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捨てる人材

捨てる人材 -6-



「はい、大木 俊二 (おおきしゅんじ) の処分は今日中に完了する予定ですので……あ、いえ私ではなく、平山が担当しています」



人事部に戻ると、山下が電話中だった。




平山は自分の名前が山下の口から零れたことに気を取られつつも、山下の席のすぐ後ろにある棚へと向かった。



棚には顧客の資料がファイリングされ、収められている。入りきらない資料が、棚の上や、手前に平積みされていて、見栄えが悪い。



その棚の側面に銅製のフックが何個か付けてあり、そこに営業車の鍵だとか、この事務所の鍵なんかが掛かっている。そして、ここにかかっている大抵の鍵が何に使うものなのか、平山には分からなかった。



すべての鍵にはプラスチックのタグが付いており、それを見れば何の鍵か分かるようになっている。




「何をしてるの、平山」




山下はいつの間にやら電話を終えていたらしい。怪訝な顔で俺を見ていた。




「いえ、倉庫の鍵が閉まっていたので、鍵を探していたんです」




「鍵はさっき私が開けといたけど?言わなかったっけ?」




「いや、それが開いてなくて」




「えー、おかしいな……それは」




そう言いながら、山下がズボンのポッケに手を入れて、何かを探し始めた。



少しして、山下は俺に見せびらかす様に右手をぷらぷらと振り、青いプラスチックタグの付いた鍵が山下の手のもとでジャラジャラと揺れた。




「ほらね。ここに鍵があるから」




「はぁ」




「私が、さっきこれを使って開けたから、開いてるはずなんだけど」




「間違えて逆に、閉めてしまったとか……?」




「いやいや、それはないよ。ちゃんと開けたのを確認したから」




【まあ、いいや】と言って、山下が俺に鍵を手渡した。




「それより、どうだった?大木さん」




山下が机の上のパソコンの画面に目を移す。さり気なくその話題を切り出した、と言った風だ。




「そうですね……何だか気味が悪いです」




「何で?」




「だって……これから死ぬって言うのに笑ってるんですもん」




「【死ぬ】……何を言ってるんだ?」




山下が呆気に取られた顔を見せた。





捨てる人材 -6- ―終―




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