゃんには、私たちのこと話してなかったっけ。おさらいしよっか。」
もはや高時の許可を得ようともしないし、高時も咎めたりはしない。
そのままとうとうと、登子は時間と未来に関する事情を語った。
話が終わるころには、勾子はポカンと気を遠くして、義貞に揺さぶられていた。
「はっ!よ、義貞、やめて!」
「いやだってお前、卒倒しそうに…」
「なってない!」
「まあ無理もないです。」
「そういう知子は驚かないのか?」
「私にはカムイの声が聞こえるのです。今さら不可思議の一つ二つ、驚くまでも。それより、やはりこちらへ来てよかったと。」
「そういえば、その模様、何かしら?刺青のように見えるのだけれど…」
あや姫が、知子の額のあたりにわっかのようにある銀色の刺青を指して言う。
「ああ、これはまさしく、アイヌでも高貴な女性にのみ許される、魔よけのしるしです。」
「へえー。ティアラその物じゃないって思ってたけど、違うんだ?」
「ティアラ?なんだそれは?」
「守時兄上、未来で、結婚式の時に頭に被せるものだよ♪
...そうだ、ちょっとおいで!」
登子が知子の腕を引き、どこかへ引っ張っていく。
あーれーと声を引き、そのまま連れ去られていった知子。
「…だいたい何が起きるか察した。」
「直義様、我が妹が常々すまぬ。」
「…これしきの事はこらえていけないと、ついていけない気もするんだが。」
「え、登子様、何をするんですー!それはだめー!」
どこかから知子の叫び声が聞こえてきた。侍たちが走る音も聞こえる。
-高時、守時、英時が、額からタラーリ冷や汗を垂らす。
それからさらに十数分後。
「ど、どう、かな...」
「…どう、です、か?」
ー高時たちの前には、二人の少女がいた。
-白いウェディングドレスを着た。
知子の刺青など、ドレスと一緒に見ると、なるほどティアラそのものだった。小柄だが、決して着られている感じはしない。流れるような輪郭は、妖精のような神秘性を感じさせた。顔の両側に垂れる髪ーいわゆる三つ編みおさげが、シュールながら奇妙に調和している。
しかし圧倒的なのは、登子だった。
-まだ15歳だよな?
高時が目をこする。
高氏の口が開いてしまっている。魂がどこかへ行ってしまったらしい。
それぐらいに、登子は美しかった。未来では高校1年生に相当する年のはずだったが、しかしどう見ても、二十歳はある。
その場でクルッと回ると、一瞬子供らしさを溢れさせて、裾が翻る。
「まさか妹に惚れそうななるなんてな...」
肩に乗る高さで切りそろえられた髪の毛が、ふわり風を吸い込んで揺れる。揺蕩う白と黒のコントラストは、しばらく一同の目をくぎ付けにする。
「良かった、似合ってるみたいだね♪」
「…負けた気がしますわ。」
「…私、改めて、高時様に嫁がなくてよかったと思ったわ。比べられたらかなわないわよ。」
「というか、女なのに、登子様に惚れてしまいますわ。登子様~」
堂々と、空気すら塗り替え、登子は高時に歩み寄った。
「高時、今でいいんじゃないかな?」
高時が立ち上がる。
「登子、待たせてごめんな。」
登子の方から延びろ白く滑らかな腕が、高時の背中に回る。
ーあ、なんか始まる。そう誰もが思った。
「自分」
「私」
「「は、喜びの時も哀しみの時も、病める時も健やかなる時も、平和の中も戦乱の時代でも、この魂ある限り、お互いを愛し、受け止め、支えあうことを誓います。」」
ーこれが、「花嫁が純白の服を着て同時に誓いの言葉を」という、日本独自の宗教無き結婚スタイルの始まりであった。
「ふふ、婚礼の儀とか忙しくて進まないけど、私たち、もう、夫婦だね♪」
「ああ!」
ー*ー
急展開についていけなかった守時が空咳をし、あや姫が「寂しいですわ」とぼやいたあたりで、黙って抱き合っていた二人も気持ちを切り替え、登子は着替えに出て行った。
「…二人きりの空気を生み出すのはやめてくださる?」
「…なんだかますますみすぼらしさが引き立つ気がしますので、私も着替えてきます。」
「いや、知子殿は...」
「いいのです、将軍様。私が本当にほめてもらいたいお方は何も言いませんでしたし。
