雨宿りはキミの隣で
『手に入れたとき、僕らはそれまでの道を忘れる。手に入らなかったとき、僕らはそれまでの道を大切にする』
ふと窓の外を見ながら僕はそんな事を思った。
時刻は十七時を過ぎようとしていた。
僕は教室の窓際、一番隅の自分の机に腰掛け、散々に降る雨を眺めながら『彼』のことを考える。
そう、彼の名前は『アレクサンドリア』僕をいつも雨風から守ってくれる『傘』だ。僕が下校時刻もとうに過ぎているのに、教室に残っているのには訳がある。
『傘をパクられたから』だ。
今頃傘はどうしているだろうか。男の人を守り懸命に戦っているだろうか。女の子を暖かく見守り、その大きな腕で道しるべとなっているだろうか。はたまた、愛を囁きあった紳士淑女の未来明るいホームになっているのだろうか……。
今日の降水確率『七十パーセント』朝は晴れていても、普通なら傘を持参する確立である。
だから僕は考える。『手に入らなかったから、その道を大切にしようと……』僕のアレクサンドリアはきっとこの日のために生まれてきたんだ。僕が今日、朝のテレビでお天気お姉さんに世界の理を受けたとき、僕はきっとその世界の歯車になったのだと……。
でもね聞いてくれアレクサンドリア。キミはいつか捨てられてしまう。帰り道の途中、もし雨が止んだらキミに愛着のない彼らはキミを無慈悲に捨てるだろう。そしてキミは思うんだ『ブルータス! お前もか!』と……ちがうか……。
そんな、僕の傘を奪った彼らに皮肉な想いを心に唱えていると、時計の針はてっぺんを過ぎ、十七時を過ぎた。相変わらず雨は散々に降り、薄茶色だった校庭は赤茶色に変わり、所々にある水溜りが川のようになっていた。
教室には僕以外には誰もいず、窓を叩く雨の音と、階段ダッシュをしている女テニの足音。そして遠くの教室から微かに聞こえる吹奏楽のフルートの音色で満たされていた。
僕は生粋の日本人。流れるままに流されて、この作り出されたワンシーンを流れるままに流れようと決めた。
そんな時だった。僕が君に出会ったのは……。
教室のドアが開く音がした。見慣れない少女がそこに立っていて、僕を見ると少し動揺したように言葉を捜していた。
「……」
少女は僕に声もかけずに何やらいろんな人の机を漁っていた。
「な、なにしてるの?」
僕は彼女のその奇怪な行動に思わず声をかけた。
「あ、いえ、ちがうんです! 盗みとか物色ではなくて、ただ少し借り物を……」
「まあ。人前で盗みをする人はいないよね……たぶん……」
僕と彼女の始めての会話だった。
彼女は落ち着かない様子でスカートを堅く何度も握りしめ僕に向き合った。
「何、探してるの?」
「コンパス……」
「じゃあ僕の貸してあげるよ。ちょっと待ってて――」
僕はカバンから筆箱を出して彼女にコンパスを渡した。彼女の上履きの色を見ると、僕と同じ薄緑色だったので、すぐに同学年という事は分かったが、僕はこの女の子の事は知らない。
「キミは……隣のクラスの?」
一つだけ思い当たるとするなら、一年の夏休みを越した後ぐらいからクラスに顔を出さない生徒がいることくらいだった。だから僕は思い切って彼女に聞いてみた。
「……はい……」
彼女は小さく頷くと、「ありがとうございます……」と呟き、来た道を引き返すように教室を出て行った。しかし、ドアの前で一度立ち止まり、何かを考えるようにして僕のほうへ振り返るとゆっくりと引き返してきた。
「あの! これ! よかったら!」
僕の目の前に勢い良く差し出された小さな手には『ケーキセット無料! カフェ菓子の木』と書かれているチケットが握られていた。僕はそれをそっと受け取ると笑いながら答えた。
「ありがとう。僕甘いもの好きなんだ。男なのに変でしょ?」
「いいえ! そんなことないです!」
「ふふ。ありがと」
僕はもう一度お礼を言って、また窓に顔を向けた。
「帰らないんですか?」
彼女が話し掛けてきた。彼女はどこか不安げな表情で僕を見ていた。
「帰れないんだ……傘が飛んでいってしまってね……」
僕は彼女におどけて答えた。その時彼女は初めて笑った。
「なにそれっ」
僕はその笑顔に少し見惚れてしまった。顔はけしてクラス一番の美人と言えるわけでも、身長が高いわけでもない彼女に僕は見惚れてしまった。一瞬の輝きは僕の世界を変えたのかもしれない。
雨の日は嫌いだ。朝、カーテンの隙間に射し込む光が曇天模様なら一日中僕の心は晴れないし、今日に限って言えば、相棒も消えた。雨なんか散々だ……。
