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04 魔法で飛ぶための工夫

ゾーブのボールを使った飛ぶ魔法の実験当日、休みなのに結構人が集まった。

俺、沃土、権藤先生、俺のクラスメートが6人、沃土がネットで知り合って実験に参加することになった人たちが5人、そして先輩の大学生が3人。

ゾーブのボールは使用申請を出した学生がいたみたいだが実験で一番最初に使うのは俺だ。

先生が「発案者が最初に使わないと駄目だ。君は横取りをするつもりか?」と許可しなかったそうだ。

朝のミーティングではまず注意事項を全員に伝えた。

俺と沃土が主導するけど大学の設備内で大学の先生が監督して行う実験なので守秘義務があって、実験で行われたことは自分で考えたことであっても情報を部外者に漏らしてはいけないこと。

撮影は大学の設備で行い、その他の撮影は禁止すること。

個人的に撮影をしたい場合は撮影設備の使用許可を得て行うこと。

情報の管理は権藤先生と沃土が行うこと。

情報の公表も権藤先生と沃土が決定して適宜に行う。

情報を漏洩が発覚した場合は施設への立ち入り禁止になること。

情報を漏洩が発覚した場合は守秘義務違反として告訴もありうること。

朝と帰りのミーティングで「秘密は漏らしていません!」と宣誓すること。

色々あるけどようは施設内のことは内緒でその為の取決めをして破ったら罰を受けるぞと話がありその後でみんなで考えてきた魔法を出して権藤先生に試す魔法の許可を得て試す順番を決めて実験を始めた。


人が魔法で物を飛ばす場合、普通は視点が物の外側にあるので、何らかの外力で物が回転しても位置が変わっても、本人は動いていないので物の向きも位置も把握できて容易に修正できる。

人が生身で飛ぶ魔法が危険なのは、本人が飛んでいるので視点は内側にあり、何らかの外力で本人が回転したり位置が変わったりすると位置感覚・方向感覚・上下感覚が狂って修正が困難になり、集中が途切れて魔法が使えなくなって落下したり、本人の位置や向きが変わっても魔法が掛かったままで想定外の方向に飛び続けてしまうからだ。

ボールに入って飛ぶことで外力の影響を減らし、落下しても物に打つかっても肉体を保護できる。


実験は………最後にはプロテクターを着けてボールの中で転がる俺がいた。

最初は良かったんだよ、ボールもうまく浮いて指差す方向に動くし、でもボールが壁に擦れた拍子に横回転してバランスを崩して、俺はボールの中で転がることになった。

俺はボールが初めから回転していれば擦れにも強いに違いないと思い、ボールの中で小走りしながら試してみたけど、やっているうちにボールが動く方向とボールの中で走る向きがズレてきてボールの中で転んでしまった。

俺は指差す方向にボールが回転して走る方向とボールが進む方向が一致するように魔法を修正してこれは結構上手く行ったんだが走り疲れて集中が途切れて転がることになった。

砲弾みたいに飛ぶ魔法とかパルスジェットみたいに飛ぶ魔法とかも試してみたけど最後はボールの中で転がることになった。

遊びと考えればいろいろ楽しめて結構面白いけど飛ぶ魔法としては不満足な出来だ。

俺は実験を一旦終了して、予定通り参加メンバーと交代した。


俺は他の人の行う実験を見たりしながら『運動神経がいい人ならこのままでも結構バランスよく飛べるかな』『俺も練習すればもっとうまくできるかも』『これはこれで遊びとしては定着するかも』とか考えていた。

実際、見ているとほとんどの人が転がっているが、上手く操作して結構さまになってきた人もいる。

俺はそれでも初心者がやっても安全で出来る限り容易に魔法で飛ぶ手法を創りたかったので考えていた。

そして考えついたのは外側のボールが回転しても内側の人には伝わらないようにする方法だ。

メカ式のジャイロセンサの内側みたいにすれば良いと考えて沃土と大学の先生に相談してみた。

「それは私も似たようなことを考えてみたけどお金がすごく掛かるんだよね。今回みたいに出来合いの物を買うなら何とか押し込めるけど。大学だけでは無理だね。企業か国を巻き込まないと無理だね。今は国は大変そうだから企業かな。伝手を当たってみるよ。これ面白いからね。反応あるかもしれない。明日も大変そうだけど、沃土君は今日の実験を纏めて私の承認後にネットに上げておいて監修に大学名と私の名前も付けておいてね。最後に修君の考えた案もさわりだけ入れておいて、何か反応があるかもしれないから」

