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エステルドバロニア  作者: 百黒
3章 王国と公国
46/93

22 承

.






 エステルドバロニアが送った兵卒の部隊は、巨大な魔物相手に一歩も引かず優勢を保っていた。

 優勢とは言うが、リフェリス王国騎士団の作った優勢とは中身が違う。

 スプリガンの強化と回復。ゴブリンの弱体。

 その二つのサポートが盤石なだけで、弱小モンスターのコボルトが奮闘できているのだ。

 レベルで表すのなら王国騎士団が15〜27、公国の魔物が24〜32、エステルドバロニアの軍は18〜25。

 実は王国とエステルドバロニアに差は殆どない。

 当然負傷もあり戦線を離脱する者もいる。レベル差が5もあれば強敵となり、10もあると単体では絶望的な差なのだ。

 それで死者が出ることなく大きな損害を受けずに危うげなく戦えているのは、偏に戦術と手段の幅が格段に違うからだ。


 ゴブリンの弓兵が公国軍を少しづつ半円で包むようにゆっくりと左右に陣を広げながら曲射をし続ける。

 脅威となる広範囲攻撃を行うブラムリザードやヴァルクロプスを倒してしまえばスプリガンへの壁になる必要性がなくなるからだ。

 スプリガンは停止した位置から動くことはなく、魔力の全てを補助と回復に使い切っては魔力薬を服用してまた役目に戻る。

 少しでも戦果を得ようと欲を出すことは一切せず、忠実に任務を遂行するだけなのは、恐らくどこの世界の軍勢よりも統制された動きだろう。

 そして、攻撃の要となるコボルトはといえば――


「わふっ! わふっ!」

「くぅん、わっふ!」


 可愛らしい小犬の鳴き声で意思疎通を行っているが、繰り広げる光景は苛烈だ。

 屈強な体躯を誇るランク3から4の魔物相手にランク1のコモンが挑むなど、ゲーム時代でも最初期の掘っ立て小屋時代でしかしない。

 自然と手に入る魔物が増えれば必然的にランクも上がっていき、一ヶ月もプレイすればランク4で軍を埋められるのだから。

 最終的には肥やしになるキャラなどほんの数秒肉壁になるだけの、そんな魔物たちの奮闘。


「ニ゛ィィィィッ!」


  捻れた声帯から絞り出したようなエンヴィーキャットが、【牛頭鬼】と戦っていた一匹に横合いから食らいついた。

 ずぶりと深く食い込んだカエシのついた牙が内臓にまで届く。

 言葉にできない激痛が全身を駆け巡るが、喉奥から血を吐くアッシュのコボルトは声一つ上げずに大きな人に似た猫の顔を睨みつけ、動揺することなく血と油でギラついたロングソードを眼球へと突き立てた。