でも、そんな僕の曇り空に少し見えない光が射し込んだ気がした。
ごめんなアレクサンドリア……お前と別れて、なにか掴んだ気がするよ。
・・・・・・
翌日、空は昨日の雨が嘘だったかのように晴天だった。もうすぐ梅雨に入るというのに、カラっとした天気に地球温暖化の危機を感じながら。僕はいつもの登校風景を送っていた。でも、たまに草木から香る雨の匂いや雫に、昨日の彼女の笑顔を思い出しては、ふと頬が緩むのが分かってしまう。これを恋と言うにはいささか時間が足りなくて、衝動的な蒼い気持ちの表れなんだと思う。だから、恋ではない。断じてない。ありえない。だけど、彼女のあの笑顔が瞼に染み込んで頭から離れなかった。
授業はつつがなく終わり、また放課後がやってくる。
時刻は十六時。
僕はまた、この場所に居ればあの子に会えると思い、教室に意味もなく残っていた。
窓の外には野球部の練習風景と、廊下には生徒が走り回る足音。教室には何人かのグループが居座り、どうでもいいような事を大事そうに話している。
僕は廊下の傘立てに目を向ける。やはりアレクサンドリアは帰ってなかった……。僕は一度手を離してしまった彼をどうしたら取り返すか、頭の隅で考えながら机に突っ伏した。
「桐島、帰らないのか?」
友人の山本が声をかけてくる。
「ん? ああ――帰るか……」
時刻は十七時半。
この日は彼女は姿を現さなかった。
僕は家に帰り、布団に包まりながら、貰ったチケットを何度も見返した。その裏に彼女の笑顔が潜んでいるような気がしてならなかった。
・・・・・
梅雨に入った。本格的に雨のシーズンで、肌にはなんとも形容し難いべたつきと、心を沈めるくらい空の季節。僕は嫌いだ。きっと好きな人間はいないと思う。
僕はあの雨の日からずっと彼女を待っていた。しかし、あれから彼女は姿をみせなかった。僕は途中からあれは幻だったのではないかと思い始めて、担任に学年名簿を見せてもらい、彼女の存在を確かめたくらいだ。
彼女の名前はあった。
『柏木 彩乃』それが彼女の名前だ。クラスは二年三組。学力優秀で生活態度もいい明るい生徒だったらしいのだが、高校一年の夏からクラスに顔を出さなくなったらしい。先生は何が原因かは教えてくれなかった。プライバシーの問題だそうだ。それはそうだ。僕もただ一度話した相手の過去をしらみつぶしに調べるつもりは毛頭ない。
しかしよかった。彼女は現実に存在している。幽霊やオカルトチックな事は信じてはいないが、こんなに姿をみせないと、さすがに自分を疑いたくなるものだ。
何日か過ぎた頃、久々の大雨が降った。きっとこれからはこんな日が続くのであろうと思うと少し気が滅入りそうになる。
放課後になると教室は静まり返った。部活動もこの季節になると自主トレがメインですすんで残る生徒はあまり多くはない。だから、雨の日は人が少ない校舎に、日々聞き逃すメロディーがあふれ出す。
窓を叩く雨音。階段を走る女テニの足音。遠くの教室の笛の音。そして……。
ドアを開く音がした。
「やあ。また傘が飛んでいっちゃって……」
あの少女。柏木彩乃はそこに立っていた。
「たまたま通りかかったらあなたが見えたから……その、この前はありがとうございました」
柏木は笑って答えた。僕が見たかったあの『笑顔』だ。
僕らはそれから自然に話した。クラスのみんながしているような話で、みんなが笑える話。それは今までも僕らは繋がっていたかのように思わせるくらい自然に僕らは話した。
「……わたし、教室にいけないの……。なんだか、あの場所にはわたしの居場所なんてないような気がして……。だから今は別棟で保健室登校みたいなのしてるの」
「そうなんだ」
「だから、雨の日はいつも来ないこの棟に足を運ばせるの。みんなが帰った後に秘密の探検……。私一人の冒険……」
僕は何も言わなかった。それは立ち入って聞いていい話しなのか、それとも彼女の独り言なのか分からない呟きだったからだ。
「わたし、学校辞めようかと思ってるの……」
「それは困る!」
つい言ってしまった……。それは反射的と表現をするならベストな答えといえる程に唐突だった。
「えっ? どうして?」
彼女は目を丸くして僕に問いかけた。だから僕は笑って答えることにした。
「だって、また傘が飛んでいったら僕は一人でここに居なくちゃならないじゃないか」
「また、傘は飛んでいくの?」
「――それは、傘に聞かなきゃわからないね」
