↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/59

46 魔法技能学校の設立

教育大学での魔法教師養成の為に私が受け持っていた講座は予定通り三年で私の手から離れる事になった。

教育大学側も講師陣の養成を何とか終えた様で自衛隊の講師陣のサポートが有れば私が抜けても支障はない筈だ。

最近は学生の企業からの求人状況にも変化が有って数年前に比べて企業による学生の囲い込みが緩くなっていた。

権藤先生と私はその辺りの状況を話し合っていた。


「最近は植物の魔法の業務利用が進んでいる御蔭か企業による学生の囲い込みが以前より緩くなっているね」


私が教育大学で魔法の講義を始めた頃から日本国内の工場では作業現場での単純な魔法利用は植物に置き換わり始めていた。

そうなるとロボットを使うのと類似で人の役割は植物のメンテナンスや作業工程等の管理となる。

同じ作業工程でも魔法使いの必要人員は減る事になった。


「でも社会人の受講生は急増しましたよ。須美さんがぼやいてました。四年前の私と同じ状況ですね」


魔法使いが十人以上必要だった作業が管理者一人と植物複数で済むようになるので配置転換しても人はあぶれる。

あぶれた現場の魔法使いがどうなるかと言うと魔法の技能を高めるため社命で大学の講義を受講する様になった。

大学にとって社会人受講生の増加は運営上は喜ばしい事なんだが現場はたいへん忙しくなる。


「以前の君よりは少しマシな状況かな?業務の関係か社会人受講生は工学部と農学部に大半が流れているからね。いずれにせよ過渡期の一時的な状況だと大学側は捉えているから君と沃土君を講師陣に加えて乗り切るつもりだよ」


幸い社会人受講生の大半が仕事内容と関連する魔法を学ぶために工学部か農学部に流れるから魔法学部の負担は少し増えた程度で済んでいる。

この様な受講生は各企業で魔法技術の社内ノウハウが溜まり社内研修等を行う様になれば減ってこの状況も落ち着くと大学側は考えていた。


「教育大学の方は予定通り終了できるのでその後であれば講師になる件については問題は有りません。でも一時的な状況と捉えている件については異議が有ります」


「どうして?」


「以前に中高生や社会人の受講生が増えた時も理由は違えど同じ様な見解でしたが受講生は増える一方でした。今回も同じだと思いますよ」


「君は少し勘違いをしているな。一時的な状況と言うのは受講生が急増した事に対してであって増えている事に対してではないよ。魔法使いへの社会的な要求が年々高度になる現状では社会人の受講生が増えるのは仕方がない事だ。今の所は大学しかそれに対応する機関がないんだからね。企業内の教育と言っても事業に関連する事しかやる余裕はないだろうから」


「それでは今迄の様な対処だと何れは大学側が破綻しますよ?今の倍の受講生までなら学内の研究者で分担すれば人は何とか足りるでしょう。でもそこまでする必要が有りますか?研究や他の講義に確実に支障が出ますよ?今でも何とか回している状況でしょう?大学にとって研究に支障が出るのでは本末転倒ですよね?」


「その辺りは私も憂慮していて政府機関にも働きかけている。大学側も対処不能になる前に魔法技能の鍛錬専門の学校を設立する予定でいるよ。魔法は鍛錬なしでは進歩しないからね」


なんか話があまり良くない方に向いた気がした。

前にもこんなことが有った気がする。

話題を変えないと………


「そうなんですか。それは良かった。大学の研究者への負担増は一時的なもので減らす話にはなっているんですね。それなら問題はないです。私も安心して研究に専念できます」


「そうだな。君には教育大学での魔法教師養成の件が終了したら以前の様にこちらで講座を受け持って貰う事になるね。研究にも以前の様に専念できるだろう」


話題を替えないと………


「そうですね。教育大学の方は予定通り引き上げます。教育大学へは自衛隊から今後も講師を出すそうですしうちの大学からは博士課程の者を何人か非常勤講師として出せば問題ないでしょう」


「うん、それで大丈夫だろう。それで新しく立ち上げる学校でも同じ様に自衛官の教官とうちの大学の研究者で講座を受け持つんだよ」


話題を替えないと………


「そうですか。いずれにせよ私が大学での講義を始めてからの話ですから来年以降話ですよね。来年と言えば私の結婚の話なんですが結納は十二月で式は来年の六月になります。宜しくお願いします」

 

「仲人の件だね。日取りはなるべく早く教えてね」


「はい分かりました。詳しい日取りが決まったらお宅に挨拶に伺います」


よし、話題が替わったぞ。


「うん了解した。それにしても君と美里君が結婚ねぇ。美里君は修士課程は今年度で修了だよね。今は忙しい時期だね」


「はい。それで式は来年になりました」


「彼女は博士課程に進んでそのまま研究室に残るんだよね。辞めたりはしないよね?」


「さあ?博士課程に進む話は聞いてますけど。そこから先の話はまだ決めてないと思いますけど?本人に聞いたらどうですか?」


「……最低でも2年間は講師として使えるからまあ良しとするか。実は新設する学校では博士課程の研究者を何人か非常勤講師として雇おうとしているんだ。それで美里君にはその非常勤講師をして貰おうと思っているんだよね。大学に残るならそのまま講師をして貰いたいんだよ」


