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02 夏休みの出来事

夏休み、宿題らしい宿題はない、どの科目も教科書や参考書の何ページから何ページまで読んでおくようにと言われて担任には夏休みに何をしたか何があったかレポートにして提出するように言われただけだった。


俺は姉の愛里と一緒にまだ幼体の妹の綾に簡単な魔法を見せてやったり、新しい魔法を考えてネットで公表したり、面白そうな魔法をネットで探して試してみたりして夏休みを過ごしていた。

妹は14歳で女友達の大半がもう成体になっていて、本人は魔法について妄想を膨らませていたようだ。

「この前まで一緒にバカなことやってた友達のいっちゃんが急に勉強ができるようになってさ、片手で私を持ち上げれるんだよ。魔法すげぇーと思って今から楽しみなんだ。空とかも飛べるかなぁ」と言ったので「今のところ、ネットにも空を飛ぶ魔法はないな、危険だという情報は上がっているけどな、『重力を操作して3階から飛び降りても大丈夫』とかはあったから出来るかもだけど」と答えておいた。




夏休みに入ってしばらくすると日本では肉類が配給制になった。

配給制といっても好き放題に買ったり、食べたり出来なくなるだけで食料品店や飲食店に割り当てができて個人が買う分も制限されただけで食べられなくなったわけではない。

そしてみんな神様と繋がっていて嘘がつけないので誤魔化すことが出来ないため厳格に実行されている。

肉類は個人の買いだめも禁止されていて結構面倒くさい、冷凍保存なんかするとその分も引いて買わないといけない、1kg単位で違わないと違法にはならないので普通は問題にならないけど、以前に冷凍したものが残っている家庭も多かったみたいで最初の頃は揉めていたみたいだ。

俺の家では食べられそうな肉は2日かけて一気に食べて、古くて家の犬も食わなかったものはまとめて捨てていた。

ネットでも肉類の配給制が話題になっていて、

「誰か魔法で肉を創れよ」

「魔法で無から物を創った奴はいない。物の形態や形状を変えたりはできるけど」

「今ある肉を倍にする魔法とかはできない?」

「魔法で肉に水を吸わせればできるぞ、水っぽくて激マズだけどな。やってみた」

「それは水に調味料とか混ぜれば少しはましになるかも」

「医療魔法の応用で肉の細胞を増やせばできない?あの傷を治す魔法」

「あれは周りに細胞になる材料があるからできるので肉の塊に魔法をかけても増やすのは無理」

「細胞になる材料を供給すればできる?」

「それなら出来そうだけど細胞になる材料がわかる人はいる?」

「医療用に皮膚の培養とか可能だから神様情報を調べればわかるのでは」

「その材料の手配を出来れば肉を増やせるかも」

「肉を増やせても衛生面が心配だ」

「鶏肉を材料にして牛肉を増やせれば満足だからやってみる」

「成功したら教えてくれ」

「いいけど。真似して何かあっても自己責任な」

翌日のネットには動画『鶏肉を使って牛肉を増やす魔法・でも味は保証できません』が上がっていた。

この魔法を試しにやってみたけど鶏肉の形をした牛肉らしき物が出来て「味は牛肉かな?」だった。

挽肉にすれば分からないと思うけど鶏肉をそのまま食べた方が良いとの結論を俺は得た。

父親がちらっと見て「生きている細胞を使わないと上手くいかないだろう?」と言っていた。

どうやら牛肉の細胞の培養ではなくて、鶏肉を牛肉に変換するになっているみたいだ。

よく考えたら死んだばかりならともかく熟成させている食肉の細胞は生きていない。

本当に魔法は難しいね。




多くの国で豚以外の家畜が屠殺できなくて肉の供給が滞っているらしい。

俺はニュースを見ても『牛と鶏は殺せないよな群れの一員は殺せない』と思い、云々と頷いていた。

世界中で豚の脱走が始まったニュースを見ても『豚も殺されたくはないよな』と云々と頷いていた。

アメリカでは牛肉について市場への供給量が激減したことが問題になっていて、牛を好きなだけ食わせろとデモがあったがある牧場主がテレビ取材に答えて、

「牧場に来たら生きた牛を売ってやる。ただし自分で屠殺しろよ。屠殺の仕方は教える。解体は業者がいるから金を出せば自分でしなくてもいい。肉の熟成とかも業者がいるから金で何とかなる。でも金を出しても屠殺だけは無理だ。少なくとも俺の周りに他人のために牛を屠殺出来る奴はいない。自分で屠殺出来れば好きなだけ食えるぞ。好きなだけ食えばいいさ。俺はあの日以降は俺や家族の食う分は自分で屠殺している」

