カッコ良い兄、の友達
***BL***カッコ良い兄さんの友達は、やっぱりカッコ良い。ハッピーエンドです。
僕の兄は凄くカッコ良かった。
「兄はカッコ良いのに、弟のお前は普通だな」
と言われる事が多かった反面、上級生には可愛がられた。
学校の先生も、あの生徒の弟か!と気さくに話し掛けてくれた方だと思う。
上級生のお姉さんに
「何処に住んでるの?」
とか
「お兄さんって彼女いるか知ってる?」
なんてよく聞かれた。
小さい頃はそれが嬉しくて、何でも答えていたし、兄は僕の自慢だった。
でも、ある日気が付いてしまった。兄がいなければ、僕はどうでも良い存在だった事に、、、。
*****
中学2年の時に告白された。小さくて可愛くて、元気な子だった。
別に嫌いでも無いし、僕の友達に彼女が出来たばかりで、僕も焦っていたのかも、、、。
「好きかどうか分からないけど、、、」
と答えると
「それでも良いの!付き合って!」
と言われた。そんなに僕の事、好きなんだ、、、と思った。
彼女はしきりに家に来たがり、
「どんな家に住んでるの?」
「部屋に行きたい」
「一緒に宿題しようよ」
と言う。僕は男の部屋に女の子を呼ぶのに、まだ抵抗があった。
ある日友達が彼女を部屋に呼び、キスをした話しを聞いた。彼女は恥ずかしそうだったけど、嬉しそうだったと言っていた。
僕の彼女もそうなのかな?だから、僕の部屋に来たいのかな?
付き合って二週間経った頃、定期試験一週間前に入った。部活が休みになり、彼女が
「一緒に勉強出来る?」
と聞いて来た。
「良いよ」
と返事をすると
「じゃ、谷原くんの家に行っても良い?」
と言われて、あの話しを思い出してしまった。
「良いけど?」
彼女はすごく喜んで、僕も何だか嬉しかった。
放課後、彼女は手作りのクッキーを持って来た。
可愛い所あるんだな、と思いながらお礼を言うと
「あの、お兄さんもいるよね?」
と言われた。高校生の兄は電車通学だし、放課後は友達と勉強して来る事が多い。
「兄さんは、帰って来るの9時過ぎだよ」
「じゃあ、待ってようかな?お兄さんの分も作って来たんだ」
僕は、わざわざ待つ必要は無いのに、、、と思いながら、勉強していればあっという間に9時かな?と考えた。
「じゃあ、勉強して待つ?」
「うんっ!」
この時、気付くべきだった、彼女が本当に好きなのは僕の兄さんなんだって、、、。
お手洗いに行った彼女が、ヤケに遅かった。
廊下で母さんの声がして、ドアを開けると彼女が
「部屋、間違えちゃった」
と慌てて入って来た。
そんなに広い家じゃ無いのに、、、と思った。
後で、母さんに聞いた話では、兄さんの部屋を覗いていたらしい。
僕は友達のキスの話しの所為で、ずっと頭はその事ばかりだった。
どうやって彼女に近付いたら良いかわからなくて、かなり挙動不審だったと思う。
8時半過ぎに兄さんが帰って来て、母さんが
「今日は早いじゃない」
とか何とか言っている。
彼女はドアの方をチラチラ見ていた。
「どうしたの?」
「あ、、、えっと、お兄さん」
「クッキー渡す?」
「うん!」
「ちょっと待ってて、呼んで来るよ」
と言うと、彼女の顔が急に赤くなった。
兄さんを呼んで来ると、彼女はクッキーを手に持ち、待っていた。
兄さんが部屋に入ると、表情が一気に変わる。
彼女は兄さんにクッキーを渡しながら
「谷原くんには、いつも勉強を教わってます。茅野繭香です」
と自己紹介した。
「まゆちゃん、ありがとう。勉強頑張ってね」
「はいっ!」
彼女は恥ずかしそうで、嬉しそうだった。
クッキーを渡して、しばらくすると
「谷原くん、キリが良いからソロソロ帰るね」
と荷物を片付け始めた。
「じゃあ、家まで送るよ」
僕もノートを閉じる。
「ありがとう」
二人で彼女の家まで歩く。途中で僕は勇気を出して手を握ろうとした。
彼女はサッと手を引っ込める。
しばらく無言で嫌な空気が流れ、彼女が言った。
「ごめん、本当はお兄さんが好きなの、、、」
僕は小さく溜息を吐いて笑った。
「途中からそうかな、、、って思ってた、、、」
「、、、ごめんなさい。お兄さんに会ったら、やっぱりお兄さんが良いなって、、、」
「大丈夫だよ」
実は付き合ってる内に、ちょっと良いなって思ってたんだけどな、、、。
「明日からは、また友達になろう」
「、、、ごめんね」
僕達は無言で歩いて、茅野さんのマンションまで行った。
茅野さんはありがとうと言うと、振り返りもしないでマンションに入って行った。
*****
僕はいつもこんな感じだ。僕の事を好きになる人はいない。
*****
「あれ?谷原弟」
僕が本屋でフラフラしてたら声を掛けられた。
「蜂屋さん」
兄さんの友達だ。
「谷原弟は何やってんの?」
「特に目的も無く」
「フラフラしてんだ」
「そんな所です」
「そう言えば、彼女が出来たって?」
兄さんから聞いたんだ。蜂屋さんは兄さんといつも一緒にいるからな、、、。
「彼女じゃありません」
「え?部屋に連れ込んだって」
「連れ込んだ、、、」
がっくりする。
「定期テストの勉強してただけです」
「手作りのクッキー貰ったんだろ?絶対お前の事、好きだよ」
僕は、蜂屋さんの顔を見る。
カッコ良い兄さんの友達は、やっぱりカッコ良い、、、。
「彼女は兄さんが好きなんです」
「あ、、、ごめん」
僕は、ちょっと笑った。
「気にしないで下さい、、、」
「谷原弟」
そう言いながら僕の頭を撫でて
「クレープでも食べるか?」
と言った。
「蜂屋さんのご馳走ですか?」
「良いよ。今日バイト代入ったから奢るよ」
蜂屋さんは兄さんと同じ歳で、僕の三つ上だ。今、高校2年生。
「あー、やっぱりコーヒーも飲みたいから、あっちでも良い?」
と言って、コーヒー専門店に連れて行かれた。
「何食べたい?」
「チョコレートパフェ」
「遠慮無いな」
と笑われて、値段を見たら1500円もした。ギョッとして
「ごめんなさい!ホットココアで!」
と言うと
「了解」
と言いながら、QRコードを読み取って、スマホで注文した。
テーブルの真ん中に置かれたチョコレートパフェを見て、蜂屋さんの顔を見た。
「美味そうだったからな」
蜂屋さんがパフェ用の長いスプーンで、生クリームを、がっつり掬った。
大きな口で一口で食べると、変な顔をした。
「甘!生クリームじゃん!」
僕はポカンと見ていた。
「めちゃくちゃアイスクリームかと思った!」
「谷原弟、食べて良いよ」
と言って、スプーンを渡した。
「良いんですか?」
「食べて食べて、俺、甘いの苦手なんだ」
そう言いながら、砂糖もミルクも入れないコーヒーを飲んだ。
「お前も苦労するな。兄貴がカッコ良すぎて嫌だろ?」
「、、、小さい頃は自慢でした。でも、最近はちょっと、、、」
「俺も、アイツの横を歩いていると色々言われるよ。俺は、顔がキツイからな」
確かに、目が一重で少し吊り目だけど、僕にはそれが凄くカッコ良く見えた。
「蜂屋さんはカッコ良いから大丈夫ですよ。僕なんて、いつもみんなに「残念な顔」って言われるんだから」
「残念な顔は言い過ぎだろ?言った本人は、もっと残念な顔だろうよ」
ふふ、、、。蜂屋さん、酷い事言ってる。
「ま、悪いのは全部アイツだよ。顔が良過ぎるからな」
僕の横に誰か座った。
「何で俺が悪いんだよ」
兄さんだった。
「お前の顔が良過ぎるから、俺達は被害者の会を作る事にした」
兄さんは、スマホでQRコードを読みながら
「何それ?何の被害だよ」
と責める。
僕は、ハラハラしながら二人の会話を聞く。
「駿太、もっと詰めて」
と言って、僕にくっついて来た。
「パフェ食べてるの?一口頂戴」
と言われて、スプーンを渡そうとしたら口を開けた。
「あ」
え?食べさせろと?