僕らは二人して笑った。その彼女の笑顔に僕は少しだけ雨も悪くないと思い始めた。
・・・・・
僕は雨の日が来ると、いつも彼女の姿を探してた。
決まって放課後の十七時過ぎ。
いつものメロディーと湿った空気に包まれた教室で僕は彼女を待った。
「今日も傘は飛んでいったの?」
「ああ、けっこうすばしっこいやつでね。いつも逃げられるんだ」
クスクスと笑う彼女を見て、僕も同じように笑う、
カバンに入れた折り畳み傘は絶対にみせられない。誰かが書いた歌詞の意味が少しだけ分かった気がした。
僕達は雨が来るたび二人で教室で話した、それは何かの映画のワンシーンのようで、そして天の川を待ちきれない二人のように僕らは何度も教室で言葉を交わした。
彼女の好きな事。好きな本。たい焼きは頭から食べるか尻尾から食べるか――。僕らは確実にお互いを深めつつあった。彼女の実家があの『カフェ菓子の木』だったことには驚いた。今度休みの日にでも出かけようと思った。
・・・・・
今日は晴天。雨も泣きつかれたかのように真っ青な空に僕は大きく伸びをして目的地に向かった。
比較的土日はにぎやかなこの町もこのシーズンは別物だ。観光でくる人などごく僅かで、道は気持ちがいいほどに空いていた。
今日はついにあのチケットが使われる日なのだ。
僕はポケットに入れたチケットを握り締めバスに乗った。最寄のバス停から約二十分のその店『菓子の木』はデザートで有名なカフェだった。僕は甘いケーキと休日に見る初めての柏木の顔を想像して、胸が高鳴るのを感じた。
店のドアをゆっくりと開けると、カウンターにロマンスグレーが似合いそうな物腰の柔らかそうなおじさんと、ベーシックな黒と白の制服に身を包んだ柏木が僕を迎えてくれた。
「いらっしゃい! お父さん。こちら学校のお友達の桐島優くん。桐島くん、こっちに座って!」
柏木は僕の背中を押してカウンターの一番左、柏木の近くに僕を座らせると楽しげにケーキを持ってきた。それはとても可愛らしいイチゴのショートケーキとカップケーキだった。
店の中は昔ながらのカフェといった感じで、静かに流れるジャズにコーヒーの香り。それはそこに訪れた者にちょっぴりの非日常と、子供の僕には大人の階段を一歩進めてくれるような気がした。
「今日は呼んでくれてありがとう。喫茶店なんて初めてだから少し緊張するけど……」
僕はいつもと少し雰囲気の違う彼女の横顔を眺めながら呟いた。結んだ髪や大人っぽい仕草の彼女に僕は見惚れた。学校でみせない彼女の一面。きっとこれが彼女なんだ。
「いやぁ、本当にキミには感謝しているよ」
いきなり顔を横に出してきたのはさっきのおじさん、柏木のお父さんだ。
「あの子があんなに笑顔を見せてくれるのは久々なんだよ。キミと出会ってからあの子もまた昔みたいに笑うようになった。本当にありがとう……」
深々と頭を下げるお父さんに僕はそれ以上に頭を下げて「こ、こちらこそ……」というしかなかった。他のお客さんのオーダーを取り終えた柏木が帰ってくると、彼女は少し顔を赤く染めて俯いた。
それから毎週のように僕は菓子の木に通った。正直コーヒーは苦手な僕はいつもメロンソーダを頼んだ。「かっこ悪いかな?」と聞くと柏木は「私も好きよ」と言った。
ある日お父さんが買い出しで店に居ないときに僕と彼女は二人きりになった。外は雨でお客はだれもいない。
「今日も傘は飛んでる?」
「ふふ。そうだね。遠くに羽ばたいていってしまったよ」
「傘なら生憎あるわよ?」
「……メロンソーダおかわり……」
イジワルに笑う彼女の顔にすこしだけドキッとした。
「二杯頼むよ。僕とキミの分。一緒に話そう」
彼女は嬉しそうに頷くと二杯分の『クリームソーダ』を持ってきて僕の隣に座った。
「好きでしょ?」
とてもきれいな顔で笑う彼女に僕は
「うん。好き……かも」
と答えた。
・・・・・・
学校では雨の日しか会えない彼女。いつしか僕は雨を望んでいた。きっと物語の主人公は雨だろうが晴れだろうが進んで本のページをめくように二人の距離は縮まり、時に離れて、そして最後は二人で微笑むんだ。だけど僕は主人公でもなければ、きっと彼女の問題を解決できるヒーローでもない。
僕はただ、学校の誰も知らない彼女の笑顔を僕だけが知っている。そんな独占欲と自己中心的な心の持ち主なのかもしれない。
雨が降った。今日も僕は教室で彼女を待った。
しかし、彼女は姿をみせなかった。僕は彼女にラインを送ったが未読のまま時間は過ぎていった。
