表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/59

50 戦争の影響

日本の隣の半島が満州の勢力下に入り高麗半島と呼称する様になった年に権藤先生が魔法技能学校の学校長に就任した。

権藤研究室はそのままで兼任だけど。

私は大学で研究に専念することになり、魔法技能学校の講師陣からは抜け出す事に成功した。

大学の社会人の受け入れは共同研究等に限る様になって随分楽になっている。

魔法技能学校で受講生の増加が鈍化していた件については満州軍の遼寧省での戦闘経過が公表されると解消されてしまった。


上官の逃亡で指揮系統を失った半島人は敗走時に暴走して略奪や暴行を当たり前の様に繰り返しており、侵攻した満州軍によって各地で殲滅されている。

この光景は日本でメディアにより繰り返し流されていて悲惨な情景に人々は憤慨していた。

日本の野党と一部のメディアは例によって馬鹿な事を言い始めた。

某テレビ番組で与野党の政治家が討論をしていた。


「日本が協力した満州軍によって半島人が多数虐殺されております。政府はこの責任をどうとりますか?」


「そのような事実はございません。犠牲者の多くは古くからそこに住む現地の方々で加害者が半島人の軍人です。半島人の軍人が民間人を虐殺しております。満州軍はそれを止めただけです」


「その際に半島人の軍人が大勢虐殺されています。その話をしているんです」


「戦時に戦闘員が敵の戦闘員を殺しても虐殺とは言いません。戦時国際法で認められた正当な行為です。虐殺とは半島人の軍人が行ったような非戦闘員を殺す行為を言います。言葉は正確に使用してください」


「満州軍は魔法で守られて犠牲者が殆どいないじゃないか。一方的に半島人を殺戮したんだ。これは虐殺と言うべきだ。そもそもこの戦争は満州軍の侵攻で始まっている。民間人の犠牲者も満州軍の責任だ」


「繰り返しますが、戦時に戦闘員が敵の戦闘員を殺しても虐殺とは言いません。戦時国際法で認められた正当な行為です。一方的かどうかは関係ありません。満州軍の侵攻の件ですが、それを言い始めたらそもそも半島人が遼寧省に侵攻して占領したのが始まりです。間違えてはいけません」


「遼寧省は半島人が戦争に勝って領土にしたのだ。その後に侵攻したのだから始めたのは満州側だ」


「遼寧省は半島人が戦争に勝って領土にしたとの発言が有りましたがそれは正確ではありません。両国で正式な講和は成されておらず、国境線は確定しておりません。戦線が膠着状態だっただけです。戦争は継続中と見做されます。だから正確には半島人が戦闘に勝って占領状態が継続していただけです。くれぐれも言葉は正確に使って下さい」


「そんな事はどうでも良い。半島人が満州軍に一方的に殺されたのは事実で日本政府はその満州軍の強化に協力したんだから責任をとれ」


「半島人の軍人が現地人を搾取・略奪・暴行・虐殺したのが事実で満州軍が半島人の軍人から現地人を救ったのも事実です。これからも責任をもって満州軍に協力します」


「責任をとるのかとらないのか、ハッキリしろ」


「だから責任をもって職務を遂行しますよ」


「そんな事を聞いているんじゃない!半島人が一方的に殺された事についてどう責任をとるのか聞いているんだ」


「私に何をして欲しいのか分かりません。半島人の軍人が一方的に殺されたのは現地人を虐殺したりしたからです。あなたはこの事実を知っていますか?」


「知っているよ。だが半島人が一方的に殺されたのも事実だ」


「あなたは虐殺を止めるのは悪い事だと思いますか?」


「虐殺を止めるのが悪い事の訳がないだろう」


「意見が合いますね。私もそう思います。ではなぜあなたは虐殺を止めたことについて責任をとれと言うのですか?」


「虐殺を止めたことにではない。そのために半島人を一方的に殺したことについてだ」


「分かりました。あなたは半島人の軍人を殺さずに虐殺を止める方法を知っている。もしくはあなたなら半島人の軍人を殺さずに虐殺を止めれた訳ですね。ぜひ方法を教えて下さい。」


「それは魔法を使ってだ。殺さずに出来た筈だ」


「私はそんな魔法は知りません。自衛隊でも出来ないでしょう。あなたは知っている訳だ。教えて下さい。犠牲者がそれで減ります。この件は公表できそうにありませんから後程伺いに行きます」


「そんなこと私が知っている訳ないだろう。でも魔法なら出来る筈じゃないのか?」


「残念ながら私の知る限りは出来ません。出来ると言う方がいれば大学の魔法学部に行ってください。本当であればその方の将来も日本の将来も明るい」


「だけど一方的に殺せたんだぞ。殺さずに制圧だって出来るんじゃないのか?」


「だから先ほど申し上げた様に私の知る限りは出来ません」


「たとえそうだとしても満州軍が半島人を一方的に殺したことに変わりはない。責任をとるべきだ」


「……一つ聞いても宜しいですか?」


「ああ、何だね」


「例えば凶器を持った殺人鬼があなたを殺す寸前に警官に射殺されました。あなたは警官にお礼を言いますか?それとも殺人鬼を殺したことを非難しますか?」


「礼を言うに決まっているだろう」


「そうですよね。普通はそうだ。ではメディアが殺人鬼を射殺した警官を非難して警察庁の責任を追及したらあなたはそれに同意しますか?」


「同意する訳がないだろう。命の恩人の警官の名誉を守るために何だってする」


「そうですか。だったら何でメディアと同じことをするんですか?殺人鬼の半島人の軍人を射殺した満州軍を非難してその協力者として私に責任を問う。おかしくはありませんか?」


