表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/59

03 魔法で飛ぶ?

2学期の初日の朝、担任が教室に入ってくるなり「今から、宿題確認のための試験を行う。宿題をやっていれば成体ならば確実にできる。これは家の中学生の娘で確認済みだ。レポートは試験が終わったら答案用紙と一緒に提出して今日は帰って良し。まだ幼体の人は出来る限り書いて出せば良いよ。あくまで宿題確認のための試験だからな。問題と答案を配るからすぐ始めて終わったら提出して帰って良し、1限目の終了のベルがなったら提出して帰って良し。以上だ」と言って試験が始まった。

俺はあの日以前よりは出来たと思うが時間内に終わらなかった。

ほとんどの奴は30分もすると提出して出て行った。

最後まで残ったのは勇一と俺と他は3名、勇一は幼体だから別として他は何も遣って来なかったのが一目瞭然だ。

最後に担任は答案とレポートを回収してこう言った。

「夏休み前に教師の間で問題になったのが成体になった者に宿題とか試験は意味があるのかだったが、ここに残っている成体の者がいる時点で意味があると結論が出たわけだ。この試験はその確認ために行った。それから事前情報なしだと神様情報がうまく活用できないことも確認できた。宿題はある程度勉強をする動機にはなるし、試験は勉強をしたかどうかの確認になる。他のクラスも似たようなものだろうからこれからも試験は定期的に行うことになる」


「先生、僕たちが残らなかったらどうなったんですか?」


「あの日を境にお前たちが変わって自律的に勉強するようになったか神様情報が万能で勉強する必要がないと結論が出て少しづつ宿題とか試験とか減ったかもしれないが結局は人は簡単には変わらないと言うことだろう。周りを見てみろいつもの顔ぶれだろう。まぁ、あの日から日が浅いので以前の習慣が抜けてないだけか神様情報の使い方がまずいだけかもしれないから最終的な結論は当面出ないけどな」


「えーと、僕たちが残ったから宿題と試験が減ることはなくなった。ということ?」


「まぁ、そういうことだ。明日から普通に授業だから遅刻しないように。もう帰っていいよ」


「昨日、教科書見ておけば」とか「なんで今日の朝でもいいから見なかったんだろう?」とか勇一に話しながら帰宅しようとして隆弘がいないことに気が付いて勇一に聞いた。

「あれ、隆弘がいないね。元々頭が良いから試験できたのかな」


「隆弘は夏休みに入ってすぐに成体になったんだって気が付かなかった?」


「へぇ~気が付かなかった。それならすぐ帰ったんだ」


「そう、2番目ぐらいに教室から出てった。それからみんなどんどん出て行って5人残った」


「あれは焦るよな。あれ?もうみんな行っちゃうのって感じ」


「いや、俺は安心した。残った奴みんな、以前は残ってた顔ぶれだった。あの日以来みんな勉強が出来るようになって夏休み中不安だったんだ」


「でも頭の中身はあまり変わってないよ。神様っていう外部端末と繋がっただけで情報も生の体験情報のまま整理されていないから勉強しないと抽出が面倒で時間がかかるし。まぁ、大夫楽にはなるけど」


「そう中身があまり変わってないのが分かって安心したんだ」


「ふーん、ならよかった、今日の試験には意味があった」


「うん、俺には大きな意味があった」


そんな感じで2学期が始まった。

結局、通知表に成績の段階評価は付かなかった。

学校は基本的な勉強をしているかどうかを問題にして、成体は試験結果で勉強をしていることが確認できれば可とし、幼体は試験の点数が基準に達していれば可、未達成であれば補習を受けさせて可とすることにした。