僕も今日は諦めて、カバンから折りたたみ傘を出し、下駄箱へ向かった。
外は大雨で、小さな折りたたみ傘では頼りなかったが、僕は思い腰を上げ帰路に着いた。
傘を叩く雨の音が妙な不安を覚えさせる。絡まる湿った風が僕の行く先を留めるようにまとわりつく。
もう大半の生徒は家でくつろいでいる時間だろう。この道を歩く生徒は一人も居ない。
学校をでて、しばらく歩くと人影が見えた。その姿は傘をさしてはおらず、ぼんやりとふらふらに前を歩いていた。
僕は一目でその正体が分かった。『彼女』だ。
「ちょ、ちょっとなにやってんの!? 傘も差さずに……とりあえず入って」
僕は彼女を小さな傘に無理やり入れて近場の雨宿りが出来そうな場所を探した。彼女はその間何も語らず、ずっと僕の袖に掴まっていた。微かに震える指先はきっと寒さのせいじゃない。
「傘……とんでない……うそつき……うそつき……」
彼女は僕の胸に顔を埋め、僕のシャツを塗らした。震えるその肩に僕は手を置いて、そして抱きしめた。
彼女は泣いた。「うそつき……」そう呟きながら僕の胸でずっと泣いていた。雨は泣き止まず、そっと僕らを隠していた。
それから少し時間が経って彼女は顔を真っ赤にして僕の傍を離れた。きっと僕も同じくらい赤くなっている。
彼女はその重い口を開いて過去の『イジメ』について話し出した。
高校一年になりたてのとき、中学のときからの親友がいじめられていた。それは最初はからかうくらいだったがだんだんエスカレートして、『悪口』や『物を隠したり』……そんな親友の姿を見かねた柏木はひたすらイジメグループから親友を庇った。だから、今度の標的は親友から柏木に移ったのだ。今度はそのイジメグループにその『親友』の女の子も加わって……。
彼女は孤独になった。一番の友人に裏切られ、クラスではそこにいるだけで罪人のような目で見られる。彼女は本気で学校を辞めようとしていたんだろう。だから、自分の最後の学生だった教室を見てまわっていたんだろう……。
彼女は話し終えるといつもみたいに笑った。「ばかでしょ? わたし……」そう言う彼女の笑顔は哀しいくらいに奇麗だった。
・・・・・・
梅雨が明けた。アスファルトの照り返しは夏の訪れを知らせるように一日一日激しさを増す。
雨の日が少なくなった。彼女と顔を合わす時間が少なくなっていく。週末に菓子の木に顔を出しても彼女は顔をみせてくれず、雨の日の学校でも、僕の待つあの教室に彼女は現れなくなった。
放課後、いつもと同じように僕は一人で帰路につく。教室を出て、階段を下り下駄箱に向かう。その時、一人の女の子とぶつかった。
「あ、ごめんね。大丈夫?」
僕とぶつかり、女の子の手から沢山のパックの飲み物が零れ落ちた。
「すいません……急いでたもので……」
僕はその飲み物の量といい、この子の暗い雰囲気といい、これが『パシリ』であることがすぐに分かった。きっと誰が見ても同じに感じるだろう。
「手伝うよ」
「あ、いえ! けっこうです!」
女の子は手早くそれを拾い上げると、階段へ向かい走り去っていった。僕はその後姿に柏木も、もしかしたらこんな目にあっていたのかな……なんて考えて、少しいたたまれなくなった。
夕暮れの校舎は暖かく寂しげで、足を運ぶことが出来ない少女をずっと待っている気がした。
その夜。僕は夢を見た。
いつもの教室にいつものメロディー。
外は晴れやかで僕の目の前に笑っている柏木がいる。
僕は「一緒に帰ろう」と言って彼女の手を握るが、彼女は笑ったまま動かない。そして、彼女の後ろの窓から見える景色は『雨』だった。僕は何度も柏木の手を握るが、彼女は幻影のように僕の手からすべり落ちる。
窓から校庭をみる。
土砂降りの雨にうたれて、『彼女』は一人泣いていた……。
心臓の鼓動が騒がしく、額には厭な汗が滲み出し、僕は目を開けた。
時刻は深夜二時
僕はそれから再び眠る事は出来なかった。
夢の彼女の『叫び』が頭を離れてくれなかった。
今はひたすら彼女に会いたいと僕は思っていた。
気がつけば朝の光が部屋に射しこんでいた。
僕は制服に着替えて、いつもより早く家を出た。だけど、向かう場所は学校じゃない。
最寄のバス停に向かいバスを待つ。空っぽのカバンに何かを詰め込んで僕はキミに会いに行く。
・・・・・
菓子の木に着くと柏木のお父さんが店の前でオープンの準備をしていた。
「やあ、おはよう。この間は娘をおくってくれてありがとうね」
「……柏木彩乃さんを今日一日お借りします」
「……ありがとう」