と言ったらデモは下火になった。

「そもそも牧場主に売る気はあるが買ったとしても屠殺する人がいないから市場に供給されないのだ」

「実際、契約牧場なんかは牛は契約で売却済みなのに屠殺できないから買手も困っている状況だ」

「アメリカで牛肉食い放題、屠殺ツアーとかやれば今なら需要があるのでは」

とかニュースでやっていた。

俺はニュースを見て『配給制でもないのに何のデモだ』とか『日本人でも屠殺に行けば日本に輸入できるかな。でもお金が掛かりそうだ』とか思っていた。


「アメリカ人は贅沢だよな。肉が普通に売っているのに」と沃土に言った。


「アメリカ政府は戦争でもないのに配給制にはしたくないから肉の価格が高騰しているんだ。業者も売るのを控えている。後で売るほど儲かるしな」


「アメリカ政府が業者を取り締まればいいのに」


「アメリカでもストックを抱え込んで売ろうとしない業者についてはマスコミが騒ぐさ、アメリカ政府も悪者に出来て都合が良い。でも少しづつでも市場に供給していれば問題にはしない。アメリカ政府は肉の高騰を利用して需要を減らしているのさ」


「………なんで?」


「だから、以前のように出荷していたら肉が無くなるからな。日本が配給制にしたのと同じ理由さ。アメリカに肉が無くなったら日本が買う分も無くなる。お前も困るだろう?」


「でもオーストラリアにも肉はあるから大丈夫じゃないかな?」


「オーストラリアはアメリカに比べて人口が少ないから今のところ問題になっていないだけさ。政府もその分だけ切実感がない。政治家の中には牛肉を高値で売り付けることしか考えていない奴もいるからな。時間の問題でアメリカの様になる。そしてこのままの状況を放置しておいたらいずれ肉は無くなる。日本政府とアメリカ政府の遣っていることは時間稼ぎだな。対策の時間が欲しいと言う訳だ」


「対策って何?」


「修も遣っていたじゃないか。『魔法で肉を増やそう』だよ。魔法を使うことで何とかできないか考えているんだろうさ。あの日始まった問題だ、あの日使える様になった力で何とかするのさ」


あの日以降、人は牛の神様との繋がりを認識して牛を同じ群れの一員と見做す様になり殺すことが困難になった。

同じ神様と繋がると互いを同じ群れの一員と感じるようになる。

他にも人は犬・猫・鶏等色々な動物の神様と繋がっているが豚の神様とは繋がっていなかった。

人と豚は互いを群れの一員と見做しておらず、豚は狂暴になり養豚場から脱走し始めた。

人は豚が脱走する前に屠殺して肉にし始めた。

人は家畜を食肉用としては大規模に飼育を出来なくなりつつあった。




あの日以降、中近東と中国と中南米が一気にきな臭くなって紛争が拡大している。

俺は紛争のニュースを見て『あの日以降、人殺しに対する忌避感が強くなってドラマを見るのも嫌になっているのにこいつらよくやるよな』と思っていた。


日本ではマスコミが政治家の旧悪を追及するような記事を出しているが政府は非常事態宣言を出していて「その件は、先送りです。中国みたいなりたいですか?」「ノーコメント」で通している。