「あ」
もう。
僕はスプーンで、一番美味しそうな所を掬って、兄さんの口に入れる。
「ズルい、、、」
え?
「あー」
蜂屋さんも?
「谷原弟、アイスクリームの所、早く」
「やらなくていいぞ」
僕はオロオロする。
「早く」
と言いながら口を開けて待っている。
「生クリーム、沢山入れてやれ」
僕は、チョコレートソースの掛かったアイスクリームを掬って蜂屋さんの口に入れた。
「最高!」
そんなにアイスクリーム食べたかったんだ、、、。
「蜂屋、俺の弟だからな、手を出すなよ」
兄さんが変な事を言っている。
「谷原弟もパフェ食いな」
と言われて、僕も一口貰う。久しぶりのパフェは美味しかった。
「美味しぃ、、、」
知らず知らずの内にニコニコしていたらしく、兄さんに
「駿太は可愛いなぁ」
と寄り掛かられた。
ガッ!
「痛っ!」
テーブルの下で、蜂屋さんが兄さんの足を蹴ったみたいだった。
*****
兄さんのコーヒーが来ると、蜂屋さんはブラックコーヒーを飲みながら
「この間の女、お前が目当てだってよ」
と言い出した。何の話しだろうと聞いていると
「駿太の部屋にいた女?」
と聞いている。僕の元カノの事だ。
「ちっ!」
兄さんが舌打ちをした、、、。
僕がびっくりした顔をすると
「駿太に彼女は早いと思ったけど、ソレはソレで嫌だな」
「僕の友達は彼女がいるし、キスもしたよ?」
と言うと、蜂屋さんは立ち上がり、兄さんは僕を凝視した。
「駿太にはまだ早いからな!」
兄さんが強めに言って来た。
「僕の事、好きになる人なんていないよ」
と言うと、蜂屋さんが
「谷原弟!お
ガンッ!
「痛ぇー!」
「蜂屋、、、」
「分かってるって、、、」
はぁ、と溜息を吐いて兄さんは
「駿太、ちゃんと駿太を好きになる人はいるから、な」
と言ってくれる。
「駿太は可愛いから、兄さんは心配なんだよ」
と抱き付かれた。
ガンッ!
兄さんが痛そうな顔をしながら、蜂屋さんを睨み付けた。
*****
「じゃあ、あの子とは付き合って無かったの?」
兄さんに聞かれて正直に話した。
「ちょっとだけ付き合ったよ。、、、告白されて、僕は好きって程好きじゃ無いけど、それでも良ければって言ったら、それでも良いって、、、。凄く喜んでくれたんだ。だから僕の事好きなんだなって思ってたんだけど、あの日の帰りに本当は兄さんが好きだって言われて、友達に戻ったんだ」
そうは言っても、やっぱり友達には戻れず、今は殆ど話もしない。
兄さんも蜂屋さんも静かに聞いてくれた。
「何度も家に来たがったのは、兄さんに会いたかったからなんだと思う、、、」
「駿太、、、大丈夫か?」
「大丈夫、小さい頃からそうだっから。僕に近付いて来る人は、大抵兄さんの事が好きな人だったから」
兄さんは申し訳無さそうな顔をしている。兄さんの所為じゃ無いのに、、、。
*****
それから、僕は中学三年生になり、兄さんは高校三年生になった。
夏休みから、兄さんと蜂屋さんに勉強を教わり、長い長い受験が終わると、兄さんは遠くの大学に行ってしまった。
*****
高校生になり、僕は母さんに言われて塾に通い始めた。
「は、、、蜂屋さん?」
「ふはっ!その顔!」
指差して笑われた。
「何で?」
「バイトだよ、バイト!秀明に聞いて無いの?」
「母さんに、塾申し込んだから通えって、、、」
「秀明は知ってるよ。谷原弟が心配だから俺のバイト先に通わせるって言ってた。まさか、お前の先生になるとは思わなかったけどな」
「良かった、知らない場所は慣れるまでキツいから、、、」
「ま、他の生徒と一緒だから贔屓は出来ないけど」
「そっか、、、淋しいな、、、」
本当に淋しい、、、。受験までの間、ずっと兄さんと蜂屋さんに勉強を教わっていた。
たまに息抜きと言って、三人で遊園地に行った事も有る。
でも、春に兄さんが引っ越して行くと、新しい生活が始まり、色々な事が不安になった。
兄さんがいないと蜂屋さんに会えない。僕はずっと蜂屋さんに会いたかったのに、連絡先も知らなかった。
*****
僕達の先生は蜂屋さんともう一人、ベテランの講師の先生だった。
最初はその先生と二人で見てくれた。
教室は四人。少人数のクラスだ。
二週間経つと、先生は蜂屋さんだけになった。
僕は蜂屋さんに話し掛けたかったけど、僕だけの先生じゃ無いと思うと、話し掛けられなかった。
他の生徒はどんどん先生と仲良くなっていく。
僕の蜂屋さんなのに、、、。
*****
夏休み前になっても、僕は蜂屋先生と言えなかった。話し掛ける事が出来ないまま、夏休みに入ってしまった。
そして兄さんが帰って来た。
*****
たった数ヶ月会ってないだけなのに、物凄く嬉しい。
「駿太、何処か遊びに行く?」
「兄さんは行きたい所あるの?」
「駿太と一緒なら何処でも良いよ」
僕達は電車に乗り、都内に出掛けた。
人混みの中、大きな本屋を目指して歩いていると、兄さんはすぐに声を掛けられる。
「あの、ちょっと良いですか?」
あの、、、の一言で、僕はいつも数歩後ろに下がる。僕が邪魔にならない様に、、、。
兄さんは少しだけ立ち話しをすると
「駿太!行くよっ!」
と呼んでくれて、ホッとした。
**********
五月蝿い男に捕まった。
「何で二人で出掛けたんだよ!俺も誘えよ!」
「次はちゃんと誘うから、俺だって駿太と二人きりで出掛けたかったんだよ。お前は、バイトの時に会えるだろっ!」
「、、、会えるけど、避けられてる、、、きっと」
「あ?何でそう思う訳?」
「一度も、蜂屋先生って呼んでくれない」
「何で?」
「知らねーよっ!」
「お前、何かしたんじゃね?」
「何もして無い筈。だって、駿太、一番最後に来て、一番最初に帰るんだ」
「それにしたって、去年はあんなに「蜂屋さん、蜂屋さん」だったじゃないか」
「、、、俺だって、楽しみにしてたよ、、、」
はぁ、、、めんど、、、。
「いつ空いてるんだよ」
「月、水、木は夜塾のバイト、駿太も一緒。それ以外は空いてる」
「じゃ、金曜日車出せよ。免許取っただろ?」
「ああ」
「運転出来るの?」
「出来るわ!」
「じゃ、よろしく」
何で俺がこんな目に、、、。
**********
蜂屋さんが車を運転してる、、、。え、凄いな。
白い車、運転席から降りて助手席側に回って来た。
「おはようございます」
「おはよう」