夕方のミーティングで動画を見ながら結果報告と改良案を出し検討して翌日の予定を決めてから宣誓して終了した。

ミーティングでは魔法の使えない勇一も色々アイデアを出していた。

乗って主観的に気付くことと外から客観的に見て気付くことは違っているから結構参考になった。

勇一が最後に「俺も乗りたい」と言ったので翌日は適当に相乗りすることになった。


翌日の実験は朝のミーティングで昨日の予定通りやるように決まって、権藤先生はやることがあるらしくて自分の部屋に戻って行った。

俺は『おっ、カメラが増えたな』『ボールも増えてる』『みんな上手くなったよな』『あっ、ボール同士が衝突した』『実験のこと忘れて遊んでいる奴の方が多いな』とか思っていた。

実験の途中で権藤先生に呼び出されて沃土と一緒に研究棟にある応接室みたいなところに行くと会社員然とした人達と権藤先生がいた。

俺達が応接室に入ると権藤先生が俺達を今回の実験の発案者だと紹介して、会社員の人達を某スポーツ用品メーカーと某機械メーカーの人達だと紹介した。

それで色々と話したんだがどうやら企業でも飛ぶ魔法についてはいろいろ検討していたらしい。

ただ危険そうだから責任の所在とか誰が主導して行うとかでなかなか動けなくてそうこうするうちにネットに俺たちの動画が昨日上がって、権藤先生に伝手のある会社の人達が権藤先生の自宅に連絡を入れて今日は朝から大学に来たそうだ。

俺は『休みなのに仕事ですか』『休みなのに良く動画を見つけたよな』とか思っていた。

権藤先生もこんなに早く反応があるとは思っていなくて、休み明けにメーカーに連絡を入れようかとか考えていたみたいだ。

沃土は、動画への反応とかで少し五月蠅くなるかなと考えていたみたいだがそれでも今日来るとは思っていなかったみたいだ。

メーカの人の話によると前の俺が転ぶ動画のファンが会社にもたくさんいてそのうちの一人が新しいのが出たと思って動画を見たら自分達がやりたいと上奏していたことが動画になっていて、夜中に上司に対して電話で怒鳴り込んだらしい、上司も動画を見て焦って権藤先生の自宅に電話して今日来たみたいだ。

沃土によると同じような魔法の実験は誰かがやっているかもしれないけど動画に上げたのは俺達が1番みたいだ。

メーカーの人は動画を見て空を自由に飛ぶことにはなっていないけど一応は飛んでいるし、遊びとしては充分成り立ちそうだし、最後の案が上手く行けば飛ぶ魔法の実験にも有用で実用化に繋がると判断したらしい。

それで契約とか権利とかの話が出たんだが俺達は未成年だから「親に相談します」と言って名刺をもらって終わった。

彼らは大学主導の実験だと思っていて権藤先生に話を付ければ済むと思っていたみたいで、高校生が主導して学校の許可を受けて施設で実験しているとは思っていなかったみたいだ。


俺は大学では魔法について研究していないのかと権藤先生に聞いてみた。

「大学も年度末に来期の研究テーマは決まるし、大学生も決まったテーマから外れたことはやらない。サークル活動も大学生は男女の出会いの場みたいなのが多い。魔法が使えるようになってまだ半年もたっていないのに大学の研究テーマにはなる訳がない。研究に利用できる魔法を考案すれば組み込めるけどね。君たちの実験も来期の研究の種にぐらいはなるかなと思って許可を出したのだしね」


「そうなんですか。系列で高校の上の大学だから学校の方針で申請を出せば通ると思っていました」


「いや、面白いと思わなければ許可を出すにしても優先順位は下げるよ。でもこれでメーカーと共同研究になれば予算の心配はいらないし、魔法に対する研究は始まったばかりで早い者勝ちだから本当に君達のおかげだよ。すぐに研究室に登録して私の研究室に毎日でも顔を出しなさい。上手くすれば企業の研究も覗けるかもしれないよ。いや楽しくなってきたね」