成体になった者の飛び級は検討されたがなしとなった。

同世代の者が成体になり身近にいることが幼体にとっても成体にとっても重要だと判断したからだ。

人はどの道、遅くとも19歳になれば成体になる、それならば同世代の幼体と成体が混じり合った期間はそのまま残しておいた方が社会的にも健全であると判断された。

でも実際のところは成体になって飛び級にしていたら切りが無いからだろう。


成体については飛び級はないが興味のある学問については申請があれば大学の聴講が可能とし、教授の承認があれば研究室への登録も可能になった。

高校側の許可があれば生徒が興味がある学問については学校が提供出来る範囲で優先して好きに勉強して良いことになった。

やりたいことが決まっている生徒には良いことだよね。

高校の授業も雑談か課題を出されてその結果発表とかの比重が高くなった。



俺は宿題や試験範囲については期日前日には一通り目を通して小神様に記録することにしたので今のところ夏休み明けのような目にはあっていない。

最近は空いた時間に妹が妄想していた空飛ぶ魔法を考えていた。

今のところ、神様情報を調べても飛ぶ魔法はないし、危険だと情報が飛び交っていて、だからか飛ぶ魔法を使って死んだ人もいない。

俺は浮力、揚力、反作用を利用するのは気球とか飛行機があるので重力を利用することを考えた。

ネットにあった『重力を操作して3階から飛び降りても大丈夫』の魔法を参考にしようかとも考えたが、まずは浮く魔法だと思い、無重力の魔法を考えた。

1人で実行するのは危険に思えたので従兄弟で友人の沃土に相談して魔法をチェックしてもらった。

相談して最初に言われたのは「初めから自分で試すつもりか死ぬぞ」だ。

魔法をチェックしてもらって良かった、確かに危険な魔法を最初から人体実験はするものではないな。

沃土が交渉して大学の実験用施設を借りることになった。

うちの学校は上に大学があるから、本当に便利、学校の方針で許可さえとれば高校生でも気軽に施設を使える。

水に風船を浮かべて風船に魔法を掛けると風船は壁に打つかって弾けた。

無重力の魔法を『地球から受ける力を遮断すれば良い』と考えたのはダメだった。

地球は自転しているのでこの魔法では風船は地球から見れば自転の逆方向に動く。

沃土を見るとニヤニヤ笑って「地球の自転速度は赤道の地表で1666km/hだぞ」と言った。

どうやら似たような実験をしている人は多いみたいだけどこれで浮こうと考えた人はいないらしい。

魔法は成功したが、この魔法は浮く魔法としては失敗だ。

この魔法は他に応用できるかもしれないので覚えておくことにして封印だ。


この世界には魔素と呼ばれる触れないけど存在するものが充満していて流れを作っている。

魔法はまず意識を集中してこの魔素の流れを操作して魔法で行いたいことを具体的に考えながらその魔素の流れが循環するようにして魔法回路を創り、次に意識を集中してこの魔法回路で出来る擬似物力をこの世界に押し付ける。

擬似物力をこの世界に押し付けることにより世界が騙されて現象が生じたら一応は魔法は成功だ。

ただし、自分が思っているような現象を生じるとは限らない。

自分で利用可能な魔法ができるまで魔法回路を修正する試行錯誤が必要だ。


俺は地球から受ける力を遮断する手法では浮く魔法は難しそうだから他の手法を考えることにした。

地球から働く重力とは逆方向に魔法で擬似重力をかけて吊り合わせる手法だ。

屋内で風船を使って実験してみたら浮いたまま動かないそして水面に接している感じだ。

成功かな試しに指で力を加えてみよう、風船は力を加えた方向に動くが変形して不安定に回転した。

不安定ながら一応成功したようなのでテニスボールで同じことをしてみるとテニスボールは一見安定して宙に止まっているが指で力を加えると回転しながら動く。

人は質量が大きいためテニスボールのように簡単に回りはしないが外でそのままやるのは危険だ。

でも軽く擬似重力をかけてふわふわ歩くのは出来そうだからこれはこれで楽しく応用できそうだ。

『本物のムーンウォークができるかな?』と考えて沃土に言ってみた。

「それは面白そうだから物で実験した後で屋内でやってみよう。でも外ではやらない方がいいぞ突風で吹き飛ばされたりするかもしれない。空中で魔法が解けたら死ぬかも」


「透明のボールに入ってやる遊びがあるだろあれでやれば外でも遊べないか」


「それなら屋内の方が面白くないか?箱の中なら3次元で跳ね返れる。目が回りそうだけどな」


「飛ぶ魔法も使えば強弱も付けられそうだ。面白いかも。飛ぶ魔法を考えよう」


浮く魔法に動かしたい方向への力を加えれば飛ぶ魔法だ。

テニスボールにこの魔法で力を加えると真っ直ぐ飛ぶだけでコントロールができない。

これは指差した方向に力を加えることにすれば何とかコントロールが可能になる。

でも飛ばし続けるには加える力を維持しなければならないが意識を集中できる時間は長くない。

一度作成に成功した魔法回路は脳に刻み込まれるのか簡単に作成できるが世界を騙すためには意識の集中が必要だ。

力を維持する良い手法を編み出せれば良い感じなのだが上手くいかない。

テニスボールに魔法で加える力を強くすれば力を維持しなくても慣性でしばらく飛ぶが力が弱いと距離が出ないし、強いと砲弾の様に飛んで生身では危険でどちらにせよ自由に飛ぶ感じではない。

テニスボールに魔法で断続的に力を加えれば飛ぶことは可能だがパルスジェットみたいに空中で跳ねる感じになる。

いずれも今のところは人が生身で自由に飛ぶには不満足な出来で、やはり風などの影響を受け易いので外では危険だ。


長く飛ぶ方法は後回しにして、先に人が安全に飛ぶ方法を考えよう。

人が魔法で屋外を自由に飛ぶにはやはり人体を保護する保護具がないと危険だ。

人が屋外を生身で出来るだけ安全に飛ぶためには落ちても大丈夫な低空を何かと衝突しても比較的安全なように低速で飛ぶことと考えた。

例によって魔法を作ってテニスボールで試してみる。

テニスボールは低空低速で屋内では滑るように指差した方向に動くが屋外では風の影響を受けるためかフヨフヨした感じで動く。

バスケットボールでは屋外でも少し安定して動く。

砲丸だと比重が大きいためか屋外でもかなり安定して動くがこれは人に当たると危ないね。

念のためプロテクターを着けて屋内にて自分で試してみたが、無意識に足を動かした時に地面に擦って転ぶような感じになり、体が回転して指差し方向が動いて力の向きが変わりそこで魔法が途切れて、俺は地面を転がることになり、俺が大丈夫なことを確認した後で沃土はゲラゲラ笑っていた。

