ロケット鉛筆
二〇二五年。日本だけでなく世界中である遊び が流行していた。その名は「ロケット鉛筆」。一人一つの持ち鉛筆があり、順番を決めその順番通りに鉛筆を投げる。最後まで順番が回った時一番遠くに鉛筆を投げていた人が勝利となる極めてレトロチックな遊びだ。だが舐めてはいけない。この 遊びは世界大会も開催され、次のオリンピックで は競技として採用されるほど今最も勢いのある遊び。いや、競技なのである。その「ロケット鉛筆」の起源は今から約二四〇年前の中世フランス。歴史の教科書ではお馴染みのルイ16世。そしてそ の妻マリー・アントワネットが栄華を誇った時代である。
―中世 フランス―
「国王様!」
ベルサイユ宮殿内にある豪勢な扉を蹴り飛ばしながら、周囲の空気が張り裂けん程の声量で現国王であるルイ16世をある男が呼んだ。この男の名はクロンディア・パトロ・エリザベート。地方の中流貴族だがルイ16世にその資質を認められ彼と直接謁見する権利を与えられた。
「あらまぁ、クロー。血相を変えて......どうしたの かしら?」
玉座の隣にある椅子に座っているのはルイ16世 の正妻。オーストリアからフランスへ嫁いできたマリー・アントワネットだ。とても奇抜......何とも言えない髪型をしており、どこか東洋の国からの貿易品であろう扇子のようなものを口元に当てながらにこやかに微笑んでいる。
「騒々しいぞクロ―」
だらしなく玉座に座っているのはフランスを統治している現国王のルイ16世。急いで謁見の間に入ってきたクロンディアを見るや否や冷たく言い放つ。
「して。例の件の話であろうな」
「もちろんでございます」
地面に跪き地面を見ながらクロンディアは続け る。
「この度はとある提案をしに参りました」
そういうと服の中から巻物のようなものを取り出し ルイ16世に差し出す。彼は使用人にそれを取りに行かせ、自身の手元に渡るとそれを広げて眺めた。
「ふむふむ......この宮殿で催し物をすると」
「はい。中央から地方に至るまでのすべての貴族をお招きし、この宮殿内で会食をひらくのです」
「なるほど......しかし、この紙には催し物を行うとしか書かれていないが、一体なにをするつもりなのだ」
紙をくるくると丸めて隣のマリー・アントワネットへと渡す。彼女は紙を開いてそれに目を通すと上品 に微笑んだ。
「まぁ、面白そうだこと」
「情報漏洩防止のため記載を断念させていただきました」
クロンディアはそう告げた。
「なるほどな。朕にもそれは告げられぬのか」
「いいえ、貴方様はこの催しの主催者。おふたがたにはお先に内容をお教えするつもりでございます」
そういうとクロンディアは立ち上がり、ルイ16世に耳打ちをした。
「矢投げ?」
「はい」
「聞いたこともないな。面白いのか?」
「私が新しく作り出したものですので、私もやったことはありません。ですから、確証はありません」
ルイ16世は少し眉をひそめて顔を曇らせる。
「あらまぁいいじゃありませんの。新しい遊びなん て面白くないわけないわ」
その曇った顔をマリー・アントワネットが晴らせ た。
「うむ、いいだろう。期待しているぞ、クロンディア・ パトロ・エリザベート」
「はっ」
かかとをそろえ姿勢を整えて返事したクロンディアは一礼したのち、謁見の間から退出した。それから数ヶ月が経ち、各地の貴族たちはおめかしをしてベルサイユ宮殿の大広間に集められ た。端のほうに並べられている食事を楽しんでい る者もいれば、ワインを片手に地方の有力な貴族たちと楽しい会話をしている者もいる。
「おぉ。これはこれは、クロンディア・パトロ・エリザ ベート殿」
客をかき分けながら別室へ向かおうとしていたクロンディアにとある貴族が話しかけた。
「よくぞ私のことをご存じで」
「それは有名ですぞ。なにせたかが地方の中流 貴族がこの中央に。ましては、国王様にお目にか かってるのですから」