お父さんは静かに頷くとそっと店の中に入っていった。
僕は柏木の部屋の前に立った。胸の鼓動が一気に早くなる。彼女は僕にまた微笑んでくれるだろうか……と。
「柏木さーん! 一緒に遊びに行こう。この前話してた、たい焼き食べに行こう。それから――」
僕は何かと理由をつけて何度も彼女に声をかけた。しかし彼女は何も答えてくれなかった。
「はやく行こうよ。三分で仕度して。じゃないと……開けちゃうよ?」
僕はなるべく明るくおどけて声をかけた。すると部屋の中から
「え、あ、ちょ――」
何やら慌ただしい足音と小さな悲鳴が部屋から聞こえた。様子を見に来たお父さんの顔が少しだけ明るく笑った気がした。
「三分たったよ! さん…にい………いち!」
「――アポもなしで来るなんて……」
ドアが開いた。そこに彼女は立っていた。息を少し切らして、微かにはねた前髪をいじりながら、少しだけ怪訝な顔で僕を見ていた。
「出会いはいつだって突然さ。おはよう柏木さん。そして久しぶり」
「……うん。ひさしぶり……」
彼女は少し俯きながら僕の前にいる。僕は半分開かれた扉を開けて彼女に言う。
「――傘を買いに行こう。君の傘を――」
僕は彼女の手を握り、部屋から連れ出した。この手は幻影じゃない。ちゃんと僕の手の中にある。僕は彼女の言葉を待たずに駆け出した。
目的地なんてどこでもいい。二人でバスに乗り、二人でどうでもいい話をする。僕はもう一度彼女に笑って欲しくて旅をする。
「初めて学校さぼっちゃった。でも、なんかワクワクするね!」
彼女は心配そうな顔で僕を見つめていたが、次第にその顔から陰りは消え、笑った。
「ふふ。なんか桐島くんって子供みたいに笑うのね」
僕達は笑いあう。いつかの風景に僕らが残してきた時間を取り戻すように。
学校に向かう生徒から隠れながら、交番のお廻りさんに見つからないように、僕達は走った。
二人で食べるたい焼きは暖かく甘い。尻尾から食べる彼女と頭から食べる僕。
二人で観た映画は少し落ち着かない。右の肩に少し彼女の肩が触れると鼓動が早くなる。
二人で行く買い物は特別だ。時間があっという間に過ぎていく。彼女の輝く瞳にのまれていく……。
空を見上げると、もうオレンジ色に染まっていた。
「今日は連れてきてくれてありがとう。すっごく楽しかった」
「僕も楽しかった。ありがとう。ああ、こんなに楽しいなら僕、学校辞めようかな……」
「それはダメよ! ちゃんと学校には行かなくちゃ!」
「ふふ。キミがいう?」
僕は笑った。でも彼女は少し顔を赤らめて俯いた。
ふと、駅の改札前を見ると、小物やアクセサリーを売っている露店を見つけた。
僕は彼女の手を握り、そこに向かった。
ガラス細工の様々なアクセサリーが均等に並べられている。
「きれいだね……」
「うん……」
僕は露店のおじさんに「これ、ください」と言って、その中の一つを掴んだ。
それは水色のガラス細工、『雫』の形のネックレス。
僕はそれを彼女の細い首にまわす。彼女は戸惑いながら目をそらしている。
「うん。やっぱり似合ってる」
「わるいよ。こんな高いもの受け取れない。それにわたし……なにもあなたにしてあげてない……」
「僕がしたいんだ。キミと二人で歩いた記念に。キミがまた学校に来れるように……お守りさ」
これが彼女の『傘』になればいい。どんなに憂鬱な雨の日でも、彼女を守る傘になればいい。
「いつでもいい。またあの教室で待ってる」
僕は彼女にそう告げて僕らは帰路に着いた。
・・・・・
僕は翌日ある人に会うことにした。
その人の名は 『野崎 有理』 柏木彩乃の親友。いや、かつては親友だった女の子だ。
僕は彼女に学校に来て欲しかった。
きっと行動したのは自己満足がしたいから。なにかに理由をつけて、彼女と話がしたいから。だから僕は野崎と話さなきゃいけないと思った。
たぶんちがう……僕は心のどこかで野崎有理という女の子を憎んでいた。彼女が柏木を裏切らなければ……と。
昼休みになると僕は急いで隣のクラスに向かった。そこに野崎はいた。
派手な女子の集団の中に一人地味な女の子。それはいつか僕とぶつかったあの女の子だった。
「少し話しがあるんだけど、いま大丈夫?」
僕は野崎にそう言うと、なぜか野崎ではなく、椅子にどっかり座った金髪の女の子が答えた
「はあ? 今からこの子はおつかいがあるんですけど~。用ならそのあとにしてよ」
「そうなの? また飲み物?」
野崎は少し震えて頷いた。だから僕はなるべく笑顔で答えた