 ぐりぐりと何度も捩じりながら脳にまで到達させると、四肢をもつれさせてエンヴィーキャットが転げるように倒れる。

 意識が飛びそうな痛みだが、コボルトは口を一文字に結んでゆっくり大顎を力任せに開いた。


「フーッ、フーッ、フーッ!」


 傷口を削ぎ落とされる感覚に毛が逆立つ。

 明らかな致命傷で、普通なら動けないだろう。

 だが、雑兵と蔑まれる子犬は脇から多量の血を流しながら抜け出すと、剣を杖にして立ち上がり、どころかよたつきながらも敵陣へ歩き出した。


 恐れはない。

 王の軍勢として栄えある戦の矛となるのは命を擲つ名誉なのだ。

 怖れはない。

 仲間だからではなく同じ国の兵だから信頼しているのだ。


 膝が崩れ落ちそうになった瞬間、全身を淡い緑の暖かな光が包み込んだ。

 それと同時に見る見る傷が回復していき、満身創痍だった肉体を修復していく。

 助かったとも思わなければ、ありがとうとも思わない。


 ――ああ、これでまたあの御方の剣となって戦える。


 狂気じみた盲信と執着と信仰こそが、画面越しでは決して知ることのできない命の姿だろう。

 心の何処かで理解はしているが、彼らの愛すべき寄る辺に相応しい感情はそれ以外に持ち合わせていない。

 故に、神にも等しい偉大なる先導者を、魔物は誰もが畏怖し崇拝するのだ。

 久しい戦の空気に酔いしれる魔物たちは高らかに声を上げて高揚した感情をそれぞれの言語で吐き出し続ける。



 ――偉大なる我らが王に勝利を、と。




 それを理解できず眺める騎士の姿を捉えたウィンドウは高い位置で縮小されている。

 全てを俯瞰する男は、事細かに敵ユニットへの適切な対処をリストから選択し、指示を出し終えた指先は力なく下された。


「予想通りではあったが……」


 その声には落胆が僅かに込められている。

 玉座の間にて一部始終をマップウィンドウで確認していたカロンは、王国軍の不甲斐なさにも公国軍の纏まりのなさにも呆れていた。


「こんなもの……」


 リアルな戦争を体験したことのない一般人が戦争のいろはを口にするのはお門違いかもしれないが、それでもカロンはどうしても理解できなかった。

 かたや能力に物を言わせた物量の戦い方で、かたや魔術頼みの無策の衝突。

 対策を取ればコボルトでさえ勝ててしまうのは損害が少なく済む点で見ればありがたいのだが、プレイヤーとして立ったカロンにはどうしても物足りなさを感じてしまった。


「あのヴァルクロプスとかブラムリザードを突っ込ませて砲台にするとか。真正面からアホみたいにぶつかって勝てると本気で大公は思ってたのか? いくらなんでも馬鹿にしすぎだろ。

 いや、あの騎士団の様子じゃそれでも楽勝だったのか……。探査魔術は狭いし攻撃と防御に傾倒し過ぎて白兵要員放置だもんな。あれだけ無策じゃ勇者頼みでも厳しいに決まってるってのに」


 杜撰な、子供騙しのような戦争はカロンが今まで経験してきた画面の中の戦争にさえ劣る。

 騎士団のレベルは14〜25。公国は22〜34。しかしエステルドバロニアは16〜24と大きな差もない。

 しかし、手段の多さで圧倒できるのだ。

 仮に怪鳥の強襲を受けていたとしても容易に発見して早々に対処できていただろう。


 この程度の魔法は少し訓練するだけで誰でも使えるし、この程度の弓スキルはそこそこ使わせれば覚えられる。

 騎士と言う役職に拘りを見せる王国の様子を見るからにはどちらにも重要性を感じていないように思えた。


「この認識の違いが異世界だからなのかも調べた方がいいのかね。覚えられないのか覚えてないのかも調べたいし……おっと」


 コボルトの体力がイエローになっているのに気付き、3列×3体ユニットを配備できる小隊に回復を指示すると、すぐさま詠唱をキャンセルして9体のスプリガンが初級の回復魔術を飛ばした。

 ウィンドウを見れば、脇に深い傷を負わされながら戦い続けるコボルトが魔法によって回復するのが見えた。

 おびただしい血が溢れる傷を抑えながら戦っていたのに、魔法で治されると何事もなかったかのように活発に剣を振るい始める様子は狂気じみていた。

 