あれ?なんか話が戻った気が……


「そうですか。美里には伝えておきます」


「正式に決まったら私から君と彼女に話をするからそれとなくで良いから伝えておいて」


「はい、伝えておきます。正式な話は美里に話していただければわざわざ私に話す必要は有りませんよ」


「うん、そうだね。それで学校を新設する話なんだけど大学側は既に汎用技術と見做される魔法技術については一般教養として教養部に廻す事にしたんだ。その後に魔法技能の鍛錬については学校を設立して分ける事を決めているんだよ」


やっぱりそういう話になるんだよな。


「それでその学校の設立は何時頃になるんですか?私がそこで講座を受け持つことはもう決まっているんですよね」


「察しが良いね。設立は五年以内を予定しているんだ」


教育大学の件もこんな感じで話が進んでいたしその前の専門講座開設の時もこんな感じだったからなぁ。


「似た様な事は以前に二度程ありましたから。講義内容は変更なしで構わないですよね」


「うん、君達が遣る事は今迄の講座と変わりはない。それに講師の殆どは自衛官と元自衛官の教官で占められる事になるから現状より楽になる筈だ」


「でも遣る事が今迄と変わらないなら初めから学校を設立しても良いのではありませんか?」


「文科省とかの絡みもあるから調整に時間がかかるんだよ。別学校にした方が予算編成とか自衛官の受け入れとかが遣り易いから出来るだけ早く設立したいんだけどね」


お役人の話だから調整とかは天下り先の確保の話なんだろうな。

まあ、今迄と遣る事が変わらず研究に支障は無いなら私には関係のない話だな。


「文科省と防衛省の権限争いの調整ですか。あまり関わりたくないですね」


「権限争いと言うより文科省の権益の確保かな?魔法に関しては文科省の影が薄いから何とかして食い込みたい感じだね。私だって関わりたくはないんだよ。でも上手く調整しないと新設するのは魔法の鍛錬の為の学校なのに魔法の事を何も知らない足を引っ張るだけの奴を送り込んだりするんだ。困るのはこちらだからなぁ」


学校法人の話なので文科省の管轄なんだろうけど魔法関連は防衛省の影響力が圧倒的で文科省は影が薄い。

権限を求める割には文科省の魔法使いの数は少なく魔法教育に関する方針も上手く出せず後手に回っている感じだ。

魔法を使える様になってから今日までこと魔法に関しては文科省は当てにならないから学校側は必要に応じて各々の学校の思惑と判断で物事を進めてきた。

それで魔法関連の事柄は文科省の魔法に対する理解不足もあって調整が面倒なのだ。

一方の防衛省は魔法使いの数と練度が国防に直結するため現役の自衛官は訓練でその殆どが上級の魔法使いとなっている。

自衛隊の鍛錬方法を元にした魔法の鍛錬を行う大学が多くて自衛隊の教官に直接教わった人の数も多い。

魔法の基礎教育の教本自体が自衛隊の教育カリキュラムと訓練プログラムを参考に作成しているから日本の魔法使いで自衛隊に関わらずにいる者はまずいない状況だ。


「文科省の天下り先の確保ですか。魔法の鍛錬の為の学校に魔法も使えない役立たずに居座られても困りますよね」


「日本が比較的平穏な証拠ではあるけどね。元々優秀な人達で能力的には問題ない筈なんだから防衛省並には魔法に適応して欲しんだが上手く行かないねぇ」


日本のお役所は世界が大きな変化の波に晒される中で日本が比較的平穏だったせいか組織があまり変わらずに残ってしまっている。

一度でも経験した事のある事柄への対応は前例に従ってそつなくこなすけど非常時には臨機応変な対応ができない組織のままだ。

だから魔法関連に関しては社会の急速な変化に付いて行けていないお役所が殆どだ。

それで魔法が使える様になって十五年近く経つのに未だに社会の変化に組織が適応できていなかった。

世界の状況としては未だに非常時なため、臨機応変な対応ができず既得権の確保に奔走するお役所への人々の信頼感は年々低下している。

防衛省が何とか臨機応変な対応ができているのは自衛隊が非常時の為の組織で他のお役所よりは魔法による社会の変化に適応できているからだ。


防衛省では防衛大学で魔法を修得する事は必須であり自衛隊が実務として大量の魔法使いを必要としているため魔法を使える事が当たり前になりつつあった。

2~3年の魔法の訓練で実戦能力が以前の数倍になるのだからこうなるのは当然の結果だろう。

そして魔法の鍛錬をすれば誰でもバリアやシェルターぐらいは出来る様になる事も確認が取れている。

警視庁・警察庁・消防庁等では現場で体を張っている人達が業務上必要なので自衛隊に準ずる魔法の訓練が行われていて、防衛省と同様に魔法を使える事が当たり前になりつつある。