「…………」


「実を言うと虐殺から免れる方法なら知っています」


「だったらそれをすれば良かったじゃないか!」


「無理です。私にも自衛隊にも満州軍にもそれは出来ません」


「???何を言ってる。満州軍がそれをすれば民間人が虐殺から免れたって話だろう?」


「違います。虐殺された民間人の方々が満州軍並みに魔法を鍛錬していれば虐殺から免れたという話です」


「そんな事は当たり前じゃないか。それが可能ならみんな魔法を鍛錬しているだろう?」


「していませんよ。現にあなたはしていないじゃないですか。それとも魔法を鍛錬していますか?」


「している訳がないだろう。ここは日本だ」


「ここは日本ですよ。隣はシナなんですよ。分かっていますか?戦争が有ったのは隣のシナなんですよ?」


「……日本はそんなに危ないのか?」


「いつ巻き込まれてもおかしくはないんですよ。自衛隊や沿岸警備隊や海上警察が優秀だから防げているだけです。知っているでしょう?沖縄には時々シナから偽装難民等がきて島に上陸している」


「ああ、時々ニュースで流れているな」


「沖縄の方々にとっては切実な問題です。魔法を鍛錬している訳がないなんて有事の際には死んでも構わないと言っているも同然ですよ。自衛隊への入隊希望者もかなり多いです」


「そうなのか?自衛隊反対の声が減ったのは知っていたが……それでどうすれば良いんだ?」


「日本の魔法技能学校で一年でも鍛錬すれば巻き込まれても助かる可能性が高いのですが本土では受講生は増えてません。ほら可能だけどみんな魔法の鍛錬をしていないでしょう?」


「そうだな私の周りで魔法の鍛錬をしている者はあまりいない。公務で忙しい者はともかく家族も呑気なものだ。……魔法を鍛錬すれば助かる可能性は上がるんだよな?」


「そうです。魔法の基礎教育レベルでも鍛錬を続ければ魔法技能を上げる効果がかなり有る事が分かっています。それだけでもかなり違います。それにそうすれば次の段階に移るのも容易なんです。内容は禁忌に触れるので公表できませんが」


「……この放送は録画だったな。皆に見る様に言っておくか」


「最後にいいですか。満州軍の圧倒的な勝利は魔法によってもたらされました。満州軍は各地で暴走する半島人を殲滅しました。しかしながら半島人による略奪・暴行・虐殺は防げなかった。私は残念でなりません。日本の基礎教育レベルの魔法を鍛錬していれば犠牲者の大半が逃げれたでしょう。そして更なる鍛錬を積み重ねた人がいればそれらを防ぐ事も可能だった筈です。日本の皆様にはこの犠牲者の方々の様な目に遭って欲しくありません。防ぐ事は可能です。私達一人一人が魔法を鍛錬すればそれは可能になるんです。それでは犠牲者の方々の御冥福をお祈りし話を終わります」









去年の高麗半島独立戦争と瀋陽奪還戦において満州軍の圧倒的な勝利が魔法によってもたらされたことは明らかであり魔法の鍛錬の重要性が認識された。

その結果として魔法技能学校の受講希望者が激増した。

そこまではまあいい、もう私の手を離れた事だし忙しそうだけど増員された様だから何とかなるだろう。

魔法学部を希望する学生も増加した。

魔法技術習得の専門講座の受講生が増加したけど今ではうちの大学の他学部でも魔法を使うのが当たり前になったから講師のなり手はいくらでもある。

これも何とかなるだろう。

問題は提携している文系の大学から講師派遣の要請が有った事だ。

初級講座だけで良いからと言う話で始めは魔法技能学校に話を持って行ったようだが受講生激増の為に断られてこちらに話が回ってきた。

教える事自体は問題ない、ただ受講希望者が多すぎる。

考えてみたら文系の学生の方が理系の学生よりも圧倒的に多いのだ。

しかも成体になってからの魔法の基礎教育も真面に鍛錬していない者が圧倒的に多い。

以前派遣された教育大学と同じレベルだろう。

魔法技能学校にも社会人になってから必要に迫られて受講しに来ていた人がいた。

どちらも仕事に関係していたから魔法を身に付ける動機と意欲が有った。

でも文系の学生は如何だろう?

そこまでの動機と意欲は有るのか?

日本政府の思惑には合っているだろうが上手く行くのか?