僕は、何だか緊張していた。
「駿太、前に乗りな」
と言いながら、兄さんはサッサと後ろのドアを開けて乗り込んだ。
蜂屋さんがドアを開けてくれる。
「ありがとうございます」
僕は車に乗った。
蜂屋さんは静かにドアを閉めると、車の前を通って運転席に回った。
「ちょっとごめん」
と言うと、僕のシートベルトを引いて、カチャリと音を立てて締めた。
急に蜂屋さんの顔が近くなって、僕は顔が赤くなった。
「蜂屋」
兄さんの機嫌がちょっと悪い。
近場だと、他の塾生に会うといけないから、遠出をする事になった。
ちょっと離れたコンビニで、飲み物とお菓子を買う。
兄さんは、後部座席でウトウトしている。
「塾の勉強どう?」
「今の所、何とか」
「わからない事があったら、聞いてくれよ」
「うん、でも、みんな蜂屋さんに質問したいみたいだから」
蜂屋さんはさっぱりしている性格だからか、生徒に好かれていた。
毎回蜂屋さんに質問に行く生徒もいて、僕はつい遠慮してしまう。
「わからない事を後回しにしてるうちに、取り返しのつかない事になる場合もあるからな。その日の内に質問に来て、ちゃんと納得して帰る方が良い」
そうなんだよな、、、。それは僕も分かってるんだ。
「谷原くんはさ」
「谷原二人いるんだけど?」
兄さんが後ろからツッコむ。
「悪い、塾では谷原くんって呼んでるから」
蜂屋さんが苦笑してる。
「駿太で良いだろ?」
「良いのか?」
「もう、高校生だからな」
そう言えば、去年までは谷原弟って呼ばれてたっけ。
「本当は蜂屋にだけは名前で呼ばせたく無いけど。仕方無いさ」
「やっとお許しが出た」
と言って、蜂屋さんは僕を見て笑う。
それから蜂屋さんは、僕の事を駿太、駿太と呼ぶ様になった。
*****
ドライブは楽しかった。
兄さんはずっと後ろの席で寝ていたけど、たまに一言二言発してまた眠る。
蜂屋さんはずっと喋りっぱなしだった。
特に目的地も無く、車で適当に走って、適当なお店でご飯を食べたり、休憩を取ったりした。
*****
夕方、蜂屋さんが家の前まで送ってくれて、僕だけ先に降ろされた。
兄さんは
「蜂屋とちょっと話しがあるから、母さんに言っといて。そんなに遅くならないから」
と言って、また車に乗り込んだ。今度は助手席だった。
**********
「駿太、フツーに話してたけど?」
「今日は話した方だった。塾の時は挨拶だけ。授業態度は良いし、成績も悪く無い」
「お前の気の所為なんじゃ無い?」
「うーん、俺は前みたいに駿太と接したい」
「ま、塾の講師と知り合いの上に、担当して貰ってるとなると、贔屓だ何だと言われるだろうからな、気を付けてるんじゃ無いか?」
「俺だって分かってるさ、最初に贔屓はしないと言ったし」
「うーん、、、。入塾した頃は緊張してただろうけど、もう夏だしな、流石に塾にも慣れただろ、、、」
蜂屋の運転で喫茶店に入る。隙間時間だったのか、店内は少し空いていた。好きな席に座って良いと言われて、他の客があまりいない席を選んだ。コーヒーを二つ頼む。
「お前、中二の時からだっけ?駿太の事好きだったの」
「五年間片思い」
「長いな、、、」
「そんなもんじゃ無い?進展も無く、ズルズル好きだからな」
「もう、告白しろよ」
「え?良いのか?」
「駿太も高校生だからな、自分で決められるだろ」
「俺、振られるのか?」
「振られないさ。去年の感じでは、蜂屋の事、好きみたいだったし」
「うーん、いざ告白となると緊張するな」
「仕方無い。お前が最初に駿太には告白しようとした時、アイツはまだ小学五年生だったんだから。流石に俺も止めるわ」
「、、、」
「その後も、中学の卒業式の日に、駿太も小学校卒業だから告白したいだの、中学の入学記念に告白するだの、何かっちゃぁ告白したがりやがって、、、三つも年下なんだぞ」
「だって、早くしないと誰かに取られるだろ?」
「俺はね、お前の毒牙から駿太を守りたかったの、分かる?」
「毒牙って、、、」
「駿太はまだ中学生だったからさ」
「駿太に彼女出来たの、中二の時だった、、、」
「ははっ!お前めっちゃ焦ってたよな」
「そりゃあね、、、」
「でも、駿太、彼女の事、好きじゃ無かっただろ?」
「違う、「好きって程好きじゃ無かった」だよ」
「まぁ、良いじゃん。駿太の初恋はどーせ蜂屋だよ」
「、、、」
**********
折角休みの日に会えたのに、どうして連絡先を聞かなかったんだろう、、、。
塾以外で会う事なんて無いから、チャンスだったのに。
塾での蜂屋さんは、みんなの蜂屋先生になってしまった。
去年勉強を教わった時、教え方が上手かったのを思い出す。あの時は、僕だけの先生だったのに、今は違うんだ。
*****
月曜日、塾に行くと女の子が
「蜂屋ん先生っ!」
と蜂屋先生と腕を組んだ。手には可愛くラッピングされたプレゼント。
「夏休みのお土産持って来たよ!」
「おー。賄賂か?賄賂だな?」
「違うよー!」
と楽しそうに話していた。
僕は見たく無くて、教室には行かずに自販機に立ち寄った。帰りたいな、、、と思いながら、自販機を眺める。
「谷原くん、何飲みたいの?」
振り向くと蜂屋さんだった。
「好きなの選びな」
蜂屋さんは千円札を入れながら言った。千円札は戻って来た。
「あれ?」
もう一度入れる。また出て来た。僕はリュックから財布を出して
「僕が奢りますよ」
と言った。
蜂屋さんの手にはさっきのプレゼントが有って、僕はイヤな気分になっていたから、、、。彼女に対抗したんだ。
蜂屋さんが千円札を裏返して入れると、ジュースのボタンにライトが点いた。
「ほら、誰もいない内に早く押せ」
やっと千円札が使えて嬉しいのか、満面の笑顔だった。
「有難うございます」
そう言って、カフェ・オ・レのボタンを押した。
「みんなには内緒だぞ?駿太にしか奢らないからな」
僕はちょっと嬉しかった。
「次は僕が賄賂持って来ますね、蜂屋先生」
そう言って、お辞儀をして教室に向かう。
蜂屋先生と呼び方を変えたら、蜂屋さんの存在が更に遠く感じた。
*****
彼女は蜂屋先生が好きみたいで、小さな事でも質問に行く。
僕は、蜂屋先生に質問が出来ないまま持ち帰り、兄さんに教えて貰う。
「蜂屋に聞かないの?」
「蜂屋先生はいつも忙しいから」
「蜂屋先生って呼んでるんだ、蜂屋、喜んでただろ?」
蜂屋先生が喜ぶ?何で?