声高らかに、そして皮肉交じりに告げる。
「一体どんな手段を使ったのですか」
歩み寄ってきたかと思うといきなり耳元でそう呟 かれた。
「特に。貴方と違って私には野心などありません から。国王様もそこを見透かしていられるのでしょ う。では失礼いたします」
そう言って、その場から離れる。後ろからグラスを 地面に叩きつけたような金属の鈍い音が響いたが気にせず別室へ歩いて行った。
「国王様。時間でございます」
「そんな時間か」
椅子から立ち上がると妻とともに部屋から出て 行った。壁に蝋燭が数本あるだけの薄暗い通路を抜けて大広間の二階のバルコニーのようにせ せり出ている空間に据えられている玉座に座った ルイ16世とマリー・アントワネットに各地の貴族たちは目が釘付けになった。
「遠路はるばるようこそお越しくださいました」
いや実際はその隣に立っている男クロンディア・ パトロ・エリザベートを見ていた。時のフランスの 最高権力者の横に立つとは。ましてや彼は地方 の中流貴族である。貴族たちはざわざわと近くに いるものと話したり、冷たい態度で冷たい言葉を放ったりしている。こんな状況には慣れっこなクロンディアは何事もなかったかのように続ける。
「宴もたけなわですが、そろそろ本題へ入ろうと思 います」
そう言って服のポケットからくるくるとまかれた紙 を取り出しそれを読み上げ。
「これから貴人、ご婦人方に矢投げなるものを行っていただきます。ルールは簡単、一人一本矢を持ちそれを順番に投げていく。最後まで順が回った時一番遠くへ矢を投げていた 者の勝利となります」
クロンディアがルールを読み上げている中でも貴 族たちは騒々しいばかりであった。
「つかぬことをお聞きいたします。ご無礼のほどお許しください」
あるところで一人の貴族が挙手をしながら申し上 げる。
「昨今の情勢は目も当てられない状況にあります。度重なる飢饉、重すぎる税。果たして民衆はこの状況を見て怒りを抑えていられるのでしょうか。民のことを第一に考えるのが王たるもの、国たるものではないのですか? 民衆の中にはパンすらもまともに食べられぬ者もいるというのに ......」
「あらまぁ......民はそのような状況に」
「中央で構えているあなた方はそのような状況を知らないで当然だアントワネット様」
膝の上で持っていた扇子をバッと開くとそれを口 元に充てて、さわやかな笑顔を浮かべながらマ リー・アントワネットは言う。
「あら、パンがないならケーキを食べればいいじゃない? パンを買うお金はなくともケーキを買うお金はあるでしょう? なにせお菓子ですもの」
貴族たちの間で台風が来たかのようにざわざわ で吹き荒れた。パンの代わりにケーキを食べればよい。それは貧困層に対しての宣戦布告ととらえられたからだ。ただ、マリー・アントワネットに悪意などなかった。なぜなら、彼女はケーキがパンよりも高価なものだと知らなかったからだ。天然なのか、図ったのか、確実に前者なのだか、ある種の爆弾を投下してしまったこの惨劇にクロンディアは頭を抱えることしかできなかった。彼女はというとやってやったぜと言わんばかりのどや顔をかましている。ざわつきのメリーゴーランドに乗ってしまった彼らを落ち着かせるためにクロンディア は口を開こうとした。が、ここで自分が口を挟んでもかえって逆効果だと考え、この状況の打開策を打てないでいた。
「静粛に」
台風の目となったのは先ほどまで玉座に座っていたルイ16世だった。
「騒々しいぞ。話が進まん」
「し、しかし国王様」
先ほどの貴族が何かを言いたそうな不満げな顔をする。
「先ほどの発言は申し訳なかった。皆々も知っているように彼女はオーストリアから嫁いできたのだ。フランスの国勢学んでいるさなかでな」