「じゃあ、僕につきあってよ。君たちもたまには自分で買いに行きなよ。大事な話なんだ。ごめんよ」
僕はそれだけ言うと野崎に目を向ける。その表情は怯えていて、今にも零れ落ちそうな潤んだ瞳で床を見ている。僕はそれでも彼女を見続ける。けして逸らしはしない。
「……ごめんねみんな。わたしちょっと行ってくる……」
野崎はやっとの思いで、その重い口を開くと僕の後ろに着いてきた。軽く金髪の少女の舌打ちが聞こえたが、僕は振り返らなかった。
僕は誰も使っていない教室に入ると、単刀直入に声をかけた。
「柏木彩乃さんについてのこと何だけど――」
僕のその言葉を聞いて彼女は一瞬震えた。
「彩乃ちゃん……この前学校で会いました……。何か話し掛けてきたけど、わたし怖くて……逃げ出しました」
きっとあの雨の日のことだ。柏木が初めてみせた彼女の弱さ。僕は静かに野崎の話を聞いた。
「彩乃ちゃんは昔から明るくて、クラスの人気者で……わたしみたいな暗い女の子にも優しくしてくれるし、そのことを鼻にかけることもしなくて……」
「野崎さんは彼女の親友だったんだよね?」
「……わかりません……」
「もう一度、友達に戻りたくないの? 今の友達のほうが大事?」
僕はたぶん野崎に鋭い刃を突き刺している。それは曖昧でも空虚でもない僕の彼女に対する『罰』だ。
「キミは、キミを大切に思ってる人を裏切ったんだ……!!」
また野崎の体が震える……でも仕方がない。それは彼女が犯した業なのだから……。
だけど、本当にそうだろうか。僕はそれが本当に正しいと思っているだろうか。
僕は野崎の顔を思い出す。あの暗い表情で誰もいない廊下を走る野崎の姿を……。
校庭にたたずむ人影が見えた気がした。強い雨にうたれて叫んでいる。それはきっと野崎も同じだった。
「わたしも彩乃ちゃんとまた話したい! でも! わたしから離れていってしまった……彼女の伸ばした手を振り払ってわたしは逃げ出したの! 今更どうしてあの頃に戻れるのよ!」
野崎は両手で顔を覆い、その小さな肩を震わせていた。
「……きっと無理だね。あの頃なんかにはきっと戻れない。一度離してしまったら、離れてしまったらそれはもう自分のものじゃない。きっともう戻れない……」
彼女は泣きだした。後悔と取り戻せない現実とをその涙にのせて、哀しく泣いた。
「――でもね。僕は思うんだ。きっと同じ結果にたどり着けなくても、その道は閉ざされたわけじゃない。きっと自分が見方を変えたら近くでそれは待っているのかもしれない。でもそれは自分が動き出さなきゃ見つからない。とかね」
「わたしは許されるの?」
「わからない。それはこれからの野崎さん次第で、答えはキミ達二人が持っている……じゃないかな?」
野崎はそれでも顔を俯かせていた。きっと彼女はもう自分の過ちに気付いていて、それを正す道も知っている。だから僕は最後に彼女に言う事にした。
「キミにどうのこうのしてくれなんて僕は言わない。ただ一言キミに言いたかったんだ。僕は彼女を……柏木彩乃を守るよ。って」
「――どうして桐島くんはそこまで……」
ああ。答えなんかとうに知っていたさ。あの雨の日、偶然出合った女の子。笑うと八重歯が少し覗いて無邪気な女の子。たい焼きは尻尾から大事そうにして食べる女の子。喫茶店で働く姿が大人っぽくて見惚れてしまう女の子。僕はもう随分前から……
「――ああ。大好きだ――」
僕の言葉を聞いて、野崎は初めて笑った。その笑顔は曇りなく、何かを決心したように、細い枝が風に負けないように背を張るようにまっすぐだった。
「急に呼び出してごめんね。あの子達のこと、大丈夫?」
「はい! 大丈夫です。わたしもあなた達のように強くなりたい。 今は重い一歩だけど、しっかり進んで行きたいです!」
そうして彼女は教室に帰っていった。僕は野崎を傷付けた。だけどそれは、痛みだけじゃない。痛みと共に歩む『道』になればいいと心から願った。
『罪と罰』きっとそれは罪を犯したから罰を受けるのではない。罪に気付いてしまった時、罰を受けるのだ……。
彼女にとっての罪はなんだろう。僕には検討もつかなかった……ただキミには幸せに、いつも笑って欲しかった。
・・・・
何日かが過ぎた。雨のの日も晴れの日も僕は彼女を待った。
「桐島。帰ろうぜ」
山本がいつものように僕を誘う。
「悪い。ちょっと用事」
「またかよ~。まあ、うんりょーかい。じゃあな!」