飛ぶ魔法はコントロールが上手くできないと大変危険だ身に沁みる。

俺たちは生身で空を飛ぶことは棚上げにした。


この日の実験は一旦終了にして沃土は今日の結果を纏めることにし、俺は創った魔法を応用して何が出来るか考えることにした。

沃土は「今日の結果は纏めてネットに上げとくから、確認しとけよ。大学の権藤先生にも提出するから」と言って、俺は「うん、わかった」と答えた。

俺は透明なボールに入って今日創った魔法を使ったらどうなるか考えていて、次はどんな実験をしようかとかこう出来たら面白いかもとか妄想していたのでいい加減な返事をしていた。

俺が「あの人が入れる透明なボール用意しないとな」「今度はいつ実験しよう」とか独り言を言うと沃土は「用意しておくよ、日程も決まったら教えるよ」と答えていた。


俺は実験の翌日の朝に沃土に話しかけた。

「お早う、この前の魔法の件なんだけどさ。ゾーブのボールを使えばケガもし難くていいと思うんだけど………どうかしたのみんな楽しそうだけど」


「昨日、実験結果をネットに上げとくって言っただろう。まだ見ていないみたいだけど。『人が飛ぶための魔法の実験しました』って題で実験動画と使った魔法についての説明の動画をUPしたのよ。上手く行きそうな実験の動画だけでなくて、飛ぶ魔法としては失敗した実験の動画もUPしたわけよ。危ないから注意喚起のために」


「うん、いいと思うよ。本当に危なかったから。真似して大怪我でもされたら大変だもんね。それで何が楽しいの?」


「それがさ閲覧数が多いのよ。特に海外」


「日本語分かるの?」


「それがさ『魔法を使って面白く転げる方法』と思っているみたいなんだよ。生で見ても面白かったけど。動画で改めて見ても面白いんだよ。お前世界中で人気者だよ。プロテクターで完全防備の人が腰あたりで右腕を曲げて床から少し浮いてスーと動いていて指差した方向に動く向きを変えて『よしよし』と言ってたのがいきなり『アーっ』と叫んで空中で立ったまま縦にぐるんと回転した後に床をゴロゴロ転げるんだよ。自分でも見てみろよ面白いから。権藤先生も笑いながら 『よく怪我せずに済んだね。運がいいね。次からは学生を監視につけることにしたよ。生身だったら死んでたかもね』と言ってたよ」


「それでみんな楽しそうなのか。おい、勇一!真似して笑うな。実験の仲間に入れてやらないぞ。」


「まぁ、真面目な反響もあるからさ。『魔法の実験いいな~』『初めの風船の実験、似たようなのやった』『魔法で飛ぶのは夢ですよね。実験結果を見ると危ないけど』『スカイダイビングとかハンググライダーでは応用できそうだ』『海でサーフボードに乗ってやってみても面白そう』とかあって、大学にも実験を希望する学生が増えたみたいで、権藤先生は『何人か入れて一緒に実験することになる』と言ってた」


「ふ~ん。そうだ、実験にゾーブのボールを使えば屋外でも安全そうだけど。どう思う」


「用意しておく。プロテクターだけよりは安全そうだし、それにボールに魔法をかける方が操作が楽かもしれない。でも最初はボールだけを使って屋内実験だからな」


「うん分かった。日程分かったら教えて。それまではいろいろ考えよう」


「あぁ、俺もいろいろ考えておくよ」


その日はみんな俺を見て一日中楽しそうだった。

話し掛けてきたのは勇一と沃土ぐらいだ。

「俺も仲間に入れてくれるの。魔法 使えないけど?」


「いいよ。考えるのは出来るんだからさ。それに今のうちに見といた方が魔法を使えるようになった時に注意するようになるだろう?考えた魔法をすぐ実行すると危ないからな。俺も沃土がいなかったら笑われるだけでは済まなかったしさ」


「クラスの奴も実験に行っていいかな。みんな見たがってるからさ」


「そうなの?直接俺に言えばいいのに」


「あ~それは無理。みんな目を合わせたら思い出して笑えて話せないってさ」


「いいよいいよ。みんな来なよ。俺は前回の失敗を乗り越えて使える魔法を創ってやるから。そうだみんなも魔法を考えるように言っておいてよ。それも実験できれば実験するから」


「うん分かった。言っておく」


勇一は離れて行き、「みんな来て良いってさ」「やったぜ」「よーし、それで次の実験はいつ?」「どんな実験するって」「何か持ってく必要な物ってある」………

みんなも楽しそうだし良かった良かった。


次の実験は結局、施設の使用状況とかゾーブのボールを手に入れたりとかでクリスマス後の休日の2日間になった。

ゾーブのボールは権藤先生に相談したらいろいろ使えそうだと大学の設備として購入するらしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