「負傷、はしてるのか。体力がゼロになるまで戦うのがゲームだけど現実の場合はそうもいかない……当たり前だよな。生きてるんだもんな」


 子供のようにはしゃぐ真似はしないが、興味深いことは幾つも思い浮かんだ。

 しかし、映し出される本当を前にして上滑りした言葉しか出てこない。

 ゲームじゃない。だからこそ知るべきことはまだ山ほどある。

 特に戦闘システムに関してはなるべく早急に解明しておきたい。


 その考えは、惨状を前にして思うには心無いものと言うのだろうか。



「カロン?」


 見守っていた梔子姫に声をかけられて、彼女がいることを思い出したカロンは素の自分を隠すように思い耽った表情を無機質に覆った。

 その姿に、狐は尾を床につけて寂しげに笑いかけた。


「なんだ?」

「いや……どんな様子なのかと思ってね。ほら、わざと新兵ばかり集めていたじゃないか」

「色々と調べたいことがあったからな」

「へえ、例えば?」

「レベルが上がるのかとか、かな」

「レベル……キミがよく口にするボクらの力の指標だよね」


 それも知っているのかと感心しながら、カロンはマップを確認したまま続ける。


「ああ。この世界でも経験を積めば強くなれるのかは調べておくべきだからな」

「なるほど」

「今まで培ってきた戦法が通用するかも調べたかったが」

「ふふ、弱くて話にならないかい?」

「……ある程度の成果は上げたと言っておく」


 表情を曇らせたのを見て、梔子姫はすぐに話題の先を逸らした。


「ところで、他の戦場はどうなんだい? エレミヤは小競り合いの収束に出したんだろう?」

「ああ。エレミヤは()()()()()()()任せているから問題ないだろう」


 一応確認するためにマップを切り替えれば、凄まじい速度で移動するワーキャットの軍勢が確認出来る。

 公国の魔物を片手間に狩り、広い草原を大挙して疾走する姿はまるで激流だ。

 人間同士の争いには手を出すなと命じてはある。

 ただ、ど真ん中を横切りながら魔物だけ殺して去っていくのは予想外だったが。

 なんにせよ、命令通りの仕事をこなしているのは間違いないので心配するようなことはなかった。


「ただ、アルバートがな……」


 そう。

 それが一番謎なのだ。

 あの真祖にした命令は会談後のアレが最後であり、それをどう解釈しているのかまったくもって分からない。

 国に不利益を生む真似はさすがにしないと思いたい。ただ、それが自分の意思に沿うのかとなると話は別だ。

 カロンの前に現れた映像には、広く暗い室内で蠢く繭に包まれた男と燦然と輝く赤き炎を湛えた勇者2人が向かい合っていた。

 音声は聞こえていないが、動きだけで言い争っているのが分かる。ただその場にアルバートの姿はない。

 マップ上に映る人の名前リストを見れば確かにそこにいるし、位置もネームポップで確認できるが姿はどうやっても見えなかった。


 盗み聞きでもしているのか?


