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第四話 悩殺! 身体検査


 翌朝。食事もまだ始まらぬ早い時間に玄関のチャイムが鳴った。

俺たちは、顔を洗ったり歯を磨いてサッパリしたところだった。


 J-C●Mスタッフか、公安警察かどちらかなのか?

俺の探知能力に、まだ昨日の見張りの車は映っている。

我が家に、色々な人や車が接近したり離れたりしてゆくので、定位置から動かなくて目立つ見張りの車のようなものは察知しやすいのだが…。

訪問者というのは、訪問者が来るまではそれが何人だとか男か女かなどは、探知しにくいと言うか、意識に登ってきにくい。

なんでかと聞かれても答えられないが、そういうものなのだ。


 チャイムを鳴らした人物は、昨日我が家を訪問した人物のうちの誰でもなかった。

既知の人物ではなく、二人いる、男と女だ。

探知能力でわかるのはそれくらいだ。


「はぁい」母さんが玄関に迎えに出た。

俺たちは、リビングで待つ。

「あの、なんだかよくわからない人が、和彦達とお話しがしたいって」

母さんは名乗りを受けたのだが、長ったらしい肩書きだったので、頭に入りきらなかったらしい。


「早朝に押しかけることになってしまい、まことに申し訳ございません。昨日は、警察の者がうかがったと思いますが、大変失礼を致しました。代わって私がご挨拶に参りました。内閣調査室の山中太一郎やまなか たいちろうと申します」

初老の男が会釈する。

 山中と言うその男は、見るからに高級そうなスーツを身に着けている。たぶんオーダーメイドだろう。

ズボンには折り目がピシッと入っている。

偉い人というよりは、執事のような感じを受ける人だ。口調は柔らかで感じがいい。

もう一人は若い女性だ。

「私は山中の秘書の柏木かしわぎむつみという者です。同じく、内閣調査室所属です」

美人で、こちらもかっちりとしたスーツを着用。

パンツスーツではなく膝丈のスカートだ。髪は肩にかかるくらいの長さだ。

むつみさんかぁ、可愛い名前だなぁ。


 柏木さんは美人だが、俺のファンシアもイーシャもアイラも、みな美人だぞ。

俺は心密かに思った。

ただ、柏木さんの胸は大きくて、そこには引かれるものがある。

おっぱいは、ロマンなのだ!

ということで、つい柏木さんの胸に視線が行ってしまう。

それをイーシャに見つかってしまい、ちょっときまりが悪くなる。

イーシャは、また自分の平坦な胸の事を考えてしまっているに違いない。

大きいのも好きだが、俺は小さいのも好きだぞ。

イーシャに心の中でエールを送る。


 山中さんと柏木さんは、身分証明書をしっかり見せてくれた。どうやら身分を詐称する偽者というわけではなさそうだ。

それぞれ名刺もくれた。

山中さんの名刺には「内閣調査室 第三課室長」と書いてあった。

柏木さんの名刺は、ただ「内閣調査室 第三課」と書いてあるだけだ。

役職名は記載されていなかった。


「氷堂和彦さん、異世界からのご帰還、お疲れ様でした」

山中さんが、労をねぎらうよう、丁寧な口調で話してくれる。

柏木さんは黙ってうなずいた。

「昨日のJ-C●M生中継、見せていただきました」

「俺達のことを、信じてくれるんですか?」

「ええ、こうして、異世界からいっしょにいらしたお嬢様がたが、その証拠だと我々は考えています」

山中さんは聞いていて気持ちの良い声で話してくれた。

 昨夜の公安警察の瀬川のように、威圧的で人を疑ってかかるような感じではない。

だが、態度が良い感じで、声がいいからと言って、安心はできない。

この山中と言う人物は、俺たちの気持ちや心を溶かして、いい気持ちにさせて利用しようとしているのかもしれないのだ。

なんと言っても俺たちは、知られているなかでは人類で初の、異世界帰還者と、異世界人達なのだから。


 俺の父母は同席し、話しは聞いているが、口ははさまないことにしたようだ。

黙って机の上の名刺と顔を交互に見て、相手の意図を推し量っている。


 次に、口を開いたのは柏木さんだ。

「皆さんは異世界からおいでになったことと思います。そこで、お手数ですが、検疫を受けていただきたいのです」

「じゃあ、病院へ行くことになるんですか?」と俺。

「いいえ。昨日お隣の伊東さんがお引っ越しになられたので、すでに機材を運び込んであります。そちらで検疫を受けていただけませんでしょうか?」

「は!? え? これから?」

「はい、これからです」

柏木さんは微笑んだ。


 柔らかい笑みと言葉で、とんでもないことを告げる柏木さん。

朝食前の訪問はそれでかぁ。

お隣が昨日引っ越したって?

