2.
「はてさて果たして、あのじゃんけんに意味はあったのだろうか」
「意味はなくとも価値があったのかもしれない」
「分かったような事を言っても駄目」
「うるさい。理屈を捏ねるな椅子のくせに」
「ハローハロー、こちら椅子。最近のチェアーはハイクオリティなんで、日本語は喋るわ屁理屈は捏ねるわで大変です。座り心地は如何ですか」
「もう少し静かなら満足だ。ミュート機能の実装を提案しよう」
「黙っていたら寂しいじゃないか。んー、そうだ。ここはひとつハグ機能のテストにもご協力願おう」
「わっ!?」
「オレの座り心地の保障は致しませんが、君の抱き心地には品質保証書を進呈したいと思います」
「とにかく、私の許可を得ずに行動するな、変態」
「嫌?」
「嫌では、ないけど」
「ところで君何キロ? 痛い抓るなごめんなさいわりと本気で痛いです」
「失礼な事を言うからだ」
「いやだってだな、オレ同じ重さの石抱かされたら、5秒で音を上げて自白する自信があるぞ。でも君なら平気。不思議だよな」
「ばか」
「あまり褒めるな」
「微塵も褒めてない。分からないのは馬鹿だからか」
「はっはっは」
「納得した。馬鹿だからだな」
「馬鹿を馬鹿だと侮るな。能ある馬鹿は爪を隠してる」
「それはご立派な事で。それで、一体どんな爪を隠しているんだ?」
「実はだな」
「実は?」
「実はこのままキスできるくらい高性能だったりする。──どうする?」
「……一々訊くな、ばか」