 主戦場の戦況を把握しながら時折目を向けるが動きはなく、勇者と悪党の戦いが始まろうとしている。

 どうすればいいのか分からないが、一先ず久方ぶりの戦争を勝たなくてはとその映像を斜に寄せた。


 それと同時にアルバートが動き出したことに気付くことはなく、知るのはこの戦争で最も凶悪な真祖が全てを終えてからであった。






 それは、人の世に顕現した伏魔殿を彷彿とさせた。

 蠱毒と化して全ての命が消え失せた公国の街を、ヴァレイルとドグマは無言で歩いていく。

 早贄のように晒され、壁に貼り付けられ、大公の屋敷を彩るように飾られる、腐乱したナニカ。

 道端には食い散らかしただけでは飽き足らず、いたずらに弄ばれたモノが無造作に転がっていた。


 いつからだ。


 多くの住民がいたはずだ。

 大公が変わったとて、神都との交流があるお陰で潤っていたはずだ。

 最後にドグマが見た時、今後を不安がりながらも笑う顔が沢山あったのだ。


 それが、こんなにも変わり果てるものなのか。


 彼らは無言で屋敷を目指す。

 すぐそばで起きていた惨劇の舞台に、うまく向き合えぬまま。




 辿り着いたのは、緞帳の合間から細く差し込む陽光でぼんやりと照らされた暗い部屋だ。

 以前は少しばかり派手な室内だったが、今は荒廃して濁った空気に満ちており、埃まみれの調度品はいつから放置されているのか見当もつかない。

 呼吸するたびに肺を満たす澱み。

 吐き気すら誘発する劣悪な環境の中、2人の勇者はその瞳に赤い魔力の炎を燃やして眼前の悪へ怒りを向けていた。


「やあやあ、ご無沙汰ですね先生。それに団長様までお越しくださるとは」


 大きな黒い繭の中央に座った上半身裸の痩身な男は、世間話でもするような気楽さで弱々しい声を発した。

 鶏肋のように干からびた体が身じろぎするのに合わせて触手が優しく受け止めては愛おしげに体を撫で回している。

 応えるように男は捻れた綱のような手を撫でると、髑髏のように痩けた顔を綻ばせた。


「お茶の用意もできないのは大変申し訳ありません。でも気にしなくていいですよね? だって私たちは今戦争しているんですから」

「クランバード・ラドル」

「はい、どうしましたか先生」


 心底不思議そうな声が、ぎりっと強く歯を噛み締めたヴァレイル・オーダーの癇に触れた。


「貴様は、何も思わんのか」

「はぁ、何もですか……戦争を仕掛けたのはまあ少し悪いなとは思いますけどね。でもこちらにも都合があるものでして」

「そんなことを言っておるのではない! この国の惨状のことを聞いているのだ! 貴様は……貴様は命をなんだと思っておる!」


 少し話し合えるのならと、僅かでも期待を抱いていた。

 しかしこの街の、今まで秘匿されていた全貌を見て湧き上がる怒りが甘い考えを唾棄した。


「誰一人生きている者がおらん! 街中に死骸が転がって腐り果てている! それも老若男女問わずな!」


 杖をとぼけた顔に向けて怒声を発するヴァレイルの瞳から一筋の涙が零れた。


 静まり返った国の至る所に残された痕跡の数々。

 今まで放置してきた自分たちの愚かさにも反吐が出そうで、何よりもこの男を世に解き放ったことへの後悔で気が狂いそうになる。

 そんなヴァレイルの心情を知ってか知らずか、クランバードは鼻で笑いながら忌避することもなく元教師の弱い心を嘲笑った。

 そんなものを、この男はとうに捨て去っているのだから。 


「魔物の養殖場にしてただけですよ。餌なんてあんなものでしょう?」

「えさ……?」


 空虚な反響に、痩身を大きく広げてニンマリと笑った。


「大変でしたよ。いっつも目を光らせられたら材料も手に入らないんですから。でも、あの御方のお陰でこれだけ強い軍ができたんです。すごいでしょう! もう誰にも馬鹿になんてされないくらい立派な軍を作ったんですよ! 役立たずだって言われ続けたこの私が! もう誰にも止められないくらい強くなったんですよ!」


 愕然とするヴァレイルを無視して熱が入り、豹変したように虹彩の消えた目を見開いて叫ぶクランバード。

 拘泥たる思いを全て吐き出すように、繭から立ち上がって両手を広げ、まるで賞賛しろとでも言いたげに、狂った抑揚で吐き出し続ける。


「もう私はあの頃とは違う! 悍ましい能力だと蔑まれることも、資格がないと甚振られることもないんだ! 私は先生にだって負けたりしない! 私こそが本当の勇者だ! 先生、貴方が私に教えたんじゃないですか! 何者にも屈さない強さこそが勇者に至れるんだって!」