伊東さんちなんか、注意して見てなかったけど、何も変わりなかったぞ!?

どうなってんだ。

これが国家権力ってやつか!?


 俺はため息をついた。だが、検疫を受けることに異存はない。

「……わかりました。おい、みんな行くぞ」

「「「は~い」」」


「すみません、ご両親ものちほど検査をお願いいたします」

「私たちも、これから採血など検査を受けるんですよ」と柏木さんは言う。ちなみに山中さんは両親と一緒に受けるらしい。

「もちろん、昨日来た瀬川も、J-C●Mのスタッフの方々も、鳥越家の皆様に、冷泉院美保子さんもです」

あちゃぁ~。俺たち、どれだけの人間と接触したのかな?

病気なんて持ってないつもりだが…、異世界からこちらの世界に来ちゃったからなぁ。

「何があるかわからないから」と言われたら、仕方が無い。


「検査する方は、濃厚接触した人だけです。お母さまが買い物にいらしたお店の方などは、要観察のみです」

……それでも観察されるのか。複雑な気持ちだ。


 俺たちは、ゾロゾロと我が家の門を出て、隣の元伊東家に入って行った。

デカイ、やたら広くてデカイ家だ。

夏美と美保子も、もう来ていた。


 一度表に出た時、探知能力で気配を探ると、妙に人が少ない事に気がついた。

例の見張りの車が一台止まっているきりで、人通りが無い。

これも、国家権力なのか。


 伊東家の中には、レントゲンだけでなくMRIや脳波計などの装置も運び込まれていた。

電柱から、太い電線が引き込まれている。

伊東家は広い家だからよいのだが、これが普通の家だったらこれだけの機材を入れるのは無理だったろうなぁ。


「では、採血や問診など各種の検査を受けてください、異世界の皆さんには、細かくご説明致しますのでどうぞご理解いただきたく思います」

柏木さんは、まず自分が検査を受けてみて、皆の不安をやわらげようとしている。

医師は全員女医だった。

異世界メンバーが、全員女性であることに合わせているのだろうか。


 俺たちは、衝立ついたてで男女別に仕切られた場所で、検査着に着替えさせられた。

向こうでは、キャッキャ・ウフフと声が聞こえる。

なぜか逆光気味で、女性のシルエットが衝立に映る。


 胸の大きさ・身長からファンシア王女はすぐわかった。

それに負けず劣らず胸が大きい美保子も、同様にわかりやすい。美保子の方がファンシア王女より身長はあるな。

お、柏木さんも脱ぎ始めた。

チ~パイで背が高いイーシャもわかるぞ。

夏美は、全てが標準的だな。胸は大きからず小さからず、背も高からず低からずバランスがいい。

一人だけ背が低いアイラもすぐわかる。


 こうして見ると、全員個性があっていいな、主に体つきが。

シルエットを見て、ついニヤついてしまう。


 その時、バタンと衝立が何故かいきなり倒れた。俺は魔法なんか使ってないぞ。

目前に出現した桃源郷に見惚れる俺。

ファンシア王女や美保子に目が引き寄せられてしまう。と言うか、俺の目は飛び出ていたのではないだろうか?

漫画みたいな表情をしていたに違いない。


 剥き出しになった、たわわな果実を隠しもせず、と言うよりも、誇るように腰に手を当てて立つファンシア王女。

上はブラは外しているが、下はいわゆるショーツだ。色はごく薄~い紫。

下着は異世界にいたとき皆で買いに出たので見覚えがある。

買い物に付き合わされ、その時にどの下着がいいか彼女らに同意を求められたのだ。

全員で相当な枚数を購入していたが、全部俺に確認を求めてくるのでまいった覚えがある。


 美保子はさすがに素早く両手で胸を隠す、が見えた!ピンクの乳首だ。

胸を両手で覆っても、隠しきれないバストサイズが素晴らしい。

巨乳を隠そうとした手が、ムニュっと胸肉に埋まっている。

美保子は、恥ずかしそうに背を丸めつつもこちらを見つめてくる。ショーツは意外にも青白の縞パンだった。ツボを突いた選択すぎる。

女性は、なぜか胸を隠して下を隠そうとしないのか、全員ショーツが見えるのを隠そうとしないのが不思議だった。

柏木さんは、惜しくも半裸だ。胸は出ていない。下着の色は上下黒だ。


 思わずガン見してしまう……が……。

 女性陣のシルエットを楽しんでいた俺は、着替えるのがついゆっくりになっていたため、パンツ一丁だった。

間の悪いことに股間は思いっきり自己主張している。

ポカンと口を開け彼女らを凝視していた俺だったが、同時にテントを張った股間を見られていることに気がつき、「キャー」と声を上げてしまった。

オイオイ、逆だろう。瞬間的に思ったが後の祭り。


 女性陣から視線を引き剥がすのが、こんなに苦しいとは!