ルイ16世からの直々の謝罪では誰も反抗する気にはならなかった。 その後、見事現場が鎮静し、無事矢投げ大会が行われた。性別によって場所が分けられ、投げられた矢が地面にいくつか突き刺さっている。初めての催しのため審査員として一階に降りていた クロンディアはその現場を間近で眺めていた。地面に刺さった矢と投げた当人との距離を測定し、 記録用紙に記録していた彼の足元に矢が一本転がってきた。
「あら、ごめんなさい」
紫色のドレスに身を包んだ貴婦人が駆け寄って 一言を言う。クロンディアは矢を拾い上げると、矢じりを相手側へ向けてそれを渡した。
「ありがとう。確かあなたはクロンディア・パトロ・エ リザベートよね?」
「えぇ」
クロンディアをまじまじと見つめるこの貴婦人が頭 を動かすとそれに応じてモンブランのように上へ そそり立った髪の毛とそれにちょこんと乗せられている帽子がグラグラと揺れる。奇天烈に見えるこのなりはマリー・アントワネットを発端にフランス 全土の貴族に広まっている。すごいやらなんやらとクロンディアがひとりでに感心しているとその貴婦人は続けて話をしてきた。
「随分とまぁ、厄介な貧乏くじを引いたものね」
「慣れていますよ。あの程度のことなど」
これは先ほどのちょっとした騒動のことを指してい た。クロンディアは生まれながらの身分と現在の 立ち位置の差から多くの人々から忌み嫌われている。彼からしてみればこの役に就いてからいつ ものように起こっているので対して気にしなくなっていた。
「誰がなっていたとしても、同じことだったでしょうし。結局は誰かがそれを引き受けなくてはいけな いでしょう」
遠くのほうで歓声が上がる。どうやら矢を壁に突 き刺さるほど遠くへ飛ばした者が現れたようだ。
「今のフランスでは王政に不満を持つ者の方が多 いと聞きますし......」
先ほどの記録を測定するために歩き出したクロン ディアに 「尚更なぜこの催しを?」 と貴婦人が問いかけた。
「尚更......だからです」
貴婦人はあっけにとられた顔をすると深くため息 をついた。
「何を言っているかよくわからないけどまぁいい わ。私は常に温かい食事を作らせているわよ」
「家がある捨て猫などいるのでしょうか」
クロンディアは振り返るとそう返答した。 無事、全員矢を投げ終え結果発表へ移った。女性の部では最高記録が十メートル、男性の部では測定不能となった。壁に矢を突き刺した者は残念ながら最高記録とはならかった。あの者の後に窓を突き破った者がおり、やむなしといった状況 になってしまった。最初は皆、文句を言っていたがいざやってみたら満足そうな顔をしている。そのまま王城の扉は解放され、それぞれ馬車に乗り込み自身の領土へ帰っていった。
「クロ―よ」
公職用の服から普段来ているほんの少しラフな格好に着替えながら、扉の所に立っていたクロン ディアに話しかける。
「何用で」
「クローは何を見ていた」
何を見ていた、という発言に至ったのはおそらく今回の催しの最中のクロンディアの態度を見ていた からだろう。
「何をとは......無論、矢投げを」
「あぁ、すまない。表現を変えよう。クローはどこか 遠くを見ている目をしていたものでな」
クロンディアは下を向く。そしてどうしようもない笑みを浮かべる。やっぱかなわないな、と思いつ つ。
「さすが国王様。私の心中など手を取るように理 解できると」
「何かを考えている、ということまでしかわからんよ。だが、隠し事というのは如何なものだな」
冗談っぽく上気な声とともに少しだけおちゃらけて見せた。
「大変恐縮でした。ご無礼をお許しください」
クロンディアは膝をついて最大限の敬意を示して見せた。もちろんこれは冗談であるが。
「話してみよ」
ルイ16世は椅子に座って話を聞く姿勢になる。一 国の王にここまでさせる男がほかにいるのだろう か。
「昨今のフランス情勢に理解はおありでしょうか」
「無論」
たった一言で返すフランス国王。
「飢饉に、戦争。この国は今、決して豊かとは言い切れない現状にあります」