僕は教室から見える別棟をみた。今日は彼女は来ているだろうか。もしかしたら、今日は会いに来てくれるんじゃないかと。
週末になると僕は菓子の木に向かった。あの日から一度も顔を見せていない彼女に会うために。
店に着くと彼女のお父さんだけがカウンターにいた。
僕はお父さんに話を通して彼女の部屋に向かった。あの時と同じように鼓動が早くなった。
「柏木さん? 僕だけど……久しぶり。あの……少し話さない?」
「……帰って」
「えっ……?」
予想外の言葉に僕は戸惑った。なんで拒絶されたのかが分からなかった。
僕はそっと扉に手をかけてその重い扉をゆっくりと開けた。
彼女は泣いていた。
「どうしたの? なにかあった?」
彼女は俯いたまま何も言わなかった。
しばらくして彼女は口を開いた。
「……なんでわたしに構うの? なんでわたしに話しかけるの? なんでわたしに優しくするの? なんでわたしに期待させたの……」
「えっ……?」
僕は言葉に詰まる。何を意味して彼女が言っているのか分からない。
「わたし……ずっと思ってた。もしかしたらあなたは……でも違った……あなたはもうわたしじゃないあの子を選んだのね……」
「柏木さん! 意味がわからない! 何のこと!?」
「わたし、聞いちゃったの……あなたが有理ちゃんに告白してるとこ……わたし……馬鹿だよね。また、勝手に期待して、勝手に傷ついて……もういやになちゃった……」
僕が野崎に告白? そんなことあるわけない! だって僕は柏木の事が……。
「ちょっとまって! 何のこと? 僕は告白してないよ! だって僕はキミのことが……」
彼女は虚ろな瞳で僕をみた。それはきっと『僕』をみていない……。彼女に僕の声は届かない……。
「話をきいて――」
「さわらないで!」
僕は柏木の肩に手を置くと、柏木は僕の手を払った。その時、何か柏木の首元から落ちて、それは地面に触れると同時に乾いた音をたて割れた。
そこにはあの『雫』のネックレスが粉々になって散らばっていた。
「――」
僕は黙ったまま動けなかった。柏木は涙を拭うと哀しく乾いた声で呟いた。
「もう、もどれないの……。失ったものは永遠に……」
「……わからないじゃないか」
僕はその塵となった破片を集める。手のひらにチクリと触る感覚が走る。
「――やめて!」
柏木は僕の手を払い、集めた雫はまた宙を舞い散々に散る。指先に少し痛みを感じて僕はその指に目を向けると、一筋の赤い線が流れていた。
「――ごめ――」
「ごめんね……今日は帰るよ……」
外は曇天模様で、もうすぐ雨がくる。僕は一人、大衆の中へ消えていく。見上げた空は哀しい色に染まっていく……。
・・・・・
期末試験も終わり、もうすぐ夏休みに入る。彼女とはあの日以降、会っていない。
僕は習慣になりつつある雨宿りを続けている。
ふと、廊下の傘立てに目をやると見慣れた『それ』があった。
「ふふ。おかえり。アレクサンドリア」
もう少ない傘の中に彼は慎み深く刺さっていた。
誰もいない教室を背にして僕は歩き出した。
「桐島くん」
階段を下ろうとした時、名前を呼ばれた。相手は野崎だった。
「野崎さんまだ残ってたんだ。どう、あれから友達とはうまくやれてる?」
「ふふ。ほんと桐島くんってイジワルね」
そう笑う野崎の顔は、前のような暗さはなく、随分と大人びて見えた。
「桐島くん。ありがとうね。わたしのこと怒ってくれて……綾乃ちゃんのこと見ていてくれて……。わたし、ずっと彩乃ちゃんのこと羨ましかった。だからわたしからイジメの標的が彩乃ちゃんに変わったとき、助けなきゃって思っていたんだけど、心のどこかではきっと妬んでいたんだと思う……。わたしもあの人たちからイジメル事を強要されていたけど、結局は自分で起こした過ちの一つなんだとおもう。だから綾乃ちゃんが居なくなった後は、またわたしに標的が戻った。自業自得よね」
僕達は外を静かに見ていた。新緑の葉から零れ落ちる雫は涙のようだった。
「だからわたし決めたの。わたしも綾乃ちゃんを待つ。いいえ。迎えに行くの――」
野崎はまっすぐに僕の目をみた。その大きな瞳は時折り不安の影をみせ、微かに震える指先が野崎の感情を僕に痛いほど伝える。
「僕も……今度は間違えない」
あの日、僕と彼女が話しをしっかりしていれば、こんな事にはならなかった。
あの日、壊れた雫を見て僕はまた、何かを失った気がしていた。
僕は手に持った傘を強く握り、今も一人であの部屋にいるであろう彼女の事を想った。
だから『雨宿りは君の隣で』そう決めたから……。
