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滅びかけた貧困村から始まった教育革命が、やがて世界文明そのものを変えるまでの物語  作者: 慈架太子


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231話 生活革命(前編)

異界歴六年。


人口三十億人を超えた異界文明は、新たな発展段階へ到達していた。


農業革命は成功した。


紡織産業は発展した。


教育は完全に普及した。


病による大量死は過去のものとなった。


飢餓もほぼ消滅している。


人々は生き延びるためではなく、より良く生きるために知恵を使い始めていた。


その象徴が食文化だった。


巨大農業都市アルナ。


広大な大豆畑が続く。


収穫された大豆は次々と加工施設へ運ばれていた。


かつては味噌や醤油の原料だった。


しかし研究者たちは考える。


「もっと使い道があるはずだ。」


研究は続いた。


浸水。


粉砕。


加熱。


濾過。


凝固。


数え切れない試作。


そして完成した。


白く柔らかな食品。


豆腐だった。


試食会。


最初に口へ運んだのはエルナだった。


柔らかい。


優しい。


消化も良い。


病人でも食べられる。


老人でも食べられる。


子供でも食べられる。


治療院はすぐに採用した。


病人食として極めて優秀だった。


さらに農民たちも評価する。


大豆から大量生産できる。


安い。


栄養価が高い。


結果として異界全土へ広がっていった。


同時期。


畜産都市では別の革命が起きていた。


ボア。


巨大牛。


乳羊。


乳山羊。


魔獣化していない家畜群。


農業教師たちは長年研究を続けていた。


繁殖。


飼料。


衛生管理。


病対策。


全てが体系化される。


教育がある。


だから定着する。


結果として乳生産量が急増した。


そこで誕生したのがチーズだった。


発酵。


熟成。


保存。


長期保管。


輸送。


全てに優れていた。


ドワーフ職人たちは歓喜した。


酒との相性が抜群だったからだ。


ビール。


ウィスキー。


焼酎。


チーズ。


その組み合わせは酒場文化を一変させた。


さらにヨーグルトも誕生する。


乳を発酵させる。


酸味がある。


保存性が高い。


腸にも良い。


治療院が採用する。


学校給食にも採用される。


子供たちの健康状態はさらに改善した。


エルナは報告書を見て微笑んだ。


「病欠が減っています。」


教育局も驚いていた。


食事改善が教育効果まで高めていた。


そしてバター。


これもまた革命だった。


パンに塗る。


料理に使う。


焼く。


炒める。


香りが変わる。


味が変わる。


料理人たちは夢中になった。


新しい料理が次々と生まれる。


市場は活気づく。


商人たちは笑う。


農民たちはさらに家畜を育てる。


経済が回る。


文明が成長する。


さらに養鶏も急速に発展していた。


巨大養鶏施設。


清潔な飼育環境。


教育された管理者。


結果として大量の鶏卵が生産される。


かつては高級品だった。


今は違う。


誰でも食べられる。


卵焼き。


茹で卵。


スープ。


菓子。


パン。


あらゆる料理へ使われる。


学校給食にも並ぶ。


孤児院にも並ぶ。


栄養状態は劇的に向上した。


夕暮れ。


市場では様々な食品が並んでいる。


豆腐。


チーズ。


ヨーグルト。


バター。


卵。


醤油。


味噌。


ポン酢。


トマトソース。


ウスターソース。


マヨネーズ。


ケチャップ。


農民たちが笑う。


職人たちが語る。


教師たちが買い物をする。


子供たちが走り回る。


かつて貧困村だった世界とは思えない。


豊かさは確実に広がっていた。


そして次に始まるのは。


麺文化と香辛料文化によるさらなる食革命だった。






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