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32 バリアの検証

冬休み明けに気を感じ取って転移する事が可能か実験をする。

堀さんに研究所内の人気の無い所に行って貰う。

そこに棒を転移させる。………成功だ。

次に使い魔のミヤを転移させる。………成功だな。

最後にミヤを戻してから自分で転移する。………もちろん成功だ。

気を感じ取って転移先を認識する事で転移する事が可能な事は確認できた。

ただ他の方法と違って転移先の認識に時間が掛かる。

これは何度も繰り返し練習する事で時間を縮めるしかないな。

そして今の能力では転移出来るのは自分を中心に研究所相当の広さの範囲だけだ。

これは修行して広げるしかない、目標は地球上の何処へでも………出来るようになるのか?

それに行った事が無くても転移出来るのは利点だが習得するのに時間が掛かりすぎる。

そこまでしてこの転移方法を身に付ける事に意味はあるのか?

この転移方法は簡単に習得する方法が見付からないと普及する事は無いな。

何かいい方法は………思い浮かばないので取り合えず保留とした。




後は修士論文を書いて発表して修士課程は修了だが学校には殆ど行っていないけど本当にこれで良いのか?

権藤先生の指導下で研究をして論文を書いているから問題ないらしい。

学生の指導もしてないぞ?

まぁこれは転移魔法が国家機密なので仮に大学で研究していたとしても学生を下に付けられなくて指導しようにも出来なかった。

全然別の研究テーマを与えれば良いって話が有って転移魔法以外の手持ちのテーマは①生物の魔法の防護領域の確認と分析とか②犬の魔法の防護領域を利用した魔法からの防護方法とか③バリア:魔法を使った防護障壁ぐらいで結局学生達は①を助教の山南さんの指導下で研究していた。


①生物の魔法の防護領域の確認と分析は魔法の基礎研究なので地味だけど重要な研究だ。

山南さんは生物の種類を増やして比較するために農学部の栗原さんの協力を取り付けて色々遣っている様だ。

今の所、山南さんが研究しているのは人と動物の家生種だけど対象となる生物はいくらでもいるから終わる事は無い、研究者としては食うに困らない良い研究テーマだ。

対象が多すぎて一人では手に余るから何れは対象を分類して絞り込む事になるだろう。




俺と沃土は権藤先生に論文の指導を受ける時に今後の事について相談する事にした。

大学に残って助教から始めるのは良しとして、今の状況が続くと何時大学に戻って研究できる様に成るか分からない。

取り敢えず転移魔法関係については修行が必要で時間が掛かりそうな方法以外は自衛隊に丸投げにする事で終了として大学に戻れないか探りを入れる事にした。


「権藤先生、今後の事なんですけど転移魔法については一段落して共同研究のネタが無くなったので沃土と一緒に大学に戻りたいんですが大丈夫ですか?」


「短距離転移については医療に限定して公開する方向で動いているんだけどね。鵜飼君と喜美君が動いているから近々公開になるだろうな。ただ長距離転移の方は物流方面への影響が大きすぎて軍事機密を理由に止まっているんだ」


「軍事的な理由は知ってますけど物流ですか。言われてみると………なんか大変そうですね」


「ハハハ、修君は沃土君と違って普段は魔法の研究の事しか目に入っていないからね。アイテムボックスでさえ生物の輸送以外は大型の貨物とか必要なくなって業界再編とか大変だっただろう?君はもう少し社会的影響とかを考えた方が良い」


「はぁ、考えてはいるつもりなんですが………」


「修君は昔と違って軍事的な影響とかはだいぶ考える様になったけどもう少し考えてね。それで転移魔法の話の戻るけど。転移魔法の今の研究の進み具合だと生物も運べそうな感じになっているよね。そうなると自動車産業なんて今でも大型貨物車は需要は無くなってきて大変なのに長距離転移が当たり前に成ったら普通の車両だって必要なくなる。でもこの流れを止めることは誰にも出来そうにない。どうなると思う?」


「自動車産業の雇用は確実に減りますね。でも今迄の魔法と一緒で殆どの人は直ぐに使う様にはならないと思います。だから本当に転移魔法が当たり前になる前に対処するしかありません。例を挙げると清掃業界ではアイテムボックスを応用して清掃に使うのが当たり前になっていますがまだ一般家庭には広まっていません。転移魔法にしても転移先が決まっていれば有効に使えるから仕事には便利だけど移動先が決まっていない遊びで使うにはあまり向いていません。生活パターンを急に変える人は少ないので対処する時間は充分に有ると思います。物流関係は大変そうですが先ほど先生が指摘した通りこの流れは止まりません。だから適応できるかどうかの問題です。政治的な話は一研究者には対処しかねます」と沃土が答えた。


