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ただ、気ままであるために  作者: 眠る小籠包
1/6

1話 事件だ…

今俺は森の真っ只中にいる。


俺のななめ後ろからは馬車の車輪が大きな音を出しながら回り、たまに何かにかすって大きな音が出る。


諸事情により整備された道から数メートル離れた森の中を走っているから詳しくは分からないが、おそらくこの馬車は規定の速度を大きく逸脱している。何かに追われているのだろう。


俺もまた追われている。後ろからは角の生えたうさぎ、通称コーナーラビットが追ってきている。いわゆる、魔物である。ウサギの形をしているのだが、なめてはいけない。この角は非常に危険で、普通の人間の生命活動を終わらせるには一突きで十分だろう。


逃げながら横目で道をのぞく。そこには周りを騎士たちに囲まれ猛スピードで走る馬車と、その馬車を追いかけている馬に乗った盗賊らしきものたち。視線を馬車の進行先へと向けると、たくさんの木が積まれ、道が塞がれていた。


用意周到なことだ。


そう思っていたとき、頭のなかでいい案が浮かぶ。そうだ、ウサギを擦り付けよう。


俺は90度右へ走る方向を変更する。後ろに魔物がついてきていることを確認し、そのまま走って街道に近づく。もうすでに馬車は動きを止め、盗賊に囲まれている。今にも馬車を守る騎士と盗賊の戦闘が始まりそうだ。急いで俺は盗賊と馬車を守る騎士の間に割って入る。


騎士、盗賊両者の視線が俺に集まる。


「なんだてめぇ、邪魔しようってのか」


盗賊の男が多少驚いた後そう言ってくる。

あぁ、そのつもりだ。まぁ、邪魔するのは俺ではないが・・・


「なんとか言えやゴラァ!!」


男は言いながらよく磨かれた大剣を振りかぶる。俺は腰から短剣を抜き、構える。振り下ろされた大剣を受け流しながら男と自分の場所を入れ替える。


「このやろっ!」


苛立ちながら男は大剣をまた振りかぶるが、俺は短剣の構えを解く。戦っても勝てないと思い、諦めたわけではない。もう、短剣を使う必要がないからだ。


男はそうは思わなかったのだろう。ニヤリと笑みを浮かべて勝利を確信した顔をしている。


ドスッ


何かが刺さった音がする。

男の体にコーナーラビットの角が突き刺さっている。

そう、俺がここまできて、男と体を入れ替えたのは、コーナーラビットを誘導するためだ。突然のことに騎士も盗賊も動揺している。


このままぼーっとしていては、追いかけてくるのがウサギから盗賊にかわるだけなので、すぐさま体を反転させ、森の中へと飛び込む。そのときにすれ違った盗賊の一人の首筋にナイフを滑らせ、掻っ切る。


これで、盗賊と騎士は7対7になった。これならどうにかなるだろう。


まぁ、後は頑張ってくれ、という意味をこめて背後に視線を送る。その視線が騎士の中の隊長らしき男とぶつかる。


すぐにわかった。この男は強い。そして、俺はこの男を知っている。こいつはホワルト王国第三王女の護衛騎士、ブロードだ。ということは馬車の中にいるのは第三王女か。


俺は自分のかかわった事件が割と大事だったことに気づき、焦って退散した。王族に目をつけられてもいいことはない。

たとえそれがいい意味でも。


俺はそれを知っているために焦ったのだ。

顔はフードで隠していたから大丈夫だろうが早く去るにこしたことはない。





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