野党は同じ穴の貉で歯切れが悪いどころか党内で揉め始めて何もできないでいる。


中近東は日本から見るとイスラム教徒同士が闘っているみたいに見える。

中国は民族紛争と農民騒乱が激化した感じであの辺りでは歴史的に見て国の末期症状だな、黄巾の乱とか太平天国の乱と同じだろう。

中南米では麻薬マフィアが暴れている感じだ。

先進諸国は口では紛争について以前のように非難しているけど腰が引けている。

自国のことで手いっぱいで国外の紛争に手を出す余裕はないのだ。

難民支援や軍事支援で物資は供給するけど紛争の解決は自分たちでお願いしますと言ったスタンスだ。


日本政府は中国周辺の国々に「お互いに手を結びましょう」と言って連携を呼びかけている。

中国共産党政府は「我が国に対する敵対行為だ」とか非難しているが、日本政府は「中国に敵対する気はない」「中国共産党幹部の身内も海外に逃げ出しているではないか」「周辺国への難民も増えているぞ。それに対処するのは当然の権利だ」と言って中国周辺国との連携は進めている。

どこも中国の紛争には巻き込まれたくはないので中国を非難はしないが日本を非難する国も少ない。




夏休みの終わり頃、アメリカでキリスト教原理主義者の一派が神様と繋がるのを拒否して「悪魔と繋がるのを止めろ!」と言って集会を開いて人を集めてデモをして、神様を天使と讃える人たちと衝突した。

この件で一般的に承知された事は、

①神様と繋がるのを止めると神様から死んだと判断されて個人情報が公開されてしまうこと。

②神様と繋がるのを止めると全てを仲間ではないと感じるようになる人がいること。

③神様と繋がるのを止めると他人が神様と繋がっているかどうかが分からなくなること。

④同じ神様と繋がっていないと群れの仲間ではないと感じとられるようになること。

⑤同じ神様と繋がっていないと人が事実と異なることを言い合っても互いに嘘と感じとれなくなること。

⑥神様と繋がるの止めても後からまた繋がることが出来ること。

とまあいろいろあった。

いろいろ分かったのはデモをした人々の中に神様との繋がりを止めなかった人たちがたくさん混じっていたからだ。

初期メンバーは全員が全ての神様との繋がりを止めていたが途中で加わった人の中には犬の神様との繋がりを止めれなかった人がいて後に入るほど緩くなり、最後に入った人たちは神様との繋がりを止めていなかった。

初期メンバーは全然それに気が付いていなくて最後に入った人たちは神様との繋がりについて研究していた人たちと面白がっていた人たちだ。

繋がっていれば「繋がりを止めました」と言われても嘘だと分かるけど繋がっているのが発覚するから嘘だと指摘しない、お互い様だしね。

それに犬の神様と繋がった人同士だと互いを仲間だと感じるんだ、これはどの神様でも同じだ。

最後の方は人の神様との繋がりを止めればいいんだみたいな人が増えていった。

初期メンバーは真剣に考えて集会を開いたかもしれないがデモを行う頃にはお祭り気分の人も交じっていてデモの時の衝突も後に加わった人ほど腰が引けていて大したことがなかった。

あの日から日も浅いし、急造過ぎて上手く行かなかったのだろう。

デモの後で個人情報が公開されているのを知ってほとんどの人は神様と繋がり直した。

初期メンバーの中の数人は全ての神様との繋がりを止めてから仲間と思える人がいなくなって主キリスト以外は信じていなかった。

この時点でイエスが普通に人だったことは神様情報で確認できていて彼らの一部はこれが気に入らなかったみたいだ。

ヤハウェ、アッラーとかの創造主はいるともいないとも確認できていないからあとは信仰上の問題だ。

神様との繋がりを拒否する者は数名残ったが俺は『彼らは神様との繋がりによって人と繋がることよりも信仰を選んだ、信念があるとも言えるけど聖人でもない限り自分以外を信じていない』と感じていた。

日本では神様と繋がったというのが一般的だけど海外では信仰によっていろいろ言い方が違う。

天使とか精霊とか仏様とかご先祖様とか日本人が聞くとまぁどれでも有りかなと思うけど海外では言い方を変えるとムッとする人もいるらしい。




夏休みの最終日、俺はこの日までネットで見つけた魔法を試してみたり、新しい魔法を考えて楽しく過ごしていた。

新しい魔法といっても既存の魔法を改良して自分に使い易くしたりするのがほとんどだけど。

宿題は教科書や参考書を読むのは授業が始まってからでいいやと思い、担任に提出するレポートを小神様の情報を使って適当に纏めて最終日に書いた。

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