...今は、これでいいのですよ。」
知子も高氏に耳打ちして、去っていく。
「直義...」
高氏は、直義に何か声をかけようと思ったが、結局のどが詰まってしまった。
「さて、と...」
高時が、袖口から折りたたんだ紙を出して、一同の真中に広げる。
-日本地図だった。
「今、幕府の勢力圏はここまで。」
高時が、朱筆で津軽海峡、対馬海峡、屋久島南端、伊豆大島南端に線を引く。
「さらに、イルクシャン殿の影響力が及ぶのがここまで。」
樺太の中央、中千島列島に点線を引く。
「加えていうならば、松浦はこの辺りまでですわ。まあ、それこそ高時様本人が行かなくては、私の力では見返りなく幕府の言うことを聞きはしないでしょうけれど。」
あや姫が五島列島の中間に点線を入れた。「幕府の言うことを聞かないほどに、元に復讐したいのか、松浦は」と幾人かが顔をしかめる。
「そこを何とかして、元との交易がしたいんだけどなぁ。」
「宋も平もそんな感じですわよ。父上を説得しないことには元への船は出せませんわ。」
対馬を支配する宋家と壱岐を支配する平家もそんな感じでは、いつか行くっきゃないなぁ、そう高時がため息をつく。
「元?...大したことはなかったと聞いていますが。」
「知子殿、それは何かの間違いでは?」
戻ってきた知子が、両側に垂らした髪の毛をさすりながら地図を覗き込む。
「こうしてみると広いですね、北海道。
この辺り?の島に元軍が来襲した時に、散々に蹴散らし攻め込んだけれども砦を攻め落とせず、冬になったのであきらめた、そう伝わっています。」
知子が指を地図にさまよわせ、樺太北端でピッととめる。
「ふーん、元とアイヌの戦争は実は元軍の防衛戦争だったって研究成果があったけど、ホントだったんだ。」
登子が、歴史学者の目をしてメモる。
「だけどもちろん、アイヌともに満州・沿海州に侵攻するわけにはいかないからなぁ。」
「むしろ倭寇の停止と引き換えに硝石を要求できない?...前期倭寇もこの時期だとそれほどでもないか。」
未来情報に、鎌倉時代人はついていくのが精いっぱいな様子だった。
「とにかく、まずは国内を万全にしなくちゃどうにもならんだろう。」
「俺の海兵隊も足利の陸軍も、まだ朝廷の認めたもんじゃない。まずはそういうところから始めねえと。」
「なんといっても六波羅を再建しないことにはいかんともしがたいぜ。」
「…わかってる。だけども、あまりに重大すぎるし、因習漂うしがらみだらけの京とか、本当はかかわりたくないんだ。」
推し進めてきた未来路線と、あまりに相性が悪すぎる。そう高時は嫌がった。
「…高氏様、高時様、私に任せてくださらんか?」
「守時殿...」「守時...」「「兄上...」」
守時が、頭を下げる。
高氏が、息を吸い込んだ。ゆっくり吐く。こぶしを握り締める。
「守時殿、私も、連れて行ってください。」
「「「「「「「「「は!?」」」」」」」」」
「私もまた、京で、高時、登子、義貞、直義を超えられるように、成長したい。自分の女々しいところを直したいのだ。...だめか?」
「いや、将軍様が足りないところを直せるのではと申されるなら、異存は...」
「…もしかして高氏様... いや、なんでもねえ。」
「英時、何に気づいたんだ?」
「…私も気づきましたわ。これは少し申し訳なかったかしら。」
「英時、あや殿、黙っていてもらえるか?」
「守秘義務って言うんだっけな?」
「信用の大切さはわかっているつもりですわ。」
「え、どういうこと?」
「高氏、隠し事か?」
「…義貞、余計なことを聞くんじゃないわよ。たぶん気にしたらかわいそうなことよ。」
ー*ー
「どうして高氏は、京に行こうと思ったんだろ?あや姫、教えてくれない?」
「…登子様が高時様の隣を譲ってくださるなら...いえ、取り消しますわ。」
登子様の頬が、ぷくっと膨れている。
...それにしても登子様、色っぽくて大人っぽい、まさに花嫁かと思えば、子供みたいににっこり笑って見とれるほどかわいかったり、なんなのかしら...?