そうは言っても、俺も見られるのは恥ずかしい。特に股間がこんな状態では。


 誰かが衝立を立て直したようだ。柏木さんかな。

気配でわかる。

あわてて検査着を着て、更衣を終えた。

若干腰を引き気味にして俺は検査にのぞんだ。


 だが、さっきのナマ乳が脳裏にこびりついているために、検査に臨む彼女らを、つい目で追ってしまう。

そして、記憶に残った桃色映像をフラッシュバックさせる。

ファンシア王女も良かったが、美保子も良かったなぁ。特に美保子のピンクの乳首が。

ちなみにファンシア王女の乳首の色は、薄茶色であった。これはこれでとても魅力的だ!

夏美も綺麗だったし。イーシャの白い裸体も悪くない。いや、むしろステキだ。二人ともショーツの色は白だったなぁ。

柏木さんが、もうちょっと脱いでくれてたら良かったのに。

それでも黒ブラ姿は拝めたのだ。ラッキーと思わなければ!


 青緑色の検査着そのものは、男女共同じデザインだ。

しかし着る人物によって、これほど印象が変わるとは!

さっきチラ見した裸体もいいが、着衣もまたそそるものがある。

今度は、瞬間的にチェックするのではなく、全身の鑑賞を落ち着いて出来る。


 ファンシア王女は、出るところが出ているので体の豊かな曲線が強調されていた。素敵な目の毒だ。

 対して、イーシャは背が高いので、薄い胸、薄い尻が強調されてしまっている。

アイラは、幼児体型だ。まあ、これはこれでいい。

夏美もある意味年相応の女子高生らしく、清純な感じがしていい。

美保子はファンシア王女程ではないにせよ、パインとよく張った胸がある。尻の曲線も美しい。

美保子とファンシアが並んだ姿は、圧巻である。

柏木さんは、ムンムンした大人の魅力で俺の心を掴んでくる。


 目のやり場に困りながらも、つい俺の目は、またファンシアと美保子の胸に引きつけられてしまった。

しかも、彼女らがブラを付けていないことに気がついてしまった。

胸のポッチがわかってしまうぞ。

 う、まずい。

慌てて目を逸らすが、半立ちに状態になってしまう。

気を逸らせないとヤバイ!