 魔物を操れる力など、勇者には相応しくない。

 魔を払い人の世に平和を齎すことこそが勇者の使命だ。

 家を放逐され、王国にも見捨てられ、歪んで壊れたこの男が縋ったのは、気休めにでもなってほしいと思いヴァレイルが教えた言葉だった。

 力を手に入れて自分を誇示するように、邪魔なものを殺し尽くして手に入れた。

 とどのつまりは、強くなければ愚者でしかないと悟っただけの話だ。


「ただ、目が潰されたせいで王国の陥落する姿を見られないのが残念ですけれど」


 クランバードの感情に呼応して黒い触手が鎌首をもたげていく。

 原油のような闇を滴らせて繭を形作っていた触手が部屋中を蠢きながら解かれていき、のこのこと訪れた勇者たちに照準を合わせた。


「ヴァレイル殿、もう」

「……分かっておる。こんな時に己の過ちを悔いてもいられんことくらい」


 今まで沈黙を保っていたドグマがヴァレイルの肩にそっと手を置くと、震えていた唇を開いて深呼吸をした。

 これは自分の知る、臆病で卑屈だったクランバード・ラドルではない。

 闇に魅了されて堕落した怪物だ。


「俺から聞きたいことが一つある」

「おお、騎士団長様から私に質問とは、面白いことがあるものですね」

「貴様は、魔王の手先か?」


 その問いで、初めてクランバードから笑みが消えた。


「へえ? もう遥か昔に英雄たちの手で殺された存在の関与をお疑いですか? 正気の沙汰じゃありませんね」

「それはこちらの台詞だ」

「ええ、そうですとも。遥か遥か北の地にて魔王はお目覚めになりました。人外魔境を再びこの世に齎さんと世界にその手を広げておられます。無論私もその一人。お陰でこの魅了の力を高みへと引き上げ、素晴らしい配下まで与えてくださった。感謝してもしきれません」

「随分とよく喋るな。口止めもできない魔王なら大した脅威でもなさそうだ」

「は、は。その必要がないからに決まっているでしょう? 通信魔術は使えないようにしていますし、なによりこれから死ぬ人に聞かせたところで誰が困ると?」


 ヘラヘラした態度のクランバードだが、その言葉に虚勢も虚偽もない。

 事実として、この【昏き黒の盲獣】はこの2人程度容易く殺せる。

 但し、その力を十全に発揮できるかは全てクランバード・ラドルにかかっている。

 凶悪な魔物だと2人も肌で感じ取っているが、同時にクランバードに従っている素振りを見て僅かな勝機を感じてもいた。

 なんとしてもこの男を殺さねばならない。

 国のために。

 そして世界のために。

 魔王復活の情報を広めなければ。


「では、そろそろ始めましょう。これ以上の問答は無意味でしょうから」


 ドグマが背中から引き抜いた大剣を構え、応じてヴァレイルも杖を構えた。

 ただの国同士の戦ではなく、世界にも影響を及ぼしかねない災厄の序章。


 決して敗北の許されない戦いの火蓋が――




「おや、もう終わりかい? まだまだ聞きたいことがあったのですが」




 突然の、睨み合う両者とは違う場所から安穏とした老人の声が割って入ってきた。

 緊迫した空気を切り裂いた主の方へと顔が向くが、そこに姿はない。


「……誰ですか?」


 ただ、そこから声が聞こえてきたのは間違いない。

 臨戦態勢を崩さないまま硬直する3人。

 その様子を愉快だと喉を鳴らして笑う声とともに、緞帳の影がゆっくりと解かれた。


 現れたのは、気配の希薄な礼服姿の老人だった。

 背は低いがピンとしており、街で出会えば品の漂う貴族と思わなくもない。

 だが、この場の誰にも察知されずにいたような老人が只者のはずがない。

 ドグマが横目でクランバードを確認すると、向こうも明らかな困惑と敵対心を老人に向けていた。

 つまり、全くの第三者が乱入してきたことになる。


 老人は襟元を正すと、深く礼をした。


「私、エステルドバロニアが第3団の団長を務めております。アルバートと申します。短い時間ですが、どうぞお見知りおきを」


 上げた顔には穏やかな微笑みが湛えられていた。

 差した影から覗く無数の眼球は幻だと錯覚させるほどに、穏やかな笑みが。





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