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婚約者と対面

結構短めに終わります。

面白かったら評価・ブクマをお願いします。

 

「はぁ、憂鬱だ」


 とぼとぼと廊下を歩きながらため息をつく。

 原因は現国王である父の言葉だ。


『お前もそろそろいい年だ。彼女の一人や二人おらんのか? なら、儂の紹介する相手と結婚してもらうぞ』


 横暴もいいところだ。

 幼い頃から兄のスペアとして育ってきた僕は勉強や習い事に忙しくて恋愛をする暇がなかった。それなのに父は僕を彼女もいないモテない奴みたいに扱ってくる。


 僕はモテないんじゃない。彼女を作らないだけなんだ!


  現に、僕に言い寄ってくる令嬢は少なくない。王位は兄が継ぐとして、第二王子の僕は兄の補佐的な役割に着くだろう。

 王位を狙っているような連中ではなく、王家と血縁関係を繋ぎたいそこそこの野心ある家の子たちにだ。

 どいつもこいつもギラギラした目で僕を見てくる。気分はまるで猛獣の中に放り込まれたウサギのようだ。


「まぁ、婚約者が決まるというのはわざわざ自分から探す必要がないから、手間が省けるのかな?」


 相手が好みかどうかはともかく、とりあえず双方の合意があれば婚約してもいいかもしれない。

 愛がなくとも子どもさえ作ってしまえばお互いは不用になるのだ。それでいいじゃないか。

 我が道を往く兄は物語やミュージカルのような相思相愛の恋愛譚に憧れてるが、僕は役割さえ果たせればそれが最善だと思う。


 決して、彼女いない歴が年齢で女性との接し方が分からないとかではない。そうじゃない。


「しかし、父が用意した相手か……。まぁ、息子の婚約相手だ。きっとそれなりの気品と知性を持った美しい人に違いない」


 廊下を歩いた先にある部屋。この場所に僕の将来の妻になる相手がいるという。


「失礼します」


 ちょっとした期待と恐怖を抱えながら扉を開ける。





「あ"ぁ"?」





 パタン。僕は扉を閉めた。


「ないないない。昨日夜更かししたせいかな? きっと頭が目覚めきってないんだ」


 もう一度、深く深呼吸をして気分を落ち着かせて扉を開く。


「なんだテメー?」


 はい。夢じゃありませんでした。


 部屋の中にいたのは、一つ結びにされた長い金髪の女性。身長は僕より少し低いくらい。女性の中では平均的な高さだろう。

 特筆するべき点は目と服装。まず目、長い睫毛があって凛々しいんだけど、目がヤバい。近距離で凄い睨みつけてくる。それに何故マスク?

 服装は僕も通っている学園の制服のはずなんだけど、丈も袖も長さが違う。そして謎の木刀。ここ、城内ですよね⁉︎


「僕はこの国の第二王子のハルルートです。貴女は? ここは関係者しか入れないはずですが?」


「長い……ハルで充分だな。アタシはヒビキ。クソ親父から結婚がどうだのって無理矢理連れてこられた」


 確定じゃないか! こ、こいつが僕の婚約者⁉︎


「ふ〜ん。アンタがアタシの婚約者ってか。……弱そうだな。まるでもやしみたいだ」


 し、失礼な! と言い返したかったが、無理。木刀持っていかにも強そうなオーラを出してる彼女に勝てる姿が思い浮かばない。


「顔はまぁまぁだが、雰囲気ってのか? まるでなっちゃいねぇな」


 じろじろと頭から足先までを見られる。蛇に睨まれた蛙のように僕は直立不動でピンとしてます。


「よし。テメーをアタシが鍛えてやんよ」






 ♦︎






「パパ⁉︎ 聞いてないんだけど! 何なのあの子!!」


 普段は父上と呼んでいたが、事態の混乱に思わず幼少期の呼び方をしてしまう。


「なにって、お前の婚約者だ。伯爵家の令嬢で麗しく、強か(したたか)な人物だと聞いているぞ」


「あれは強かっていうより凶悪って言うんだよ! よりによってなんて僕が苦手なタイプの子なの⁉︎」


 女性経験が乏しい僕にとって、肉食系の女性は天敵に等しい。好みとしては甘く愛を囁いてくれる包容力のあるほんわかした人とかが好みなのに! まるで逆の人物じゃないか。


「儂も直接はあったことないが、報告書によれば学園で数多の生徒をまとめ上げ、文武両道で、上下関係などの礼節を重んじる娘だと聞いている」


「あながち間違いじゃなさそうだけどさ! 実物見てきてよ! あれはボスとか姉御と呼ばれるタイプの人だから! チェンジお願いします!!」


 周囲の護衛や侍女が見てるのも関係なしに僕は父に泣きついた。

 あれだけは、あれだけは勘弁してほしいと。


「しかし……相手の家には話をつけて、お前さんと同棲する準備までして来てもらったのに」


 僕に相談もなく話を進めないでよ。しかも未成年の二人がど、同棲⁉︎ それは倫理的にどうなのさ! 王家とはいえその辺はきっちりしないと。


「別に誰でもいいと前に言っていたし、根は真面目で義理堅いお前のことだ。婚約者さえ用意すれば子作りまでスムーズにいくと思っておったのに」


「確かに。僕も王子だからその辺の覚悟はしてるけどあの子だけは……助けてパパ」


「百獣の王である獅子は我が子を谷に落とすという。ハルルートよ、これも試練だと思って耐えるのだ。儂はお前の兄嫁について対応しなければならぬ」


 懇願虚しく散りました。僕は人間、獅子じゃない。

 しかし、父は僕よりも次期後継者である兄に関することが忙しいからお前後回しな!と言った。

 こういう時に長兄って羨ましいって思う!







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