薬師の少年
少年は汗が滲む額を袖で拭う
「うぅ!まだ町着かないのぉ」
弱音を吐きつつ歩いていると目の前に二つの人影をみつける
何故、こんな獣道で突っ立っているのか不思議に思い首を傾げる
近付いていくと二つの人影の全貌が露になる
二人の男だ
さて、皆様何となくまたははっきりとお分かりだろう
荊と菊杜だ
「あのぉ、こんなところで一体何を…?」
少年は二人に声をかけると、二人が振り向いた
「…商人?」
荊が眉を潜め、呟く
それもそうだ。少年は少しばかりボロいマントを羽織り、背中には少年の身体に似合わない程に大きなリュックを背負っているのだから
しかし、少年は首を横に振る
「いいえ、違います。こんなんでも一応ですが薬師を生業としているんです」
にっこりと無垢な笑みを浮かべる少年に対し、まるで女神の如く優しい笑みを浮かべる菊杜
「クスッ、旅のお連れはいないのかい?小さな薬師さん」
優しい音色で問いかける菊杜
その言葉に苦笑し、頭を掻く少年
「えへへ…途中まではいたんですが…」
しゅんと目に見える程に落ち込む少年
「僕の種族が原因で別れちゃいまして」
「種族?」
少年の言葉に間髪いれずに今までの黙っていた荊が口を開く
そのことに驚きつつ、少し顔をしかめるが胃を決死、口を開く少年
「―――エルフなんです」
「エルフ?」
聞き取れた部分を復唱する菊杜
すると少年は勢いよく顔を上げる、その際に被っていたフードが脱げてしまう
「ダークエルフなんです!」
ふわり、少年の肩ぐらいまである銀色の神が靡く
少年の肌は青白く、どこか不気味さを醸し出す
そしてエルフ俗特有の尖った耳、美しい美貌を持ち、少女めいた印象を受ける
少年の見開かれたルビーのような瞳は潤んでいる
そこには特にツッコミを入れずに荊は、左の手袋を外し、手の甲―に輝く黒き印―を少年に見せる
「ぴゃっ」
「罪深きエルフ族がどうした、どうだっていいじゃないか。俺は魔王候補に選ばれた人間だ、お前は俺を忌み嫌い嫌悪するか?」
冷たく鋭い眼差しが少年を射ぬく
少年は我に戻り、唾液を飲み下し、口を開く
「い、いいいいえ!」
凄く吃りつつ、荊の言葉を否定する
少年の吃り具合に苦笑する二人