「大丈夫だよ、心配しなくても。だって高時の隣も私の隣も、両側にあるから。」
-ああ、そういうことですの。つまり登子様は、まだ15歳でいらっしゃるけど、でも、今と未来、合わせて30年の時を過ごしておられるから...
「…ならばありがたく、お二人のもう片隣りを頂戴いたしますわ。
それと、特別にお教えいたします。高氏様は、皆様に焼いておられるのですよ。」
「え、それは...高氏が、自分だけ妻も恋人もいないから、まさか、京へ行くのは、恋人を探すため!?」
「京は魔物の住処にございます。振り回されぬように申しておきましたわ。」
「ありがと。やっぱりあや姫はすごいよ。細かいことまで気を配れるし。」
そんな笑顔で尊敬のまなざしを向けないでくださる?私、宮中の女房たちと違って、女性を愛するつもりはないのですわ。
「それに、南朝...大覚寺統の動きも心配だしね。近江大津宮に引っ込んだらしいけど、手をこまねいてるとは思えない。特にあの、橋本くんが。」
「その方、未来での登子様が、恋人としていらしたのですわよね。
...袖すりあうも他生の縁。思うところはございませんこと?」
「時乃ちゃんがいる時代なら、そう言っていられたよ。でもこの時代では、戦争は起きるものじゃなくて、常にすぐそばに隠れてるから。
...でもね、私も、泣きたいときは泣くから、頼らせてね?」
登子様は、涙を頬に垂らし、そのまま、私の膝に倒れ掛かられた。
-登子様、なんて強いのかしら。
私はせめて、年上の意地として、夜が明けるまでずっと膝をお貸しすることにした。
ー*ー
1321年10月5日、平安京、六波羅
平安京を中央で二分する朱雀大路の、北から南まで続く馬と人の列。
8頭立ての馬車に曳かれる、馬並みの大きさの黒い筒ー大砲。
しかし、幕府の威光を見せつけんとするかのごとき軍勢に対し、都は少しー
-役者不足だった。
寝殿造りの貴族邸宅が立ち並ぶ街並みで、御曹司が姫君に忍んでいったのは昔の話。今や荘園制度の不安定化に伴い財源が尽き果てた京では、あちこちで朽ち果てようとする空き家を隠せなくなっていた。寝殿造りの家々が、腐ったあばら家の群れの中にぽつぽつ点在する。そうした状況の中での後醍醐天皇による軍資金徴収は、浮浪者の群れを生み出し、朝廷は末端の民草の信頼をすっかり失っていた。
貧富の差が如実に表れた都を、新将軍足利高氏と新六波羅探題赤橋守時(探題は組織名であるとともにそのリーダーの呼び名でもある)は馬に乗り六波羅へ向かう。
ヒノキの匂いも香ばしい六波羅探題の建物の前では、摂政、左大臣をはじめ、朝廷の重要人物たちが並んで待っていた。
馬から降り、頭を下げる尊氏。摂政が、征夷大将軍並びに正二位叙任の宣旨を読み上げる。
高氏は、どこかからの視線を感じて、頭を上げそうになった。
-誰かが、見つめている?