後ろを向いて、羊の数を数える。って、オイ、それは寝るときだろう。


 夏美がまたジト目で見てくるが、素知らぬ顔をしなければ。

そんな俺に気がつき、ファンシア王女がグイッと胸を張る。

対抗するように美保子も胸を張った。

なぜそこで美保子が対抗するのだ。


 柏木さんはそんな女子勢の様子を見て、ちょっと笑っていた。大人の余裕っていうヤツか。

でも、柏木さんの胸もいいなぁ。それとなく観察してしまう。


 イーシャは胸を張ってもポッチがよくわからないぞ。

夏美は少しわかるかな。やっぱり夏美も胸を張るのか。

女子の対抗心というやつは、羞恥心を超えるのだなぁ。

妙なところで感心してしまった。



 異世界では、怪我をする事が多いし回復魔法もあるので、出血を伴う多少の痛みにも忌避感は少ない。

ファンシア王女やイーシャとアイラも、女医達に従って検査を受け始めた。

まず最初に、頬の内側の細胞を取るために、あ~んと口をあけている。

美少女達が、並んで口をあけ何かを突っ込まれているシーンは、見ていて何だかヘンな気持ちになる。

ロマンという訳ではないが、ヘンな気持ちにはなるのだ。

俺はおさまりかけた情動にまた火がともり、また困ってしまうのだった。

そしてそれを察して、また美保子が視線を飛ばしてくるのでキマリが悪い。



 ロックも異世界生物と言う事で、やはり口の内側から細胞を取られている。

他に検尿や検便、レントゲンとMRI検査があるようだ。

未知の病気を持ち込んでいないか検体を取って調べるとともに、メニュー的には健康診断か人間ドックと大差ない。


 ファンシア王女は伝統ある王家の血を引いている、ネコ耳獣人や魔法使いエルフの血など、採血して研究したら興味深い結果になるのかもしれない。

エルフや獣人などでも、内臓の配置はヒトと変わらないはず。

MRIで検査しても、違いは無いと思うんだがなぁ。

ロックなどは、この世界にはいない生物、小さな竜だからなぁ。研究したらさぞ面白かろう。



『体の異常を感じた事などありますか?』

『向こうで発熱などの経験はありますか?』

『あるとしたらそれはいつ頃ですか?』

『視覚に異常は感じませんか?』

などと言った、様々な質問項目が書かれた問診票に記入させられた。

異世界女子勢は、こちらの言葉も話せるし文字も理解している。

これはそう言う魔法のおかげである。

ただ、細かなニュアンスは理解できないかもしれないと、女医達から詳しい話しを聞きながら問診票に記入している。


「カズ君背が伸びた? それに色も黒く焼けたよねぇ、なんか逞しくなったような気がする。筋肉ついた?」

「ああ、178.5㎝だったよ。前計ったときは177.5㎝だから1㎝違うけど……微妙な伸びだなぁ」

「え、でも90日で1㎝も伸びるかなぁ?」

「……さあ?」


 こちらの世界では90日経っていたのだが、実は、異世界とは時間の流れが違うようなのだ。

異世界には、主観では一年ともうちょっと過ごしたように思う。

まあ、その話は今ここで説明しなくてもいいかな? 

そう言う異世界の秘密に属すような事柄は、女医達がいないところで話したい。


 『筋肉』と言う単語に、美保子の瞳がレンズ越しにキラリと光った。

なんだか観察されているようだ。

男子が女子の肉体に興味を持つように、女子も男子の肉体に興味を持つものなのかもしれない。

俺は、そんなことは考えたこともなかったので、ちょっと新鮮と言うか不思議な気がした。


 女子は、胸囲を測ったり、身長体重を量ったりするが、それはさすがに衝立で仕切られた向こうだ。

クスクスと笑い合う声や、ヒソヒソ話す少女達の声。

その漏れ聞こえる様子は、俺の想像力をかき立てる。

 あの向こうで女子が検査着をたくし上げて胸を出しているんだ。

そう思うと、血がたぎって来る。さっき見た桃色映像が脳裏に蘇る。クソ、もう一度見たいゼ!


 ファンシア王女もいいなぁ、美保子もいいなぁ。柏木さんもいいなぁ。

それぞれに美しく張りのある豊かな胸をお持ちだ。

衝立の向こうを見れないかな?

 だが衝立のこちら側でも男子を担当する女医がいて、俺を見ている。

怪しげな行動は慎まねばならない。

 ああ、いいチャンスなのになぁ。

風魔法で衝立を倒したらいいだろうなぁ……、だが、また衝立が倒れたら、今度は何を言われるかわかったもんじゃない。

夏美に『カズ君のスケベ!』とか叫ばれて、バチンと頬を叩かれるのがオチだ。

そう言えばさっきは、なんで衝立が倒れて来たんだろう?



 * * *



 検査だけで、四時間以上掛かった。

採血だけでなく、注射も何度かされた。血管造影剤その他らしい。

バリウムも飲まされたし、もう検査はウンザリだ。


 全てが終わって我が家に戻ると、もう昼過ぎだった。腹減った~。

父さん母さん山中さん、それに鳥越家のご両親達は俺たちのあと、午後からだ。



「皆さま、お疲れ様でした」

柏木さんも少し疲れた顔をしていた。

ほんの数分俺たちに接しただけなのに、柏木さんも検査を受けている。

自分たちが、病原体の巣になっているような、複雑な気持ちだ。


「ところで、明日の夜から隣の旧伊東家は、氷堂家にも使っていただけることになります」

「え?」

「医療検査機材は明日の昼くらいまでに撤去されますので、どうぞ氷堂家で旧伊東家をご自由にお使い下さい」

「隣の家をいただけると言うことなのですか?」

「それに近い感じです。氷堂家所有として名義を変更するなどの事は出来ませんが、使用に当たり契約を結んでいただく必要もありません。賃貸料無料でご利用いただけます。家や庭をどのようにいじっていただいても構いません」

「政府の意向なんですね?」俺が聞くと柏木さんがうなずいた。


「それから、検疫隔離期間ということで、皆さんは一週間ほどは外出なさらないでください。鳥越夏美さんも、冷泉院美保子さんもです。必要なものは、全て私共がお届けします。注文はネットを通じてしていただきます。お父さまも、お仕事をお休み下さい。会社の方の了解は取れていますので、ゆっくり休養なさってください」