鍛錬を怠る人が増えている事に懸念を抱いてはいたけれど学生に意欲がなくては意味がない。

魔法の技能レベルで評価するため試験も魔法の実技なんだがな。

打ち合わせに出向いても魔法については分からないからと向こうの大学はこちらに丸投げの様相だ。

うちの大学の上層部に相談しても止める以外は好きにして良いからと言うだけだ。

仕方がないので防衛省の伝手を使って自衛官の講師を大学からは研究者の講師を教育大学からは学士見込み生をと講師陣を揃えて翌年度から講義をする事になった。

初級講座だけならこれで大丈夫な筈だ。

初級は魔法の基礎教育の内容を一年かけて鍛錬して習熟させるだけだからな。

教育大学の時とは違って学生に無理をさせる必要も無い。

こうして翌年から講座を開く事となった。




提携大学での講義だがどう見ても高校生の方が多い、どう見ても中学生みたいな女子もいるな。

振り分けて自衛官の講師には中高生を回さず教育大学出の講師には中高生だけにした訳だけど。

それにしてもうちの大学なら実技試験だけ受ける学生も多いけど文系の大学でこれは無いだろう。

名簿を見る限りは半数ぐらいは学生の筈なんだが。

大学の学生に聞いてみたところ出欠をとらないからの様だ……あれ?

案の定、講義を受けていない者は全員が期末の実技試験で不可となった。

そうだよな講義と言っても魔法の鍛錬中心だから継続しないと身に付かない。

実技試験だから一夜付けも無理だ。

講座の説明にも書いてある筈だけど何でこうなった?

他の講師に聞くと出欠をとっていない講師は皆同じ状況の様だ。

……まあ仕方がないな、意欲の無い者に無理に教える気は無いので。

でも講座を受けるのにも費用が掛かるのに良いのか?

しばらくしたら大学担当者からクレームがついた。


「神尾先生困ります」


「え~と何ですか?」


「不可が多すぎます。単位をとれていない学生が多い」


「それは学生の問題で私に言われても困ります」


実際、講義をきちんと受けた受講生は全員単位をとれているのだから講義に問題はない。

講義を受けない受講生?

自己鍛錬でも実技試験さえ通れば良い、そういう講座だからな。


「講師が不適格なのではとの話も出てまして来期からは何とかなりませんか?」


「どうやってですか?評価方法は変えれませんよ。全ての講師が同じ筈です。実技試験ですから出来るか出来ないかです。ズル出来ない様に講師と試験官は別人ですからね」


「せめて出欠をとっていただけませんか?それだけで講義を受ける者もいますので」


「出欠も講義を受ける事も評価の対象にはなりませんよ?意味が有りますか?」


「講義さえ受ければ救える者もいますよ。何とかできませんか」


「出欠をとらないと講義を受けない様な意欲に欠ける人は魔法の鍛錬をしても身に付きません。魔法は意志が重要なんですよ。意志の弱い人には身に付きません」


「そんな事は無いです。自衛官の講師の方は成果を挙げています」


「あれは振るい落とし方が違うだけです。体育会系の鍛錬方式に耐えられない人は来期は受講しません。受講生が減ると思いますよ。ただ向き不向きが有ると思うのでこちらで不可の人があちらで受講してみるのは有効かもしれません」


「自衛官の講師の方達と同じ様には出来ませんか?受講しなければ不可も付きませんから」


「無理ですよ。教授内容が同じでも教授方法が違うんですから。そうだ!良い方法が有ります」


「何ですか?教えて下さい」


「必修科目にすれば良いんですよ。少しは意欲も湧くでしょう」


「それは無理です。うちの大学で魔法が必修は有り得ません」


「それなら無理に続けなくても良いのでは?元々意欲のある学生は少ないようですし止めるなら早い方が良いと思いますよ。少なくとももう少し規模を小さくした方が良いと思います。不可になる学生が多そうですから来年からは受講生が減るのではないかなぁ」


「それは困ります。中高生がたくさん受講する予定です」


「……ああ、分かりました。中高生の需要を見込んで講座を開いたんですね。それならそうと去年の内に言ってくれないと困ります。学生向けで遣り方はこちらに丸投げの形だったのでそのつもりでしたよ」


「え~と。実はそうなんです。学生向けも嘘ではないんですよ。でもメインは高校生です」


「やけに高校生が多いと思っていたんですよ。系列高校が有るからかなとも思っていたんですが………それなら自衛官の教官はあまり必要は有りませんでした。教育大学からもっと引っ張て来た方が良かった。中高生相手ならこちらの方がノウハウが有ります」


「すみませんでした。それでどうすれば良いですか?」


「今年は仕方がないのでこのまま続けて、来年からどうするかですか。その辺りは考えておきます」


どうやら成体になって魔法の基礎教育を受けたばかりの中高生を受講させるのが目的だったようだ。

去年の政治家の討論放送の影響が絶大だったらしくてこの文系の大学にも親達が子供に受講させたくて問い合わせが殺到したらしい。

それで私に丸投げで急いで講座を開設する事にした訳だな。

子供達には大学の単位になるし大学には受講料が入る。

魔法の基礎教育は一通り教授したら鍛錬は当人にゆだねる感じだから需要が有るんだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