視線を限界まで上げるが、しかし、頭を下げたままで視線の主を探ることはかなわなかった。
ー*ー
「桃子殿下、よろしかったのでございますか?」
「問題ないわ。むしろ収穫があったというべき。それにしても、『宣旨を渡すのにわざわざ六波羅まで出向けば恐縮して公家への悪感情も薄れるでしょう』なんて信じるほうも信じるほうなら、素直に従って恐縮するほうもするほうよ。」
「はあ。確かに持明院統も新将軍も情けない限りですが、しかしあの新探題は一筋縄ではいかぬお方かと。」
「…おはな、本当にそう思ってる?」
「はあ?」
「北条の兵の数に騙されるほうも騙されるほう。あの将軍-
ーいいわ。」
ー*ー
1321年11月8日、平安京
「高氏殿はいやまったく、見目麗しき貴公子でござられますな。光源氏の再来かと思い...」
この内大臣の困るところは、「お世辞を言わない」ところだ、そう守時は思っている。
西園寺実衡。朝廷でも公式で10位以内、実質的には5位ぐらいの権勢を持つ、公家、西園寺家の当主。だが実際には、時流を外れないようにするのが精いっぱいの人物。
だがしかし、六波羅探題としても、西園寺家をむげにはできなかった。
「内大臣様こそ、この難しい時期に関東申次などという大役をお勤めになられ…」
-関東申次。鎌倉幕府が朝廷と連絡を取る担当が六波羅探題であるのに対し、朝廷が幕府と連絡を取るための担当、それが、代々西園寺家の家職とされる、関東申次。当然軽視はできない。
先代の関東申次西園寺実兼は、どちらかといえば大覚寺統寄りだった。そのために六波羅での惨劇を防げなかったことをさすがに悔やみ、孫の実衝に地位を譲り隠居した。そのために急に大役にまつり挙げられた実衝が、急速に変動する情勢についていけた、それだけで奇跡にも等しいことであった。
さらに西園寺家は、持明院統・大覚寺統双方と婚姻を結んでいる。世渡りでしのいできた家だけあって、実衝もまたしかり。
「時に高氏殿ー」
実衝が口調にへつらいを混ぜた瞬間、守時は高氏の肩をたたいた。
「気を付けよ。」
「-聞けばまだ、奥方がいらっしゃらないとか。」
同時に襖が開き、娘が二人入ってくる。
しかし、高氏は二人を見た瞬間に首を横に振った。
-いくら美しくても、登子にまるで及ばないー
ー*ー
「だから言わなかった、実衝?縁談の破談なんて珍しくはないのに、わざわざ足利高氏が有力御家人に誓詞を出したということは、本人がそれだけ、赤橋登子殿に夢中だったということ。その登子殿について調べておくなりすればいいのに。」
「しかし、髪を切るのはさすがに気が引けるとのことで... 桃子殿下こそ、せっかく読みが同じなのですから、自ら名乗り上げられてはいかがです?」
「私が大覚寺統の皇女であることが発覚したら、紹介した人も処罰されるかもね。」
「いつものように、侍女のおはな殿を使えばよろしいではないですか。」
「おはなを使っちゃったらそれこそ私は根無し草よ。まあ、手はまわらせておくわ。」
「ますます兄上に似申し上げられましたな。」
「…あれと比べないで。」
ー*ー
1321年12月1日、近江大津宮
大津が日本の都であった時期は、天智天皇のころの一時期に過ぎない。だが俺の計画のためには、この地にどうしても移住する必要があった。そして比叡山延暦寺を掌握する文観にとっても、大津への大覚寺統移住は有意義だったらしい。
-何も、亡命したとかではない。別に京都が日本の首都である必要などないのだ。水運が交通の主役である時代において、琵琶湖の出口ほど素晴らしい立地はない。そして何より、俺に必要な土地は、東濃と伯耆、それだけだ。この箱庭で、文観をこれ以上喜ばせるのは危険すぎる。
「桃子、高氏はどうなりそうだ?」