「蜂屋、駿太が蜂屋先生って呼んでくれないって、言ってだぞ」
「うーん、でも、塾で話す事無いから」
「授業中話さないのか?」
「少人数制で、基本、問題を解いて分からない所は質問するんだけど、、、。僕はあんまり質問しないかな」
「大丈夫?」
「他の子が質問した時、一緒に聞くし、それでも分からなければ兄さんがいるから」
「でも、夏休み終わったら、俺は向こうに帰るんだから、、、」
「何とかなるよ」
**********
何だか拗れている気がする、、、。
俺は蜂屋を呼び出した。
「蜂屋先生って呼ばれてるみたいだな」
「んー、、、」
目を閉じながら、顎を触って考えている。
「駿太が蜂屋先生って呼ぶ様になってから、更に距離が遠くなった気がする」
「、、、何でだよ」
「分からない。まず、俺の顔は見ないな、、、。挨拶も小さく頭を下げるだけ、授業中も放課後も質問は無い。かと言って、全部の問題が解ける訳でも無い。他の子が授業中に質問して来ると熱心に聞いてるんだ。、、、自分からは質問しないって決めてるみたいに感じる」
「お前が忙しそうにしてるからじゃないのか?」
「そうは言っても、折角塾に来てるんだから、分からない所は質問して欲しいよ」
「駿太、家に帰って来てから、俺に質問しに来るぞ」
「え〜、、、何で、俺じゃぁダメなんだよ」
**********
今日もあの子は蜂屋先生の横に立つ。
二人が一緒にいると、何だか凄くお似合いに見えてイヤだな、、、。
僕はリュックを背負い教室を出ようとした。
「あの、谷原くん」
「?」
同じ教室の女の子だ。確か、設楽さん、、、。
「一緒に帰ろ!」
「う、、、うん、、、」
「谷原くん」
「はい!」
蜂屋先生に呼ばれた。
「ちょっと話しがあるから、居残って」
「はい。、、、ごめんね」
と謝ると、女の子は恥ずかしそうに
「またね」
と言って教室を出た。
まだ、蜂屋先生は質問された問題を説明していた。僕はどうしたら良いか分からずに、椅子に座って待つ事にした。
漸く終わり、彼女が
「有難う、蜂屋ん先生!」
と言うと
「頑張れよ」
と言って、ノートを閉じる。
「蜂屋ん先生、お菓子上げる」
彼女は少しでも蜂屋先生と一緒にいたいのか、何かと話題を作る。
鞄を開けようとする彼女を
「谷原くんが待ってるから」
と制止し
「気を付けて帰るんだぞ」
と笑い掛ける。
「うん!またね!」
彼女は嬉しそうに帰って行った。
彼女の後ろ姿を見送りながら、ドアを閉めると
「さてと、、、」
と言って僕を見る。
「駿太」
ドキリとした。
塾で駿太と呼ばれると、心臓がドキドキする。
「秀明に勉強教えて貰ってるんだって?」
ゆっくり歩いて来る。
「何で、先生に聞きに来ないの?」
にっこり笑って、前の席に座る。
「去年はあんなに、「蜂屋さん、蜂屋さん」って慕ってくれたのに、、、先生淋しいな」
「、、、蜂屋先生は、みんなの先生だから、、、」
「まぁ、そうだよね」
僕は、フッと息を吐いた。唇を閉じて、何を話したら良いか考える。
でもそんなの全然分からない。僕はどうして蜂屋さんを避けているんだっけ、、、。
「佐伯さんが、いつも蜂屋先生に質問しに行くから、僕は質問に行けません」
「佐伯さんが終わるのを待てば良いだろ?」
「彼女、話しが長いし、、、。何か、、、」
「?。何か、、、どうした?」
「何か先生の事、好きみたいだから」
「ん?それは関係ないだろ?」
「蜂屋先生も嬉しそうだし、、、」
「俺、嬉しそうにしてた?」
「、、、はい」
「まぁ、確かに彼女の話しは長いよな。こんな事聞いて来るかな?って内容の時もあるし。でも、ちょっと待てば、駿太の質問に答える位出来るから」
「だって、、、イヤだから」
「俺に聞きたく無いって事?」
「違う。佐伯さんと蜂屋先生が仲の良い所、見たく無い」
「、、、」
「恋人同士みたいに見える」
「、、、あのさ。、、、さっき、設楽さんに一緒に帰ろうって誘われてただろ?」
「はい」
急に話題が変わった、、、。
「駿太が女の子と一緒に帰るの、俺、めちゃくちゃ嫌だった。だから、咄嗟に駿太の名前を呼んだんだ」
蜂屋先生の話し方が違う。去年、僕だけの先生だった時の話し方だ、、、。
「ソレってヤキモチだと思わない?」
「?」
「ヤキモチなんだよ、、、」
僕が蜂屋先生の目を見ると、真剣な顔をしていた。
廊下から小さな足音が聞こえて来た。
「ヤバッ!時間」
前の扉が開いて、受付事務の女性が
「ああ、蜂屋先生、いたんですね」
と言って僕を見た。
「面談ですか?そろそろ時間ですよ」
蜂屋先生は
「すぐ出ます」
と言って席を立つ。
「鍵、お願いしますね」
と言いながら、女性が教室を出ると隣の教室を見に行った。
「家まで送るよ」
受付の前を通ると、さっきの女性がいた
「気を付けて帰ってね」
と言われて、僕は頭を下げて出る。
塾の階段を降りて、一階の入り口横で蜂屋先生を待った。
10分位して蜂屋先生が降りて来る。
「腹、減って無い?」
「空いてます、、、」
「ちょっと食べて行こうよ」
僕は蜂屋先生を見つめた、、、どうして僕を誘うんだろう、、、。
歩きながら、何処かに電話を掛けている。
「あ、秀明?駿太ちょっと帰りが遅くなるから」
相手は兄さんだった。
「大丈夫、大丈夫。ちゃんと家まで送るから」
なんて言いながら、ファストフード店に入る。
電話を切って
「好きなの頼みな」
と言われたから、ハンバーガーとポテトのセットを頼む。蜂屋さんは、僕と同じ物に、ハンバーガーをもう一つ追加した。
各々トレーを持って、一番奥の席に着く。
この時間だから、お客さんは点々としていた。
奥のボックス席は、人目が避けられて静かだった。
「頂きます、、、」
「どうぞ召し上がれ」
僕はつい、笑ってしまった。蜂屋さんを見ると優しい顔をしている。
ハンバーガーを食べ、お腹が少し満たされると蜂屋先生が
「秀明に、塾のバイトをしろって言われた。駿太に勉強を教えるのが楽しかったし、時給も良いから。俺が面接受かったって言ったら、駿太を通わせるって言ってくれたんだ」
蜂屋先生は、紙で手を拭きながら続ける
「秀明がいなくなったら、駿太に会う理由が無かったからな、、、。秀明も心配していたし、お前の母さんを上手い事説得してくれた」
僕はジュースを飲みながら、そんな事があったんだとぼんやり考えた。
「駿太の担当になったのは、偶然だよ、、、。だけど、めちゃくちゃ嬉しかった」
そっか、、、。
「でも、駿太は俺を先生と呼ばないし、何だか避けてるみたいだった」
「、、、それは、蜂屋先生がみんなの先生だから」
「駿太の先生でも在るけど?」
「僕が話し掛けると、他の子が遠慮しちゃうかと思って、、、」
「それで、駿太が遠慮してたら、俺は淋しい、、、」
「、、、ごめんなさい」
蜂屋先生は小さく笑った。
「さっきのヤキモチの話、信じて無いだろ、、、」
ヤキモチ?ああ、設楽さんの、、、。
「俺ね、、、五年間、駿太に恋してるの」
ん?