「毎日来るのはいいんですが、高校の許可が出るかどうか」


「それこそ系列の高校なんだしどうにかなるよ。あの日以来、授業を全部受けなくても何とかなるんだからさ。大学の講義なんて実験以外は専門書の名を言って、ここからここまで読んでしっかり把握して置く様にで終わりだよ。後は参考になる文献の名前を挙げるぐらいだ。やる気のある学生は何も言わなくても自分で進めて今期分は終了して好きなことをするようになった。別に午後から出るだけでも良いからさ来なさいよ」


「高校の許可が出れば面白そうだし、来てもいいかな。飛ぶ魔法の実験の続きが出来るんですよね」


「そうそう、君達がいる方が学生への刺激にもなるし、君達も好きなことが出来る。そうだ、親御さんともメーカーとの件の話を付けないといけないね。明日にでも直接連絡を入れるから電話番号を教えて。なるべく早くメーカーの人間を交えて直接に話をしたいから宜しくね。親御さんには名刺を見せて軽くでいいから今日有った話をして私から連絡を入れることを伝えておいてね」


沃土はメーカーの人達と未編集の動画を見ながら何か話をしていて俺を見て動画を見て笑っていた。

メーカーの人達は俺を見て動画を見て本人の前だから笑いを堪えていた。


話が終わるとメーカーの人達が実験の様子が見たいと言うので一緒に行った。

みんな格段に習熟していて上手く操作するようになっていた。

屋内で高さ制限はありボールの中で転がりながらではあるけれど結構自由に飛行している感じで実験を忘れてボールを打つけ合って遊んでいる。

話を聞いてみるとみんな俺の創った魔法を参考にして個人で使いやすいように工夫して魔法を創っている。

途中で面白くなって自分の実験も忘れて疲れたら交代して順番に遊んでいるそうだ。

魔法は頭が疲れると使えなくなるのであまり揉めることはないみたい。

『やっぱり遊ぶのが一番習得が速いよな。色々アイデアも出そうだし』と思い、俺も混ぜて貰うことにしたけど遊べなかった。

みんなが遊んでいるのを見たメーカーの人達が顔色を変えて、すぐに俺と沃土の親に会いたいと言い出して会社の弁護士に連絡を入れて呼びつけた。

俺と沃土は家に電話して親が在宅していることを確認し、メーカーの人に電話を代わりそして俺の家に行くことになった。

俺と沃土と権藤先生はメーカーの人の車に乗って俺の家に行き、俺の父親とメーカーの人達と権藤先生は2時間ぐらい話し合って弁護士が到着後に俺達は仮契約をした。

沃土の親は俺の親に任せると言ったそうだ。

その後は大学に戻り、俺と沃土は1時間ぐらい飛ぶ魔法で遊んだ後で夕方のミーティングを行いメーカーとの仮契約のことを権藤先生が「今後は企業機密に触れるようになるので情報の漏洩があると大変なことになります」と脅してから「みんなにも後日にメーカーと契約を結んで貰います。未成年の人は保護者に来ていただくかこちらから伺うから休みの日を開けておいて貰ってください。あと責任の持てない方は教えて下さい。明日からは実験から外します。メーカーの人が来たことも秘密ですから話さないで下さいね。ここにいる人から漏れたことが分かったら法的に対処しないといけなくなるので。明日以降の実験についてはメーカーの承認がないと公表できなくなります」と話した。

ミーティングが終わった後、俺と沃土は権藤先生の部屋によってから帰った。

権藤先生は「次の土曜日にでも君の父親に会おうと思っていたら今日中に終わったね」と笑っていた。


家に帰ってから父親に飛ぶ魔法の実験について聞かれたので、ネットで公開している俺が何回も転がっている実験の動画を見せて説明した。

「この昨日の実験の動画を見てメーカーの人達が大学に来て今日の実験を見たらすぐに親に会いたいと言ったから電話をして家に連れて来たんだよ。俺が未成年だから親の承認が必要なんだってさ」


「今日の実験はどうだった。何かあったから彼らは今日来たんだろう?」


「今日の実験なんだけど動画は今頃は沃土が纏めているから夜中にはネットで公開される。みんな上手くなっていてさあまり転がらなくなったんだよ。転んでもすぐ立ち上がる感じかな」