「今、まさに、作戦を遂行中よ。ただ守時って男が手ごわいわね。誰か、『京では言い寄られてもウラがあると疑え』とでも吹き込んだのか。守時からすれば、妹をめぐって主君二人、将軍と執権の争いになる可能性があるのに、なおそれを防ぐ『高氏への公家輿入れ』に乗り気にならないのか。ただのお上りさんではないのは確かよ。
...兄上、本当にやる気なの?よしんばうまくいっても、代償が大きすぎるわ。」
「やるさ。たとえすべてを失おうとも、もうコレを作ったからには、後には引けない。」
俺は、決めた。もう一野にも、生臭坊主にも、遅れは取らないって。
湖面遠くに光る反射光をにらみ、俺は唇をかみしめた。
ー*ー
1322年1月8日、六波羅
「どこかにいい出会いないかなあ」
守時のつぶやきに、高氏はびくっと背筋を震わせた。
「未来ではそう申すのだとか、今の高氏様のお気持ちを。」
図星である。
「京に参られてからというもの、公務の間を縫っては公家の会合に出ておられるのに、いっこう勧められた娘をめとるつもりが垣間見られぬ。
...やはり登子と?」
「申し訳ない。どうしても登子殿のことは忘れられないし、比べてしまう。」
「…あれは我らにも過ぎたる妹だ。この前実感した。。だから、高氏様がそう思われるのは無理もない...が、別に天下一の女子を探そうというわけではござらんのだろう?
...高氏様がお探しになられるのは、生涯の伴侶ではないのか?
高時様と登子、あや姫様は、非常に仲がよさそうに見受けられる。登子とは発する言葉が重なるほどだし、あや姫様とは初対面ながらまるでお互いを知り尽くしておられるように息があっておられたとか。
義貞様も、文句ばかり申されると口では言っておられるが、安達からも新田からも苦情など聞いたことがないのは、それだけ勾子殿と義貞様の相性が良いからなのだろう。
弟君も、あのような難しい地で事を収めたということは、やはり相性の良さではないか?」
-そんなことはとっくに、気づいている。それでも...
「失礼ながら申し上げる。高氏様が今追っておられるのは、登子の面影であろう。」
「そうわかっていてもなお、登子殿が初恋だったんだ。あきらめきれず当然だろう!」
「…いや、そう申し上げたかったのではない。今になって京まで出てきたのはつまり、高時様はじめ皆、一心同体とすら言えるほどの伴侶を持たれ、寂しく、うらやましくなられたからであろう。であるならば、もう一度、じっくり心を砕いて考えられよ。」
ー*ー
守時に諭された高氏だったが、やはり理屈だけでどうになるわけではなく、ボーと呆けながらも京の町を歩いていた。
当然だが京は鎌倉より灰色で、汚い。これはむろん、ずっと幕府の治世下にあった鎌倉と、持明院統と大覚寺統の治世が入れ替わる中で大寺院などの治外法権も混在する京の違いもある。ただ、最大の要因は高時たちの内政にあった。
・上下水道の整備
・街道の舗装
・廃棄物全てを街道はじめ公の場所に捨てることを禁止
・(硝石の回収を兼ね)源氏将軍の時代に作られた古い建物をすべて解体、新築
・密集した家屋建築を厳禁
さらには鎌倉の大部分が朝廷軍の放火と幕府軍の砲撃で灰燼に帰したのち、高時は、住宅再建を武士の仕事とする代わり家屋の濫造を禁じていた。すぐに朽ちるようでは衛生上も治安上も悪いからである。そのために鎌倉では整然と木造家屋が5尺の幅を開け立ち並び、北条得宗家や足利家の屋敷もいっかいの貧乏商人の家でも広さ以外全く同じ外見という、ちょっとシュールな光景が広がっていた。
そして、この寒い中に高氏が声をかけられたのも、京の、公家の凋落を示す朽ち家区画、浮浪人地区であった。
「ちょっと、そこのお武家様!」
ー*ー
お武家様...?