「自動車産業はともかく物流関係は本当に大変そうなんだよなぁ。まぁ、学者が個人で対処できるレベルの話ではないし仕方のない事だけど社会的な影響について少しは考える様にしてね。それで大学に戻る話なんだけど、現時点で君達に何かあると社会的影響が大きすぎる。だから当面は無理ではないかな」


「でもあの研究所ではもう研究したくないんですよ。医療関係の4人も元の研究所に戻る事になっているし大学に戻るのは無理としても別の施設にして下さい。天谷師匠にも話しましたけど駐屯地の方がましです。あと調べたんですけど青森県の猿ヶ森砂丘にある下北試験場なんか周りを気にせずに色々実験できそうなんですよね。何とかなりませんか?」


「それは沃土君も同じ意見なの?」


「そうですね。研究所内の派閥争いの影響が有って遣り難いのは確かですが。最近は遊んでいると思われていて好き勝手に出来るので個人的にはあと1年ぐらいなら我慢できるかなと言った所です。検証中の新しい魔法の研究も邪魔されずに進めれれば問題ないですね」


「新しい魔法の研究?」


「実は去年の4月から転移魔法の応用研究と併行して修と2人で秘密裡に検証している魔法が有るんです。転移魔法ではないから自衛隊側には提示する義務が無いと黙っていました。確か契約では転移魔法に関しては提示する様に義務付けられていましたけど他の魔法の研究に関してはこちらの好意で提示したり提案したりしているんですよね」


「まぁ、そうだね。転移魔法でなければ秘密にしても構わない。それでどんな魔法なの?」


「実は俺が院生になる時に研究テーマにしようとしていた魔法と目的が同じ魔法です。ただ方法が違っているんですよ」


「あぁ、空気の殻を創って宇宙空間にも出れる様にする魔法ね。へぇ~それでどんな感じなの?」


「この魔法を防衛省に開示して教授する事を条件に大学に戻るか別の施設に行ける様に交渉して欲しいんですよ。お願いできますか?」


「聞いてからにしよう。その魔法にその価値があるかどうかだな」


「では魔法の仕組みから、この魔法は亜空間を利用した魔法で亜空間への入り口の膜で防護対象を覆うものです。修と相談してバリアと名付けました。ご存知の様に魔法で亜空間に物を入れる時、術者が任意で対象を選択する事が出来ます。だからバリアでは透過する物を術者が選択して限定することが出来ます。そこで防護対象に有害なものを膜に触れた時点で亜空間に収納して対象に届かない様にすれば防護となります。魔法回路を上手く調整すれば核爆発にも対処可能な筈です。ただ生物は亜空間に収納できないので殴る蹴る等の攻撃や人が持った状態の武器による攻撃には対処できません。転移魔法の医療への応用の実験結果から微生物等は遮断出来る筈です。一応実験の動画は撮ったので今から見ましょう」


動画は俺と沃土が武技の鍛錬をしている動画で一見しただけではアイテムボックスを利用した武技と区別は出来ない。

説明されても分からないだろうな本人でも動画を見ただけでは分からないからな。

投石されて石が空中で消えている事しか分からない。

権藤先生は感心していたけど自衛官がこの動画を見ても優位性が分からないだろう。

権藤先生にもバリアを習得して貰い小石を投げつけて小石が亜空間に収容されるのを体験して貰った。

バリアの利点は常時発動にしておけば術者が意識していなくても狙撃等の遠距離攻撃を防御出来る事だ。

バリアを常時発動にしておけば毒ガス・細菌・爆発・火災等からも身を守れる。

俺はバリアを1~5の段階に分けて通常は1を常時発動している。

1はバリアの膜に触れた身体に害になるものを亜空間に収容して溜め込む仕様になっている。

2は飛行仕様、3は戦闘仕様、4は潜水仕様、5は宇宙仕様だ。

一応分けてはあるが1以外はあまり使いそうにないかな。

亜空間に溜め込んだ有害物は戦闘時に使う事も出来るけど普通は廃却だな。

音とかも遮断出来るので使い方次第で盗聴を無効に出来る。

権藤先生には「防衛省の説得に必要なら偉いさんに魔法の説明と実演をします」と言っておいた。


「この魔法が普及すると飛び道具が無効に成って爆発物も対人には無効に成る。戦闘状況が激変する可能性が高いな。今から防衛省に動画を持って行くからデータをコピーして後はさっき習得した魔法で向こうが納得するかどうかだ。上手く行かなかったら君達に話を回すから準備して置いて。2時間ぐらいで戻るから待っててね」と言って権藤先生は転移してどこかに消えた。