「?」

「実は、エルフなどの異世界人が来訪した、と言う事で、世間では大変な騒ぎになっているんです。ですから、表の通りは交通規制がされていて、住民の皆さま及び、どうしても用がある人以外は、入れないようになっています」

そうだったのか、どおりで通りが静かだったわけだ。


「それから、氷堂家の電話も規制させていただいています。今まで通話をしたことがある番号以外は、私どものコールセンターが着信をお受けします。マスコミの取材や、好奇心からの電話をシャットダウンさせていただくためです」


 通信規制! あまりの事に衝撃を受けた。自由を規制されたような感じがして不快だったのだ。

だが、よく考えてみれば、通信規制されなければ今頃うちの電話は鳴りっぱなしだったに違いない。

電話ノイローゼになるくらいなら、規制を受け入れた方がずっといい。

それどころか、この短い期間によくそれだけの事が出来たものだ。国家権力って……凄い。


「山中さん、柏木さん、お手数をお掛けします。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします」

俺達は、国に守られていたのだ。そして、そうされるだけの理由を異世界から持ち帰ってしまったことをも、改めて思い知ったのだった。


「それから氷堂さん、J-C●Mの方々も当分こちらには来られません。昨日のインタビューなども放映はされません」

「世間の混乱を避けるためですね」

「理解していただけて光栄です。昨日の生放送だけは世に出てしまいましたけれど」

ちょっぴり困った顔の柏木さん。なにこの人、こういう表情は可愛いぞ。


「それから、向かいの家は交番になります。一週間ほどしてから運用が始まります。私、柏木むつみは、氷堂家専任で、向かいの交番に住み込みになります。隔離期間が終わってからになりますけれど。山中は、取りあえず今日ご挨拶させていただいた後は、必要に応じてまた打ち合わせなどにお伺いさせてください」


 柏木さんと、山中さんは、深く礼をした。

深いおじぎをすると、柏木さんの胸元が見える。

 やった!

胸の谷間を、凝視して目に焼き付ける。

ファンシア王女の巨乳もいいが、柏木さんの大人の魅力もいい!

熟れた、たわわな果実は俺をトリコにする。

桃色の記憶が、俺を幸せにした。

隔離期間が終わったら柏木さんにまた会える。その時が楽しみだ。


 それにしても……。

伊東家の件は急展開だ。俺も、父母も、ポカンとしてしまっていたが、慌ててお辞儀をして礼を返した。

(俺は、別な理由でもポカンとしてしまったのだが)。

異世界では、あまりおじぎをする習慣が無いのか、異世界少女達はそんな俺たちを不思議そうに見ていた。



 そうして柏木さんと山中さんは帰っていった。(山中さんも数日隔離されるらしい)

表に止まっている車は、交番の代わりに数日いると言う事だ。



 さて、そんなこんなで、我が家の二階の部屋の片付けは、本格的にしなくて済んだ。

その代わり、家族会議で俺は隣の家に移り住むことになった。

もちろん、異世界女子勢も一緒だ。


 教えられたネットのアドレスにアクセスすると、それはAmas●nのスペシャルサイトだった。

代金は全部0円、もちろん送料も0円だ。

何とも豪儀な事だ。

配送は業者ではなく、多分警察官なのだろうなぁ。


 明日からの引っ越しに備えて、ああでもない、こうでもないと、母と一緒に注文を考える。

途中から、夏美と美保子もうちにやって来て、注文に参加してきた。

ついでに自分たちの欲しい物も注文して行った。

ちゃっかりした連中だ。

まあ、彼女らは俺たちに比べたら、それほど沢山注文した訳ではないが。


 俺は無料だからと言って、何でも注文していいとは思わない。

必要なものだけ注文して行こう。

そうは言っても、新しい家に移り住むのだから、冷蔵庫や机、椅子、本棚、ベッドなど、もろもろ必要になってくる。

食器や服や下着も必要だろう。

節制したいと思っていたが、今夜注文したものだけでも、結構な量になってしまった。


 注文などが終わっても、話し合ったり考えなくてはいけないことも多く、寝るのは随分遅い時間になってしまった。

今夜も、ファンシア王女が一緒の部屋で寝たいと言い出す。

皆も同じ気持ちのようだ。

今は階下の両親がリミッターになっているが、隣に引っ越したらどうなるのか…。

やったー無法地帯だ!

喜んでばかりも居られないが、異世界で旅をしていた間のように、みんなで寝られたらいい。

とは言え、異世界方式の添い寝を夏美や美保子委員長にはバレないようにしなきゃなぁ。


 実家で過ごす最後の夜、そんなことを考えながら、眠りに落ちていった。




なかなか更新できなくってすみません。

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