「五年?」
「そう、五年間」
蜂屋先生がポテトを摘んで、僕の口の前に差し出した。
「あーん」
僕は、混乱する頭で口を開けた。蜂屋さんがポテトを口に入れる。
「秀明に相談したらめちゃくちゃ怒られた。俺の弟だぞ!って、、、」
また指先で、ポテトを一本摘む。そして自分の口に運んだ。
「秀明は最初、物凄く嫌がったけど、俺の気持ちは理解してくれた。アイツも駿太の事、大好きだからな」
「でも、、、僕は、兄さんや蜂屋先生みたいにカッコ良く無いから、そんな事言われても分からないよ、、、」
「駿太は可愛いよ」
頭を撫でられた。
「秀明もいつも言ってるだろ、駿太は可愛いって」
「それは弟だからでしょ?」
「まぁ、秀明はそうかも知れないけど、俺は一目惚れだった」
**********
駿太の唇が少し尖った。そんな事、信じられないって言っているみたいだ。
「秀明がカッコ良過ぎるのが悪いんだな。もっと自信を持って良い」
と言って、頬に触れた。
駿太がピクリと反応して俺を見る。少し顔が赤い。
俺はもう一度、駿太の頭を撫でて
「遅くなり過ぎると良くないから、帰ろう」
と言った。
*****
秀明が心配するといけないから、今から駿太を送ると電話をする。
二人で夜道を歩き、駿太の家に着くとマンションのエントランスに秀明が立っていた。
「蜂屋、遅い」
怒っていた。
「お前、まさか」
「大丈夫、手は出して無いよ」
秀明は駿太の腕を取ると、グイッと引き寄せ
「当たり前だ」
と言った。
「告白はした」
打ち明けると、秀明は駿太の顔を見た。
「付き合うのか?」
駿太はキョトンとしている。
「、、、告白されたんだろ?」
「うん」
「付き合わないのか?」
「えっ?!」
秀明が俺を見る。駿太は困った様に
「だって、、、付き合ってって言われて無いから、、、」
と呟いた。
「ははっ!」
秀明は、駿太を抱き締め
「蜂屋、もう遅いから帰れ」
と笑った。
**********
家に入ると母さんは寝ていた。
兄さんが、二人分のコーヒーを持って来てくれた。
「蜂屋に何て告白されたんだ?」
「五年間好きだったって、、、」
「付き合いたく無いのか?」
「蜂屋先生は付き合おうって言わなかったよ?。先生と生徒だから、付き合う気は無いんじゃないかな」
「駿太はそれで良いのか?」
「うーん、、、」
「蜂屋は馬鹿だからな、、、」
「え?蜂屋先生は頭良いでしょ?」
「違う違う、そう言う意味じゃ無くてさ」
「?」
「アイツが駿太に最初に告白しようとしたのは、駿太がまだ五年生の時だよ」
「五年生?!」
「そ、馬鹿でしょ?」
「その次は、小学生の卒業式の日、中学の入学式の日も告白しようとしてた」
兄さんが思い出す様に笑う。
「俺はその度に、駿太はまだ小学生だからとか、色々理由を付けて引き止めたよ」
「そうなの?」
「駿太に彼女が出来た時は、かなり落ち込んでた」
「あの子は、兄さんの事が好きだったから」
「俺が告白を禁止したから、知らない女に盗られたってブツブツ言ってたよ」
「、、、」
「蜂屋はね、駿太が中三の時、勉強を教えてた頃が一番楽しそうだった。駿太が可愛い可愛いっていつも言ってたな」
僕が蜂屋さんを好きになった頃だ、、、。
「でも、俺が他県の大学に行く事にした時、もう駿太に会えなくなるって落ち込んだんだ、、、。ずっと駿太の事ばかり考えてたよ。、、、駿太は?蜂屋の事、どう思ってるの?俺は、駿太も蜂屋の事、好きだと思っていたけど」
「うん、、、好き」
「アイツは馬鹿だからさ、駿太の気持ち、ちゃんと伝えないと」
「う、、、うん、、、。でもさ、好きと付き合いたいは違うでしょ?」
「?」
「好きだけど、、、ただ見てるだけで良い好きってあるじゃない?、、、」
「例えば?」
「相手が凄すぎて、自分じゃ釣り合わない人とか、、、。こんな僕と蜂屋先生は、釣り合わないよ、、、」
**********
馬鹿だな、、、と思った。駿太だって可愛いんだから、自信を持てば良いのに。
でも、中二の時あんな事が有ったし、仕方が無いのかなとも思う。
俺は確かにカッコ良い。小さい頃から男女年齢問わずモテていた。自分でも顔は良いと思う。
でも、駿太だって、可愛い顔をしている。俺の弟だからな。
ただ、どうしても「谷原秀明の弟」として見られて、比べられるんだ。
駿太が高校生になって、漸くそんな枕詞が外れたのに、駿太の呪縛はまだ解かれていない。
蜂屋は、俺の中学校からの友達だった。
顔のタイプが俺とは真逆の、一重で吊り目。でも、俺はアイツの顔が嫌いじゃ無い。良い男だとも思っている。
俺が気を使わないでズケズケと何か言っても、へこたれないし気が楽だ。
中学二年の時、駿太に会った蜂屋は駿太に一目惚れをした。それからは、もう煩くて煩くて仕方が無かった。
でも、だからこそ、俺は蜂屋が気に入っている。俺より駿太を選ぶなんて、俺と気が合うじゃ無いか。
蜂屋と駿太が付き合うのは構わない。むしろ、駿太が幸せになるなら、応援したい位だ。
だからと言って、俺が口添えをするのは、何か違う。
駿太自身が自分の気持ちを伝えて、蜂屋と付き合いたいと思わないと、辛いことや嫌な事が有った時、駿太はすぐに逃げてしまうだろう。
「駿太、俺のマンション観に来る?」
「、、、行きたい」
「じゃ、金曜日なら空いてるだろ?」
塾のない日だ。
「うん」
「予定入れないでおけよ」
「分かった」
**********
兄さんの一人暮らししている部屋に行ける。
凄く楽しみだった。
木曜日に塾から帰って、荷物を作っていたら、玄関先が賑やかになった。僕が何事かと部屋のドアを開けると、兄さんと蜂屋さんが話していたんだ。
「荷物出来た?」
「うん」
「蜂屋の車で行くからな」
「蜂屋先生も行くの?」
「蜂屋も俺のマンション見たいって言うから、ついでに車出して貰う事にした」
「もう出る?」
「蜂屋の車で行くなら、夜移動した方が道が空いてるからな。駿太の準備が終わったら出るよ」
僕は急いで荷物を纏めた。
*****
僕は後ろの席に乗った。ナビがあるけど、やっぱり僕より兄さんの方が頼りになるし、夜遅いから僕も寝てしまうかも知れない。
兄さんと蜂屋先生は、ずっと何かを話していた。
僕は窓の外ばかり見ていた。
車で遠出をした事が無いから、ずっと外を見ていられる。眠たい頭で、外を見ていたらいつの間にかウトウトしていた。
兄さんの大学は他県と言っても、そんなに遠く無い。ただ、電車で通うには少し遠くて、不便だった。