「そこの、丸に横棒二つの家紋のお武家様!」
若者の声が、なおも聞こえてくる。
「そこの者!天下の将軍様に向けて、何たる口の利き方!」
「口を慎まれよ!」
あー、私に声をかけたのか。
「皆、落ち着け。」
「ですが将軍様、未だ京は危うき地。」
「そうです!刺客、あるいは恨みを持つ者ということも!」
「油断は禁物ですぞ!」
「良い良い、ここであっさり斬られるのであらば、それもまた」
「天命、そうおっしゃいますか?」
若者は、道のわきに高い机を出し、その後ろから声をかけてきていた。
「あ、ああ。」
「天命などはかなきもの。最初から運命が決まっているならば、陰陽師などという職業が衰えはしなかったはず。
貴殿もまた、流れゆく川の中の石。川をせき止められるかどうかは、私でも容易には存じ上げません。」
陰陽師?陰陽師がなぜ...
「くさい口上を吐くやつ!すっこめ!」
いや、今なら..
「では陰陽師殿、私の天命を、わかる限りでよい、占ってはくれぬか?」
「承りました。」
「しょ、将軍様!?」
「つきましてはこの木札を、額の、髪の毛に隠れないところに貼ってはいただけませぬか?」
陰陽師は、やたらと重く、不思議な文様が刻まれ、太い糸で自身の袖の中へと続いている木の札を渡してきた。
指示通り額に木札を置き、左手で押さえる。
「これで、何を?」
「…じっとしていていただけますか?」
陰陽師の若者は、そう言って袖口から透明な板を取り出した。
「起動、閲覧権限最上位、対象を接続、強制取り込み」
何を、つぶやいているんだ?
その時、若い陰陽師は再び顔を上げ、左目をー
ー*ー
「おはな、どうしたの?」
「私の一族の者より、ただいま報せが参りました。」
「高氏?どうだったの?」
「『心に隙がある。つけこむのは容易なれども、幕府を裏切らせるのは不可能。』、それから、さらに重要な報せにございますが...」
ー*ー
「高氏様!」
「ん… はッ!ここは...」
「高氏様、しっかりなさってください!」
起きたら、目の前に守時殿がいた。
「路上で侍が何人も寝ているという知らせを受けてきてみれば!どういうことです?」
「そ、そうだ、あの陰陽師は?」
あの若者が目を閉じた後の記憶がない。
「妖術か何かか?」
「…未来ではそんなものはないだろうとされているそうで。陰陽師...?
高氏様、その手に握っている紙は?」
「紙?」
確かに、左手に紙片が握られてある。木札を抑えていたはずだが...