「上手くなったってどのぐらいの話だ」


「屋内で人の入ったボールが上下左右に飛び回る感じかな。後で動画を見れば分かるよ。メーカーの人には実験に参加した全員の名前と権藤先生の名前とメーカー名と名刺にある名前あと魔法と機具の考案者の名前として俺と沃人の名前、あと弁護士の名前も動画に入れておくように言われていた。それと今後は許可なく飛ぶ魔法に関することを公開するのは禁止と言われた」


俺の父親は医療関係のバイオ企業の偉いさんだから契約とかの話は任せておけば大丈夫だ。

いろいろ経験もしているだろうし、特許とかの権利関係も詳しそうだ。


その夜は父親と最新の実験の動画を見た。

「ほら、みんな上手く飛んでいる感じだろ。でもみんな遣り易い方法が違うみたいで操作手法が違うんだよ。細かく分けて魔法を使って飛んだり、どんと飛んで後は慣性に任せて方向だけ操作したり、これなんか一連の動きを纏めて一つの魔法にして飛んでいるから動きは綺麗だけど突然の変化に対処が取り辛そうだ。最後に転がるのも多いけど、結構うまくいっているだろう」


「みんな上手く飛んでいるな。ボールに入っている限り負傷もし難そうだ。これならお前が考案した機械が出来ればさらに上手く魔法で飛べそうだ。今のままでも強度を上げれば遊びには充分だ。メーカーの人間は充分需要があると判断したんだろう。お前の考案した機械な。すぐにパテントを出すべく動くそうだぞ。いろいろ応用が出来そうなんだそうな。魔法なしでも魔法と併用しても。以前なら黙って出していたはずだ。あの日以来嘘は付けないし、いずれアイデアの盗用が発覚するからな。出来るだけ速く発案者とその周りを囲い込むことにしているんだ。お前は高校生だからな個人で未成年だから遣り難そうだったぞ。大学なら共同研究で手を組み易いし、他の会社なら業務提携と遣り様があるからな」


「へぇ、そうなんだ。父さんの会社もそうなの?」


「まぁ、似たようなもんだ。医療関係はすごいぞ。医者なんて実務者ばかりだし、外科なんてこう出来たら摘出可能なのになんて案件はいっぱいだ。それが魔法で可能になったんだ。半年前だったら死んでたなんてことはざらだ。それに………これは機密だった」


「機密なんて発覚するから意味ないんじゃない?」


「10年単位ならな、技術の陳腐化も速いし。でも2、3年単位では違う。機密情報を知る人が2年後に突然死ぬようなことは考えにくい、特に魔法を使えるようになってからは。お前の今回の件だってそうだ。今は重要だけど、この感じだと早ければ半年で陳腐化して当たり前の魔法になる。でもこの根っこを押さえればこの魔法の進化の波に乗れると判断しているんだろうな」


「へぇ~、俺は面白ければいいや。しばらくは大学の研究室に入り浸って飛ぶ魔法を試して楽しむよ」


「まだ高校生だからそれでいいよ」


次の日に昨日のメンバーで大学に行くとメーカーの人がもう来ていて朝のミーティングでは契約について話し始めた。

実験で出たアイデアについての特許化と使用権と使用料に関する契約と機密保持契約についてだ。

「特許については魔法が使えるようになって日が浅いので国でも検討中でどうなるか分かりません」

「だから魔法そのものに関する特許は出してみるけど成立するかどうか分からないし仮に成立しても個人が私的に使用した場合に特許料は取る仕組みが有りません」

「魔法については著作権のような権利を新たに設けるかしないと使用料は徴収できません」

「魔法を利用して使う道具に関してはまず間違いなく特許が成立します」

「魔法を利用する遊び方も道具を利用していれば特許かあるいは著作権が成立します」

「そして特許や著作権が認められれば私たちの会社は先行者利益が得られるし、あなたたちも契約に準じた契約料が支払われます」

「だから情報は今後漏らさないで下さい」

「会社は利益が減る可能性が増えるし、あなたたちは契約料が減るか払われなくなるので確実に損です」

「お金を貰って情報を流すと確実に産業スパイとして刑事罰の対象になります」

「動画が公開されるまでは会社の名前も出してはダメですよ。誰かが株でも買って利益を上げたらインサイダー取引になりかねません」

「後は契約の時、契約書を見ながら話しましょう」

「では今日から会社の機材も持ち込んでいるので皆さんよろしくお願いします」

それからは実験メンバーで大学に入り浸りで大晦日前日まで実験をして遊んでいた。


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