脳裏にあの貴族の言葉がよぎる。彼の言い分は正しい。この現状を知っているなら、一刻も早く手を打つべきだ。少なくとも貴族たちで集まって矢投げ大会などという催しをしている場合じゃないだろ う。
「そして国のツケを払うのはいつも庶民でござい ます」
今日の催しはあくまで過程にすぎない。
「私は庶民にこの矢投げを広めたい。そして、重い枷を少しの間だけでも忘れさせてあげたい。今回の催しはそのためのものです」
「要は民に矢投げを広めるため。その競技性を図 ろうとしたということだな」
「左様です」
空気が凍り付く。さすがに出しゃばりすぎたかと肝を冷やすクロンディア。
「いいではないか」
首を切られても仕方がないと思っていたクロンディアにとっては意外な返答だった。
「よろしい......のですか」
「朕は王である」
椅子から立ち上がって、召使に飲み物を取らせる。銀色のワイングラスに紫色のアルコール交じりの液体がとくとくと注がれる。
「この国は手足を動かすように操ることができる。 たった一言でな」
グラスをスワリングさせながら悲しそうに話す。
「だが、どうしても届かないところがある。自分の 背中を見れないように」
クロンディアはただ静かに聞くことしかできなかった。ルイ16世の気持ちは痛いほどよくわかる。少 し前まで地方で暮らしてきたクロンディアは政治の知識や実態、その苦労について毛が生える程度でしか知らなかった。だが、中央の実態を間近で見、聞き、知ったクロンディアは政治の難しさを実感した。自分の思い通りに民衆が動くわけではない。常に変則的な世界。クロンディアは最近になってそれを知ったが、ルイ16世はそれを物心つく頃から実感していたのだ。富も名声もあるはずなのに、どうしても思い通りにならないものがある のだ。
「だからこそ、やり切ってもらいたいのだ。民を想い続けてほしいのだ。クロンディア・パトロ・エリザ ベートよ」
もう一つワイングラスを取ると中にワインを入れクロンディアに差し出した。
「期待しているぞ」
「はい」
クロンディアはそれを受け取り、互いにワイングラ スを合わせると中の液体を一口で飲み干した。更 けた夜の空気はまだ流れてきていなかった。
―一七八四年 七月十四日―
この日もクロンディアは事務作業を行っていた。 ルイ16世との誓いを果たすため、矢投げを庶民 に広めるために着々と準備を進めてきた。今日も 平凡な日常が訪れると思っていた。午前十時ごろ バスティーユ監獄が民衆によって襲撃されたとい う情報が入り、宮殿内は騒然とした。
「国王様! このままでは」
「民の怒りがここまでとは......」
近衛兵含めあたりにいる人たちは皆顔を伏せてしまっている。民衆は度重なる王政の不満を爆発させ、長年研がれてきた鋭利な牙を剥いた。寄せ集められた牙は大波となって中央の、今目の前にいるルイ16世の首筋を掠めている。
「ご安心ください。兵を以ってこの乱を鎮めている ところです」
一人の貴族が言う。民衆の足元にも及ばない兵士の数で果たして太刀打ちできるものなのかクロンディアは疑問に思っていた。そして、ルイ16世の顔を見たところ同じように考えているようだ。
「国の内紛を抑えるためだけに兵を出すなんて、 近国にこれ見よがしに攻めてよろし、と言っているようなものよ。それを理解した上で話しているの かしら?」
隣に座っていた王妃、マリー・アントワネットが口 を開く。彼女の的確な指摘にその貴族は声をよど ませた。
「い、いえ......ですが、このまま民衆の暴徒を許してしまえば王政が倒れてしまいます。私は近国からの脅威よりもそちらを懸念したほうが良いかと......」
この貴族がいうことも間違っているわけではな い。クロンディアは右手に持っている矢投げについて記された本を強く握りしめた。何か有効打を打つ必要があるが、彼はそれを思いつくことができない。苦く感じる唾液を飲みながら唇を嚙み締 める。ほんのりと感じる血液の味を感じながら皆の意向を待つ。