〈陰陽師、百松寺武が告ぐ。
四海に未曾有の嵐迫らん。ことわりを揺るがす4人。あるいは貴殿も、その周辺にて名を刻む。
求めるものあらば、必ず期待することなかれ。汝のすべてが汝に使えるにあらず、されば汝の本質に合うすべては汝の意思に応じて現れること能わず。
クジラに気を付けよ。
守るべきものの順位をつけられたし。
歩き続けよ。
祈り続けよ。〉
何のことやら。
「守るべきものの順位、か...登子が聞いたら怒りそうだな。あの二人はすべてを守られるから。しかし我らのような凡人にはー」
-そのような芸当がいつもできるとは限らない、か。
ー*ー
1322年1月17日、平安京、六波羅
その日は、公家や親王の家族も招いての新年祝賀の日だった。
「諸事情より遅くなって申す弁もござりません。ただお詫び申し上げます。なおも我らの祝宴に参加なされたことに、この征夷大将軍正二位高氏、感激の至りでございます。」
正直高氏は、疲れ果てていた。
諸事情?公家やら親王家やらの祝宴に招かれて忙しかったというだけだ。
だから、一挙一両足に戦場以上の注意が要求される祝宴を抜け出し、夜風に当たりたいと思っても無理はない。
「守時殿、実衝殿、中座したい。任せてもよいか?」
「どうぞお構いなく。あっちは...だめですな?」
実衝ですら、守時を見て言葉を濁した。
「陸奥の酒は当たり外れがそれはもうひどうござった。」
「守時殿、ようわかっておられる!わしも奥州の荘園からの酒は、まず侍女に味見させておるわ。」
「それに弟がまた恥ずかしながら上戸でな...」
守時は、公家たちと酒談義や身内への愚痴で盛り上がっていた。
「…灘の酒は関八州に並ぶものがないから...」
「…呑まれましたな。」
いつもは静かでしっかりしている守時が盛り上がっているのをしり目に、高氏は広間を抜け出し、星座を眺めた。
そろそろ戻るかと振り向いて、一歩。
ゴン。
「痛!」
「な!何!?」
足元の段差に躓いた高氏は、目の前にいた女性を巻き込み、通路の反対側、縁側へ落っこちた。
「…東武士も大したことは...って将軍!」
「つー...」
高氏は立ち上がって初めて、相手を凝視できた。
大きく広がる袿をはたきながら、高氏を見つめる娘。いかにも長い髪はしかし頭頂部でまとめられ、渡来物のくしが刺されている。登子が見たらシニヨンだといったかもしれないが、カムイシラの三つ編みおさげを直義が三つ編みおさげと呼ばなかったように、高氏もまた、せっかくの長く美しい黒髪がもったいないとしか思わなかった。
特筆すべき点は特にない、しかしだというのに、服、立ち居振る舞い、かわいらしい顔立ち、すべてが奇跡のように調和していた。
ー尊い。高氏は純粋にそう思った。
「正二位、足利高氏と申します。」
「お初にお目にかかります、高氏様。私ー
ー大津院が第三皇女、桃子と申します。」
ー*ー
「とう、し...?」
「桃と書いてとうです。高氏様、お気づきのこととは思いますが、公家は実名ではなく官職で名乗るのですよ。」
桃子殿下は、そう告げて、去って行かれた。
「…おや?」
つまずいたところに、かすがいを床に打ち付けて紙をはさんである。道理で痛いと思った。
何々...〈後日伺い申し上げます。くれぐれも大覚寺統を過小評価なさらないことです。貴方のとうしより〉
...わざわざひらがなで書いてきた。いくら万天下に知られている可能性が高かったとはいえ、私の初恋で遊ばないでほしい。
それでも、「とうし」か…。
ー*ー
1322年2月11日、近江国、竹生島
紀元節あるいは建国記念の日。我ら大覚寺統が正当な皇統として再起するのにこれほどの日もない。
「複固定索切断」
巨大な船体が、浮き上がるとともに周りの小舟を大きく揺らす。
「護良!」
「陛下!必ずや我らのもとに天下をもたらして見せます!」
「無事に帰ってくるんだぞ!!」
それはもちろん。むしろ、時乃をいかに無事に連れ戻すかのほうが難しい。
けれどー
「今生の別れとなるやもしれませぬ。けれどもこの護良、傍流でありながら多大なお力添えをいただいたこと、たとえこの身が消えうせようと、決して魂が忘れないでしょう!」
-涙ぐむ父上に楠木正成。だけど、誰も俺の真意を知るまい。
「浮揚用意!全員何かにつかまれ!」
「エンジン、正常に作動!」
「回せ!」
中心軸が接続され、回り始めたスクリュープロペラが、湖水をかき回す。バシャバシャと音がし、小舟が慌てて沖へ退避していく。
「気密確認!」
「気圧は一定、内気の流出、見られません!」
おや、竹生神社に向けて手を合わせている者がいるな。
「係留索切断!」
錨が引き上げられ、船内に引き込まれる。そして、支えるものが一本の綱だけになったために、足元は風に揺さぶられる。
「ひい!」
「うろたえるな!これは天皇家、そして日の本のための戦いである!