車で2時間程でマンションに着き、三人で降りる。綺麗なマンションだった。
「狭いからな」
と言いながら集合ポストに寄り、郵便物を受け取ってから2階に上がる。
玄関を開けて中に入ると、本当に狭かった。でも、一人なら丁度良い広さだと思う。
春に引っ越して来たばかりで、荷物も少ない。此処に四年間過ごすのか、、、。
「一人暮らしって淋しく無い?」
「快適だよ」
僕は部屋の中を見回して、そうなんだ、、、と思った。
「僕も一人暮らししたいな」
「え?」
「ぶふっ」
「?」
「蜂屋は駿太と離れたく無いから、地元を選んだのにな」
蜂屋先生を見る。先生は、少し恥ずかしそうな顔をした。
**********
駿太は疲れていたのか、シャワーを浴びると俺の布団でスヤスヤと眠り始めた。
「蜂屋は、これから駿太とどうするんだ?」
俺達は、部屋の電気を小さくして、駿太を起こさない様にゲームを始めた。
「そうだな、、、」
「、、、?」
蜂屋は考える様に黙り込んだ。
「今のバイトも楽しいけど、このままだと付き合えないよな、、、」
「やっぱり難しいのか?」
「塾とは言え、先生と生徒だとなぁ、、、」
「じゃあ、駿太が曜日を替えれば良いだろ?」
「いや、、、今の曜日に一人ちょっとね」
「ああ、お前にちょっかい出してくるヤツがいるんだ」
「駿太がイヤがる」
「ふっ」
「笑うなよ。駿太がそう言ったんだ」
「早く、付き合いえよ」
「でも、駿太は女の子と付き合いたいかも知れないだろ?」
「今更?」
「今だからだよ。この先結婚を考える様になったらさ、駿太は俺と付き合った事、後悔するかも知れない」
「後悔?」
「男と付き合って、時間の無駄だったと思うんじゃないかな?。俺は駿太一筋だったから平気だけど、駿太が俺の事好きなのは、気の迷いかも知れないからな、、、」
「馬鹿だな、気の迷いでも良いじゃ無いか」
蜂屋が溜息を吐いた。
「ちょっと自信が無いのかもな、、、」
その後は、小さくしたゲームの音と画面が切り替わる度に光る部屋だけになった。
**********
喉が渇いたな、、、。と思って目が覚めたら、兄さんと蜂屋先生の話し声が聞こえて来た。
「駿太がイヤがる」
僕の話だ。僕は起きる事が出来なくて、寝たふりをしていた。
***** ***** *****
「ふっ」
「笑うなよ。駿太がそう言ったんだ」
「早く、付き合いえよ」
「でも、駿太は女の子と付き合いたいかも知れないだろ?」
「今更?」
「今だからだよ。この先結婚を考える様になったらさ、駿太は俺と付き合った事、後悔するかも知れない」
「後悔?」
「男と付き合って、時間の無駄だったと思うんじゃないかな?。俺は駿太一筋だったから平気だけど、駿太が俺の事好きなのは、気の迷いかも知れないからな、、、」
「馬鹿だな、気の迷いでも良いじゃ無いか」
***** ***** *****
最後に蜂屋先生が
「ちょっと自信が無いのかもな、、、」
と呟いた声が、切なかった。
蜂屋先生も自信が無くなる事あるんだ、、、。
僕は布団の中で、蜂屋先生の事を考えていた。
先生が僕の事を考えてくれて嬉しかった。僕はずっと、僕自身の事しか考えて無かった。
先生が付き合うって言わなかったから、その先を考えなかったけど、、、。付き合っても良いのかな?塾の事は置いといて、僕自身はどうなんだろう、、、。付き合いたい?
*****
金曜日、兄さんと蜂屋先生は朝までゲームをしていたらしく、なかなか起きて来なかった。
狭い狭い部屋で、男三人の雑魚寝は窮屈なんてもんじゃ無い。
僕は静かに起きて、キッチンにあるテーブルに腰掛けて、歯磨きをする。
きっと兄さんは此処で勉強してるんだろうな。教科書とパソコンが置いてあった。
昨日朝ご飯用に買ったパンを食べ、冷蔵庫に入れてあった緑茶を飲む。
二人が起きるまでスマホでも見ようと思ったら、充電し忘れていた。リュックから充電器を出して充電する。ついでに着替えて、窓の外を眺めた。
ちょっと先にコンビニが見える。二人はまだ起きそうも無いし、散歩にでも行こうかな、、、。
僕は、兄さんをそっと起こした。
「駿太ぁ〜、おはよう」
と言って抱き付く兄さんに、小さな声で
「ちょっとコンビニ行きたいから、鍵借りても良い?」
と聞く。
「テーブルの上、、、」
キッチンの方を指差して言う。
「ありがとう。何か欲しいモノある?」
「うー、、、ん。プリン」
ふふ、プリンだって、、、。
「分かった、買って来るね」
兄さんの横で寝ていた蜂屋先生がムクリと起き上がった。
「俺も行く、、、」
え、、、。
蜂屋先生は、顔を洗い、歯磨きをするとパッと着替えて準備をする。
「昨日、よく寝てたな」
「はい」
当たり障りの無い会話をして、コンビニに入る。
兄さんのプリンを選びながら、今、蜂屋先生と二人きりなんだと思った。
「蜂屋先生、、、」
フッと笑われた。
「こんな所に来ても先生なの?」
頭をポンポンと叩かれた。
「蜂屋さん」
「何でしょう」
「僕、、、気の迷いじゃ無いですよ、、、」
「ん?」
「気の迷いで好きになった訳じゃ無いです」
「、、、」
ピンポーン!
と来店を知らせる音がした。
僕はプリンを持ってレジに行く。何だか、頬が熱い。
本当はもっとゆっくり散歩とかしたかったのに、兄さんのプリンを買ってしまったから早く戻らないと。
蜂屋さんは少し斜め後ろを歩く。
*****
金曜日の夜は通勤ラッシュで混みそうだから、帰るのは土曜日にした。
折角だから、兄さんの大学を見に行く事になって、蜂屋さんの車で行った。僕は後ろの席に座り、また窓の外ばかり見ていた。
あの後、蜂屋さんは特に何も言ってくれないけど、僕は、僕の気持ちを少し伝えられてホッとしている。
*****
土曜日の昼前、兄さんのマンションを出る。
帰りは蜂屋さんと二人きりだという事に気付くと、少し緊張した。
「蜂屋、分かってるな」
兄さんが蜂屋さんに言う。
何の事かわからない僕は二人を交互に見た。
「ちゃんと安全運転で帰るから」
蜂屋さんがヘラッと笑う。
「駿太、正月に帰るから」
「うん、待ってるね」
そう言うと、蜂屋さんが助手席のドアを開けてくれた。
「じゃ、行こうか」
僕は乗り込んでシートベルトを閉める。
*****
蜂屋さんは安全運転だった。
「折角だから寄り道する?」
「はい」
コンビニの駐車場に車を止めて、蜂屋さんはスマホで検索する。
夏休みの土曜日、どこも混んでいそうだった。
「うーん、ちょっと海沿いを走りながら帰ろうか?」
海沿いのドライブ!