・・・・・
僕は携帯に文字をうつ。
『お久しぶりです。今日は晴れやかな日といえば聞こえはいいですが、体育の授業で校庭に出たとき夏の訪れが忌まわしく感じました。友達が熱中症で保健室へ行くのが見えましたが、柏木さんは大丈夫でしょうか? 暑い日にはしっかり水分補給をしてください。またキミと甘いクリームソーダが飲みたいです』
『今日は雨ですね。最近はあのフルート奏者の練習を聴くのが日課になりつつあります。夏休みに入ったら大きな大会でもあるのかな? 今でもこの教室にはキミと二人で聞いた名前も知らない音楽が流れています……。』
『とうとう終業式も終わりました。野崎さんはあれからキミに謝りたいとずっと言っています。僕は彼女の事を少し尊敬します。優しい君と弱いキミ……なら僕はいったい……なんて少しの自嘲と傲慢の気持ちで毎日を過ごしています。きっとこれも通知表の結果が悪かったからナイーブになっているだけなのかもしれませんが(笑)』
『明日は雨になるそうです。昔は雨が嫌いでした。じっとりとした空気に何もかもが押しつぶされそうで、僕は毎日晴れればいいと本気で思っていました。でも、キミと会って――』
僕はそこまで書いて手をとめた。
何回も何日もラインを送っても返信は来ない。こんな事に意味を求める毎日がただ過ぎていった。
照り返しのアスファルトに誘われて、僕は人ごみの中にいる。
ふと、前を見ると、中学生くらいの男女が肩を寄せ合い、すこしぎこちなく座っている。手にはたい焼きをもって楽しそうに話していた。
あの日の僕らは一つだった……僕はキミにただ会いたいと思った。
僕は書きかけの文字を消してただ一言
『キミに会いたい』
キミに伝えたい言葉は千の言葉じゃない。僕はそれだけキミに言いたかった。
・・・・・
始業式。
今だ鳴いている蝉の声に耳を澄ませながら、日焼けと大人ぶった態度の生徒達の間を抜けて僕は学校へ向かう。
校長先生が長い話をしている時も僕は見えない空を眺めていた。
『雨がくる――』
そんな気がしてならなかった。
午前中に帰りのショートホームルームが終わると、皆が一斉に帰路につく。外は曇り、時折り湿った花の香りが僕を捉えていた。
アレクサンドリアは帰ってきた。もう会えないと、もう戻れないと思っていた。
野崎は闘っている。自分が犯した過ちと、後悔の念に囚われて。
柏木彩乃は迷っている。望んだ答えが叶わぬ儚さに、自分の期待の浅はかさに……。
僕は……何なのだろう……彼女にとって、僕にとって――。
答えのない道を一人で歩む事に僕らは慣れ過ぎている。物語のヒーローになんて絶対になれない僕はキミを待つことしか結局は出来ない。
キミはシンデレラでも白雪姫でもない。ガラスの靴を探すのはもうやめよう。一緒に運動靴で学校に行こう。毒りんごで眠るなら、僕達は一緒に購買へ並ぼう。僕とキミとじゃオシャレな物語なんて描けないかもしれないけど、僕はそれがいい。ただそれだけでいい……。
「桐島。帰らないの?」
教室に僕以外で唯一残っている山本が話しかける。
「ああ。もう少し――」
「そっか。がんばれよ」
山本は窓に見えないアイアイ傘を描くと優しい笑顔を残して教室を出て行った。僕はそれを指でなぞりながら小さく「ありがとう」と言った。
雨が降り出した。
今日はアレクサンドリアがいる。もう雨宿りなんてしなくてもいい。だけど僕はここにいる。
足音が聞こえる。小さくゆっくりと近づいてくる。
雨の音。
吹奏楽の合同音楽。
女テニの階段ダッシュ。
そして――。
「今日も傘は飛んでいってしまったの?」
教室のドアが開かれる。
「いいや。傘なんて関係ないよ。僕は待つんだよずっと。その日が来てくれるまで――」
ゆっくりと、その足音が近づいてくる。甘い香りと僕の好きなコーヒーの香り。
「でもね、今日でそれは終わりにする」
僕は傘を広げて、その子を中に入れる。
「今日からは、二人で雨上がりの空を見に行こう。僕はキミの隣が心地いい」
彼女は笑った。その瞳に静かに涙を浮かべて。
こぼれる雫は流せばいい。きっとそれは終わりの合図ではなく、始まりの音だと僕は気付いたから。
雨にうたれる校舎を背に、僕達は歩き出した。
一つの傘に身を寄せて、自分達の居場所をしっかりと確かめ合って僕らは隣りあわせだ。
こんな日もわるくない。僕は少し濡れる左肩に暖かさを感じながら前を向いた。
誰も居ない教室からそっと、僕達の『傘』に書いた名前が見つめているような気がした。