「それでも尚、時間の問題だ」
しばらくの静寂を打ち破ったルイ16世の言葉はあたりの人を絶望へ突き落とすものだった。
「兵を向かわせようが、向かわせまいがそれは時間の問題。それほどまでに民衆の力は恐ろしく、 重責を与えてきた」
ルイ16世は力なく下を向く。
「すべては、報いなのかもな......」
「あなた......」
「だが、それはお前たちの責任ではない。今なら まだ間に合う。ここを離れて、どこか遠くへ行くんだ」
ルイ16世のこの言葉を聞いた皆はどこか後ろめたさを感じながらも、扉のほうへゆっくりと歩いて 行った。ただ一人の男を除いて。
「お前は行かないのか、クロー」
「私は国王様に見出されていなければ、ただの地方貴族で終わっていました。そのご恩を返さねばならないと思います」
三人とその隣に就いている二人の近衛兵のみになった広い部屋にクロンディアの声が響く。
「こういうところは律儀な男よ。いや、頭が固いというべきか......」
「どちらも、ですかね」
両手を顔の横に持ってきて少しおちゃらけて見せる。
「クローよ。お前は実に良い奴だ」
クロンディアが握っている本を見ながらフランス国王は言う。
「野心はなく、朕が唯一心を許せた貴族だ。お前 といた日々は楽しく、国王だということすら忘れさせてくれた」
「有難き幸せ。私にとっては国王様の気分を害さ ないかヒヤヒヤしておりましたが」
「だからこそ」
ルイ16世は立ち上がるとクロンディアの目の前まで歩いていき、彼の肩に手を置いた。
「お前まで連れて逝きたくない」
「国王様......」
「お前はここで死ぬような器の小さい男ではない。 お前の望みは前に聞いたぞ」
あの夜交わしたワイングラスのこと。あそこでクロ ンディアはある望みをルイ16世に告げていた。
「お前の望んでいた世界を見せてくれ。この世界 で唯一の、心を許した一人の友として」
肩をポンッと押してクロンディアを押し出した。
「ここを出ていけ。クロンディア・パトロ・エリザベー ト!」
「拒否します!」
クロンディアは必死に抵抗する。
「これは命令だ! お前は生きろ!」
ルイ16世は横にいた近衛兵に指示を出して、クロ ンディアを無理やり外へ連れ出そうとする。
「お前も逃げても構わんぞ」
玉座のもとに戻ったルイ16世がマリー・アントワ ネットに告げる。
「私は逃げないわ。一人は寂しいでしょう?」
「そうか......」
クロンディアは近衛兵に引きずられていく。
「嫌です! 国王様! 国王様!!」
振り向いたルイ16世の顔は悲しみ混じりの笑みを浮かべていた。目前に迫る死への恐怖。それとクロンディアの未来を望んだものから生じた......
フランス国王と王妃が処刑されてから数ヶ月。人々の間では革命のことは忘れ去られつつあった。 「ちょっと君たち」
流れるままにたどり着いた町で遊んでいた子供たちに話しかける。子供たちはキョトンとした顔をし ている。
「面白い遊びを教えてあげよう」
人数分の矢と本を子供たちに与える。
「この矢を投げて一番遠くまで投げた人が勝ちだ」
子供たちはそれらを受け取ると目を輝かせて言っ た。
「それなんていう名前なの?」
それ、とは今言った遊びのことだ。今は亡き国王に初めて提案したもの。老若男女問わず楽しめるような簡単なルール。一本の棒さえあれば遊べる 手軽さ。そう、棒。鉛筆でもいい。
「ロケット鉛筆」
「ろけっと? えんぴつ? 何それ」
疑問を示しつつも早急に矢を投げて遊び始める。 本来の遊び方とは少し違うが、それでも楽しそうに遊びまわる子供達を見て心が温まる。
「見てますか......」
空を見上げて静かに呟く。そこには何も写ってはいない。ただ、雲一つない青空が広がっているだけだ。
「これが私が望んだ世界です」
見えない誰かに伝えるように、そっとささや いた。