「行きたいです」
「帰るの遅くなりそうだけど」
「夏休みですから」
コンビニで軽食と飲み物、後、ガムも買った。
ナビに従って走ると住宅街を抜けて、山道を走り、海が見え始める。
「海だ、、、」
すごい!
坂道を登ったり降ったりして、海を見ながら走る。
蜂屋さんは、無料の駐車場を見つけると車を停めてくれた。
小さな小さな駐車場で周りに何も無かった。でも、崖の下に海があって、普段見慣れない海に感動した。
夏の日差しに、すぐ車に戻り海を見る。
遠くに大きな船が見えた。ヨットも走ってる。砂浜の見える方には海水浴をしている人や、サーフボードに乗る人もいる。
海だ、、、。
「駿太、一昨日、夜起きてた?」
蜂屋さんが海を見ながら言った。
「途中で目が覚めて、、、ごめんなさい」
「謝らなくて良いよ。ちょっと恥ずかしい話し聞かれちゃったなって、、、」
「僕、、、蜂屋さんの事、好きです、、、ちゃんとヤキモチも妬きます」
「、、、そっか」
「本当はずっと、僕だけの先生でいて欲しかった、、、。でも、そう言う訳にはいかないでしょ?、、、」
「、、、」
「いつか、ヤキモチ妬かなくなる日が来ると良いな」
蜂屋さんが手を繋いでくれた。
僕は初めて蜂屋さんに触れてドキリとした。
「ヤキモチ妬かれないのも淋しい、、、」
「僕、蜂屋さんと付き合いたいです。先生の蜂屋さんはみんなのモノでも良いけど、、、先生じゃない蜂屋さんは僕だけのモノが良い、、、」
緊張で震える、、、。断られたらどうしよう、、、。
「駿太、、、」
僕は蜂屋さんを見た。
蜂屋さんの顔が近付いて来る。
そっとキスをした。
「ありがとう、、、」
**********
駿太から、付き合いたいと言ってくれるとは、思わなかった。
正直嬉しい。
「もし、俺が駿太の先生じゃ無くなっても平気?」
「、、、?」
「曜日変更して貰おうかと思って、、、。まぁ、タイミング的には、来年の春になると思うけど。佐伯さんの事もあるし、先生と生徒が付き合うのも、、、」
「、、、わかりました。淋しいけど、それは仕方無いと思うから、、、頑張ります」
俺は繋いだ手に、キュッと力を込めた。
駿太が本当に淋しそうな顔をするから、もう一度キスをした。
「蜂屋さん、、、連絡先、交換したいです。ダメですか?」
「良いよ」
*****
それから駿太は塾でも質問をする様になった。
佐伯さんが授業の後、色々話し掛けて来るのを阻止する様に後ろに並んでいる。
塾の間は駿太にばかり時間を割けないけど、その後はコンビニで待ち合わせをして二人で帰る。
八月が終わる頃、佐伯さんは俺に興味が無くなった様で、放課後質問に来ていた回数が減った。
駿太も佐伯さんを気にする事が無くなった。
*****
駿太に連絡しても、火曜日と金曜日は返事が遅い。友達と勉強でもしているんだろうか?
一度気になって
「友達と勉強中?」
と聞いてみたけど、返事は遅かった。
まぁ、高校生の男子だ。友達と遊んでるのかも知れないし、、、。と無理矢理納得していた。
*****
駿太と設楽さんが一緒にいる。
俺がバイトを終えて、いつも待ち合わせするコンビニに行くと、二人で何やら話していた。
設楽さんは俺に気付くと
「蜂屋先生!」
とニコニコする。
「設楽さん、もう遅いから寄り道しないで早く帰りなさい」
「はーい。谷原くん、またね!」
て言ってコンビニを後にする。
彼女が出て行った、自動ドアを眺め
「何話してたの?」
て聞くと、駿太は言葉を濁した。
何だ?
何だか、モヤモヤする、、、。
**********
設楽さんと話しをしていたら蜂屋さんが来てしまった。
まさか、相談の相手が蜂屋先生とも言えず緊張してしまう。
僕は、蜂屋さんの誕生日に何かプレゼントをしたくて、こっそりバイトを始めた。
塾の無い、火曜日と金曜日、夕方3時間。
お金は何とかなりそうだけど、何をプレゼントしたら良いかわからなかった。
それで、塾の友達に相談していたんだ。
僕より、女の子の方がプレゼントのセンスも良いし、、、。
**********
授業が始まる前に、駿太と設楽さんが仲良くスマホを見ていた。
先日のコンビニと言い、最近仲が良いな、、、。そう思いながら授業を始める。
授業が終わると、設楽さんは佐伯さんに
「最近彼氏とどうなの?」
と聞いていた。佐伯さんは彼氏が出来たのか。
「この間、誕生日にね、、、」
駿太ともう一人の生徒も加わり盛り上がっている。
「時間までに教室を出なさい」
と声だけを掛けた。
駿太は、俺が相手だから、恋話が出来ないんだな、、、、と思うと申し訳無かった。
*****
夜道を二人で歩いていると
「あの、、、怒ってます?」
怒っていると言うか、、、。
駿太が、今日も待ち合わせ場所のコンビニで、設楽さんといた。
「別に怒ってないけど、何で?」
「怒ってる様に見えたから、、、あの、、、」
「ん?」
「あの、、、今度の金曜日、、、暇ですか?」
「いや」
夜は時間があるのに、昼間大学の授業があるからって、、。意地悪な俺だな、、、。
「そうですか、、、」
「何かあった?」
「いえ、、、ちょっと、、、」
「そっか」
駿太の家の前に着くと、駿太はもう一度
「金曜日、大学ですか?」
と聞いて来た。
「そうだね、大学生だからね」
「いつも何時位に帰って来ますか?」
「何もなければ、7時に駅かな?」
駿太は少し、ホッとした様な顔をした。
「あ、送ってくれてありがとうございます」
いつまで経っても敬語が抜けないんだよな、、、。
**********
僕は、ずっと下見をしていた。今日は蜂屋さんの誕生日プレゼントを買いに行く。アルバイトで貯めたお金は2万5千円。塾の友達に色々聞いて、財布か時計かキーホルダー、それかカードケース。時計が良いなって思ったけど、みんなはスマホがあるから使わないって言うんだ。
兄さんに蜂屋さんの誕生日を聞いてから、バイトを始め、やっと現金が手に入った。
商業施設の男性用の小物売り場を見に行く。いざ買おうと思ったら、蜂屋さんの好みがわからなかった、、、。
プレゼントして、好みの物じゃ無かったら、使って貰えないかな?。
なんて考えて、折角買おうと思ってもレジに持って行く勇気が無かった。
漸く黒い財布に決める事が出来て、ラッピングをして貰う。
サプライズしたかったから、誕生日の金曜日、駅で蜂屋さんを待つ事にしたんだ。