だけどその他の省庁のお役人はと言うと魔法の基礎教育止まりの人が殆どで魔法に熟練した人は殆どいない。

これは彼等が特別怠慢という訳では無く、殆どの一般人と同じで仕事で魔法を使う機会がある訳でもないし出世の為に魔法を覚える必要もないから魔法を鍛錬する動機に欠けているのだ。

民間企業であれば配置転換等で仕事に魔法を必要とする機会もあるかもしれないけどお役所ではそんな機会はまずない。


「文科省だと魔法使いは若造でまだ発言力も弱そうですし、古参で出世している人は魔法なんて使えなくても良いと考えていそうですよね」


「実際そんな感じだね。だから面倒なんだよ。説得のために下手に情報を出そうとすると忌避感が生じて話が進まなくなるしね」


個人的に必要かどうかと社会的に必要かどうかは別なのだけれど普通の人はそこまで深く考えずに判断している。

普段から魔法を使わない人達は魔法の必要性を感じておらず魔法の現状に関心の無い人達だ。

魔法の情報は公開に忌避感が生じる群れの禁忌による規制が掛かっているので関心の無い人には魔法に関する真面な情報は入らない。

これでは魔法を使わない人達の大半は魔法について適切な判断が出来ないだろう。

そうしてお役人の殆どが魔法の必要性を感じていなければ判断もそれに準じたものになる訳でお役人との調整は大変面倒なのだ。


「問題だとは思いますけど私達が直接如何にかできるものでもないし、できるのは政治家に圧力をかける事くらいですか」


「まぁ、そんなところだろうな。これでも少しづつ良くなってはいるんだ。防衛省と比べたら全然話にならないレベルではあるけど」


このままで良いとも思えないけど私に如何にかする力がある訳でもないしそう言った立場でもない。

そんな事よりも新設する学校の方が問題だ。

講義内容は変えなくて良いと言う話だけど実際にはどうなるか分かったものではない。

何か避ける良い方法はないものかな………そうだ!


「防衛省で思い出したんですけど自衛隊が給料付きで魔法の訓練が受けられるから人気が上昇しているみたいですよ。学校を新設しなくても自衛隊に廻せば良いと思いませんか?」


自衛官として五年も過ごせばいっぱしの魔法使いとして再就職先に困る事もないので自衛隊は就職先としても人気が上昇している。

自衛隊を魔法の訓練学校扱いしている向きもあるが日本政府は防衛力の強化にも繋がるので自衛隊を辞めて予備役になる事に関してはどちらかと言うと積極的だ。

だから魔法使いを目指す研究職には向かない実務向きの人達の中には大学に行かずに自衛隊に入隊する人も多い。


「それが出来れば苦労はしないよ。そうなったのは大学だけでは政府の魔法使いの養成増の目標が達成できないと判断されたからなんだ。それで自衛隊の定員を増やしたんだよ。防衛力の強化も出来て一石二鳥だと政府は考えていた様だけど流石にこれ以上は増やすのが難しいみたいだな」


大学だけでは全ての人材を教育するのは不可能な状況だったから自衛官を増員してそれでも教育の場が足りなくなって学校を新設する向きとなった訳だな。

学校の新設は止めれそうにないな。

何か良い案はないかな。

防衛省が学校を新設して……それでは今と変わらないな防衛大学も少年工科学校も公務員で棒給が出るんだよな。

防衛省が学校を新設しても自衛隊に入隊する事になるから同じだな。

大学が学校を新設する事になったのは予算の関係かな?

増員で人件費を増やす必要もないし教官を派遣すれば費用も大学側から出るからな。


「学校の新設は既定としてどう考えても予備役の自衛官の受け皿ですよね。それなら講師は自衛官だけでも問題ない筈で私が講座を受け持つ必要はないと思いますが如何ですか?」


「確かにそういった側面もあるけど大学側が必要としている事も確かなんだよ。今のままでは破綻すると君も言っていたじゃないか。大学側は講師が足りなくなる。自衛隊はこれ以上の増員は不可能だ。それで両者の思惑が一致したんだね。大学が学校を新設して自衛官を講師に呼べば良い」


「私が講座を受け持つ意味は何ですか?それだけなら元自衛官でも問題がないと思いますけど?」


「それは君が神尾メソッドの神尾 修だからだよ。大学側から人を出さないと不味い事もあるけど自衛官の講師を呼ぶ時にも君か沃土君の名前を出すか出さないかで対応が違ってくるんだ。良い教官を呼び易いんだよね。君と沃土君の名前は自衛隊内では知れ渡っているからさ。だからさ宜しく頼むよ」


「なんだそんな話ですか。了解です。自衛隊の方達には今でもお世話になってますしね」


如何やら私が新設の学校の講師をする事は避ける事が出来ない様だ。








真世歴十八年に魔法技能学校が設立となった。

予定では魔法技能の鍛錬の為の学校となっていたが工学部と農学部から横槍が入って最終的には応用技術の初歩が実務として熟せる様に講座が増える事になった。

最初に計画を立てた頃はそうでもなかったのだけど工学部と農学部でも社会人の受講生が増えてお手上げとなり、結局はこの学校で各学部の魔法の基礎的な技術については修得可能にする話になった訳だな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。