護衛任務開始!!
すいません。まだまだ序章です。
帝都への護衛任務が決まってからは毎日があっという間に過ぎて、気が付いたら当日になっていた。
僕の目の前では丁度村の入り口の門で帝都へ行くメンバーが出発式とも呼べない簡単なお別れ会的なものをしていた。
今回のメンバーは、タンク役のカイさん、アーチャー役のエレンさん(カエデ様がご自分で雇われた冒険者たちだ)ヒーラー役はカエデ様が、僕はどこの役でもフォローできるオールラウンダーとして選ばれたようだ。
そしてカエデ様の付き人として司祭見習いのフーレンがついていくことになった。
帝都までは馬で役3日ほど、そこそこ長い旅になりそうだが、カエデ様には指一本触れさせない。
そしてついに出発式を終えた僕たちは帝都への道のりを歩みだしたのだった。
ナーガの森は別名魔物の深域とも呼ばれている。魔物が場所も時も関係なく四六時中現れることからつけられた名で、この道を通るものは護衛が余程の腕利きか、もしくは冒険者ぐらいなものである。
一日目は余裕だった僕たちも二日目になると疲労の色が見え隠れしてきた。
そんな時だった、僕らが進む道の前に一体の異常なほどに大きく真っ黒な魔物が現れた。
「な、何だこいつ…!?」
「見たことない個体・・・まさかレアモンスター!?」
『レアモンスター』その名の通り滅多に見ることができない希少な魔物。
未知の種類もあるといわれるこのモンスターは名有りよりもはるかに強い能力や固有能力を持っており、通常一匹を倒すのに最低で中級冒険者クラン3つ(1クランに約30名ほど)は必要だとされている。
レアモンスターの重い一撃を盾で受け流しながら指令役のカイさんが決定を下す。
「くっ!撤退だ!!エレンとカエデさんとフーレンさんは逃げろ!俺とスイレン君で殿を務める!」
エレンさんはすぐに言い返した。
「カイ!!何言ってるのっ!私も一緒に」
「駄目だ!」
「・・・っ」
カイさんにそう怒鳴られ黙るエレンさん。僕はレアモンスターの重圧に耐えながらなんとかエレンさんに向かって口を開いた。
「エレンさん、お願いします。」
エレンさんは虚を突かれたように目を開いてそれから諦めたように俯いた。
カイさんが声を叫ぶ
「早くいけ!!」
エレンさんは、僕たちに背を向けそのまま無言で二人を連れてきた道を駆け抜けていった。
「さて、スイレン君覚悟はできてるかい?」
「ええ、僕がカエデを守って見せるッ!!」
まるで僕たちが態勢を整えるのを待っているかのように現れてから一歩も動かずに攻撃していたモンスターが、雄叫びを上げながら突進してくる。。
まるで戦う前の最終確認をしているかのような咆哮だった。その咆哮に合わせるようにカイさんが叫ぶ
「【戦いの叫び】!!!」
技能【戦いの叫び】一般的な戦士職であるタンカーが手に入りやすいスキルで効果は敵の注意を引き付ける事。そして、スキル使用中の防御力が上昇することだ。
スキルには努力すれば手に入れる事ができる物や職業に就いたときにもっている物、ある日気が付いたら持っていたなんて言うものまであるらしく、どういう基準で手に入るのかはいまだ分かっていないらしい。
【戦いの叫び】はどちらかというと前者の部類入るスキルである。比較的簡単に手に入る上、効果もそこそこ強いためタンカー職で持っていない人はいないのではないかと思っている。
スキル名を叫んだカイさんの身体を青い光が包む。スキルが正常に発動したことを示す光である。
「行くぞぉぉぉぉ‼」
僕はカイさんの突撃に合わせて僕の持つ唯一のスキルを発動させる。
「【斬撃】!!」
技能【斬撃】剣士系の超基本スキルで剣士系の職業の人で持っていない人はいない。
何故ならすべての斬撃系のスキルはこのスキルが元になっているからだ。
何故僕がこのスキルしか使えないかというと、このスキル以外を取得できなかったからだ。
どんなに努力しても、教会でしか見る事のできない熟練度と呼ばれるものを最大値にまで上げても僕が他のスキルを取得することはなかった。
まるで初めからそういう仕様だったとばかりに。
なので、僕はこの職業に就いたときから【斬撃】スキルをひたすら練習し続けた。
そのおかげで、沢山放てるようにはなったけど、威力はそこまで強くはない。案の定モンスターは僕のスキルを受けても全く反応がない。まるで僕の存在自体を気にしてすらいないようだ。
だが、
「僕の見せ場はここからだ。」
そう、一撃が弱いのなら、沢山浴びせればいい。
「【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】」
一度に10回程度しか放てない上に、一度はなったらしばらく休まなくてはならないなど、
いろいろな制約はつくが、熟練度を最大の百まで上げたスラッシュ10回分は【斬撃】系スキルの正統進化系最上級スキルである【覇斬】とまではいわないが、その下の【裂刃】ぐらいの攻撃力はあるだろう。
僕のスラッシュを右腕で受けたモンスターは受けた右腕その者を消失させてよろけた。
「よし、よくやった!!このまま」カイさんが言葉をつづけようとしたその時、僕の前にいたカイさんの身体が盾ごと縦に真っ二つになった。
「え・・?」
唖然とする僕の前には、真っ二つになったカイさんだったモノとそれを喰らう化け物がいた。
「あ、あああああ・・・・アアアアアアアアア!!」
僕は何が何だかわからないまま剣を振り回していた。化け物は僕のほうを見向きもしないまま左腕を伸ばした。そう、伸びたのだ。僕との距離は5メートレ以上離れていたはずなのに、化け物の腕は僕を貫いたのだ。
「ゴホッ!!」
僕の口からあふれ出す血。胸元を見てみると、腕だと思っていたものは太くて黒い楔だった。楔の先には真っ黒な剣が付いていてその部分が僕の胸を穿っている。
そして、穿たれた部分から黒いナニカが僕の身体を侵食していく。
ああ、身体から力が抜けて段々と目の前が真っ暗になっていく。
ああ・・・これがしぬってことなのかな…?
明日の更新で、少し途切れます。