*****
7時頃って言っていたから、6時半から待つ事にした。僕は蜂屋さんがプレゼントを喜んでくれると良いなって考えていた。
8時を回っても蜂屋さんは帰って来ない。
折角ここまで待ったから、後30分待とうと思いながら、後10分。45分まで、9時まで、、、なんて時間ばかり過ぎていた、、、。
9時過ぎても帰って来ないなんて、もしかしたら家で寝込んでいるかも、、、。と心配になって来た時、蜂屋さんの姿が見えた。
友達と一緒だった、、、。
僕は蜂屋さんに声を掛けて良いか分からなくて、改札横で固まってしまった。
「駿太、何やってるの?」
「誰?」
「ああ、谷原の弟だよ」
「へぇ」
谷原の弟、、、。そう言われた時、何だか悲しくなった。
「じゃ、俺、自転車だから」
友達は駐輪場の方に向かい、蜂屋さんは手を振って見送った。
僕は泣きそうになるのを堪えて
「お誕生日おめでとうございます」
と言って、プレゼントの入った小さな紙袋を渡すと、走って帰った。
そりゃあさ、連絡もしないで待っていたのは僕だよ。勝手にプレゼント用意して、駅で何時間も待っていたのだって、蜂屋さんに頼まれた訳じゃ無い。
友達に「俺の恋人」って紹介されないからって、怒って、イジケても、蜂屋さんの所為じゃない。
でも、僕は蜂屋さんの誕生日に一緒にお祝いしたかったんだ。
僕はどうせ、谷原の弟だよ。
でも、蜂屋さんにだけは、そんな風に言われたく無かった。
「駿太っ!」
腕を掴まれた。
「駿太、足、早すぎっ、、、」
現役高校生だからね、、、。
ハァハァしながら蜂屋さんは僕の横を歩く。
ちょっと先の高架下に小さな公園があった。
バスケットゴールが有って、柵で覆われている。
昼間は子供達がボール遊びをする場所だ。
蜂屋さんは、僕の腕を掴んで公園の方に向かう。
近くの自販機で炭酸飲料を二本買い、一本を僕にくれた。
ベンチに座って
「俺の誕生日、誰に聞いたの?」
と言う。
「兄さん、、、」
「やっぱり、、、アイツ、いつも分からなくなるんだよ」
「?」
「俺の誕生日、来月の27日」
「え?!」
「秀明は、いつも、10月か11月か分からなくなるんだ」
「嘘、、、」
「嘘じゃ無いよ」
僕は一気に疲れてしまった。
「なんだ、、、」
一人で舞い上がって、馬鹿みたいだ、、、。
「いつから駅にいたの?」
「、、、6時半」
「6時半?!」
「この間聞いたら、いつもは7時頃だって言ってたから、、、」
「言ってくれれば、7時に帰って来たのに、、、」
「サプライズしたかったから、、、でも、失敗しちゃった」
僕は笑った。笑ったのに、涙が込み上げて来て、笑顔が歪んでしまう。
「僕、谷原の弟なんだね、、、。蜂屋さんの恋人って紹介されたかった、、、」
「、、、悪かった。アイツも谷原の事知ってから」
「、、、本当は、ご飯も一緒に食べたかったけど、もう食べたんですか?」
「俺が奢るよ」
「今日は僕がご馳走しようと思っていたのに、、、」
「分かった、、、それなら、ご馳走して、、、」
と言って、頬にキスをされた。
「え?」
蜂屋さんの方を向くと、今度は口付けをされた。
「駿太、待たせてごめん」
頬に両手をそっと添えて、もう一度、、、。
何度も何度もキスをする内に、蜂屋さんはそっと唇を噛み、舌でなぞり、僕の中に入って来た、、、。
僕は、頭がホワホワして来て、気持ちが良かった、、、。
**********
駿太がくれたプレゼントは、ブランドの財布だった。
「お小遣い貯めたの?」
「バイトしました」
「バイト?」
「蜂屋さんに似合う物、プレゼントしたくて」
だから、たまに夜返事が遅かったのか、、、。
「何を上げたら良いか分からなくて、塾の友達に相談しました。蜂屋さんは年上だから、ちゃんとした物贈りたくて、、、」
「何だ、、、最近設楽さんと仲が良いなと思っていたら、そう言う事だったんだ」
「設楽さんだけじゃなくて、みんなに聞きました。竹田くんは設楽さんと付き合ってるんです」
「え?設楽さん、竹田くんと付き合ってたの?」
「いつも一緒にいますよ」
設楽さんは駿太が好きだと思っていた。
悪い事をした、、、。駿太がしきりに金曜日を気にしていたのに、設楽さんと一緒にいるのが気に入らなくて、意地悪をした。いつもの時間に帰れたのに、あちこちフラフラして時間を潰してから帰って来てしまった。
*****
11月27日、俺の誕生日。残念ながら塾のバイトがあった。ま、逆に言えば駿太と長い時間一緒にいられるから良いんだけど。
塾の後、二人で国道沿いのファミリーレストランに行く。
「何でも好きな物選んで下さい」
まだ、高校一年生のクセに可愛いな。
駿太は一所懸命話す。普段こんなに話さないのに、俺をお持て成しする事で一杯一杯みたいだ。
料理が揃い
「蜂屋さん、お誕生日おめでとうございます」
丁寧にお祝いされる。
「プレゼント無くてごめんなさい」
「それは秀明が悪いから。あー、じゃあさ、今日からその敬語辞めようよ」
「はい」
「出来る?」
「頑張ります、、、」
ふふ、、、。早速敬語だ。
最後に二人でケーキを食べる。
そろそろ、高校生の彼を帰さないといけない。
レジで制服の彼が俺にご馳走する姿は、何だか可笑しかった。
何度も二人で歩いた道なのに、11月の寒い夜はいつもと少し違った。
誰もいないから、二人で手を繋ぐ。駿太が嬉しそうに笑った。
去年は三人で受験勉強してたな、、、。一年で随分変わった。
駿太の家の前に着く、明日も学校だ。
「駿太、ありがとう」
駿太は、俺の両手を繋ぎ
「お誕生日おめでとうございます」
そう言って、背伸びをすると、俺の唇に触れるだけのキスをしてくれた。
自分の顔が赤くなるのを実感した。今、絶対顔が赤い。
俺は握られた手を離されない様に必死に手を繋ぎ、キスを続けた。
駿太は恥ずかしそうに身体を引く。折角の誕生日。もう少しだけ、甘いキスを味わっても良いじゃないか、、、。
駿太がそっと俺の手を離し、静かに頬に触れる。
小さな舌が俺の唇を恥ずかしそうになぞり、開き、頑張って入って来た。
まだ、息の仕方が上手く無いのか、少し震えている。
ああ、ダメだ。
と思いながら、片手で彼を抱き寄せ、片手で彼の頬に触れながら彼の口の中を味わった。
「ご馳走様」
と言って離れると
「蜂屋さん、大好き」
と抱き締められた。
ちょっと長い話になってしまいました。最後まで読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます。