固定索、切断!」
-白鯨が、泳ぎ出した。
ー*ー
1322年2月11日、平安京、六波羅
「高氏様!大覚寺統から、使者が参っております!」
「通せ!」
「高氏様!桃子でございます!守時殿もおられますか!?」
「あ、ああ...私が守時だが... 大覚寺統?何の用で」
「戦にございます!直ちにあの『大砲』を、上へ向けなさいませ!」
ー*ー
話を急ぎすぎた。
「落ち着いて最初から話します。前回のわれらの戦が、百姓を使うなど、今までと全く異なるものであること、お分かりですよね?」
敵にいきなり言われては返答に困るだろうけど、こちらも回りくどいことをしている暇はない!
「ああ...」
「あの戦の中心には、我が兄、護良という男がおりました。
-まるで、この狭い世に生まれたとは思えない男です。」
「…まさか!?」
「ですから私は、つてを使って足利将軍、貴方の心を読むように頼みました。そして知りましたー
-北条高時殿、登子殿、そして我が兄は、未来の人間なのですね?」
さすが、安倍氏が一目置く知られざる陰陽師一族。心を読んだって言う報告を信じなくてもよかったけど、アレ、あの光を見てしまうとそうも言っていられなかった。
「…それは...」
「答えられないのなら答えなくて結構ですが、そのなすことの破天荒さをご存じなら、大砲を空に向けよという意味が分かるでしょう?」
「いや、まさか...」
いやまさか、決行が今日とは知らなかったわ。
「将軍様!そ、空に、妖怪が!」
「妖怪!?アホを申すでない!」
守時が兵をしかりつけながら出ていく。
「もう、来たって言うの?そんな、速くは動けないはずなのにっ!」
「わ!た、高氏様!」
「どうした!」
高氏に引き続き、縁側へ出る。
空には妖怪、いや、巨大なクジラが浮かんでいた。
「あれは何だ!?」
「早く撃ち落として!でないと大変なことに...!」
機体の下から、何かが落ちてくる。
「もう、手遅れなの!?そんな、都を気にもかけないなんて...!」
いや、散ってる?
「大砲を上へ撃て!」
「し、しかし、上には向けられません!」
「斜めに北の誰もいないほうへ撃て!」
「了解!三寸砲、最大炸薬!」
あれはまさか、紙?
ドン!
降ってくる何かとすれ違いに、黒い砲弾が飛び、白鯨のはるか下を通り過ぎ落下していく。
「守時様!届きません!」
「ぐぬぬ…」
-じゃあ、アレに対処する方法は、兄上の言うとおり、ないの!?
「殿下!アレは何です!?」
「空をかける船、兄上は、『つぇっぺりん級飛行船』と呼んでおりました!」
「空を飛ぶのか!!」
「それだけでは…」
ストン。
目の前に、飛行船から巻かれた、石が結びつけられた紙束が落ちてきた。
ほどく。
「兄上、いったい何を... 無茶苦茶な!」
〈賊徒、正二位山城守征夷大将軍足利高氏、従四位下武蔵守赤橋守時、以上の首を献上せよ。
もし明晩日没までに返答なくば、この飛行船『飛電城号」は、京全体はおろか、鎌倉までも完膚なく焼き払うであろう。〉
さんざん「元と交易を再開して硝石を入手する、そのためにあや姫の力が必要」という流れにしようとしてきましたが、元寇の直後ですら民間レベルで日元貿易ってあったんですね。得宗家も絡んでいたようで、政冷経熱は今に始まったことではないようです。なので国交回復パートは後の話でも端折りました。
そもそも念のため、「-この物語は、正史として語られる実際の歴史やその人物・国家とは何の関係もない。ー」です。多少の矛盾はお目こぼしを。ただし年月・設定の、時代考証が絡まない範囲であれば、もうビシバシ言ってください。