長距離転移は機密だから使用に制限が有る筈だけど………

権藤先生は2時間後には転移して戻って「明後日防衛省から視察に来るから準備してね。何人かにバリアを習得させるから宜しくね」と言って普通に帰って行った。


視察の日は説明もそこそこにバリアの講習をして3人の自衛官にバリアを習得して貰った。

習得も容易な魔法らしいし魔法の有効性も自衛隊で検証した方が速いって事になったようだ。

何故か天谷師匠もいてバリアを習得して帰って行った。

そこからは検証は自衛隊に任せておけば良い事になって論文に専念して大学での発表も終わって無事修了となった。

バリアの検証はそのまま続け、焚き火をして有毒ガスがバリアで遮断されるか検証したりしていたが自衛隊の方からは何も連絡は無く春休みに入った。

あれ?4月からは何処に行けば良いのかな?








春休みに入っても何の通知も無く、沃土に聞いても状況は同じ、権藤先生に電話をして聞いたらとりあえず大学に行って如何するかはそれからと言う話だった。

大学で手続きをしないと身分も確定せず、内定を貰っただけの無職状態だそうで正式に職員に成ってからでないと何も始まらない。

書類に色々書き込んで提出して身分証が発行されてそれからだ。

そうだ、天谷師匠に会ってバリアの検証状況を探ってこよう。

休みで帰省している間は定期的に通って鍛錬しているので鍛錬後にバリアの件を持ち出すことにした。


「師匠、自衛隊のバリアの検証状況はどうなっていますか?もう習得した人も増えて色々検証結果が出ているでしょう?こちらは2人だけなので色々構想は練っているんですが検証は中々進まないんですよ」


「バリアの話かい………あれはなんて言うかまだ検証途中なんだけど君が考えている以上に色々出来そうなんだけどね。君達はバリアを使って完全に遮断した事はあるかな?」


「完全に遮断ですか?試してはいないけど考えたことは有ります。亜空間に吸収し続けるか亜空間を素通りさせて外側に出すかで状況が変わると思いますが?」


「そうか試すなら素通りさせる方で試しなさい。自衛隊で試してみたんだけど術者が消えちゃうんだ。術者が魔法を解除すれば元に戻るんだけど。つまりバリアの膜で覆われている空間が完全に別空間に成って互いに認識出来ず干渉も出来なくなるんだ。防御としては完璧だな攻撃は出来ないけど」


「へぇ~、逃走には便利そうですね」

『バリアで完全遮断してから転移すれば良いのかな。でも別空間ごと転移するとどうなるんだろう?』

「なんか考えていたのとは違うけど面白そうですね。今度試してみようかな」


「こちらの推測では肉眼では見えなくなるけど人はバリアの膜では遮断できない筈だから術者には干渉出来る筈なんだけど出来なかった。そこにいる筈だけどそこにはいない。後で術者に確認したけど移動してはいない。いるけどいない、いないけどいるんだ。バリアの膜もこちらの空間では存在しないとの認識に成るみたいなんだ」


「吸収し続ける方はどうですか?」


「吸収し続ける方は危険だからまだ検証していない。バリアの膜に触れた物質を吸収し続けるとすると空気が吸い込まれる筈だから密閉空間で検証しないと危ない。空気の吸収速度によってはかなりの衝撃が発生する筈だからそこら辺りも調整しないと駄目だからなぁ。衝撃を攻撃に使うにしても調整しないと危険だ」


「そうですか。ふと思い付いたんですが、完全遮断と通常の遮断を交互に繰り返したらどうなりますかね。短い周期なら蛍光灯の光みたいに人の目なら普通に見えると思うんですけど。上手く調整すれば近距離攻撃もスルー出来ませんか。近距離攻撃を避ける感じになるのかな?」


「それ面白いな。今度提案してみるよ。そうだ、注意事項が有ったんだ。完全遮断を試す時に魔素生命との繋がりを遮断しない事。最初の術者が魔素生命との繋がりが無くなった事に気付いて直ぐに魔法を解除したんだよ。数秒だけど情報が洩れてしまった。末端の隊員だから誰も気付いていないかもしれないけど君なら確実に情報が洩れる。注意しなさい」


「分かりました。注意します。銃弾とか砲弾とか爆発は充分防げましたか?こちらでは確認出来なくて気になっていたんですが」


「そこら辺りは一番に確認した。ダミーに魔法を掛けて確認したけど問題なしだ。人での検証はまだ許可が下りていないけどまず問題ないだろう。音と光も防げるから調整すればレーザー兵器とか音響兵器とかも防げそうだ」


バリアの検証も進んでいる様だし、新しい情報も手に入った。

来年度の研究はこのままバリアの検証を進めたいのだが大丈夫かな?

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